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第二章(3)※
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「ごめーん……」
タクシーの中で、由季は呻くように独りごちた。
顔の火照りを冷まそうと、顔に濡らしたハンカチをのせている。
「分かったから、黙っとけ。話すのも辛いだろ」
「本当にごめん……一度ならず二度までも」
――お酒の失敗とか、良い歳の女のすることじゃない……。
どうしてこんな醜態をさらしてしまうのかと由季は首をひねる。
酒に飲まれた経験もなく、極端に酒が弱いわけでもないはずなのに、この体たらく。
――彰と一緒にいて緊張してたのかな。
だからこそ無意識のうちに感じていた緊張を紛らわせたくて、杯を重ねてしまったのだろうか。
「ついたぞ」
「うん、ゴメン……。このお詫びは絶対にさせてもらうから。美味しいスイーツのお店リサーチしとくからぁ……」
「ありがとな。まあそれはそれとして下りろ」
「う、うん」
タクシーを降りると、熱気むんむんの空気が顔を撫でる。しかしそれ以上に火照った肌にはそんな風でも気持ちいい。
目にのせていたブランドもののハンカチを返そうとするのだが、腕をぐいっと引っ張られ、少しつんのめるように歩かされる。
――歩かされるって、誰に?
由季は一人で下りたはず。
「え? 彰、タクシー行っちゃったけど」
ハンカチを外して広がった視界の中に、彰がいる。
「ああ、行っちゃったな」
彰は構わず歩き出し、見知らぬオシャレロビーを抜けていく。
「待って。ここ、どこ? 私のマンションじゃないんだけど」
「ああ、ここは俺のマンション」
「え、ど、どうして……」
「そんなに酔ったまま一人で帰らせるわけにもいかないだろ」
余計な口を挟ませぬ強引さで彼はエレベーターに乗り込み、目的のフロアでおりる。
静まり返った内廊下を進み、『SHIBA』と筆記体で書かれた洒落た表札の扉の前まで来ると、カードキーで扉を解錠する。玄関に入った途端、パッとオレンジ色の明かりに照らされる。
――すごいオシャレ……。
彰は片腕で由季を支えつつ、空いた手でスリッパを用意してくれる。
「あ、ありがとう」
少し大きめのスリッパをぱたぱたいわせながら廊下を進んだ先のリビングへ。
十五畳はあろうかという広々としたリビングダイニング。
由季には高級家具店にディスプレイしているものしかお目にかかったことがなさそうな、触り心地抜群の革張りのソファーに座らされる。
「コーヒー淹れる」
彰は囁くように言うと、席を立つ。
「お、お構いなく……」
すぐに湯気をたてたコーヒーをだされた。
「砂糖とミルクは?」
「今は大丈夫」
ブラックで飲んで、頭をスッキリさせたい。
とにかく酔いを覚まして早く帰ろう。由季は飲み慣れぬブラックコーヒーを飲む。
口の中いっぱいにひりっとするような苦味が広がる。
普段はブラックで飲んだりしない由季だったが、その後味の香ばしさに、「美味しい」と思わず呟いていた。
「あぁ~。すごく良い香り……。絶対インスタントじゃないよね」
「だろ。これ、エスプレッソにしてもうまいんだよなぁ」
すぐ隣に、彰が座った。むき出しの腕が触れあう。
――ムキムキだけど、筋肉って意外に柔らかいんだ。
筋肉の感触にどぎまぎして、少し距離をあけようと横にずれると、彰がそのぶん距離を詰めてきた。
「な、何?」
「何だと、思う?」
彰はふざけたような笑みでなく、由季の様子を窺うような優しい微笑を浮かべて頬杖をつき、穴が飽きそうなほど熱心に見つめてくる。
ドクドクと鼓動が早くなり、思わず目を反らすが、目の端にかすかにうつりこむ彼の熱心な視線からは逃げられない。
「なあ、いま付き合ってる奴はいないんだよな」
「……う、うん」
「俺もフリーだ」
「前にも聞いた」
「覚えてくれて良かった。あの日はだいぶ酔ってたからさ」
耳元で囁かれると、首筋がぞわぞわしてしまう。
「ち、近いってば……」
それに今の由季はうっすらとだが、汗もかいている。
こんなそばに寄られたら汗のにおいが知られてしまう。とさらに距離を空けようとするのだが。
これ以上逃げることを許さないように、彰は身を乗り出し、行く手を阻むように由季の肩に腕を回し、ぐっと自分のほうへ抱き寄せた。
体に力が入らず、由季は彼の胸にしなだれかかる。
ワイシャツごしに厚みのある胸板を意識すると、鼓動が跳ねてしまう。
――すごく良い香り……。
スズランを思わせる清涼感のある香り。
香水だろうか。それともシャンプーの匂いだろうか。
どちらにしてもこの香りをいつまでも嗅いでいたら、頭が馬鹿になってしまいそうな気がする。
「わ、私、そういうつもりじゃ……」
由季は内心パクニックになりつつ立ち上がろうとしたが、彰は右腕を掴んで離してくれなかった。
「俺はそういうつもりで、連れ込んだんだけど」
「でも、私たち……」
――彰ってイケメンではあったけど、こんな色気とかあったっけ?
それともこの色気は大人になってから手に入れたのか。
大した強さでもないのに腕を引かれたら、あっさり引き戻され、彰の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
彰の顔が近づいてくる。
しかし息遣いを唇に感じられるくらいの近さで、ぴたりと動きを止めた。
「……本当に嫌だったら、やめる」
じっと見つめられると、
「しゃ、シャワー……」
そう言うのがやっとだった。酔いからはもう完全に醒めていた。
「必要ない」
唇が触れあう。
「ん……」
彰の薄い唇に塞がれた。久しぶりの彰の唇。自然と瞼が下りていく。
――彰とキス……。
由季は自分がどんどん流されるのを感じた。だが不快ではなかった。
――私、彰と再会してから、おかしくなっちゃってる。
自分でも自分が分からない。
酒に弱くなったり、それに今もこうして……。
――たまたまムラムラした時に私がいて、昔のよしみで押せばどうにかるって思われてる?
大して理由も説明することなく、別れを切り出したことへの負い目だろうか。
嫌いで別れたわけじゃない。本当は別れたくなかった。でもあの時はそうするしかなかった……。
――お互いフリーで、大人なんだし。
それに、彰に強引さを感じたなかった。彼のくれた、拒絶するチャンスを掴まなかったのは、由季自身。
――何事も経験だし。一夜の関係って、考えて見るとなんだかイイ女になったような気もしなくもない。
それに、相手は彰だ。見ず知らずの行きずりの相手とするわけじゃない。
――だから……。
舌で優しく下唇、上唇と順番に舐められると、自然と口が開く。
ぬるりと舌が唇を割って入り込んでくる。
「ん……」
柔らかく厚みのある舌が、由季の舌と重なり、絡んでくる。
ヌチャヌチャと唾液の粘り着くような音がこぼれでた。
久しぶりの深い口づけに頭がぼうっとした。
舌はまるで意思持っているかのように巧みに歯列をなぞり、歯と歯茎の境目をくすぐるように刺激してくる。
ぢゅわ、と唾液が染み出すと、彰の舌はそれを巻き込みながら、どんどん動きを大胆にさせ、口の中をいっぱいに味あわされてしまう。
ヂュッ、という鋭い音と共に敏感な舌先と唾液とを吸われた。
「あぁ……ん……」
息つく暇もないくらい濃厚な口づけから開放されると、由季は全身から力が抜けてしまい、ソファーに仰向けでしなだれかかった。
「お前のキスを受け入れてる顔、あいかわらずエッチだよな」
真顔で囁かれ、下唇についた唾液を、右手の親指で優しく拭われる。それだけで全身の鳥肌が立ってしまうくらい昂奮した。
彰は不意に首と、太腿の裏に両手をすべりこませたかと思うと、いわゆるお姫様だっこの格好で、由季を持ち上げた。
「ひゃっ」
いきなりだったから、由季は彰の首に両腕を回し、密着してしまう。
「そうそう。そうしてくれると安定する」
向かったのは、寝室だ。
キングサイズのベッドが鎮座している。
この寝室だけで、由季の1Kの部屋に匹敵するくらい広い。
由季を寝台に寝かせると、枕元の淡い明かりをつける。
その淡いオレンジに照らされ、彰の顔に色気のある陰影が浮かんだ。
彰は、由季の首筋に顔を埋めるように口づけを落としながら、背中のチャックを下ろしていき、上半身をあっという間にはだけさせた。
下着姿を彼の目にさらしてしまう。
「だ、め……」
しかし体を身動がすことしかできない。
彰は由季の背中に手をすべりこませて持ち上げると、ブラのホックを外す。
きつい縛めから解き放たれた、豊かなふくらみがまろびでた。彰は丁寧にブラのカップから乳房を完全に解放する。
色づく頂きに、彰の視線が絡みつく。
「そんなに、じっと見ないで……」
恥ずかしさに胸を隠そうとするが、彰に外されてしまう。
「じっくり見てもいいだろ。久しぶりだから、見たいんだよ。お前の綺麗な体……」
まるで高校時代にでも戻ったみたいに、彰に主導権を握られた。
たしか、初めての時も今と大して変わらなかったと思う。誰かと付き合うことも、そして一線を越えるのも何もかも初めてだった。
彼の部屋につれてこられた由季は、彰と目を合わせるのが恥ずかしくって、ずっと天井を眺めていた。
彰はおっぱいを優しく握り締めてくる。
彼の手に収まりきれない胸が、硬い手の平に押し潰されて変形していく。
胸をまさぐりながら、桜色に色づく尖りを指の間で挟んだ。
「ひゃう……」
久しぶりのせいだろうか。大した強さでもないのに、少し触れられるだけで過剰に反応してしまう。
指先でいじられていくうち、突起が次第に充血し、硬く痼っていく。
唇を噛みしめ我慢しようと思うのに、昂奮のあまり鼻息が荒くなってかえって恥ずかしい。
汗を滲ませた乳房を揉まれ、頂きに舌が這わされる。
「あぁ……あ、ああ……」
まるで焦らすように乳輪をなぞるように舌を使い、肝心の蕾にはなかなか触れてくれなかった。
舌で刺激しながら、さらに手の平全体をつかって胸を刺激される。
たぷんっと重たげに揺れる乳房を捏ねるようにいじりつつ、頂きがより敏感にさせられてしまう。
「んちゅ……れろ」
「うぅぅん」
最高のタイミングで、頂きを口に含まれる。熱々の口内に包まれ、舌で弾かれながら優しく吸われる。
ヂュルヂュルと音をたてられ、甘噛みされると、刺激は胸だけでなく、全身にはしり、体が内側から火照った。
「あ、彰……音、たてないで……」
「無理だ。ん……由季のここ、口の中でどんどん硬くなってるっ」
「あぁ……やっ……やぁっ……」
胸に指を食い込まされ、乳首を熱心にしゃぶられる。
優しく歯を立てられる刺激に、下腹の奥がきゅっと引き攣った。
※
――由季の胸、あいかわらず気持ちいい。
まるでマシュマロのような柔らかさと弾力感。
こうして指を食い込ませるように胸全体を愛撫すると、弾かれるような弾力が手の平いっぱいに広がる。
ますます色づき、輝く尖りをしゃぶりつづければ、汗と由季本来の香りがまざりあった匂いが鼻腔をたえず刺激した。
どれだけ手の中で揉みしだいても飽きることがない。
刺激すればするほど、由季は好ましい反応を見せてくれる。
恥ずかしいと言いながら、快感を無視できないと言うかのような悩ましい表情に、彰の心臓は激しく高鳴るのだ。
はじめて由季を抱いた時も、彰はがらにもなく緊張したし、昂奮した。
由季は、彰が触れるたび、新鮮な反応をしてくれた。口づけをする時のうっとりとした夢見心地な表情、舌を使った時の愛撫に涙ぐみながら快い反応を見せる体。
学校ではもちろん、デート中でも見せなかった、彰にしか見せたことがないであろう表情に虜になった。
――く……。きつくなってきた。
張り詰めた股間が下着と擦れ、ジンジンと疼く。
彰は蕾から口を離す。
口内から解放されたそこは、たっぷりの唾液でぬめぬめと卑猥に輝いていた。
「あいかわらず、感じやすいんだな」
ワンピースの裾を下腹あたりまでたくしあげる。
「み、見ないで……」
由季は抵抗を試みるが、その力は弱々しく、あっさり下着が露わになった。
秘裂と接している部分はべっとりと濡れていた。
下着に手をかけ、脱がしていく。
クチュ、と水気をふくんだ音とともに、銀色の糸が伸びる。
鮮やかな鴇色をした蜜口はひくひくと震えながら、半透明な蜜をこぼしていた。
肉芽がツンと勃っている。
秘部はとろとろになり、発情の気配を色濃くしていた。
「指、いれるぞ」
「……い、いちいち言わなくて良いから」
「分かってるけど、お前の反応を見て楽しんでる」
「さ、サイアク……ん」
秘芽に口づけを落とすと、由季がピクンッと全身を反応させた。
「最悪? でもここは……」
彰は秘処はひくひくと引き攣りながら、とろとろと蜜をこぼし、シーツに染みを作っている。
右手の中指を挿入する。
「あっ」
隘路は指一本だけだというのにきつきつで、第二関節をねじこむ時にはギュウギュウと締め付けてきた。
ぬるりと濡れた柔らかな襞は温かく、指に触れるざらざらとした触感が、昂奮を煽ってくるようだった。
指の動きに合わせ、ぐにゅぐにゅと中が動いて指を甘噛みされる。
なだらかな由季の下腹がぴくぴくと小刻みに戦慄いているのが余計にエッチだ。
彰は指でゆっくり前後に動かすと、白く濁った蜜が糸を引きながら絡みつく。
――久しぶりだからか? 高校時代より、ずっとエロいな。
指で膣洞を探りながら、さきほど胸の頂きにしたみたいに秘芽にも唾液をいっぱいにまぶしながら、優しく吸う。
「い、いや……そこ、敏感すぎるからっ」
中の締め付けも強まり、ギチギチに圧迫されてしまう。
彰はさらに右手の人差し指を追加し、由季の秘裂をさらに広げるように刺激した。
ひくつく蜜口がまるで大きな口のように、指を頬張る。
「あああん」
こぼれる蜜の量がますます増え、下腹部をベトベトに汚していく。ぬくんだ蜜が指に絡みつき、ふやけてしまいそうだ。
「いやあああ……もう、イク……あああ、イく!」
指を奧へ押し込んだ瞬間、由季はベッドをギシギシと軋ませながら全身を激しく痙攣させ、果てた。
「ぐ……う……」
隘路のうねりが激しくなり、指が痛いくらい締め付けられてしまう。
伸縮をくりかえす柔らかな壁から、ぢゅわっと愛液が染み出す感触が彰の劣情を絶妙にくすぐってきた。
――すげえ。俺の指、ベトベトだ。
指をそっと抜いただけで、銀糸が長く伸びた。
指を抜いたあとも、彼女の下腹部はひくっひくっと痙攣を繰り返す。
「平気か?」
「だ、め……」
由季は頬をリンゴのように真っ赤に染め、肩で大きく息をする。彰に見つめられるのが恥ずかしいのか、右腕で目元を覆っていた。
――だめって。そんないやらしい声で言われたら……こっちがおかしくなるって。
彰は自制心の強いほうだと自負しているが、由季のすすり泣きまじりの声を聞いてしまうと、高校時代から自分を抑えられなかった。
もっと余裕のある立ち振る舞いをしたいと思うのに、どうしてもそれができない。
そんなことより一刻も早く由季を抱きたい、抱き潰すほどに愛したいという本能が強く出てしまう。
そして今回もまさにそれだった。
「由季、お前を抱くから」
逸る気持ちを抑えながら由季の体にからみついているワンピースをはぎとる。
それから自分の服を脱ぐ。ボタンを一つ一つ外していくのがどうしても出来ず、いくつかボタンが飛ぶのもお構いなくワイシャツを脱ぎ捨て、ティーシャツ、そしてスラックスをベッドの下へ飛ばす。
ボクサーブリーフは痛いくらい張り詰め、ジンジンと熱く疼く。下着も脱ぎ捨てて、由季と同じように裸になった。
体が熱く、肌には汗が浮いている。
「由季っ」
思わず名前を呼んだ。呼びかけられた由季が腕を少し外し、彰を見るのが分かった。
何をそんなに驚いているのかは分からなかったが、そんなことはどうでも良い。
股間はすでに脈打ち、びっくりするくらいの熱を持っている。
避妊具を口で開け、装着する。少し手間取ったのはそれだけ昂奮しているせいだ。
――恥ずかしいな。もっとスマートにしたかったのに。
彰は右手で股間を握ると位置を調節し、彼女の秘口へ押し当てた。
「あ……」
由季が鼻にかかった声をこぼす。
腰に力を入れ、ゆっくりとしたペースで挿入する。
少しでも気を抜けば呆気なく出てしまいそうなほど。ゴムごしに感じる、ぬるついた柔らかさと、握られるように締め付けられる感触をたっぷりと味わう。
指ではとても届かなかった奧まで埋め尽くす。
「ああああ……こ、これ……うそ……あああっ」
由季は驚きながらも、全てを受け入れてくれる。
――由季の中、熱すぎだ。のぼせそう……。
彰は全てを挿入しきったことを教えるように、下腹を押す。
「な、なにして……んぁああ」
予想外に由季の反応が良くて、口元がほころぶ。
「やっぱ俺たち体の相性が最高だな」
※
――彰の体、すごい……。
一目見た瞬間、目を奪われて、思わず唾を飲み込んだ。
そんな自分の無意識の反応が恥ずかしく、穴があったら入りたくなる。
首から肩幅へと続く綺麗なラインは色気が漂い、筋肉が隆起したような胸板は厚く、腹筋は見事なシックスパック。うっすらと日に焼けた肌がサイドランプの淡い明かりを受け、玉の汗がキラキラと輝く。
そして何より、由季を驚かせたのは、股間だ。
サーモンピンク色のそれは、腹にひっつかんばかりに反り返り、先端の丸い部分はこぼれた汁でぐっしょりと濡れ、てらてらと卑猥にぬめ光る。
避妊具をつけた彰が、ゆっくり挿入してくる。
ぐちゅ、とぬかるみへ肉茎が沈んでいく。
――彰が奥まで……うそ……すごい……!
ぞわぞわっと全身の産毛が逆立つような感覚が、波紋のように全身へ広がっていく。
「ひぁ……あぁ……うぅうん……」
久しぶりのせいか、少し痛みがはしったが、そんなささやかな感覚はあっという間に雄々しい存在感の前に気にもならなくなった。
隘路に栓をするように挿入された彰の肉の杭でいっぱいに満たされる充溢感に、呼吸をするたび、彰の存在感を全身に刻み込まれるかのようだ。
ズッ、と行き止まりを押し上げられる。
「あ、はあぁぁ」
下腹をグイッと押し上げられる雄々しさに、両手でシーツを握り締めた。
「全部、収まった……。あぁ、すげえ。う……ぐ……由季ん中、すごく締め付けて……」
彰の見せる悩ましい表情。その立派すぎる体格と比べて、その表情には初々しさがあった。何も初々しくないのに、そう感じるのはすごく不思議だった。
「ん……う……動いていいから」
「由季は大丈夫なのか? ……ぐ……はぁ……」
少し笑ってしまう。
「彰のほうが辛そうだし……ん、……う……いぃよ」
彰が腰を引く。
「ンン」
敏感になっている柔壁をズリズリと削りとりながら、牡棒が後退していく。
そして抜けるか抜けないかのところで止まると、由季の中の空白を埋めていく。
腰を動かすたび、由季の腿の裏と密着している、彼の大腿筋に力がこもり、筋肉が隆起するのが伝わってくる。
彰はやや前のめりになり、腰を前後に動かし、丸みを帯びた先端で奧を押し上げた。
「ああ、はああ、んん……すご……あぁ……」
――そんなに何度も押されたら、またすぐにおかしくなりそう。
自分がこんなにもあっさりと達してしまいそうなくらい敏感だったとは知らず、戸惑う。
「由季……ぐ……しゃぶられてすご……お前の中、前よりずっといい……ぐ……おかしくなりそう……」
弾を結んだ汗の雫が、ぼたぼたと由季の体に落ちてくる。
逞しい肉樹で突かれると、腰骨から脳天めがけ電撃がほとばしった。
「あああああ」
恥ずかしさに声を我慢するなんて無駄な足搔きと笑うかのように、由季は恥ずかしい声をあげさせられてしまう。
腰を引けば、こぼれる蜜が掻き出され、つながった部分をべちょべちょに汚す。
彼が腰を動かすたび、鍛えられた筋肉も一緒にうねる。
玉の汗が滝のように流れ、彫像のように掘り上げられた筋肉の上を舐めるように流れていった。
「由季……」
「んん」
唇を塞がれ、舌が口内に押し入ってくる。由季は苦しさを感じながら、彰の舌を迎え入れ、絡めあう。溺れそうになるくらい唾液を交わす。
激しい口づけをくりかえしながら、彰は由季の腰骨に手をかけ、さらに激しく深い場所を突いてくる。
「あああああん」
由季は耐えきれず、唇をほどいてしまう。
「ぐ……ぁあ……っく……」
腰の動きが激しくなる。
それに合わせて、深いところを掻き混ぜられるぢゅぶぢゅぶという卑猥な水音が奏でられる。
鋼のように硬い逸物で、容赦なく責められる。理性まで削り取られてしまうような腰のうねりに、脳までとろけてしまいそう。
由季の太腿を握り締める彰の腕の筋肉が盛り上がり、血管が浮く。
肉の穂先で柔らかな壁を擦られながら奧を圧迫されると、頭の中で快感の火花が飛ぶ。
「あああ、ああああっ」
「由季……いい……ぐ……ぁああ……好きだ、由季……由季っ」
クライマックスに向かって、ますます腰のうねりが大きく、加速する。
――そんなに切ない声で、名前を呼ばないで……。
直情的に、由季の中で果てたいという真っ直ぐな欲望が伝わる、本能を剥きだしにした腰づかいをみせる。
パンパンと肉どうしのぶつかりあう音が響き、ベッドの軋みがさらに激しいものになる。
ぢゅぶぢゅぶと掻き混ぜられる水音がさらに生々しく糸を引く。
先端部が子宮の入り口をグリッ、グリッと執拗に押し上げ、揺さぶる。
「あああああ……イク、イっちゃうッ」
「俺ももう……」
泣き出しそうな声をあげたかと思えば、彰が、由季の頭を抱き抱えるように、両腕を回してきた。
「ンンンンー!」
由季が昇り詰めると同時に、ひときわ深い場所にめりこむような勢いで突いてきた牡肉がビク、ビクと脈打ちながら、射精する。
ゴムごしとは思えないくらいの熱情の広がりに、由季は声なき声を漏らしながら、さらに極まってしまう。
――あ、頭、馬鹿になっちゃう……。
こんな短い間に何度のぼりつめたのだろう。
体がバラバラになってしまったのではないかと本気で心配になった。
由季は全身を包みこまれるような浮遊感と、息つく暇もないくらい立て続けの律動に、頭が真っ白になり、しばらくは呼吸する以外なにもできなくなってしまう。
頭がぼうっとするのに、意識がカッカッと燃え続け、気を失うことすら許されない。
心地良さと狂おしさがまざりあった、不思議な時間だった。
「由季」
心配するように、彰が見つめてくる。薄ぼんやりとしていた世界だったのに、なぜか彰にだけ焦点が合った。
「……あ、彰」
はぁ……はぁ……と、彰が大きく肩で息をしながら、見つめる。その瞳は今にも泣き出しそうなくらい潤んでいた。
どちらからともなく、まるで吸い寄せられるように唇を重ねる。
「ん、ん」
汗と香水のかおりが混ざり合う。
どちらも舌を絡めるほどの気力はなかったが、唇を離したいとは思わなかった。
頭の痺れるような陶酔の時間を共有すれば、胸が満たされた。
タクシーの中で、由季は呻くように独りごちた。
顔の火照りを冷まそうと、顔に濡らしたハンカチをのせている。
「分かったから、黙っとけ。話すのも辛いだろ」
「本当にごめん……一度ならず二度までも」
――お酒の失敗とか、良い歳の女のすることじゃない……。
どうしてこんな醜態をさらしてしまうのかと由季は首をひねる。
酒に飲まれた経験もなく、極端に酒が弱いわけでもないはずなのに、この体たらく。
――彰と一緒にいて緊張してたのかな。
だからこそ無意識のうちに感じていた緊張を紛らわせたくて、杯を重ねてしまったのだろうか。
「ついたぞ」
「うん、ゴメン……。このお詫びは絶対にさせてもらうから。美味しいスイーツのお店リサーチしとくからぁ……」
「ありがとな。まあそれはそれとして下りろ」
「う、うん」
タクシーを降りると、熱気むんむんの空気が顔を撫でる。しかしそれ以上に火照った肌にはそんな風でも気持ちいい。
目にのせていたブランドもののハンカチを返そうとするのだが、腕をぐいっと引っ張られ、少しつんのめるように歩かされる。
――歩かされるって、誰に?
由季は一人で下りたはず。
「え? 彰、タクシー行っちゃったけど」
ハンカチを外して広がった視界の中に、彰がいる。
「ああ、行っちゃったな」
彰は構わず歩き出し、見知らぬオシャレロビーを抜けていく。
「待って。ここ、どこ? 私のマンションじゃないんだけど」
「ああ、ここは俺のマンション」
「え、ど、どうして……」
「そんなに酔ったまま一人で帰らせるわけにもいかないだろ」
余計な口を挟ませぬ強引さで彼はエレベーターに乗り込み、目的のフロアでおりる。
静まり返った内廊下を進み、『SHIBA』と筆記体で書かれた洒落た表札の扉の前まで来ると、カードキーで扉を解錠する。玄関に入った途端、パッとオレンジ色の明かりに照らされる。
――すごいオシャレ……。
彰は片腕で由季を支えつつ、空いた手でスリッパを用意してくれる。
「あ、ありがとう」
少し大きめのスリッパをぱたぱたいわせながら廊下を進んだ先のリビングへ。
十五畳はあろうかという広々としたリビングダイニング。
由季には高級家具店にディスプレイしているものしかお目にかかったことがなさそうな、触り心地抜群の革張りのソファーに座らされる。
「コーヒー淹れる」
彰は囁くように言うと、席を立つ。
「お、お構いなく……」
すぐに湯気をたてたコーヒーをだされた。
「砂糖とミルクは?」
「今は大丈夫」
ブラックで飲んで、頭をスッキリさせたい。
とにかく酔いを覚まして早く帰ろう。由季は飲み慣れぬブラックコーヒーを飲む。
口の中いっぱいにひりっとするような苦味が広がる。
普段はブラックで飲んだりしない由季だったが、その後味の香ばしさに、「美味しい」と思わず呟いていた。
「あぁ~。すごく良い香り……。絶対インスタントじゃないよね」
「だろ。これ、エスプレッソにしてもうまいんだよなぁ」
すぐ隣に、彰が座った。むき出しの腕が触れあう。
――ムキムキだけど、筋肉って意外に柔らかいんだ。
筋肉の感触にどぎまぎして、少し距離をあけようと横にずれると、彰がそのぶん距離を詰めてきた。
「な、何?」
「何だと、思う?」
彰はふざけたような笑みでなく、由季の様子を窺うような優しい微笑を浮かべて頬杖をつき、穴が飽きそうなほど熱心に見つめてくる。
ドクドクと鼓動が早くなり、思わず目を反らすが、目の端にかすかにうつりこむ彼の熱心な視線からは逃げられない。
「なあ、いま付き合ってる奴はいないんだよな」
「……う、うん」
「俺もフリーだ」
「前にも聞いた」
「覚えてくれて良かった。あの日はだいぶ酔ってたからさ」
耳元で囁かれると、首筋がぞわぞわしてしまう。
「ち、近いってば……」
それに今の由季はうっすらとだが、汗もかいている。
こんなそばに寄られたら汗のにおいが知られてしまう。とさらに距離を空けようとするのだが。
これ以上逃げることを許さないように、彰は身を乗り出し、行く手を阻むように由季の肩に腕を回し、ぐっと自分のほうへ抱き寄せた。
体に力が入らず、由季は彼の胸にしなだれかかる。
ワイシャツごしに厚みのある胸板を意識すると、鼓動が跳ねてしまう。
――すごく良い香り……。
スズランを思わせる清涼感のある香り。
香水だろうか。それともシャンプーの匂いだろうか。
どちらにしてもこの香りをいつまでも嗅いでいたら、頭が馬鹿になってしまいそうな気がする。
「わ、私、そういうつもりじゃ……」
由季は内心パクニックになりつつ立ち上がろうとしたが、彰は右腕を掴んで離してくれなかった。
「俺はそういうつもりで、連れ込んだんだけど」
「でも、私たち……」
――彰ってイケメンではあったけど、こんな色気とかあったっけ?
それともこの色気は大人になってから手に入れたのか。
大した強さでもないのに腕を引かれたら、あっさり引き戻され、彰の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
彰の顔が近づいてくる。
しかし息遣いを唇に感じられるくらいの近さで、ぴたりと動きを止めた。
「……本当に嫌だったら、やめる」
じっと見つめられると、
「しゃ、シャワー……」
そう言うのがやっとだった。酔いからはもう完全に醒めていた。
「必要ない」
唇が触れあう。
「ん……」
彰の薄い唇に塞がれた。久しぶりの彰の唇。自然と瞼が下りていく。
――彰とキス……。
由季は自分がどんどん流されるのを感じた。だが不快ではなかった。
――私、彰と再会してから、おかしくなっちゃってる。
自分でも自分が分からない。
酒に弱くなったり、それに今もこうして……。
――たまたまムラムラした時に私がいて、昔のよしみで押せばどうにかるって思われてる?
大して理由も説明することなく、別れを切り出したことへの負い目だろうか。
嫌いで別れたわけじゃない。本当は別れたくなかった。でもあの時はそうするしかなかった……。
――お互いフリーで、大人なんだし。
それに、彰に強引さを感じたなかった。彼のくれた、拒絶するチャンスを掴まなかったのは、由季自身。
――何事も経験だし。一夜の関係って、考えて見るとなんだかイイ女になったような気もしなくもない。
それに、相手は彰だ。見ず知らずの行きずりの相手とするわけじゃない。
――だから……。
舌で優しく下唇、上唇と順番に舐められると、自然と口が開く。
ぬるりと舌が唇を割って入り込んでくる。
「ん……」
柔らかく厚みのある舌が、由季の舌と重なり、絡んでくる。
ヌチャヌチャと唾液の粘り着くような音がこぼれでた。
久しぶりの深い口づけに頭がぼうっとした。
舌はまるで意思持っているかのように巧みに歯列をなぞり、歯と歯茎の境目をくすぐるように刺激してくる。
ぢゅわ、と唾液が染み出すと、彰の舌はそれを巻き込みながら、どんどん動きを大胆にさせ、口の中をいっぱいに味あわされてしまう。
ヂュッ、という鋭い音と共に敏感な舌先と唾液とを吸われた。
「あぁ……ん……」
息つく暇もないくらい濃厚な口づけから開放されると、由季は全身から力が抜けてしまい、ソファーに仰向けでしなだれかかった。
「お前のキスを受け入れてる顔、あいかわらずエッチだよな」
真顔で囁かれ、下唇についた唾液を、右手の親指で優しく拭われる。それだけで全身の鳥肌が立ってしまうくらい昂奮した。
彰は不意に首と、太腿の裏に両手をすべりこませたかと思うと、いわゆるお姫様だっこの格好で、由季を持ち上げた。
「ひゃっ」
いきなりだったから、由季は彰の首に両腕を回し、密着してしまう。
「そうそう。そうしてくれると安定する」
向かったのは、寝室だ。
キングサイズのベッドが鎮座している。
この寝室だけで、由季の1Kの部屋に匹敵するくらい広い。
由季を寝台に寝かせると、枕元の淡い明かりをつける。
その淡いオレンジに照らされ、彰の顔に色気のある陰影が浮かんだ。
彰は、由季の首筋に顔を埋めるように口づけを落としながら、背中のチャックを下ろしていき、上半身をあっという間にはだけさせた。
下着姿を彼の目にさらしてしまう。
「だ、め……」
しかし体を身動がすことしかできない。
彰は由季の背中に手をすべりこませて持ち上げると、ブラのホックを外す。
きつい縛めから解き放たれた、豊かなふくらみがまろびでた。彰は丁寧にブラのカップから乳房を完全に解放する。
色づく頂きに、彰の視線が絡みつく。
「そんなに、じっと見ないで……」
恥ずかしさに胸を隠そうとするが、彰に外されてしまう。
「じっくり見てもいいだろ。久しぶりだから、見たいんだよ。お前の綺麗な体……」
まるで高校時代にでも戻ったみたいに、彰に主導権を握られた。
たしか、初めての時も今と大して変わらなかったと思う。誰かと付き合うことも、そして一線を越えるのも何もかも初めてだった。
彼の部屋につれてこられた由季は、彰と目を合わせるのが恥ずかしくって、ずっと天井を眺めていた。
彰はおっぱいを優しく握り締めてくる。
彼の手に収まりきれない胸が、硬い手の平に押し潰されて変形していく。
胸をまさぐりながら、桜色に色づく尖りを指の間で挟んだ。
「ひゃう……」
久しぶりのせいだろうか。大した強さでもないのに、少し触れられるだけで過剰に反応してしまう。
指先でいじられていくうち、突起が次第に充血し、硬く痼っていく。
唇を噛みしめ我慢しようと思うのに、昂奮のあまり鼻息が荒くなってかえって恥ずかしい。
汗を滲ませた乳房を揉まれ、頂きに舌が這わされる。
「あぁ……あ、ああ……」
まるで焦らすように乳輪をなぞるように舌を使い、肝心の蕾にはなかなか触れてくれなかった。
舌で刺激しながら、さらに手の平全体をつかって胸を刺激される。
たぷんっと重たげに揺れる乳房を捏ねるようにいじりつつ、頂きがより敏感にさせられてしまう。
「んちゅ……れろ」
「うぅぅん」
最高のタイミングで、頂きを口に含まれる。熱々の口内に包まれ、舌で弾かれながら優しく吸われる。
ヂュルヂュルと音をたてられ、甘噛みされると、刺激は胸だけでなく、全身にはしり、体が内側から火照った。
「あ、彰……音、たてないで……」
「無理だ。ん……由季のここ、口の中でどんどん硬くなってるっ」
「あぁ……やっ……やぁっ……」
胸に指を食い込まされ、乳首を熱心にしゃぶられる。
優しく歯を立てられる刺激に、下腹の奥がきゅっと引き攣った。
※
――由季の胸、あいかわらず気持ちいい。
まるでマシュマロのような柔らかさと弾力感。
こうして指を食い込ませるように胸全体を愛撫すると、弾かれるような弾力が手の平いっぱいに広がる。
ますます色づき、輝く尖りをしゃぶりつづければ、汗と由季本来の香りがまざりあった匂いが鼻腔をたえず刺激した。
どれだけ手の中で揉みしだいても飽きることがない。
刺激すればするほど、由季は好ましい反応を見せてくれる。
恥ずかしいと言いながら、快感を無視できないと言うかのような悩ましい表情に、彰の心臓は激しく高鳴るのだ。
はじめて由季を抱いた時も、彰はがらにもなく緊張したし、昂奮した。
由季は、彰が触れるたび、新鮮な反応をしてくれた。口づけをする時のうっとりとした夢見心地な表情、舌を使った時の愛撫に涙ぐみながら快い反応を見せる体。
学校ではもちろん、デート中でも見せなかった、彰にしか見せたことがないであろう表情に虜になった。
――く……。きつくなってきた。
張り詰めた股間が下着と擦れ、ジンジンと疼く。
彰は蕾から口を離す。
口内から解放されたそこは、たっぷりの唾液でぬめぬめと卑猥に輝いていた。
「あいかわらず、感じやすいんだな」
ワンピースの裾を下腹あたりまでたくしあげる。
「み、見ないで……」
由季は抵抗を試みるが、その力は弱々しく、あっさり下着が露わになった。
秘裂と接している部分はべっとりと濡れていた。
下着に手をかけ、脱がしていく。
クチュ、と水気をふくんだ音とともに、銀色の糸が伸びる。
鮮やかな鴇色をした蜜口はひくひくと震えながら、半透明な蜜をこぼしていた。
肉芽がツンと勃っている。
秘部はとろとろになり、発情の気配を色濃くしていた。
「指、いれるぞ」
「……い、いちいち言わなくて良いから」
「分かってるけど、お前の反応を見て楽しんでる」
「さ、サイアク……ん」
秘芽に口づけを落とすと、由季がピクンッと全身を反応させた。
「最悪? でもここは……」
彰は秘処はひくひくと引き攣りながら、とろとろと蜜をこぼし、シーツに染みを作っている。
右手の中指を挿入する。
「あっ」
隘路は指一本だけだというのにきつきつで、第二関節をねじこむ時にはギュウギュウと締め付けてきた。
ぬるりと濡れた柔らかな襞は温かく、指に触れるざらざらとした触感が、昂奮を煽ってくるようだった。
指の動きに合わせ、ぐにゅぐにゅと中が動いて指を甘噛みされる。
なだらかな由季の下腹がぴくぴくと小刻みに戦慄いているのが余計にエッチだ。
彰は指でゆっくり前後に動かすと、白く濁った蜜が糸を引きながら絡みつく。
――久しぶりだからか? 高校時代より、ずっとエロいな。
指で膣洞を探りながら、さきほど胸の頂きにしたみたいに秘芽にも唾液をいっぱいにまぶしながら、優しく吸う。
「い、いや……そこ、敏感すぎるからっ」
中の締め付けも強まり、ギチギチに圧迫されてしまう。
彰はさらに右手の人差し指を追加し、由季の秘裂をさらに広げるように刺激した。
ひくつく蜜口がまるで大きな口のように、指を頬張る。
「あああん」
こぼれる蜜の量がますます増え、下腹部をベトベトに汚していく。ぬくんだ蜜が指に絡みつき、ふやけてしまいそうだ。
「いやあああ……もう、イク……あああ、イく!」
指を奧へ押し込んだ瞬間、由季はベッドをギシギシと軋ませながら全身を激しく痙攣させ、果てた。
「ぐ……う……」
隘路のうねりが激しくなり、指が痛いくらい締め付けられてしまう。
伸縮をくりかえす柔らかな壁から、ぢゅわっと愛液が染み出す感触が彰の劣情を絶妙にくすぐってきた。
――すげえ。俺の指、ベトベトだ。
指をそっと抜いただけで、銀糸が長く伸びた。
指を抜いたあとも、彼女の下腹部はひくっひくっと痙攣を繰り返す。
「平気か?」
「だ、め……」
由季は頬をリンゴのように真っ赤に染め、肩で大きく息をする。彰に見つめられるのが恥ずかしいのか、右腕で目元を覆っていた。
――だめって。そんないやらしい声で言われたら……こっちがおかしくなるって。
彰は自制心の強いほうだと自負しているが、由季のすすり泣きまじりの声を聞いてしまうと、高校時代から自分を抑えられなかった。
もっと余裕のある立ち振る舞いをしたいと思うのに、どうしてもそれができない。
そんなことより一刻も早く由季を抱きたい、抱き潰すほどに愛したいという本能が強く出てしまう。
そして今回もまさにそれだった。
「由季、お前を抱くから」
逸る気持ちを抑えながら由季の体にからみついているワンピースをはぎとる。
それから自分の服を脱ぐ。ボタンを一つ一つ外していくのがどうしても出来ず、いくつかボタンが飛ぶのもお構いなくワイシャツを脱ぎ捨て、ティーシャツ、そしてスラックスをベッドの下へ飛ばす。
ボクサーブリーフは痛いくらい張り詰め、ジンジンと熱く疼く。下着も脱ぎ捨てて、由季と同じように裸になった。
体が熱く、肌には汗が浮いている。
「由季っ」
思わず名前を呼んだ。呼びかけられた由季が腕を少し外し、彰を見るのが分かった。
何をそんなに驚いているのかは分からなかったが、そんなことはどうでも良い。
股間はすでに脈打ち、びっくりするくらいの熱を持っている。
避妊具を口で開け、装着する。少し手間取ったのはそれだけ昂奮しているせいだ。
――恥ずかしいな。もっとスマートにしたかったのに。
彰は右手で股間を握ると位置を調節し、彼女の秘口へ押し当てた。
「あ……」
由季が鼻にかかった声をこぼす。
腰に力を入れ、ゆっくりとしたペースで挿入する。
少しでも気を抜けば呆気なく出てしまいそうなほど。ゴムごしに感じる、ぬるついた柔らかさと、握られるように締め付けられる感触をたっぷりと味わう。
指ではとても届かなかった奧まで埋め尽くす。
「ああああ……こ、これ……うそ……あああっ」
由季は驚きながらも、全てを受け入れてくれる。
――由季の中、熱すぎだ。のぼせそう……。
彰は全てを挿入しきったことを教えるように、下腹を押す。
「な、なにして……んぁああ」
予想外に由季の反応が良くて、口元がほころぶ。
「やっぱ俺たち体の相性が最高だな」
※
――彰の体、すごい……。
一目見た瞬間、目を奪われて、思わず唾を飲み込んだ。
そんな自分の無意識の反応が恥ずかしく、穴があったら入りたくなる。
首から肩幅へと続く綺麗なラインは色気が漂い、筋肉が隆起したような胸板は厚く、腹筋は見事なシックスパック。うっすらと日に焼けた肌がサイドランプの淡い明かりを受け、玉の汗がキラキラと輝く。
そして何より、由季を驚かせたのは、股間だ。
サーモンピンク色のそれは、腹にひっつかんばかりに反り返り、先端の丸い部分はこぼれた汁でぐっしょりと濡れ、てらてらと卑猥にぬめ光る。
避妊具をつけた彰が、ゆっくり挿入してくる。
ぐちゅ、とぬかるみへ肉茎が沈んでいく。
――彰が奥まで……うそ……すごい……!
