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序章(4)
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源秋光《みなもと ときみつ》は悲鳴を聞きつけ、繁みより顔を出し、笠をそっと持ち上げて周囲を窺う。その手には滋藤《しげどう》の弓が握られていた。
「……殿。野盗は全て射殺したかと」
背後より嗄れた声が報告する。
従者の梶原勝久(かじわら まさひさ)だ。
髪はすでに白髪で歳の頃はすでに老齢ではあるが、眼光は鋭く、動きは矍鑠としていた。
「ああ」
秋光は猛禽類のように鋭い眼差しを四方へ向ける。
狩りの最中だったのを野盗が誰かを襲っていることに気付き、駆けつけてきたのだ。
気配を探りながら、ゆっくりと繁みから出た。
秋光は藤色の狩衣姿で、衣服ごしにも隆々とした体躯だというのが分かる偉丈夫だ。
腰に吊った刀は、銀で蝶の飾りを付けられたしっかりとした拵えである。
迷うこと無く血の海に足を踏み出す。
野盗は粗末な衣服ですぐに見分けられる。
とそんな中にありながら、明らかに出で立ちの異なる少年がいることに気付く。
その衣服は血を吸って赤黒く汚れてはいるが、明らかに野盗とは姿形の違う少年が俯せに倒れている。
秋光は駆け寄り、青年に声をかける。
「おいっ、お前、大丈夫か」
返事をしない男の胸に耳を当てた。かなり鼓動は早いが生きている。
「爺。時雨黒(しぐれぐろ)を連れて来いっ」
「……殿。野盗は全て射殺したかと」
背後より嗄れた声が報告する。
従者の梶原勝久(かじわら まさひさ)だ。
髪はすでに白髪で歳の頃はすでに老齢ではあるが、眼光は鋭く、動きは矍鑠としていた。
「ああ」
秋光は猛禽類のように鋭い眼差しを四方へ向ける。
狩りの最中だったのを野盗が誰かを襲っていることに気付き、駆けつけてきたのだ。
気配を探りながら、ゆっくりと繁みから出た。
秋光は藤色の狩衣姿で、衣服ごしにも隆々とした体躯だというのが分かる偉丈夫だ。
腰に吊った刀は、銀で蝶の飾りを付けられたしっかりとした拵えである。
迷うこと無く血の海に足を踏み出す。
野盗は粗末な衣服ですぐに見分けられる。
とそんな中にありながら、明らかに出で立ちの異なる少年がいることに気付く。
その衣服は血を吸って赤黒く汚れてはいるが、明らかに野盗とは姿形の違う少年が俯せに倒れている。
秋光は駆け寄り、青年に声をかける。
「おいっ、お前、大丈夫か」
返事をしない男の胸に耳を当てた。かなり鼓動は早いが生きている。
「爺。時雨黒(しぐれぐろ)を連れて来いっ」
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