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5章 慣れ親しんだ味 ~家庭で食べるワカメと豆腐のみそ汁~
①
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帰らないと、帰らないと……思っていても、どうして行動に移せないのか。
羽根田が成仏した日から、数々の瀬戸際の人間を見てきた。
アキを迎え入れてくれた女神と死神、そして不思議な白猫は、異様に居心地の良い空間を与えてくれる。
どれくらい経ったかは数えていない。居候状態のアキは、どっぷりとこの人間と神様たちの狭間にある世界に浸かっていた。
「いてて……昨日また飲み過ぎた」
毎日サリとネトが料理を提供してくれているから、だいぶ舌が肥えてきている。
時たま、ネトが羽目を外したがることがあって……朝まで飲んでしまうこともあるのだ。
まさに今、ネトのせいで二日酔いが襲ってきている状態だ。
もはや勝手にシャワーを貸してもらっているし、タオルが収納されてある棚だってわかっている。
完全に、この生活に慣れてしまった。
「あれ!? ネトさん?」
時間帯を把握しないでシャワーに入ってしまった。
まだ昼過ぎだと思っていたのに、カウンターに立っていたのはネトだった。
つまり、外は暗闇。ついにサリに会わない日が生まれてしまった。
まだ少しだけ湿っている髪を搔きながら「しまった飲み過ぎた」と嘆くアキ。
「なんだ、こんな時間まで寝てたのか」
「シャワー浴びていただけです!」
すぐさまネトと口論になる。
猫神様はいつもアキの座っているカウンターのところを陣取っていた。
アキが来たと同時に、猫神様の定位置に戻る。ちょこんと座りながら、猫神様が「サリから伝言じゃ」と言った。
「サリさんが? 何ですか?」
「あんまり飲み過ぎると太るわよ……だってよ」
猫神様の言葉に、ネトは爆笑する。
猫神様の気持ちが入っていない言葉を聞いて、アキはムッとした。
サリにムッとしたわけではなく、笑っているネトに腹が立ったのだ。
「ネトさんが飲ませるからですよ!」
「俺が!? お嬢ちゃんだって毎回美味そうに飲むじゃないか! 俺が注いだ酒をさ」
「それは……そういう空気になっているから」
声が弱くなる。確かにネトが作る酒は天下一品だった。
毎回ちょうどいい、飲みやすい塩梅で作ってくれる。
飲みやすいから、ついつい量を飲んでしまうのだ。だから長い時間飲んでしまう。
サリは冗談っぽく言ってくれたに違いないけど、アキは少し凹んだ。
羽根田が成仏した日から、数々の瀬戸際の人間を見てきた。
アキを迎え入れてくれた女神と死神、そして不思議な白猫は、異様に居心地の良い空間を与えてくれる。
どれくらい経ったかは数えていない。居候状態のアキは、どっぷりとこの人間と神様たちの狭間にある世界に浸かっていた。
「いてて……昨日また飲み過ぎた」
毎日サリとネトが料理を提供してくれているから、だいぶ舌が肥えてきている。
時たま、ネトが羽目を外したがることがあって……朝まで飲んでしまうこともあるのだ。
まさに今、ネトのせいで二日酔いが襲ってきている状態だ。
もはや勝手にシャワーを貸してもらっているし、タオルが収納されてある棚だってわかっている。
完全に、この生活に慣れてしまった。
「あれ!? ネトさん?」
時間帯を把握しないでシャワーに入ってしまった。
まだ昼過ぎだと思っていたのに、カウンターに立っていたのはネトだった。
つまり、外は暗闇。ついにサリに会わない日が生まれてしまった。
まだ少しだけ湿っている髪を搔きながら「しまった飲み過ぎた」と嘆くアキ。
「なんだ、こんな時間まで寝てたのか」
「シャワー浴びていただけです!」
すぐさまネトと口論になる。
猫神様はいつもアキの座っているカウンターのところを陣取っていた。
アキが来たと同時に、猫神様の定位置に戻る。ちょこんと座りながら、猫神様が「サリから伝言じゃ」と言った。
「サリさんが? 何ですか?」
「あんまり飲み過ぎると太るわよ……だってよ」
猫神様の言葉に、ネトは爆笑する。
猫神様の気持ちが入っていない言葉を聞いて、アキはムッとした。
サリにムッとしたわけではなく、笑っているネトに腹が立ったのだ。
「ネトさんが飲ませるからですよ!」
「俺が!? お嬢ちゃんだって毎回美味そうに飲むじゃないか! 俺が注いだ酒をさ」
「それは……そういう空気になっているから」
声が弱くなる。確かにネトが作る酒は天下一品だった。
毎回ちょうどいい、飲みやすい塩梅で作ってくれる。
飲みやすいから、ついつい量を飲んでしまうのだ。だから長い時間飲んでしまう。
サリは冗談っぽく言ってくれたに違いないけど、アキは少し凹んだ。
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