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2章 出汁なしみそ汁 ~新ジャガと黒コショウソーセージ
⑤
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「一杯目は何がいい? 生でいいか?」
「あ、ああ。それで頼むよ」
ネトが「あいよ」と言って、泡と液体の黄金比率が守られている美しいビールを注ぎ、そして渡した。
おじさんは喉がカラカラだったのか、手に持ってから躊躇せずそのまま喉を鳴らす。
ゴクンと飲み込んだ後、天にも昇るようだと言わんばかりの恍惚とした表情を見せた。
「お客さん、名前は?」
ネトが不躾に聞く。アキはもうその態度に慣れている。
おじさんも大して気にしていないようだ。おじさんは「倉持です」とだけ呟いた。
「倉持さんだな。飯食える元気はあるか?」
「は、はは……まあギリギリあるかな。こっちの状況も、知ってるってことだね?」
「お気づきの通り、ここは普通の飲み屋じゃないからな。まあ、今から酒のあてを出してやるから。ゆっくりしていってくれ」
大根のつまの上にシソの葉が置かれる。その上から平造りに捌かれた赤身と白身の刺身がのせられた。
大体四切れずつくらいのっているだろうか。アキの目からもそれは確認できる。
「はいよ、まずは刺身からだな。赤身はカツオ、白身はヒラメだ。醤油に生姜を溶いて食べてくれ」
倉持の前に出された豪華な刺身。アキは思わず凝視してしまった。
ネトは何も言わずにアキの前にも置く。アキは「ありがとうございます」と拍手交じりに声を出した。
倉持ははしゃぐアキと目が合い、浅い会釈を交わす。言葉は交わすことがなく、各々刺身を口にする。
「うわ、とろけるような赤身だね。いいカツオ使ってるでしょ?」
「まあな。今は旬ってわけではないんだが、高知の夏鰹は十分美味いからな」
「高知のカツオか! これだけ身がプリプリだとビールも進むな」
全体的に暗い顔つきだった倉持の表情が、美味しいおつまみを前に綻び始めている。
アキも同じ気持ちだった。このお店の中にいると、これまでの苦悩を忘れることができる。美味しいものを食べている、この瞬間だけ。
「ちょっと待てよ。すぐに次のが出来上がるから」
ネトの手元に注目して見てみる。
食べやすい大きさに切られた豚バラ肉、そして玉ねぎ。
火が通ったフライパンの中にごま油をひき、玉ねぎを入れて炒めだす。
薄切りのためすぐに火が通った。豚バラも入れてササッと菜箸で回すように炒めた後、ポン酢とマヨネーズを加えた。
なに、この破滅的な香りは……アキの心が躍る。倉持も同じ気持ちだろう。
「あ、ああ。それで頼むよ」
ネトが「あいよ」と言って、泡と液体の黄金比率が守られている美しいビールを注ぎ、そして渡した。
おじさんは喉がカラカラだったのか、手に持ってから躊躇せずそのまま喉を鳴らす。
ゴクンと飲み込んだ後、天にも昇るようだと言わんばかりの恍惚とした表情を見せた。
「お客さん、名前は?」
ネトが不躾に聞く。アキはもうその態度に慣れている。
おじさんも大して気にしていないようだ。おじさんは「倉持です」とだけ呟いた。
「倉持さんだな。飯食える元気はあるか?」
「は、はは……まあギリギリあるかな。こっちの状況も、知ってるってことだね?」
「お気づきの通り、ここは普通の飲み屋じゃないからな。まあ、今から酒のあてを出してやるから。ゆっくりしていってくれ」
大根のつまの上にシソの葉が置かれる。その上から平造りに捌かれた赤身と白身の刺身がのせられた。
大体四切れずつくらいのっているだろうか。アキの目からもそれは確認できる。
「はいよ、まずは刺身からだな。赤身はカツオ、白身はヒラメだ。醤油に生姜を溶いて食べてくれ」
倉持の前に出された豪華な刺身。アキは思わず凝視してしまった。
ネトは何も言わずにアキの前にも置く。アキは「ありがとうございます」と拍手交じりに声を出した。
倉持ははしゃぐアキと目が合い、浅い会釈を交わす。言葉は交わすことがなく、各々刺身を口にする。
「うわ、とろけるような赤身だね。いいカツオ使ってるでしょ?」
「まあな。今は旬ってわけではないんだが、高知の夏鰹は十分美味いからな」
「高知のカツオか! これだけ身がプリプリだとビールも進むな」
全体的に暗い顔つきだった倉持の表情が、美味しいおつまみを前に綻び始めている。
アキも同じ気持ちだった。このお店の中にいると、これまでの苦悩を忘れることができる。美味しいものを食べている、この瞬間だけ。
「ちょっと待てよ。すぐに次のが出来上がるから」
ネトの手元に注目して見てみる。
食べやすい大きさに切られた豚バラ肉、そして玉ねぎ。
火が通ったフライパンの中にごま油をひき、玉ねぎを入れて炒めだす。
薄切りのためすぐに火が通った。豚バラも入れてササッと菜箸で回すように炒めた後、ポン酢とマヨネーズを加えた。
なに、この破滅的な香りは……アキの心が躍る。倉持も同じ気持ちだろう。
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