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第三章(5)※
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それから一時間ほどしてパーティーはお開きになった。
――やっぱり庶民にお金持ちのパーティーは辛い……。
由季は一刻も早くドレスを脱ぎ捨て、部屋着に着替えてソファーにだらしなく寝転がりたいと思いつつ、エレベーターでロビーに下りる。
しかし彰が向かったのは正面玄関ではなく、フロント。
そこで幾つかのやりとりをすると、何故かカードキーを受け取ったのだ。
「彰? な、何してるの?」
「疲れてるみたいだからさ。ネットで調べたら部屋が空いてたから取ったんだ。行こう」
「そんな――」
駄目、と言おうとしたが、まるでそう言うことはお見通しとばかりに「俺も疲れてるんだよ。スイートも取りたくて取ったんじゃないからな? 他の部屋がだいたい埋まってて、しょうがなかったんだ」と機先を制せられてしまう。
「それとも急ぎの仕事があるか? それなら、キャンセルして送るけど?」
「それは……大丈夫……って、スイート!? こんな流れで!?
「そこしか空いてなかったんだ」
――いくら週末だからってそんなことある……?
彰はさっさと歩き出す。
高層階用のエレベーターに乗り、目的のフロアに到着する。
由季は彰に手を引かれるがまま部屋へ連れて行かれる。
広々としたリビングに、壁にはめこまれた大型の液晶テレビ。
テーブルにはウェルカムフルーツ。残念ながら、今は特別食べたいと思えないのが、もったいない。
――もったいないとか思うところ、いかにも庶民ね。
バーカウンターが置かれ、大きく取られた窓からは、眠ることを知らない東京の夜景を一望できた。ビルの明かりだけではない。車のテールランプが道路を埋める。
地上に行けば厄介な渋滞かもしれないが、ここから見れば、たちまち最先端の首都を彩る美しい装飾に早変わり。
――彰と再会してから浮き世離れした世界に連れていってもらえるのは嬉しいけど、普通の生活に戻れるのかな?
そんなことを心配してしまう。
「風呂、先に入れよ」
「彰からで」
「さっさとそのドレス脱いで楽になりたいんじゃないのか?」
「……ば、ばれてた?」
「顔に出てた」
「嘘っ」
「ほんと。ほら、早く行けよ」
「う、うん。それじゃあ、お先に……」
バスルームはユニットバスではなく、トイレは別。
ドレスを脱ぎ、かけ湯をしてお湯に浸かる。現金なものでお風呂から上がったころには、疲れがどこかに飛んでいった。きっとスイートルームにいるという事実に、高揚感が溢れてしまっているのだろう。
三十分ほどのお風呂を楽しんでから上がり、バスローブをまとってバスルームから出た。
「彰、出たよ」
「おう」
由季はミネラルウォーターを飲みながら、初めてのスイートルームを歩き回る。部屋の奥にあるベッドルームも広く、そこにもソファーセットがあり、ベッドはツイン。
リラックス気分でベッドに思いっきりダイブする。
全身を支えてくれるスプリングの感触、そしてメイキングされたシーツの触り心地にウットリした。
と、しばらくすると足音がベッドルームに近づいてくる。
寝転んでいた由季は上半身を起こす。
「早かったね……って、彰!?」
由季は思わず顔を背けてしまう。
「ん?」
彰はバスタオルを腰に巻いただけで、まるで見せびらかすようにしなやかな筋肉で覆われた逆三角形の体格を露わにしていた。
「なんだよ。体ならちゃんと洗ったぞ」
「じゃなくって、バスローブあったでしょ? どうして……」
「……いらないだろ。どうせ脱ぐ」
彰は由季の隣に座ると、手を握ってくる。指を絡めあう恋人つなぎ。
「あ、彰……」
うっすらと濡れた彰の髪から、ミント系のさわやかな香りがした。
「まさかここまできて、ゆっくり寝かせると思ったか?」
挑発的な眼差しを向けられながら指先に力をいれてぎゅっと握られてしまうと、由季の全身にビリッと電流にも似た痺れがはしりぬける。
切れ長の瞳でじっと見つめられ、指先にキスをされる。薄い唇の柔らかさに、びくっとしてしまう。
「由季」
彰は手の甲、手首、二の腕、肩口、と少しずつ口づけする場所を、変えていった。
「あ……」
首筋に口づけされる。皮膚の薄い敏感な場所へのキスに、鼓動が暴れてしまう。
そして上目遣いの視線を意識した由季は、瞼をおろす。
下唇を甘噛みするように、唇が密着してきた。自分の唇が潰れる触感と、湿った息吹を意識してしまう。
柔らかく、啄むような口づけにもかかわらず、全身から力が抜け、気付けば自然と口を開いていた。
ぬるりと舌がすべりこみ、由季の舌を捕らえる。繊細な味蕾を擦り合わせるようなソフトな触れあいから、まるで互いを貪りあうようなキスへと変化していく。
小刻みな息遣いまじりに、由季も彼のもたらす甘美に応えようと舌を動かす。
大きく硬い手に肩を押され、仰向けに押し倒された。その拍子に口づけがほどけ、二人の唇をつなぐように糸が伸びた。
由季は頬を染め、見下ろしてくる彰の怜悧な光の浮いた眼差しを見つめかえす。
照明はいつの間にか、淡いものへと変わっていた。
互いの体の白さが淡い照明を浴びて、赤みを帯びながら闇の中に浮かび上がる。
バスローブのヒモがほどかれ、胸元が露わにされる。
由季の呼吸に合わせ、ブラに包まれた胸が小さく震えていた。
彰の青い血管が浮き出る腕が背中にもぐりこんでホックを外せば、ブラが剥ぎ取られる。
彼の見せる乱暴さに、由季はゾクゾクしたものを感じてしまう。
彼の目に浮いた鋭い光が、たまらなく愛おしい。
彰が、顔を胸元へ近づかせる。
熱い吐息がデコルテから胸の裾野へと少しずつ当たる場所を変え、頂きへあがっていく。
「あ……」
敏感な頂点に息がかかった直後、口づけを落とされた。
ヒリッとした刺激に、鼻にかかった声がこぼれてしまう。
舌が縁取るようになぞり、乳頭を甘噛みする。舌先で転がされ、温かな口内で包み込み、歯を優しくたててくる。
「あ……ん……」
「ここ、膨らんできたな」
「……そんなの、い、言う必要ないでしょ」
「悪い。だけど、感じてくれているのが嬉しいからさ」
もう片方の胸を、手が包み込む。柔らかな輪郭を圧迫するように指を食い込ませ、捏ねられた。
指と指の間に頂きを挟まれ、優しく刺激されたかと思えば、次の瞬間にはぎゅっと強めに圧迫される。
「あっ」
意図せず、声が漏れ出てしまう。
敏感になっている場所を執拗に責められ、由季は下唇を噛む。それでも漏れ出る声が恥ずかしくて、右手の人差し指を噛んだ。
「我慢するなよ」
「……む、無理。恥ずかしい」
「誰も聞いてないよ」
「あ、彰が聞いてるでしょ……」
乱れた息遣いや声は普段の自分とは違いすぎて、聞かれることに抵抗があったのだ。
それに、由季が思わずこぼしてしまう声を耳にすると、彰がどこか勝ち誇った顔をするのも少し悔しかった。まるで彰の手の平で転がされているようで。
だから、少しでも抗いたいという気持ちが芽生えたのだ。
「由季の声が聞きたいんだよ」
彰は緩急をつけ、乳頭を刺激する。彼に触れられ、舐められる部分が蕩けていくのをとめられず、息が上がってしまう。
体が火照り、風呂に入ったというのに、柔肌がたちまち汗ばんでいく。
胸への執拗に繰り返される刺激に、下腹が疼き、暗がりの中で内股気味になって擦り合わせてしまう。
閉じ合わせた太腿を開かせるように、彰の左膝が股の間に押し込まれた。
「な、なに……」
慌ててしまうが、彼の力には敵わず、呆気なく股を広げさせられてしまう。
そして下着を押し上げるように、膝が密着させられた。
「ん……」
熱く疼いた場所を下着ごしにも膝で押され、思わず声がもれてしまう。
割れ目があたっている部分を、グリグリと何度も擦られる。さらにジクジクと疼く乳首まで一緒に刺激される。
――だ、だめなのに、声を我慢できない……。
「彰……もう、膝、やめて……」
「駄目。だって、由季、これ、すごく気に入ってくれてるだろ。すごく熱くなってるのが分かる。膝が火傷しそう」
「し、下着、汚れちゃう……」
「新しいのを買うよ」
逃げ道を塞がれる。頭がうまく回らない。このままどこまで溶けていきそうだ。でも自然と不安はなかったのは、相手が彰だからか。
彰が両手を伸ばし、シーツに爪を立てている由季の手を取ると、指を絡めてきた。
――安心する。
胸に温かなものが広がり、彰に身を任せてしまう。
さっきよりも激しく、音をたてて彰が頂きを刺激する。
「彰……彰ぁ……もう……私、おかしく……」
「このままイけよ」
下着を押し上げる膝からの刺激も、由季の理性を削り取っていく。
「……い、イク……ああ……はぁ……あっ……はぁっ……」
ぢゅわっと何かがこぼれるような体感と同時に、由季は昇り詰め、頭がぼうっとなってしまった。しかし体が休まることはない。いや、休ませまいと、膝がぐっとさらに押し出され、一度達したことで敏感になっている場所がジンッと甘く疼かされてしまう。
「まだ休ませない」
「……ひどい」
「すごくいやらしい顔をしといて、ひどいはないだろ」
彰は酷薄な笑みを見せた。
※
――由季のやつ、なんていやらしい顔をするんだよ。
本当は膝を使ってまで責めようとまで思わなかったが、彼女のみせた淫猥な表情につい、もっと責めたいと思わずにはいられなかった。
しかしどれだけ淫らな表情をしていても、失望したりはしない。
なぜなら、その顔があまりにキレイで、魅力的だからだ。
――俺、こんなに変態な気質があったのか?
自分のことながら驚きを禁じ得なかった。まさかこの歳になって、まだ知らない自分に出会えるなんて。
彰は下着に手をかけると、脱がしていく。
由季も腰をもたげて手伝ってくれる。体に張り付いた下着が気持ち悪いのだろう。
露わになったそこはひくひくと震え、とろりとした蜜を滲ませる。
透明な汁がお尻の谷間を伝うように流れていた。
「……すごくいやらしい」
彰は口を寄せ、雫を舌ですくうようにして、秘裂を刺激する。
「ああっ」
由季が全身はびくんっと戦慄かせて反応する。
舌のお腹を大きくつかいながら、下から上へと割れ目をゆっくりとしたテンポで刺激していく。蜜はすくってもすくっても、あとからぢゅわっと滲んでとまらない。
「彰、だ、だめ……やめてっ」
言葉とは裏腹に、その声の響きに嫌悪感は嘘のように感じられない。むしろ言外に、もっとして欲しいとねだられているようにも錯覚する。
――こう思うのは、男の身勝手な妄想か?
彰は微笑しながら、右手の中指を蕩ける狭隘へ挿入していく。
柔らかな場所は指が飲み込んでくれる。温かく、柔らかな場所が指先を包み込むように締め付けてきた。
「はあ、あああ、んん、ぁあううっ」
奧に向かって少し指を挿入するだけでも、由季は大きなリアクションをした。
そのたびに指に絡みつく汁の量が増えていく。指を前後に動かせば、白く泡立った蜜がこぷっとこぼれでていく。指で掻き出し、ねぶる。
「もう、それくらいで……あああっ……許して……」
――そんな可愛いリアクションされたら、こっちはますます燃えるんだって!
由季が無意識のうちに取る悩ましい姿に、ますます激しく欲情をかきたてられた。硬くなった股間が痛くてたまらない。
「……い、くっ……ンンン!」
由季は再び果てた。指が根元まで食いちぎられてしまいそうなくらい、きつい締め付けが指を襲う。
「あぁ……はぁ……ん、ん……ぅぅぅん……」
由季は目尻に涙を溜め、懸命に呼吸をしようとして、小さく咽せていた。
「……もう許して。本当におかしくなっちゃうから……」
「まだおかしくなるのは早いだろ」
腰に巻いていたバスタオルを脱ぐと、痛いくらい張り詰めたものを開放する。
彰の部屋ではじめて彼女と一つになった時もそうだが、本当に由季と一緒にいると、頭がおかしくなりそうなくらい昂奮してしまう。
もっと冷静に、少しでもこの時間を一分一秒でも長く楽しんでいたいと思っているはずなのに、いざ由季と一緒にいるとそれができなくなる。大人の余裕なんて砂上の楼閣も同然だ。まるで、自分の欲望ばかりを優先したがる馬鹿な子どもだった時のことを思い出さずにはいられなくなる。
彰は避妊具をつけると、先端部分をぐぢょぐぢょにぬかるんだ秘処へと擦りつけた。
「んん……」
彰はぐっと腰を押し込み、ずっ、ずっ、と股間を彼女の秘処へと挿入していく。
「ああっ……はあああ……」
由季の狭隘を広げながら、最奥を突き上げた。
絡みついてくる柔襞がうねり、締め付けられる。
彰は、由季の腿の裏に手をかけ、腰を前後に動かす。
潤んだ中を抉るように何度も何度も腰を打ち付けた。そのたびに密着している柔らかな壁がひくひくと引き攣るのが伝わる。
「あ……ああ……彰……ん……」
彰に快感に染まっている表情を見られたくないかのように、由季は顔を背ける。
奧へ向かう時よりも、腰を引いた時のほうが擦れる際の痺れるような快感をより感じることができた。
腰のぶつかりあう、パンパンという音が寝室に響く。
由季とはもう何度となく交わっているはずなのに飽きるどころか、彼女を狂わせるほど気持ち良くしたいという思いが溢れてしまう。
「う……く……」
肉の槍を何度も往復させた。由季の中に自分という存在を焼き付けるくらい念入りに。
浅い場所だけでなく、深いところまで余さず、ゴリゴリと抉った。
由季の体に、彰の汗が滴る。それくらい、今、彰と由季の体は密着している。
――もっと深いところまで、由季を知りたいっ。
こみあげる欲望に忠実に従う彰は、由季の下半身を軽く持ち上げ、挿入している肉槍を垂直に突き刺すような体位へ変化させる。
「ひゃぁん!」
擦れ、穿たれる場所が変化したせいか、由季は糸を引くような嗚咽を漏らす。
奥を突くというより、叩きつけるというニュアンスが近い抜き差しを繰り返した。
――当たる場所がぜんぜん違って、こっちも……かなりヤバイ……!
もっと由季の蜜壺の居心地が良くなる。肉茎で掻き出す愛蜜は白濁して糸をひく。
「あ……彰!」
「由季、ぐ……」
濡れそぼった蜜壺が精をねだるように収斂する。終わりたくないと意地を張るように奥歯を噛みしめ、終わりの時を一秒でも先延ばしにしようとしたが、そんなことは愛おしい人の恍惚とした表情の前では無駄な努力だった。
腰が戦慄き、猛烈な欲求に肉杭が戦慄く。
「イク……ああぁぁ……私、だめになる……!」
「ぐぁ……あ……出る……っ」
伸縮を繰り返す由季に搾り取られ、ゴムごしに精を注ぐ。それでも腰をすぐにはとめられず、ひくひくと痙攣する柔らかな中を味わうように小刻みに動かし続ける。
そうすることで、由季がどれほど激しく絶頂してくれたかを体感できる気がした。
由季は大きく呼吸を繰り返しながら、二人してベッドに転んだ。
湯気がでそうなくらい全身が火照っている。
「風呂に入ったばっかりだってのに、もう汗だくだな」
「……そもそも汗だくになる気満々だったくせに」
「由季が俺をその気にさせるからだ」
彰は恥ずかしげもなく囁き、肌に滲む汗を舐める。
「ンッ! やめて。汚い……」
「汚くない。な、風呂に一緒に入るか?」
「は、入らない……。そんな恥ずかしい……」
「なら離さない。風呂なら明日の朝、入れよ。今はこのままお前を抱いていたい」
「……うん」
空調のきいた室内。
熱すぎる温もりを共有する二人はどちらも幸せな笑みを浮かべていた。
――やっぱり庶民にお金持ちのパーティーは辛い……。
由季は一刻も早くドレスを脱ぎ捨て、部屋着に着替えてソファーにだらしなく寝転がりたいと思いつつ、エレベーターでロビーに下りる。
しかし彰が向かったのは正面玄関ではなく、フロント。
そこで幾つかのやりとりをすると、何故かカードキーを受け取ったのだ。
「彰? な、何してるの?」
「疲れてるみたいだからさ。ネットで調べたら部屋が空いてたから取ったんだ。行こう」
「そんな――」
駄目、と言おうとしたが、まるでそう言うことはお見通しとばかりに「俺も疲れてるんだよ。スイートも取りたくて取ったんじゃないからな? 他の部屋がだいたい埋まってて、しょうがなかったんだ」と機先を制せられてしまう。
「それとも急ぎの仕事があるか? それなら、キャンセルして送るけど?」
「それは……大丈夫……って、スイート!? こんな流れで!?
「そこしか空いてなかったんだ」
――いくら週末だからってそんなことある……?
彰はさっさと歩き出す。
高層階用のエレベーターに乗り、目的のフロアに到着する。
由季は彰に手を引かれるがまま部屋へ連れて行かれる。
広々としたリビングに、壁にはめこまれた大型の液晶テレビ。
テーブルにはウェルカムフルーツ。残念ながら、今は特別食べたいと思えないのが、もったいない。
――もったいないとか思うところ、いかにも庶民ね。
バーカウンターが置かれ、大きく取られた窓からは、眠ることを知らない東京の夜景を一望できた。ビルの明かりだけではない。車のテールランプが道路を埋める。
地上に行けば厄介な渋滞かもしれないが、ここから見れば、たちまち最先端の首都を彩る美しい装飾に早変わり。
――彰と再会してから浮き世離れした世界に連れていってもらえるのは嬉しいけど、普通の生活に戻れるのかな?
そんなことを心配してしまう。
「風呂、先に入れよ」
「彰からで」
「さっさとそのドレス脱いで楽になりたいんじゃないのか?」
「……ば、ばれてた?」
「顔に出てた」
「嘘っ」
「ほんと。ほら、早く行けよ」
「う、うん。それじゃあ、お先に……」
バスルームはユニットバスではなく、トイレは別。
ドレスを脱ぎ、かけ湯をしてお湯に浸かる。現金なものでお風呂から上がったころには、疲れがどこかに飛んでいった。きっとスイートルームにいるという事実に、高揚感が溢れてしまっているのだろう。
三十分ほどのお風呂を楽しんでから上がり、バスローブをまとってバスルームから出た。
「彰、出たよ」
「おう」
由季はミネラルウォーターを飲みながら、初めてのスイートルームを歩き回る。部屋の奥にあるベッドルームも広く、そこにもソファーセットがあり、ベッドはツイン。
リラックス気分でベッドに思いっきりダイブする。
全身を支えてくれるスプリングの感触、そしてメイキングされたシーツの触り心地にウットリした。
と、しばらくすると足音がベッドルームに近づいてくる。
寝転んでいた由季は上半身を起こす。
「早かったね……って、彰!?」
由季は思わず顔を背けてしまう。
「ん?」
彰はバスタオルを腰に巻いただけで、まるで見せびらかすようにしなやかな筋肉で覆われた逆三角形の体格を露わにしていた。
「なんだよ。体ならちゃんと洗ったぞ」
「じゃなくって、バスローブあったでしょ? どうして……」
「……いらないだろ。どうせ脱ぐ」
彰は由季の隣に座ると、手を握ってくる。指を絡めあう恋人つなぎ。
「あ、彰……」
うっすらと濡れた彰の髪から、ミント系のさわやかな香りがした。
「まさかここまできて、ゆっくり寝かせると思ったか?」
挑発的な眼差しを向けられながら指先に力をいれてぎゅっと握られてしまうと、由季の全身にビリッと電流にも似た痺れがはしりぬける。
切れ長の瞳でじっと見つめられ、指先にキスをされる。薄い唇の柔らかさに、びくっとしてしまう。
「由季」
彰は手の甲、手首、二の腕、肩口、と少しずつ口づけする場所を、変えていった。
「あ……」
首筋に口づけされる。皮膚の薄い敏感な場所へのキスに、鼓動が暴れてしまう。
そして上目遣いの視線を意識した由季は、瞼をおろす。
下唇を甘噛みするように、唇が密着してきた。自分の唇が潰れる触感と、湿った息吹を意識してしまう。
柔らかく、啄むような口づけにもかかわらず、全身から力が抜け、気付けば自然と口を開いていた。
ぬるりと舌がすべりこみ、由季の舌を捕らえる。繊細な味蕾を擦り合わせるようなソフトな触れあいから、まるで互いを貪りあうようなキスへと変化していく。
小刻みな息遣いまじりに、由季も彼のもたらす甘美に応えようと舌を動かす。
大きく硬い手に肩を押され、仰向けに押し倒された。その拍子に口づけがほどけ、二人の唇をつなぐように糸が伸びた。
由季は頬を染め、見下ろしてくる彰の怜悧な光の浮いた眼差しを見つめかえす。
照明はいつの間にか、淡いものへと変わっていた。
互いの体の白さが淡い照明を浴びて、赤みを帯びながら闇の中に浮かび上がる。
バスローブのヒモがほどかれ、胸元が露わにされる。
由季の呼吸に合わせ、ブラに包まれた胸が小さく震えていた。
彰の青い血管が浮き出る腕が背中にもぐりこんでホックを外せば、ブラが剥ぎ取られる。
彼の見せる乱暴さに、由季はゾクゾクしたものを感じてしまう。
彼の目に浮いた鋭い光が、たまらなく愛おしい。
彰が、顔を胸元へ近づかせる。
熱い吐息がデコルテから胸の裾野へと少しずつ当たる場所を変え、頂きへあがっていく。
「あ……」
敏感な頂点に息がかかった直後、口づけを落とされた。
ヒリッとした刺激に、鼻にかかった声がこぼれてしまう。
舌が縁取るようになぞり、乳頭を甘噛みする。舌先で転がされ、温かな口内で包み込み、歯を優しくたててくる。
「あ……ん……」
「ここ、膨らんできたな」
「……そんなの、い、言う必要ないでしょ」
「悪い。だけど、感じてくれているのが嬉しいからさ」
もう片方の胸を、手が包み込む。柔らかな輪郭を圧迫するように指を食い込ませ、捏ねられた。
指と指の間に頂きを挟まれ、優しく刺激されたかと思えば、次の瞬間にはぎゅっと強めに圧迫される。
「あっ」
意図せず、声が漏れ出てしまう。
敏感になっている場所を執拗に責められ、由季は下唇を噛む。それでも漏れ出る声が恥ずかしくて、右手の人差し指を噛んだ。
「我慢するなよ」
「……む、無理。恥ずかしい」
「誰も聞いてないよ」
「あ、彰が聞いてるでしょ……」
乱れた息遣いや声は普段の自分とは違いすぎて、聞かれることに抵抗があったのだ。
それに、由季が思わずこぼしてしまう声を耳にすると、彰がどこか勝ち誇った顔をするのも少し悔しかった。まるで彰の手の平で転がされているようで。
だから、少しでも抗いたいという気持ちが芽生えたのだ。
「由季の声が聞きたいんだよ」
彰は緩急をつけ、乳頭を刺激する。彼に触れられ、舐められる部分が蕩けていくのをとめられず、息が上がってしまう。
体が火照り、風呂に入ったというのに、柔肌がたちまち汗ばんでいく。
胸への執拗に繰り返される刺激に、下腹が疼き、暗がりの中で内股気味になって擦り合わせてしまう。
閉じ合わせた太腿を開かせるように、彰の左膝が股の間に押し込まれた。
「な、なに……」
慌ててしまうが、彼の力には敵わず、呆気なく股を広げさせられてしまう。
そして下着を押し上げるように、膝が密着させられた。
「ん……」
熱く疼いた場所を下着ごしにも膝で押され、思わず声がもれてしまう。
割れ目があたっている部分を、グリグリと何度も擦られる。さらにジクジクと疼く乳首まで一緒に刺激される。
――だ、だめなのに、声を我慢できない……。
「彰……もう、膝、やめて……」
「駄目。だって、由季、これ、すごく気に入ってくれてるだろ。すごく熱くなってるのが分かる。膝が火傷しそう」
「し、下着、汚れちゃう……」
「新しいのを買うよ」
逃げ道を塞がれる。頭がうまく回らない。このままどこまで溶けていきそうだ。でも自然と不安はなかったのは、相手が彰だからか。
彰が両手を伸ばし、シーツに爪を立てている由季の手を取ると、指を絡めてきた。
――安心する。
胸に温かなものが広がり、彰に身を任せてしまう。
さっきよりも激しく、音をたてて彰が頂きを刺激する。
「彰……彰ぁ……もう……私、おかしく……」
「このままイけよ」
下着を押し上げる膝からの刺激も、由季の理性を削り取っていく。
「……い、イク……ああ……はぁ……あっ……はぁっ……」
ぢゅわっと何かがこぼれるような体感と同時に、由季は昇り詰め、頭がぼうっとなってしまった。しかし体が休まることはない。いや、休ませまいと、膝がぐっとさらに押し出され、一度達したことで敏感になっている場所がジンッと甘く疼かされてしまう。
「まだ休ませない」
「……ひどい」
「すごくいやらしい顔をしといて、ひどいはないだろ」
彰は酷薄な笑みを見せた。
※
――由季のやつ、なんていやらしい顔をするんだよ。
本当は膝を使ってまで責めようとまで思わなかったが、彼女のみせた淫猥な表情につい、もっと責めたいと思わずにはいられなかった。
しかしどれだけ淫らな表情をしていても、失望したりはしない。
なぜなら、その顔があまりにキレイで、魅力的だからだ。
――俺、こんなに変態な気質があったのか?
自分のことながら驚きを禁じ得なかった。まさかこの歳になって、まだ知らない自分に出会えるなんて。
彰は下着に手をかけると、脱がしていく。
由季も腰をもたげて手伝ってくれる。体に張り付いた下着が気持ち悪いのだろう。
露わになったそこはひくひくと震え、とろりとした蜜を滲ませる。
透明な汁がお尻の谷間を伝うように流れていた。
「……すごくいやらしい」
彰は口を寄せ、雫を舌ですくうようにして、秘裂を刺激する。
「ああっ」
由季が全身はびくんっと戦慄かせて反応する。
舌のお腹を大きくつかいながら、下から上へと割れ目をゆっくりとしたテンポで刺激していく。蜜はすくってもすくっても、あとからぢゅわっと滲んでとまらない。
「彰、だ、だめ……やめてっ」
言葉とは裏腹に、その声の響きに嫌悪感は嘘のように感じられない。むしろ言外に、もっとして欲しいとねだられているようにも錯覚する。
――こう思うのは、男の身勝手な妄想か?
彰は微笑しながら、右手の中指を蕩ける狭隘へ挿入していく。
柔らかな場所は指が飲み込んでくれる。温かく、柔らかな場所が指先を包み込むように締め付けてきた。
「はあ、あああ、んん、ぁあううっ」
奧に向かって少し指を挿入するだけでも、由季は大きなリアクションをした。
そのたびに指に絡みつく汁の量が増えていく。指を前後に動かせば、白く泡立った蜜がこぷっとこぼれでていく。指で掻き出し、ねぶる。
「もう、それくらいで……あああっ……許して……」
――そんな可愛いリアクションされたら、こっちはますます燃えるんだって!
由季が無意識のうちに取る悩ましい姿に、ますます激しく欲情をかきたてられた。硬くなった股間が痛くてたまらない。
「……い、くっ……ンンン!」
由季は再び果てた。指が根元まで食いちぎられてしまいそうなくらい、きつい締め付けが指を襲う。
「あぁ……はぁ……ん、ん……ぅぅぅん……」
由季は目尻に涙を溜め、懸命に呼吸をしようとして、小さく咽せていた。
「……もう許して。本当におかしくなっちゃうから……」
「まだおかしくなるのは早いだろ」
腰に巻いていたバスタオルを脱ぐと、痛いくらい張り詰めたものを開放する。
彰の部屋ではじめて彼女と一つになった時もそうだが、本当に由季と一緒にいると、頭がおかしくなりそうなくらい昂奮してしまう。
もっと冷静に、少しでもこの時間を一分一秒でも長く楽しんでいたいと思っているはずなのに、いざ由季と一緒にいるとそれができなくなる。大人の余裕なんて砂上の楼閣も同然だ。まるで、自分の欲望ばかりを優先したがる馬鹿な子どもだった時のことを思い出さずにはいられなくなる。
彰は避妊具をつけると、先端部分をぐぢょぐぢょにぬかるんだ秘処へと擦りつけた。
「んん……」
彰はぐっと腰を押し込み、ずっ、ずっ、と股間を彼女の秘処へと挿入していく。
「ああっ……はあああ……」
由季の狭隘を広げながら、最奥を突き上げた。
絡みついてくる柔襞がうねり、締め付けられる。
彰は、由季の腿の裏に手をかけ、腰を前後に動かす。
潤んだ中を抉るように何度も何度も腰を打ち付けた。そのたびに密着している柔らかな壁がひくひくと引き攣るのが伝わる。
「あ……ああ……彰……ん……」
彰に快感に染まっている表情を見られたくないかのように、由季は顔を背ける。
奧へ向かう時よりも、腰を引いた時のほうが擦れる際の痺れるような快感をより感じることができた。
腰のぶつかりあう、パンパンという音が寝室に響く。
由季とはもう何度となく交わっているはずなのに飽きるどころか、彼女を狂わせるほど気持ち良くしたいという思いが溢れてしまう。
「う……く……」
肉の槍を何度も往復させた。由季の中に自分という存在を焼き付けるくらい念入りに。
浅い場所だけでなく、深いところまで余さず、ゴリゴリと抉った。
由季の体に、彰の汗が滴る。それくらい、今、彰と由季の体は密着している。
――もっと深いところまで、由季を知りたいっ。
こみあげる欲望に忠実に従う彰は、由季の下半身を軽く持ち上げ、挿入している肉槍を垂直に突き刺すような体位へ変化させる。
「ひゃぁん!」
擦れ、穿たれる場所が変化したせいか、由季は糸を引くような嗚咽を漏らす。
奥を突くというより、叩きつけるというニュアンスが近い抜き差しを繰り返した。
――当たる場所がぜんぜん違って、こっちも……かなりヤバイ……!
もっと由季の蜜壺の居心地が良くなる。肉茎で掻き出す愛蜜は白濁して糸をひく。
「あ……彰!」
「由季、ぐ……」
濡れそぼった蜜壺が精をねだるように収斂する。終わりたくないと意地を張るように奥歯を噛みしめ、終わりの時を一秒でも先延ばしにしようとしたが、そんなことは愛おしい人の恍惚とした表情の前では無駄な努力だった。
腰が戦慄き、猛烈な欲求に肉杭が戦慄く。
「イク……ああぁぁ……私、だめになる……!」
「ぐぁ……あ……出る……っ」
伸縮を繰り返す由季に搾り取られ、ゴムごしに精を注ぐ。それでも腰をすぐにはとめられず、ひくひくと痙攣する柔らかな中を味わうように小刻みに動かし続ける。
そうすることで、由季がどれほど激しく絶頂してくれたかを体感できる気がした。
由季は大きく呼吸を繰り返しながら、二人してベッドに転んだ。
湯気がでそうなくらい全身が火照っている。
「風呂に入ったばっかりだってのに、もう汗だくだな」
「……そもそも汗だくになる気満々だったくせに」
「由季が俺をその気にさせるからだ」
彰は恥ずかしげもなく囁き、肌に滲む汗を舐める。
「ンッ! やめて。汚い……」
「汚くない。な、風呂に一緒に入るか?」
「は、入らない……。そんな恥ずかしい……」
「なら離さない。風呂なら明日の朝、入れよ。今はこのままお前を抱いていたい」
「……うん」
空調のきいた室内。
熱すぎる温もりを共有する二人はどちらも幸せな笑みを浮かべていた。
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