56 / 96
4章 八丁味噌の豆乳味噌スープ 〜挽肉とブロッコリーと香るごま油〜
⑦
しおりを挟む
もちろん、アキの前にもそれは置かれた。満腹状態なのを懸念されて、羽根田に出しているものよりも小ぶりな皿に盛られていた。
それくらいが丁度いい……ネトに感謝して、一口食べる。
「うわ、コリコリで美味しい」
アキは思わず声を漏らしてしまった。
レモン汁のさっぱり感と、塩コショウのガッツリ感が交互に押し寄せてくる。
芋焼酎が口の中で踊り、美味しさを加速させてくれた。
羽根田も「美味い美味い」と口にしながら食べ飲みしている。
ネトは「だろ?」と満足そうにしながら、まな板を洗っていた。
「お次は何にしようかな……寿司なんてどうだ?」
「寿司? それは食べたいけど……」
羽根田が首を傾げる。それはそうだ。ネトが寿司職人でないことくらい、羽根田もアキも知っている。
この店は創作料理や、その日の気まぐれで決められたメニューが出てくるのだ。
それが、寿司を作る? 寿司を握る? さすがにそれはないだろうと疑問に思っていても、ネトは気にしていない。
炊飯器の中に入っている熱々ご飯を大きめの桶に移し、市販のすし酢を目分量で入れた。
頑丈なしゃもじで満遍なく混ぜ始める。
「寿司も握れるのかい?」
「まあな……俺に作れない飯なんてないんだよ」
「それはすごいなぁ。この店に来て、本当に良かった」
氷をカランと鳴らして、羽根田は唸るように言った。
ネトは照れ笑いをしながら、うちわで酢飯に冷気を与えている。
力仕事も、涼しい顔でやってのけるネトを見て、アキは胸がキュンとした。
「よし、こんなもんか。それじゃあ握っていくか……えーと、今日のネタは」
冷蔵庫から、刺身の切り身たちを取り出す。玉子焼きやイカ納豆もあった。
毎日寿司を出しているのかと疑問に思うほど、冷蔵庫の中には下処理されていたネタが保存されている。
ネトが「何が食べたい?」と聞くと、羽根田は即決で「アジ」と答えた。
「アジね。了解した」
最初の注文のアジから、まずは握る。ネトは手のひらにシャリをのせて、軽く握っていった。
シャリの中心にわさびをのせて、その上にアジの切り身をのせる。もう一度ギュッと力を伝えた。
アキの分も握ったので、二貫立て続けに握ったことになる。
それくらいが丁度いい……ネトに感謝して、一口食べる。
「うわ、コリコリで美味しい」
アキは思わず声を漏らしてしまった。
レモン汁のさっぱり感と、塩コショウのガッツリ感が交互に押し寄せてくる。
芋焼酎が口の中で踊り、美味しさを加速させてくれた。
羽根田も「美味い美味い」と口にしながら食べ飲みしている。
ネトは「だろ?」と満足そうにしながら、まな板を洗っていた。
「お次は何にしようかな……寿司なんてどうだ?」
「寿司? それは食べたいけど……」
羽根田が首を傾げる。それはそうだ。ネトが寿司職人でないことくらい、羽根田もアキも知っている。
この店は創作料理や、その日の気まぐれで決められたメニューが出てくるのだ。
それが、寿司を作る? 寿司を握る? さすがにそれはないだろうと疑問に思っていても、ネトは気にしていない。
炊飯器の中に入っている熱々ご飯を大きめの桶に移し、市販のすし酢を目分量で入れた。
頑丈なしゃもじで満遍なく混ぜ始める。
「寿司も握れるのかい?」
「まあな……俺に作れない飯なんてないんだよ」
「それはすごいなぁ。この店に来て、本当に良かった」
氷をカランと鳴らして、羽根田は唸るように言った。
ネトは照れ笑いをしながら、うちわで酢飯に冷気を与えている。
力仕事も、涼しい顔でやってのけるネトを見て、アキは胸がキュンとした。
「よし、こんなもんか。それじゃあ握っていくか……えーと、今日のネタは」
冷蔵庫から、刺身の切り身たちを取り出す。玉子焼きやイカ納豆もあった。
毎日寿司を出しているのかと疑問に思うほど、冷蔵庫の中には下処理されていたネタが保存されている。
ネトが「何が食べたい?」と聞くと、羽根田は即決で「アジ」と答えた。
「アジね。了解した」
最初の注文のアジから、まずは握る。ネトは手のひらにシャリをのせて、軽く握っていった。
シャリの中心にわさびをのせて、その上にアジの切り身をのせる。もう一度ギュッと力を伝えた。
アキの分も握ったので、二貫立て続けに握ったことになる。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
作ろう! 女の子だけの町 ~未来の技術で少女に生まれ変わり、女の子達と楽園暮らし~
白井よもぎ
キャラ文芸
地元の企業に勤める会社員・安藤優也は、林の中で瀕死の未来人と遭遇した。
その未来人は絶滅の危機に瀕した未来を変える為、タイムマシンで現代にやってきたと言う。
しかし時間跳躍の事故により、彼は瀕死の重傷を負ってしまっていた。
自分の命が助からないと悟った未来人は、その場に居合わせた優也に、使命と未来の技術が全て詰まったロボットを託して息絶える。
奇しくも、人類の未来を委ねられた優也。
だが、優也は少女をこよなく愛する変態だった。
未来の技術を手に入れた優也は、その技術を用いて自らを少女へと生まれ変わらせ、不幸な環境で苦しんでいる少女達を勧誘しながら、女の子だけの楽園を作る。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
わたしの婚約者は学園の王子さま!
久里
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。
遊撃不動産 ~ヤメ警だらけの「夜の不動産屋」に転職してしまいました~
ゴオルド
キャラ文芸
【知識と度胸で敵をぶん殴ります!】
一般企業に就職したものの、どうにも人間関係がうまくいかず、「夜の不動産屋」に転職した主人公・樋元希美。彼女の主な仕事は、家賃を滞納したキャバクラへの取り立てだ。
さまざまな立場の人間が集まる夜の街「新陶」。
キャバクラ店長、謎の金持ち、ヤミ金、巳一会、イケメン警察官、元警察官の上司、キャバ嬢……そういった人々と関わりながら、無鉄砲な主人公は家賃を取り立てつつ事件を解決していく。
○主な登場人物○
樋元希美(26):主人公。無鉄砲な取立人。ノゾミン。
先﨑颯馬(29):生活安全課の警察官。刑事になって捜査したい。
謎のイケオジ:ヤクザ……? 主人公の天敵。
柳さん:バー「ルーラー」のマスター。テキーラ好き。
佐藤さん:上司。可愛いアニメ声の女性。元警察官。
ミユキさん(31):お花屋さん。のほほんとしていて優しい。
アヤカシ町雨月神社
藤宮舞美
キャラ文芸
大学に通う為に田舎に引越してきた普通の大学生、霧立八雲。
彼はその町で『雨月神社』に参拝する。
しかしその『雨月神社』は八雲が住んでいる浮世(この世)ではなかった。
『雨月神社』は悩みを抱えたアヤカシ、妖怪、神様などが参拝に来る処だった。
そこで八雲は、物腰の柔らかく優しい謎の陰陽師である香果と、香果が大好きな自由な猫又、藤華に出会う。ひょんなことから八雲はアヤカシ町に住むことになり……
雅な陰陽師に誘われ、様々な悩みを解決する。
ほっこりして癒やされる。ちょっぴり不思議で疲れた心に良く効く。さくっと読める風流な日常ミステリ。
最高ランキング1位を頂きました!
ありがとうございます!これからも宜しくお願いします!
視える宮廷女官 ―霊能力で後宮の事件を解決します!―
島崎 紗都子
キャラ文芸
父の手伝いで薬を売るかたわら 生まれ持った霊能力で占いをしながら日々の生活費を稼ぐ蓮花。ある日 突然襲ってきた賊に両親を殺され 自分も命を狙われそうになったところを 景安国の将軍 一颯に助けられ成り行きで後宮の女官に! 持ち前の明るさと霊能力で 後宮の事件を解決していくうちに 蓮花は母の秘密を知ることに――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる