21 / 30
過去11
しおりを挟む
搬送された病院で、緊急手術が行われ、景は待合室で終わるのを待った。
涼介のケータイで彼の母親に連絡を入れ、涼介が刺され、今手術中だと言うと、すぐにむかうと言ってくれた。
それから母親に連絡を入れた。母親は帰宅したのに景がいないことにかなり慌てていたらしかったが、どうにかこうにか冷静にさせ、事情を伝えた。
友人が怪我を負い、その場にいた自分は一緒に病院にいる、と。母親はすぐに帰ってこられないのかと言ったが、
「心配だから、一緒にいさせて」と景が言うと、「分かったわ……」と本当は呼び戻したい本心を押し殺して許してくれた。
景は「ごめんね」と電話を切った。
警察が現れ、事情を聞かれた。景はありのままのことを答えた。
連絡して三十分ほどで、真由美が看護師に付き添われてやってきた。
派手目な綺麗な化粧をし、真っ赤なスカートにブラウス、ジャケットいう出で立ちだった。母親は警察に頭を下げ、事情を聞いた。
それから景に「ありがとうね」と言ってくれた。しかし景は首を横に振った。
「……僕がもっと、しっかりしてたら……涼介は」
「大丈夫。涼介はそれだけあなたを守りたかったのよ。涼介は後悔してないわ」
本当は真由美を景が励まさなければいけないのに、逆に励まされて、景は泣きそうになってしまった。
二時間ほどで手術が終わった。無事に成功した。ナイフはかなり深く刺さり、傷口も大きかったが、不幸中の幸いで内臓は損傷していないとのことだった。
景は真由美と共に個室で、涼介が目覚めるのを待った。
ベッドの傍に椅子を置いて待っていたのだが、気づけば景は涼介のベッドに突っ伏すように眠ってしまっていた。
景ははっと顔を上げた。すでに夜が明け、朝日が病室に差していた。眠い目を擦って身体を起こす。変な態勢で眠っていたせいで、身体のあちこちが痛かった。
涼介と目が合う。彼は上体を起こし、景の頬をいつものように優しくくすぐる。
「おはよう」
「りょ、涼介……起きて……良かったっ!」
思わず抱きつくと、「いてえっ」と涼介がかすかにうめく。
「あ、ごめんっ!」
「良いよ。このままで……このままでいて、くれ……っ」
涼介は景の背中に腕を回してくれた。涼介の温もりを、鼓動を感じられて心の底から嬉しかった。
「夢じゃないよね」
景が涼介の頬に手を添えると、涼介はその手を優しく包み込んでくれた。
「確かめて見るか」
口づけをされた。舌を這わされ、彼の優しさと温もりに身を預ける。快感にゾクゾクと肌が粟立った。そこまできて、景は我に返った。
「涼介のお母さんが……」
涼介は苦笑した。
「ああ。会ったよ。気を利かせて二人にしてくれたみたいだ」
「気……?」
「俺達のこと、薄々気づいてみたいだ。『大事にしてあげなさい』だとよ」
「え……あ……」
「まあそりゃ気づくよな。あんだけ一日中ヤりまくったんだ。出来る限り、綺麗にしたってまあな……」
恥ずかしさに耳まで真っ赤にしながらも、「だね」と一緒に微笑んだ。
「お前の夢、見てた」
「僕の?」
「お前が救急車が来るまで一生懸命、俺に声をかけつづけていた時のこと……。何も言葉を返せなかったけど、ちゃんと聞こえてたぜ」
うん、と景はうなずく。
景は涼介の胸に顔を埋めた。彼の匂いを感じると目頭が熱くなる。
震える吐息まじりに口を開きかけたが、「謝るなよ」と先を制せられた。
「謝ったら怒るからな」
「……僕が謝るってどうして分かったの」
「俺を誰だと思ってるんだ。お前の考える事はお見通しだよ。――あれは、俺がバカだったんだ。相手が素手だと油断して勝手に刺さった。お前が悔いることなんて何もないんだ」
「でも」
「この話はもうおしまいだ。俺は別に何も悪いところなんてない。傷口は残るらしいけど、それだけだ。だからな」
これ以上、卑屈に謝罪することはただの自己満足でしかないと悟り、景はうなずいた。
それから二人で話をした。夏休みにどこに行くか、そのことだった。
バイト代もそこそこ貯まりそうだと言うと、「もう海外にでも行くかー」と涼介は独りごちた。
時間が経てば、涼介に「そろそろ学校に行く時間だぞ」と言われた。
「いつもさぼってるのに?」景は苦笑してしまう。
「俺はさぼってるけど、お前はさぼってないだろう」
本当は学校なんて休んでずっとそばにいたかったが、「お前まで目を付けられたんじゃ申し訳なさすぎる」と、涼介に背中を押されるようにして登校した。
教室にいても考える事は涼介のことだ。放課後、病院へ行く前にどこかに寄って、果物で買おうと思った。
そこに担任教師が姿を見せ、景を呼び出した。むかった先は生徒指導室だった。そこには生活指導の担当教師はもちろん、教頭や学年主任の姿まであった。
景が座る椅子は、教師自身と向かい会うように配置されていた。
動揺しながらも、内容はうすうす分かっていた。
生活指導の教師が口火を切った。
「昨日、警察から電話があった。矢ヶ崎が騒動を起こしたということは本当か? そこには進藤までいたと言うが……」
「涼介は……矢ヶ崎君は悪くありませんっ」
学年主任が次に口を開く。
「彼はこれまで何度か問題を起こしています。どの場合も、彼の正当防衛ではありますが……」
生活指導が顔をしかめる。
「最近、お前はあいつと頻繁にあっているようだが、昨日は何をしていたんだ?」
「昨日はバイトです。涼介……君とは会っていません。でも、涼介君に因縁をふっかけた人たちに無理矢理、河川敷まで連れて行かれて……涼介君は僕を助けるために、そいつらに呼びつけられたんです。相手がナイフで涼介君を刺したんですよ!? 涼介君は被害者なんですっ!」
学年主任がうなずく。
「それは警察の方からも聞きました」
生活指導が咎めるように見る。
「先生。よろしいのですか。あいつは問題児ですよ。両親共々……」
教頭がやんわりと割って入る。
「ご両親のことは関係ありませんよ。それに、我が校に入ってから彼は問題を起こしていない。先生が仰ったことは、中学時代の話ですからね。今回のことは友人を守る為、素晴らしいことではありませんか。ですが、進藤君。自分を守ることも大切です。学生は学業が本分なんですよ。そこはしっかりやっていただきたい」
「……分かりました」
「では、帰って頂いて大丈夫ですよ」
「失礼します」
景は頭を下げ、生活指導室を出た。
涼介のケータイで彼の母親に連絡を入れ、涼介が刺され、今手術中だと言うと、すぐにむかうと言ってくれた。
それから母親に連絡を入れた。母親は帰宅したのに景がいないことにかなり慌てていたらしかったが、どうにかこうにか冷静にさせ、事情を伝えた。
友人が怪我を負い、その場にいた自分は一緒に病院にいる、と。母親はすぐに帰ってこられないのかと言ったが、
「心配だから、一緒にいさせて」と景が言うと、「分かったわ……」と本当は呼び戻したい本心を押し殺して許してくれた。
景は「ごめんね」と電話を切った。
警察が現れ、事情を聞かれた。景はありのままのことを答えた。
連絡して三十分ほどで、真由美が看護師に付き添われてやってきた。
派手目な綺麗な化粧をし、真っ赤なスカートにブラウス、ジャケットいう出で立ちだった。母親は警察に頭を下げ、事情を聞いた。
それから景に「ありがとうね」と言ってくれた。しかし景は首を横に振った。
「……僕がもっと、しっかりしてたら……涼介は」
「大丈夫。涼介はそれだけあなたを守りたかったのよ。涼介は後悔してないわ」
本当は真由美を景が励まさなければいけないのに、逆に励まされて、景は泣きそうになってしまった。
二時間ほどで手術が終わった。無事に成功した。ナイフはかなり深く刺さり、傷口も大きかったが、不幸中の幸いで内臓は損傷していないとのことだった。
景は真由美と共に個室で、涼介が目覚めるのを待った。
ベッドの傍に椅子を置いて待っていたのだが、気づけば景は涼介のベッドに突っ伏すように眠ってしまっていた。
景ははっと顔を上げた。すでに夜が明け、朝日が病室に差していた。眠い目を擦って身体を起こす。変な態勢で眠っていたせいで、身体のあちこちが痛かった。
涼介と目が合う。彼は上体を起こし、景の頬をいつものように優しくくすぐる。
「おはよう」
「りょ、涼介……起きて……良かったっ!」
思わず抱きつくと、「いてえっ」と涼介がかすかにうめく。
「あ、ごめんっ!」
「良いよ。このままで……このままでいて、くれ……っ」
涼介は景の背中に腕を回してくれた。涼介の温もりを、鼓動を感じられて心の底から嬉しかった。
「夢じゃないよね」
景が涼介の頬に手を添えると、涼介はその手を優しく包み込んでくれた。
「確かめて見るか」
口づけをされた。舌を這わされ、彼の優しさと温もりに身を預ける。快感にゾクゾクと肌が粟立った。そこまできて、景は我に返った。
「涼介のお母さんが……」
涼介は苦笑した。
「ああ。会ったよ。気を利かせて二人にしてくれたみたいだ」
「気……?」
「俺達のこと、薄々気づいてみたいだ。『大事にしてあげなさい』だとよ」
「え……あ……」
「まあそりゃ気づくよな。あんだけ一日中ヤりまくったんだ。出来る限り、綺麗にしたってまあな……」
恥ずかしさに耳まで真っ赤にしながらも、「だね」と一緒に微笑んだ。
「お前の夢、見てた」
「僕の?」
「お前が救急車が来るまで一生懸命、俺に声をかけつづけていた時のこと……。何も言葉を返せなかったけど、ちゃんと聞こえてたぜ」
うん、と景はうなずく。
景は涼介の胸に顔を埋めた。彼の匂いを感じると目頭が熱くなる。
震える吐息まじりに口を開きかけたが、「謝るなよ」と先を制せられた。
「謝ったら怒るからな」
「……僕が謝るってどうして分かったの」