ぞわぞわっと全身の産毛が逆立つような感覚が、波紋のように全身へ広がっていく。
「ひぁ……あぁ……うぅうん……」
久しぶりのせいか、少し痛みがはしったが、そんなささやかな感覚はあっという間に雄々しい存在感の前に気にもならなくなった。
隘路に栓をするように挿入された彰の肉の杭でいっぱいに満たされる充溢感に、呼吸をするたび、彰の存在感を全身に刻み込まれるかのようだ。
ズッ、と行き止まりを押し上げられる。
「あ、はあぁぁ」
下腹をグイッと押し上げられる雄々しさに、両手でシーツを握り締めた。
「全部、収まった……。あぁ、すげえ。う……ぐ……由季ん中、すごく締め付けて……」
彰の見せる悩ましい表情。その立派すぎる体格と比べて、その表情には初々しさがあった。何も初々しくないのに、そう感じるのはすごく不思議だった。
「ん……う……動いていいから」
「由季は大丈夫なのか? ……ぐ……はぁ……」
少し笑ってしまう。
「彰のほうが辛そうだし……ん、……う……いぃよ」
彰が腰を引く。
「ンン」
敏感になっている柔壁をズリズリと削りとりながら、牡棒が後退していく。
そして抜けるか抜けないかのところで止まると、由季の中の空白を埋めていく。
腰を動かすたび、由季の腿の裏と密着している、彼の大腿筋に力がこもり、筋肉が隆起するのが伝わってくる。
彰はやや前のめりになり、腰を前後に動かし、丸みを帯びた先端で奧を押し上げた。
「ああ、はああ、んん……すご……あぁ……」
――そんなに何度も押されたら、またすぐにおかしくなりそう。
自分がこんなにもあっさりと達してしまいそうなくらい敏感だったとは知らず、戸惑う。
「由季……ぐ……しゃぶられてすご……お前の中、前よりずっといい……ぐ……おかしくなりそう……」
弾を結んだ汗の雫が、ぼたぼたと由季の体に落ちてくる。
逞しい肉樹で突かれると、腰骨から脳天めがけ電撃がほとばしった。
「あああああ」
恥ずかしさに声を我慢するなんて無駄な足搔きと笑うかのように、由季は恥ずかしい声をあげさせられてしまう。
腰を引けば、こぼれる蜜が掻き出され、つながった部分をべちょべちょに汚す。
彼が腰を動かすたび、鍛えられた筋肉も一緒にうねる。
玉の汗が滝のように流れ、彫像のように掘り上げられた筋肉の上を舐めるように流れていった。
「由季……」
「んん」
唇を塞がれ、舌が口内に押し入ってくる。由季は苦しさを感じながら、彰の舌を迎え入れ、絡めあう。溺れそうになるくらい唾液を交わす。
激しい口づけをくりかえしながら、彰は由季の腰骨に手をかけ、さらに激しく深い場所を突いてくる。
「あああああん」
由季は耐えきれず、唇をほどいてしまう。
「ぐ……ぁあ……っく……」
腰の動きが激しくなる。
それに合わせて、深いところを掻き混ぜられるぢゅぶぢゅぶという卑猥な水音が奏でられる。
鋼のように硬い逸物で、容赦なく責められる。理性まで削り取られてしまうような腰のうねりに、脳までとろけてしまいそう。
由季の太腿を握り締める彰の腕の筋肉が盛り上がり、血管が浮く。
肉の穂先で柔らかな壁を擦られながら奧を圧迫されると、頭の中で快感の火花が飛ぶ。
「あああ、ああああっ」
「由季……いい……ぐ……ぁああ……好きだ、由季……由季っ」
クライマックスに向かって、ますます腰のうねりが大きく、加速する。
――そんなに切ない声で、名前を呼ばないで……。
直情的に、由季の中で果てたいという真っ直ぐな欲望が伝わる、本能を剥きだしにした腰づかいをみせる。
パンパンと肉どうしのぶつかりあう音が響き、ベッドの軋みがさらに激しいものになる。
ぢゅぶぢゅぶと掻き混ぜられる水音がさらに生々しく糸を引く。
先端部が子宮の入り口をグリッ、グリッと執拗に押し上げ、揺さぶる。
「あああああ……イク、イっちゃうッ」
「俺ももう……」
泣き出しそうな声をあげたかと思えば、彰が、由季の頭を抱き抱えるように、両腕を回してきた。
「ンンンンー!」
由季が昇り詰めると同時に、ひときわ深い場所にめりこむような勢いで突いてきた牡肉がビク、ビクと脈打ちながら、射精する。
ゴムごしとは思えないくらいの熱情の広がりに、由季は声なき声を漏らしながら、さらに極まってしまう。
――あ、頭、馬鹿になっちゃう……。
こんな短い間に何度のぼりつめたのだろう。
体がバラバラになってしまったのではないかと本気で心配になった。
由季は全身を包みこまれるような浮遊感と、息つく暇もないくらい立て続けの律動に、頭が真っ白になり、しばらくは呼吸する以外なにもできなくなってしまう。
頭がぼうっとするのに、意識がカッカッと燃え続け、気を失うことすら許されない。
心地良さと狂おしさがまざりあった、不思議な時間だった。
「由季」
心配するように、彰が見つめてくる。薄ぼんやりとしていた世界だったのに、なぜか彰にだけ焦点が合った。
「……あ、彰」
はぁ……はぁ……と、彰が大きく肩で息をしながら、見つめる。その瞳は今にも泣き出しそうなくらい潤んでいた。
どちらからともなく、まるで吸い寄せられるように唇を重ねる。
「ん、ん」
汗と香水のかおりが混ざり合う。
どちらも舌を絡めるほどの気力はなかったが、唇を離したいとは思わなかった。
頭の痺れるような陶酔の時間を共有すれば、胸が満たされた。
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