SPとヤクザ

魚谷

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 指先で手の平を優しく撫でられるくすぐったさに、景は目を開け、振り返る。
 景たちは一糸まとわぬ姿で抱きあっていた。いや、景が後ろから涼介に抱かれている――そう言った方が良いだろうか。
 景は涼介に包まれるように一緒に横になっていた。
 初めて結ばれてから、こうしてお互いの家を行き来して、身体を汗だくにして求め合う日々が続いていた。涼介と交わって、景ははじめて自分がとんでもなくいやらしいケダモノだということを知った。涼介もまた「お前を見てる
と自分がどんどん浅ましくなる」と激しく、唇を奪いながら囁いてくれた。

「……どうしたの?」

 涼介は口元だけで微笑んだ。

「何でもない。何となく、こうしたかっただけだ」

 景が領す手の手を握ると、彼も握り替えしてくれた。

「なあ、夏休み。旅行に行かないか?」

 ゴールデンウィーク中は一緒に近くの街へ買い物に行ったりしたが、遠出はしていなかった。思えば、日がな一日、身体を重ね続けていた。

「うん、行こうっ」
「どこが良い?」涼介は嬉しそうに目を細めた。
「どこでも……。涼介と一緒ならどこでも、良いよ」

 今では彼の名前を普通に、とても自然に呼べるようになっていた。

「なら、考えとく。沖縄とか、北海道とか……どっちでも良いしな」
「じゃあ、僕アルバイトしなきゃ」
「お前は家のことがあるだろ。金のことは俺に任せろよ」
「そうはいかないよ。涼介に頼りっぱなしは嫌なんだ」
「全く。お前は律儀というか、なんと言うか……。分かったよ。でも無理だけはするなよ」

 涼介が頬を優しく撫でる。それは涼介の癖のようなものだ。
 口づけをするときはもちろん、こうしてお互いの温もりを感じ合っている時に、彼はそれをしたがる。そして景もそうされるのがとても好きだった。
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