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4章 八丁味噌の豆乳味噌スープ 〜挽肉とブロッコリーと香るごま油〜
⑧
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「はい、お待ち」
寿司職人の口調に変わったネトが、羽根田とアキの前にある皿に一貫ずつ出してくれる。
光ものの代表格であるアジは、見るからに肉厚で弾力がありそうだった。
ネタの上に生姜のすりおろしがのっている。手で掴んで、醤油皿にちょんちょんと醤油をつけて口に入れた。
羽根田は「とろけるようだ」とモグモグしながら満足そうにしている。アキも同じく恍惚な表情をネトに見せていた。
「次はお嬢ちゃん、何でも握ってやるぞ」
「ええ! 良いんですか?」
「たまには存在感出してやらないとな」
今回は羽根田のターンだと思っていたので、アキは飛び上がるように驚いていた。
カウンターを覗き見るようにして前のめりになる。
「ま、ないネタもあるけど、一応注文してみな?」
「はい! じゃあ……ハマチとかありますかね」
「ハマチは……あるある」
「じゃあお願いします!」
回転寿司でよく食べるナンバーワン。アキにとってはそれがハマチなのだ。
あの脂身が舌の上で踊る感覚……それを食べに寿司屋に行っているといっても過言ではない。
ネトはアジと同様に分厚く切ったハマチをシャリの上にのせて握った。
「はい、お嬢ちゃんからのリクエスト、ハマチお待たせ」
羽根田がアキの方を見て、ニコッと微笑む。アキと羽根田は一口で口に入れた。
歯ごたえ抜群、旨味が溢れる。もう二、三貫くらいは食べたいと思える寿司だ。
羽根田もハマチが好きなのか、咀嚼しながらその美味しさを噛みしめていた。
「あとは適当に握るわ。ちょっと待ってな」
それからは流れるように、色んなネタが二人の前に提供された。
みそ汁食堂のはずなのに、ただの回らないお寿司屋だ。
マグロ、エビ、イクラ軍艦……厚焼き玉子まで飛び出した。焼酎とよく合う寿司たちに舌鼓を打ったあとに、ネトも羽根田も一息つくように落ち着いた。
「お腹がいい感じに溜まってきたよ。美味しいの作るねぇ」
「まあ、それが仕事だからな」
「おつまみもお寿司もお酒も、どれも満足だ」
「……じゃあ、本題に入りますか」
寿司職人の口調に変わったネトが、羽根田とアキの前にある皿に一貫ずつ出してくれる。
光ものの代表格であるアジは、見るからに肉厚で弾力がありそうだった。
ネタの上に生姜のすりおろしがのっている。手で掴んで、醤油皿にちょんちょんと醤油をつけて口に入れた。
羽根田は「とろけるようだ」とモグモグしながら満足そうにしている。アキも同じく恍惚な表情をネトに見せていた。
「次はお嬢ちゃん、何でも握ってやるぞ」
「ええ! 良いんですか?」
「たまには存在感出してやらないとな」
今回は羽根田のターンだと思っていたので、アキは飛び上がるように驚いていた。
カウンターを覗き見るようにして前のめりになる。
「ま、ないネタもあるけど、一応注文してみな?」
「はい! じゃあ……ハマチとかありますかね」
「ハマチは……あるある」
「じゃあお願いします!」
回転寿司でよく食べるナンバーワン。アキにとってはそれがハマチなのだ。
あの脂身が舌の上で踊る感覚……それを食べに寿司屋に行っているといっても過言ではない。
ネトはアジと同様に分厚く切ったハマチをシャリの上にのせて握った。
「はい、お嬢ちゃんからのリクエスト、ハマチお待たせ」
羽根田がアキの方を見て、ニコッと微笑む。アキと羽根田は一口で口に入れた。
歯ごたえ抜群、旨味が溢れる。もう二、三貫くらいは食べたいと思える寿司だ。
羽根田もハマチが好きなのか、咀嚼しながらその美味しさを噛みしめていた。
「あとは適当に握るわ。ちょっと待ってな」
それからは流れるように、色んなネタが二人の前に提供された。
みそ汁食堂のはずなのに、ただの回らないお寿司屋だ。
マグロ、エビ、イクラ軍艦……厚焼き玉子まで飛び出した。焼酎とよく合う寿司たちに舌鼓を打ったあとに、ネトも羽根田も一息つくように落ち着いた。
「お腹がいい感じに溜まってきたよ。美味しいの作るねぇ」
「まあ、それが仕事だからな」
「おつまみもお寿司もお酒も、どれも満足だ」
「……じゃあ、本題に入りますか」
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