たくさんの想いの先に

来栖瑠樺

文字の大きさ
20 / 38

些細の事で

しおりを挟む
 「イザベラ様、お元気そうですか?」
「エミリーも元気そうね」
お互い元気なのを確認した。
良かった。エミリーは責任を感じていたし、屋敷に帰ってまた自分を責めているのではないかと思っていたが心配いらなかった。
「アレクサンドルも座るといい」
まだ誰も座っていないが、殿下が茶会の席に座らせようとする。
「いえ、俺は立っています」
アレクサンドルは騎士としてなのか着席を断った。
「そうか。では、私がイザベラ嬢の隣に座ろう。それでもいいか、イザベラ嬢」
いいかと聞かれても断れないし、隣座られても嫌ではないからかまわない。
殿下は一瞬だけ私を見て、アレクサンドルに対して意地悪そうに笑っている。
「何か言いたげだな、イザベラ嬢は嫌そうにしてない」
アレクサンドルは不満そうな顔をしている。
どうして?
「・・・椅子が4人分あります。座らなかったら、せっかく用意したのに、無駄になってしまう。イザベラの護衛があるので、殿下はエミリー嬢の隣に座って下さい」
「回りくどい言い方せずに素直になればいいものを」
殿下は席を着き、その隣にエミリー。エミリーの目の前に私、隣にアレクサンドルが座った。

 お茶会が始まり、それぞれの馴れ初めを話す事になった。殿下は聞いてる事が多かったが、アレクサンドルに関する話は興味を示した。
やっぱり、自分の配下だし信頼してるからだろう。
時折、殿下とエミリーが内緒話しているが、何を話しているのだろう。
隣にいるアレクサンドルに話しかける。
「アレクサンドル、殿下とエミリーが内緒話してるけど何を話しているのかしら?」
「たぶん、俺達の事だろう」
「どうして?」
「・・・・・追求しないでくれ」
「分かったわ」
アレクサンドルは、思い当たる事があるようだが、触れられたくないようだ。
俺達・・・つまり私も入るけど何か内緒話するようなことあるかしら。
馴れ初めは話したし、幼なじみの事も知ってるし、他に話題になることでも?
考えを巡らせているとエミリーに声をかけられる。
 「イザベラ様、何を考え込まれているのですか?」
「・・・ん?ああ、何も考えてないわよ」
「・・・まあ、何となく見当はつきます」
「同感」
エミリーの言葉に、殿下も賛同する。
「イザベラは相変わらずだな」
「何よ」
「顔に出やすい」
アレクサンドルに呆れ顔で言われ言い返そうとしたら、殿下が先に言葉が出た。
「顔に出やすいに関してはアレクサンドルも同じだ。イザベラ嬢限定だな」
「殿下に同感します」
「お2人とも勘違いされてます」
「何を言う。王宮に来てから1番近くで見てたのは私だぞ。イザベラ嬢が関係しないと無表情が多いじゃないか」
殿下は自信満々に言い切った。
「そういえば、この間の舞踏会で令嬢達に囲まれてる時無表情だったわね」
「何だ。じゃあ、これからは愛想笑いを振り撒けばいいのか」
「そこまでは言ってないじゃない!」
「だったら言うな」 
「何よ。私は、ただ多少愛想が良い方が今後人間関係や任務もしやすくなるんじゃないかと思っただけよ!令嬢達の愛想笑いは、本当は・・・とにかく、余計なお世話だったわね!殿下、私はこれで失礼します」
殿下に一礼して、その場を離れようとした。
「イザベラ!」
アレクサンドルが私の手を握ったが振り払う。
「付いて来ないで。1人で戻れるわ」
そして足早にその場を去る。
その姿を3人は見送っていた。
「私が余計なことを言ったせいですね」
「エミリー嬢のせいではない。私も悪い。イザベラ嬢に謝りに行こう」
「いえ、元は俺が原因です。とにかく今はイザベラを追いかけ護衛を続けます」 
「そうだな」
3人が、それぞれ発言が想定外のことになってしまって雰囲気は暗く終わった。


 私は、部屋に戻り溜め息をついた。
場の空気を悪くして気まずくしてしまった。
このままでは良くない。もう一度戻って謝ろう。
そう思ってドアの前に立つ。するとノックと同時にドアが開き額にぶつかる。
「・・・ッ」
声を我慢して視線を向けると殿下、エミリー、アレクサンドルが立っている。
「イザベラ嬢。すまない。そんな近くにいたとは」
殿下は申し訳なさそうに眉を下げる。
「い、いえ。私は先程の事を謝りに行こうと思って」
「とりあえず、部屋に入っていいか?」
「はい」
殿下の尋ねに承諾すると3人が部屋に入り、ソファー席に座る。座った場所はお茶会の席と同じだ。
「「ごめんなさい」」 「「悪かった」」
「「「「え?」」」」
合わせたわけではないのに、謝りと驚きが被る。
それぞれが顔を合わせる。
1番に話をしたのはエミリーだ。
「先程の事になってしまったのは、私がイザベラ様に何か考え込まれているかと聞いたせいです。申し訳ありません」

「エミリー嬢、気に病むな。私が悪い。アレクサンドルがイザベラ嬢が関係してると表情が豊かだから、新鮮で楽しんでからかってしまった。余計な事を言ってしまった」

「悪いのは俺です。殿下、エミリー嬢。イザベラとは幼なじみで、俺が人付き合いが上手ではないこと。イザベラにだけ表情が豊かな事も知っていたから。イザベラに表情を言われて過剰反応してしまった。イザベラは、俺の事を考えて言ったことだったのに」

「アレクサンドルのせいじゃないわよ。今までのアレクサンドルを考えたら、私の言った事は強制みたいになってしまうわね。今までも支障がないようなら、変えなくていいわ。それに、これは私のわがままだけど、他の令嬢達に愛想を振り撒くのは嫌。大人の対応ができなくて、自分が嫌になるわ。いろいろ、ひっくるめて私が悪いのよ」
しばらく沈黙が続いた。
こんなことするつもりなかったし、喧嘩なんてしたくなかった。
どうして、いろいろ上手く立ち回りができないんだろう。

 「言葉とは難しいな」 
沈黙を破ったのは殿下だ。
視線が殿下に集まる。
殿下は自嘲気味に話を続けた。
「誰も悪気があったわけではない。言葉が足りなかったり、言い方が悪かったりなどで、思いもしないことに発展する場合がある。今回は誰も悪くない。ぶつかることだってある。ただ、その後放置せず今みたいに想いを伝えればいい。想いと言うのは言葉にしないと伝わらないからな。何事も」
その言葉を、それぞれが理解し皆の顔を見回す。
「殿下。ありがとうございます」
「礼を言われるほどではない」 
「フフ。そうですか」
重かった空気が晴れ、穏やかな空気が流れ始める。
そして、この話題は終わりとでも言うように違う話題が出てくる。
皆、それぞれの言葉を言い表情も明るくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

強面騎士団長と転生皇女の物語

狭山雪菜
恋愛
コイタ王国第一皇女のサーシャは、とある理由から未婚のまま城に住んでいた。 成人式もとっくに済ませた20歳になると、国王陛下から縁談を結ばれて1年後に結婚式を挙げた。 その相手は、コイタ王国の騎士団団長だったのだがーー この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...