17 / 114
第一話 臼井スミレの夏
⑰
しおりを挟む
健気に言葉を振り絞る弘中君を見て、頭を抱えた。しまった、この反応は本当のことを言っているかもしれない。嘘なんかついていないように見える。
え? 本当に私は酔った勢いで、後輩の男の子を襲ってしまったの? しかも社内に彼女がいる男の子を? 頭の中が真っ白になる。
「まあ、ばれてしまったのはしょうがありません。これで倉持さんと別れることになっても、僕は何も言えませんね」
「弘中君はそれで済むかもしれないけど、私はこの会社にいられなくなるわ。後輩の彼氏を寝取ったなんて、最低だもの」
「そこまで問題になりますかね? 個人間の問題なので、会社レベルで取り沙汰されることではないと思いますけど」
弘中君はそう言っているけど、私がやったことが上司に知られたら、間違いなく面談が入るだろう。
ヒヤリングを受けて、正直に答えるとする。そしたらきっと、私の軽率な行動が社内に行き渡って、評判が悪くなってしまう。間違いなくみんなから軽蔑される。
最悪のシナリオが頭に過ぎった。私は冷や汗を額に滲ませながら、深い溜息をつく。弘中君は相変わらず冷静に、私を励まそうとしてくれた。
「なるようになりますって。そんなに落ち込まないでくださいよ」
「もう、他人事だと思って!」
簡単に言ってくれるなよ……弘中君を軽く睨みつける。一旦会社に車を戻しに帰って、オフィスには入らず帰宅した。今はすぐに眠りたい気分だったから。
ベッドの中であれこれ考えた。これが明るみになったら、絶対に後ろ指をさされる。そしたら、どうしよう。私は働いていけるのだろうか。そんなことを考えていたら、段々と意識が遠のいてきた。眠りについた後に見た夢は、包丁を持った女の人に襲われるという悪夢だった。
こんなにも不安な朝は、久しぶりだ。溜まりに溜まった有休を使って、しばらく休むことも考えた。だけど今は大事な時期。ここを乗り越えていけるかどうかで、私の今後が決まっていく。
今は出世するために、アピールするチャンスなのだ。
え? 本当に私は酔った勢いで、後輩の男の子を襲ってしまったの? しかも社内に彼女がいる男の子を? 頭の中が真っ白になる。
「まあ、ばれてしまったのはしょうがありません。これで倉持さんと別れることになっても、僕は何も言えませんね」
「弘中君はそれで済むかもしれないけど、私はこの会社にいられなくなるわ。後輩の彼氏を寝取ったなんて、最低だもの」
「そこまで問題になりますかね? 個人間の問題なので、会社レベルで取り沙汰されることではないと思いますけど」
弘中君はそう言っているけど、私がやったことが上司に知られたら、間違いなく面談が入るだろう。
ヒヤリングを受けて、正直に答えるとする。そしたらきっと、私の軽率な行動が社内に行き渡って、評判が悪くなってしまう。間違いなくみんなから軽蔑される。
最悪のシナリオが頭に過ぎった。私は冷や汗を額に滲ませながら、深い溜息をつく。弘中君は相変わらず冷静に、私を励まそうとしてくれた。
「なるようになりますって。そんなに落ち込まないでくださいよ」
「もう、他人事だと思って!」
簡単に言ってくれるなよ……弘中君を軽く睨みつける。一旦会社に車を戻しに帰って、オフィスには入らず帰宅した。今はすぐに眠りたい気分だったから。
ベッドの中であれこれ考えた。これが明るみになったら、絶対に後ろ指をさされる。そしたら、どうしよう。私は働いていけるのだろうか。そんなことを考えていたら、段々と意識が遠のいてきた。眠りについた後に見た夢は、包丁を持った女の人に襲われるという悪夢だった。
こんなにも不安な朝は、久しぶりだ。溜まりに溜まった有休を使って、しばらく休むことも考えた。だけど今は大事な時期。ここを乗り越えていけるかどうかで、私の今後が決まっていく。
今は出世するために、アピールするチャンスなのだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる