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1章 麦味噌の記憶 〜つみれと大根とほんのり生姜〜
⑤
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各瓶に貼られているラベルには、北海道やら仙台やら、下は九州まで各地域の名前が書かれている。
サリはその中でも『瀬戸内麦味噌』と書かれた瓶を取り出した。
「今日はサラッとした甘みがある麦味噌を使っていくわね」
「麦味噌……」
よく考えたら、味噌の種類について勉強したことはない。
アキはそもそも味噌ってどのような種類があるのか疑問に思い、それがわかりやすく表情に出てしまった。
「麦味噌はね、麦麹の歩合が高いの」
「麦麹? うーん?」
頭を抱えながら理解に苦しんでいるアキを見て、サリは口を隠しながら上品に笑った。
味噌漉し器でグリグリ溶きながら、伝わるように丁寧に説明してくれる。
「味噌はね、大豆を蒸してから麹と塩を加えて発酵させたものなの。麦味噌は麦麹を使って発酵させるから、麦味噌っていうのよ」
「麹にも種類があるんですね……」
「そうそう。一般的なのは米麹が利用される米味噌ね。あとは豆麹を利用した豆味噌! 愛知の八丁味噌とかは豆味噌の部類だわ」
「へ、へぇー……奥が深い」
「面白いでしょ。あとは色の種類によってもわかれたりするんだけど、それはまた今度説明するわね。とりあえず完成したから」
炊飯器のボタンを押すと、勢いよく蓋が開いた。
蒸気が天井に立ちのぼり、見るからに熱々なのがわかった。
サリがご飯茶碗に一杯分よそい、おしゃれなカフェで使われているような木製のトレーの上にのせる。
おかず用の丸皿の半分に千切りキャベツが置かれており、その半分に醤油ダレが照明の灯りに反射して綺麗な生姜焼きがのる。サイドにはマヨネーズがしっかりと添えられている。
「はい、生姜焼き定食ね! 今日のみそ汁は、つみれと大根のみそ汁よ」
思わず唾を飲み込んでしまうアキ。
全てに湯気が立っており、見ているだけで美味しいのは確定しているほど完成度が高い定食だ。
アキはひとまず、麦みそ汁から口をつけた。
これまでカウンターの端の方に移動して目を瞑って休んでいた猫神様は、アキが食すとなってから起き上がった。
近づいて、アキが食べる様子をじっと見ている。
サリはその中でも『瀬戸内麦味噌』と書かれた瓶を取り出した。
「今日はサラッとした甘みがある麦味噌を使っていくわね」
「麦味噌……」
よく考えたら、味噌の種類について勉強したことはない。
アキはそもそも味噌ってどのような種類があるのか疑問に思い、それがわかりやすく表情に出てしまった。
「麦味噌はね、麦麹の歩合が高いの」
「麦麹? うーん?」
頭を抱えながら理解に苦しんでいるアキを見て、サリは口を隠しながら上品に笑った。
味噌漉し器でグリグリ溶きながら、伝わるように丁寧に説明してくれる。
「味噌はね、大豆を蒸してから麹と塩を加えて発酵させたものなの。麦味噌は麦麹を使って発酵させるから、麦味噌っていうのよ」
「麹にも種類があるんですね……」
「そうそう。一般的なのは米麹が利用される米味噌ね。あとは豆麹を利用した豆味噌! 愛知の八丁味噌とかは豆味噌の部類だわ」
「へ、へぇー……奥が深い」
「面白いでしょ。あとは色の種類によってもわかれたりするんだけど、それはまた今度説明するわね。とりあえず完成したから」
炊飯器のボタンを押すと、勢いよく蓋が開いた。
蒸気が天井に立ちのぼり、見るからに熱々なのがわかった。
サリがご飯茶碗に一杯分よそい、おしゃれなカフェで使われているような木製のトレーの上にのせる。
おかず用の丸皿の半分に千切りキャベツが置かれており、その半分に醤油ダレが照明の灯りに反射して綺麗な生姜焼きがのる。サイドにはマヨネーズがしっかりと添えられている。
「はい、生姜焼き定食ね! 今日のみそ汁は、つみれと大根のみそ汁よ」
思わず唾を飲み込んでしまうアキ。
全てに湯気が立っており、見ているだけで美味しいのは確定しているほど完成度が高い定食だ。
アキはひとまず、麦みそ汁から口をつけた。
これまでカウンターの端の方に移動して目を瞑って休んでいた猫神様は、アキが食すとなってから起き上がった。
近づいて、アキが食べる様子をじっと見ている。
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