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夜が明けて

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 オルシウスとルカが屋敷へ戻った頃には夜明けを迎え、東の空が明るくなっていた。

 腕の中で小さく寝息をたてるルカを起こさぬよう、オルシウスはバルコニーに降り立つ。

 寝室に入ると壊れ物でも扱うようにルカをベッドへ横たわらせた。

 その安らかな寝顔を眺め、ふっくらとした頬に指をはしらせる。

「ルカ、誰にもお前を傷つけさせない。俺が守る。だから安心して、俺のそばにいてくれ」

 部屋を出たところでアニーと鉢合わせた。

「おはようございます、陛下……」

「おはよう、アニー。ルカは夜通し俺が付き合わせてさっき眠ったばかりだ。起こさないでやってくれ」

「かしこまりました。では、お食事はいかがいたしますか?」

「あいつがもし起きたら一緒に昼を取る。起きなければ、俺一人で」

「かしこまりました」

 アニーと別れて自分の部屋に向かうと、部屋の前でギルヴァが待っていた。

「ルカ様は何と仰せで御座いました?」

「黒き竜のことを全て承知した上で、俺とつがいになると言ってくれた」

「おめでとうございます、陛下」

「……ああ。俺は少し休む。昼に起こしてくれ」

「かしこまりました」

 オルシウスは寝室に入ると服を乱暴に脱ぎ捨て、ベッドにその身を横たえた。

 竜帝候補たちを半死半生の目に遭わせた話をしなかったのは、ルカに、オルシウスの中にいる残忍なもう一人の自分の存在を知って欲しくなかったからだ。

 知ればきっと、つがいになろうという気など失せてしまっただろう。

 あのことを後悔したことは一度もない。

 それでも。

 ――私も母のような女性になりたい、このネックレスに相応しい女性でありたい。

‘俺の為に着飾り、亡き母のようになりたいとひっそりと笑うルカに、俺を恐れて欲しくない……’

 だから話せなかった。

 目を閉じると、意識が眠りに落ちていく。

「……カルロ」

 意識を完全に手放す刹那、信頼したかつての仲間の名をひっそりと呟いた。
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