「俺を誰だと思ってるんだ。お前の考える事はお見通しだよ。――あれは、俺がバカだったんだ。相手が素手だと油断して勝手に刺さった。お前が悔いることなんて何もないんだ」
「でも」
「この話はもうおしまいだ。俺は別に何も悪いところなんてない。傷口は残るらしいけど、それだけだ。だからな」
これ以上、卑屈に謝罪することはただの自己満足でしかないと悟り、景はうなずいた。
それから二人で話をした。夏休みにどこに行くか、そのことだった。
バイト代もそこそこ貯まりそうだと言うと、「もう海外にでも行くかー」と涼介は独りごちた。
時間が経てば、涼介に「そろそろ学校に行く時間だぞ」と言われた。
「いつもさぼってるのに?」景は苦笑してしまう。
「俺はさぼってるけど、お前はさぼってないだろう」
本当は学校なんて休んでずっとそばにいたかったが、「お前まで目を付けられたんじゃ申し訳なさすぎる」と、涼介に背中を押されるようにして登校した。
教室にいても考える事は涼介のことだ。放課後、病院へ行く前にどこかに寄って、果物で買おうと思った。
そこに担任教師が姿を見せ、景を呼び出した。むかった先は生徒指導室だった。そこには生活指導の担当教師はもちろん、教頭や学年主任の姿まであった。
景が座る椅子は、教師自身と向かい会うように配置されていた。
動揺しながらも、内容はうすうす分かっていた。
生活指導の教師が口火を切った。
「昨日、警察から電話があった。矢ヶ崎が騒動を起こしたということは本当か? そこには進藤までいたと言うが……」
「涼介は……矢ヶ崎君は悪くありませんっ」
学年主任が次に口を開く。
「彼はこれまで何度か問題を起こしています。どの場合も、彼の正当防衛ではありますが……」
生活指導が顔をしかめる。
「最近、お前はあいつと頻繁にあっているようだが、昨日は何をしていたんだ?」
「昨日はバイトです。涼介……君とは会っていません。でも、涼介君に因縁をふっかけた人たちに無理矢理、河川敷まで連れて行かれて……涼介君は僕を助けるために、そいつらに呼びつけられたんです。相手がナイフで涼介君を刺したんですよ!? 涼介君は被害者なんですっ!」
学年主任がうなずく。
「それは警察の方からも聞きました」
生活指導が咎めるように見る。
「先生。よろしいのですか。あいつは問題児ですよ。両親共々……」
教頭がやんわりと割って入る。
「ご両親のことは関係ありませんよ。それに、我が校に入ってから彼は問題を起こしていない。先生が仰ったことは、中学時代の話ですからね。今回のことは友人を守る為、素晴らしいことではありませんか。ですが、進藤君。自分を守ることも大切です。学生は学業が本分なんですよ。そこはしっかりやっていただきたい」
「……分かりました」
「では、帰って頂いて大丈夫ですよ」
「失礼します」
景は頭を下げ、生活指導室を出た。
21
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
交わることのない二人
透明
BL
憧れの大阪の大学に通うため、東京から単身やって来た白井菖蒲は、推している芸人が下積み時代によく訪れていた喫茶・トミーで働く事に。
念願だったトミーで働け、とても充実感で満たされていた。働き始めてから三日目までは。
朝の10時、振り子時計と共に、革靴を鳴らし店内に入って来たのはガタイの良く、真っ黒な髪を真ん中でかき上げ、目つきが悪い黒いスーツに身を包んだヤクザだった。
普通の大学生と、ヤクザのお客さん。決して交わるはずの無い二人。
な筈なのだが何故か、二人の仲はスイーツを通して深まっていくのだった。
※一応BLですが、ブロマンス寄りです
※カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しております。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
マッチングしたのは仕事の依頼のためでした〜お相手はDom/Subごっこがご希望です〜
マツカワマツコ
BL
売れない役者の優翔はバイトを掛け持ちして生計を立てていた。稼いだ金は自分の役者としてのスキルアップに使い果たすも、なかなか名は上がらない。すり減り疲れた彼はマッチングアプリで可愛いネコを求める毎日。
ある日のバイト上がりに届いた1件のマッチング通知。それは明らかなタチである龍一からの申し込みだった。断ろうとするも何やら事情があるようで…。
会ってみたら「俺の理想のDomを演じてほしい」と。とんでもない頼みに驚愕するが役者魂を擽られ挑戦することに。そこから優翔の運命は大きく変わっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる