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5 魔術師

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 カーテンを透かして、朝の日射しが床に陽だまりをつくっていた。



 体が軽い。



 夢を見ないくらい熟睡したのも、清々しい気持ちで目覚めるのもいつぶりだろう。



 昨夜、シュヴァルツが片膝をついていた場所を思わず見てしまう。



 当然そこに彼はいない。なのに、生々しいほどに昨夜のことを思い出した。



 頬が燃えるように火照り、彼の親指で探られた下唇に、触れる。



 優しく包みこむような口づけに、胸が鷲掴みにされるような心持ちになる。



 ぶんぶんと頭を振って、昨夜の濃厚な口づけの記憶を振り払う。



 ベッドから抜け出すと窓を開け、爽やかな朝の清涼な空気を部屋へ呼び込む。



 こんなにのんびりとした朝を迎えられたのも久しぶりだ。



 伯爵家の屋敷では毎朝、使用人に叩き起こされていたから。



『うすのろ、さっさと起きな!』



 ひどい時は、鬱憤を晴らすように殴られたことさえあった。



 窓を開けると、アリッサの部屋が三階にあるのが分かった。



 部屋からは地平線まで広がる草原と街道が見えた。



 今日もいい天気になるだろうと思わせてくれるような、雲の少ない鮮やかな青空が広がる。



「おら! 玉無しども、声を上げろ!」



 穏やかな朝の一幕には不釣り合いな怒声が聞こえた。



 窓の下の小径を、白いシャツにパンツ姿の男たちが走っている。



 少しでもペースが遅れると、「馬鹿野郎! この程度でへばる奴があるか! 気合いをいれろ!」と集団の先頭を行く男に怒鳴り散らされる。



 怒鳴られた男は「はい! 小隊長!」とこれまた元気よく返事をする。



 ――な、なんだろう。あの人たち……。



 走るだけなのにかなりのスパルタだ。



 窓を閉じて廊下に出ると、一階へおりていく。



「アリッサちゃん、おはよ」

「あ、カーティス様、おはようございます」



 カーティスは外の小径を走っていた集団と同じシャツにパンツ姿。



 シャツは汗を吸ってぐっしょりと濡れ、胸板と腹筋が透けていた。



 アリッサははっとして顔を背ける。



「な、なに、急に? 大丈夫?」

「だ、だだだだ大丈夫です……!」



 体温がぐんぐんと上昇していく。



 男性の裸を(それが仮に服ごしに透けていたとしても)見るのがはじめてのアリッサには、あまりに刺激が強すぎる。



「いやでも顔が赤いぜ。もしかして呪紋の衝動?」

「違います!」

「それじゃあ……?」

「透けていらっしゃいますので!」



 思い切って言ってみた。



「透け? ――あ、悪い。そっか。男所帯だからな、うち。完全に油断してたわ。ごめんごめん」

「いえ……。私こそ勝手に歩き回ってしまって不用意でした……」

「いやいや、病気ってわけじゃないからさ。それで、何か用事?」



 どっくんどっくんと鼓動が暴れ回るのを意識しつつ、「いえ、あの……」と口ごもる。



 別に何かを目的があって出歩いていた訳ではなかった。



「もしかしてシュヴァルツを探してた?」

「え、ええ……まあ……」



 とりあえずそう曖昧に頷く。



「あいつなら剣の稽古をしてる。鍛錬場まで案内するよ」

「あ、ありがとうございます……」



 アリッサは、カーティスと一緒に廊下を進む。



 何人かの男性と擦れ違うたび、ぎょっとした顔で見られた。



 ――やっぱり部外者だから変に思われてるのかな。



 あまりにじっと見られるものだから、肩身が狭い。



「ここだ」



 そこはロの字型をした建物のちょうど真ん中の空白部分に該当する場所。



 シュヴァルツと大男が、木製の剣で打ち合っていた。



 相手はシュヴァルツよりも一回りはガタイが大きく腕も丸太のように太い。



 彼と比べると、シュヴァルツは細すぎると錯覚しそうになる。



 シュヴァルツは相手の剣をあっさりと受け流し、的確な反撃で追い込む。



 最初は威勢の良かった大男だったが、シュヴァルツのほうが圧倒的に手数が多い。



 大男を翻弄し、追い詰めていく。



 そして相手が怯んだ瞬間を見逃すことなく、剣を弾き飛ばす。



「そこまで!」



 大男は地団駄を踏んで悔しがる。



「くっそおおおおおおお! 今回はいいところまで追い込めたと思ったのによおお!」

「どこかだよ。ぜんぜん話にならなかったじゃねえか!」



 アリッサの隣に立っていたカーティスが囃し立てるように言うと、大男は顔を真っ赤にして「うるせえ、カーティス! てめえは黙ってろぉぉぉぉぉ!」と激昂する。



 と、大男がアリッサに気付くや、「その可愛い子ちゃん、誰だ!?」と鼻息も荒く叫んだ。



 ――か、可愛い子ちゃん……。



 はじめて聞くフレーズに、アリッサはどう反応していいのか分からない。



「おい、カーティス! てめえ、また女を寮へ連れ込んだのか!? 何度言ったら分かるんだよ! 我ら偉大なる銀竜騎士団の寮は連れ込み宿じゃねえんだよ!」

「そんなに羨ましいのか。だったらお前も連れ込めよ。ま、お前に連れ込めるのは養豚場の豚くらいだろうけどなぁ」



 カーティスが馴れ馴れしくアリッサの肩に腕を回した。



「あ、あのカーティスさんっ?」

「何をしてる」



 シュヴァルツが近づいてくる。



 アリッサは深々と頭を下げた。



「シュヴァルツ様、おはようございます。今、カーティス様にここまで連れてきてもらって……」

「お前に言ってない。この馬鹿に言ってる」



 鋭い眼差しでじっと見られ、カーティスは慌てて肩に回していた腕をほどき、降伏を示すように両手を挙げた。



「なんだよ、そんな怖い顔するなって。ただの冗談だろ」

「なんでここにいる?」



 シュヴァルツが、アリッサを見る。



「昨日はありがとうございました。お礼を言うのを忘れてしまって……」



 カーティスが小さく口笛を吹く。



「へえ、お礼を言うために探してたのか。アリッサちゃんてば、律儀だねえ」

「礼を言うようなことはしてない」

「でも、すごく楽になれました。こんな気持ち、本当に久しぶりなんですっ」

「……そうか」



 昨日の口づけが嘘のような素っ気なさ。



 もちろん口づけをしたと言っても、あれはあくまで解呪行為であって、恋人がするような特別な好意がこめられているわけでもないのだが。



 ――……私、どんな反応を期待していたのだろう。



 自問するが、答えはでない。



 でもまさかそんなあっさりとした反応を見せられるとは思わなかった。



「私、部屋に戻ります」



 ぺこっと一礼して回れ右をした瞬間、ぐぅ、と大きな腹の虫が鳴った。



 ――空気を読んでよ……!



 恥ずかしくて消えたくなる。



「ちょうどいい。アリッサちゃんも一緒にメシ食おうぜ。な、シュヴァルツ」

「どうして俺に言うんだ」

「お前がこの子を連れてきたんだろ。アリッサちゃんがここでの暮らしになじめるようにするのも、お前の仕事だろうが」

「え、えーっと……その女性は、副団長がお連れになられたのですか?」



 大男が恐る恐る聞く。



「そうだ。魔獣に襲われていたのを助けた。しばらくここで暮らすことになる」

「そ、そうですかぁ。副団長なら問題ないんです!」



 大男は媚びるような顔つきになる。



 カーティスは眉を寄せた。



「俺とはずいぶん、反応が違うんだな」

「当然だろうが、副団長は素晴らしいお方なんだからな! お前と同じ扱いなんざできねえだろうが!」

「ハイハイ、ソウデスカ」



 カーティスが肩をすくめた。



「アリッサ、来い」

「はい」



 シュヴァルツと一緒に歩く。



「安心しろ。俺たちと、団長以外の団員はお前の呪紋のことは知らない」

「そうなんですね。配慮してくださってありがとうございます」



 広い部屋に入る。



 そこでは、青と黒を基調にした服をまとった男たちが食事をしている。



 アリッサはとりあえず出入り口に近い席に座っていると、カーティスに声をかけられる。



「おーい。アリッサちゃん、そこに座ってても料理は出ないぜ。自分で取るんだよ」

「自分で……」



 慌てて立ち上がったアリッサはシュヴァルツたちのあとに並ぶ。



 料理を注文し、カウンターで受け取る方式らしい。



「あら、お嬢ちゃん? あなた、新しい騎士団の人?」



 カウンターの奧にいたエプロン姿のおばちゃんが、興味津々に見てくる。



「わ、私は……」

「俺の連れだ」

「へえ、副団長も女の子を連れ込むのねえ。でも団長さんにバレないようにしなさいよ」



 シュヴァルツはため息をこぼす。



「連れ込んでない」

「そうです。シュヴァルツ様に助けてもらったんです」

「あら、副団長に助けてもらえるなんて運がいいのねえ。うちの騎士団でも一番の腕ききよ?」

「はい、運が良かったです」

「それで何にする?」

「え、えっと……シュヴァルツ様と同じものを」

「食えるのか?」「まじで?」



 シュヴァルツと、カーティスが揃って眉をひそめた。



 一体なにを注文したのか。



「あいよ。マンモウのステーキね!」

「す、ステーキ……」



 まさかの注文の品に唖然としていると、おばちゃんはさっさと別の人の注文を聞き取りに出たため、撤回できなかった。カーティスが苦笑する。



「こいつ、朝からめちゃくちゃ食うから。んじゃ、俺のサンドイッチと交換しようぜ」

「いいえ。それはさすがに悪いですっ」

「マンモウのステーキ二つねえ!」



 ジュウジュウと香ばしい香りをたちのぼらせる分厚いステーキ肉をのせた鉄板が、カウンターに出された。



 びっくりするくらいの厚みだ。こんなお肉、今まで見たこともない。



「食えそう?」

「……カーティスさん、すみません」

「いいって」



 カーティスはにこりと笑い、ウィンクする。



 というわけで、カーティスが注文した野菜にハム、チーズを挟んだサンドイッチと交換してもらい、席に着く。



 シュヴァルツは分厚いステーキ肉をどんどん切り分け、口に運んでいく。



 ――すごい。あんな分厚いお肉があっという間に半分なくなっちゃった。



 シュヴァルツと眼が合う。



「食わないのか?」

「食べますっ」



 サンドイッチのパンはふんわりして、野菜は新鮮でしゃきしゃき。チーズは濃厚で、ハムも厚みがあってとても美味しい。



 ――かびてもないし、こんなにしっかり味のする食事なんて久しぶり……。



「いやあ。アリッサちゃん、美味しそうに食べるよねえ」

「それはもう。実際、美味しいですから」

「野郎と食うより可愛い子と一緒にする食事はほんとうに最高だ。なぁ、シュヴァルツ」

「さあな」



 食事を続けるのだが、アリッサは視線をすごく感じた。



「私、何か変なことしましたか? 周りの方々がすごく見てくるんですが……」



 アリッサは声をひそめ、シュヴァルツに聞く。



「女が珍しいだけだ」

「それだけじゃないな」



 カーティスがニヤニヤする。



「誰も寄せ付けない冷血シュヴァルツが、こんなに可愛い子と一緒にメシを食ってるんだから、誰だって気になるさ」

「れ、冷血?」

「こいつの使う氷魔法と、魔獣に対して容赦がないってところから、いつの間にかそう呼ばれるようになったんだよ。な?」

「下らんあだ名だ」

「おまけに、筋金入りの女嫌い」

「……ほ、本当ですか?」



 女嫌いと言われる人が、あんなにも情熱的な口づけをしたのだと思うと、信じられないと同時に、あんなことをさせてしまったことが申し訳ない。



「任務で街に立ち寄ったりした時に、美人がすり寄ってもまったく興味がないからな。終いには怒鳴りつけて泣かせるし」

「しつこくまとわりついてくるからだ」

「これだからな。最初は単に照れ隠しだと思ったんだけど、これが素なんだからな。そういや最近、お偉いさんの娘との縁談話があったよな。あれ、どうしたんだ? まさか『いるか!』って怒鳴りつけてないよな……」



 ――縁談話!



 アリッサはその言葉に反応してしまう。



「断りの手紙を送った」

「相手はお偉いさんだぞ。直接、断りに行ったほうがあとあとこじれなくていいんじゃないか?」

「そんなことに割くような無駄な時間はない」

「……そんなお前が、アリッサちゃんを助けるんだから、どんな心境の変化だよ……」

「お前なら、無実の罪で悪魔とつがったとなじられ、火あぶりにされようとしている人間を放っておけるのか?」



 ――シュヴァルツ様……。



 冷血とか女性嫌いとかシュヴァルツには色々とついてまわっているようだが、彼に無実の罪と断言してもらえることが嬉しく、心強い。



 結婚式の場でヨアヒムを含め誰もアリッサを信じてくれなかった状況で絶望したからこそ、余計にそう思える。



「いいや。でも普段は慎重なお前が、真っ先に飛び出したのは普通じゃない。うまくいったからいいものの、一歩間違えたら俺たちも一緒にローストだったんだぜ」

「そんなへまを俺がするか」

「ま、それはそうだけどな」



 アリッサがおいてけぼりになっていることに気付いたのか、カーティスは「勝手にこっちで話しちゃってごめんね」と謝る。



「構いません。でも……大丈夫なんでしょうか。リンカルネ王国は大国です。みなさんが所属する国は、王国との揉め事を許容しないんじゃないでしょうか……。私ひとりのために国同士を巻き込むような争いに発展する可能性だって」



 軍服の右肩には、所属している国の旗や君主の紋章が描かれているのが普通だが、シュヴァルツたちの服にはそれらしいものがないから、彼らがどの国の騎士団なのかは分からない。



「あ~、まずはそこからか。アリッサちゃん、気付いたらここにいたって感じだもんな。ここは銀竜騎士団。どこの国にも属さない、魔塔直轄の精鋭部隊さ」

「ということは、皆さん、魔術師なんですか!」

「ピンポーン。正解」



 この世界にはマナという物質があり、人の中にはそのマナを体に取り入れ、超常の力――魔法を使う人たちが存在する。それが魔術師と呼ばれる人々。



 しかし彼らの存在は長年、悪魔の遣いと同一視されている。



 これまでの歴史、魔法を使うというだけで、老若男女問わず大勢が悪魔の遣いであると糾弾されて、殺された。



 そんな魔術師が自分たちを守るために生み出したのが、魔塔という組織だ。



 今は魔術師の才能を持つ者たちが集まり、大陸中の国家に負けない勢力を築いているため、昔よりも魔術師という存在への偏見は少なくなりつつあるが、それでもまだ魔術師を悪魔の遣いと信じる人々が、この大陸には大勢いるのが現状だ。



「安心した」



 アリッサをじっと見ていたカーティスは口元を緩める。



「え?」

「俺たちが魔術師って知った時の、アリッサちゃんの反応、ちょっと怖かったんだよね。外で人助けをしても、俺たちが魔術師だって知った途端、露骨に蔑んだ目で見られることも少なくないからさ」

「そんなことしません。みなさんのお陰で、私は今こうして生きていられるんですから。感謝しこそすれ、蔑むなんて……」

「いやあ、本当にいい子だなぁ。外の連中が、みんなアリッサちゃんみたいだと助かるんだけどね。こっちは魔術師の待遇改善のため、日夜魔獣どもと死闘を繰り広げてるわけだからさぁ」

「無駄だ。いくら魔獣を退治したところで、外の連中が俺たちを人扱いするはずがない。表面上は感謝しながら、心の中じゃ俺たちを魔獣と変わらない存在だって見下してる」

「シュヴァルツ。お前がそんなこと言ってどうするんだよ。俺たちのためじゃない。これから生まれてくる、魔法の素養をもった子どもたちのためにがんばってるんだぜ?」

「分かってる。だから我慢してやってるんだ」



 シュヴァルツが怒るのも無理はない。



 魔塔にいる人たちは大なり小なり、幼少期に危険な目に遭っているだろうし、偏見にもさらされてきたはず。



「それにしても、お二人はすごく仲がいいんですね」

「俺たち、魔塔の同期で、そこからの腐れ縁だからさ」

「悪縁の間違いだろ」

「素直じゃねえなぁ」

「ふふ。仲がよくてうらやましい



 シュヴァルツは立ち上がると、トレイと食器をカウンターへ戻す。



 そんな後ろ姿を、カーティスは頬杖しながら眺める。



「……ところでさ。アリッサちゃん、あいつと昔に会ったことがあったりしてる?」

「はじめてお会いしました。どうしてですか?」

「広場でアリッサちゃんが火あぶりにされるのを見て、真っ先に飛び出したのはあいつなんだよ。俺たちが止める暇もなかった。外じゃ魔獣退治以外の魔法の行使は極力控えるよう言われてるのに。そこまであいつがするんだから、知り合いなのかなってそう思ったんだけど」

「……シュヴァルツ様が?」



 しかし彼のような偉丈夫は一目見れば忘れられるはずがない。



 アリッサが知っている魔術師は、一人しかいない。



 ――でもあの子が、シュヴァルツ様に? …………さすがにありえない。



 その時、男が食堂に入ってくる。



「――副団長。それから……そこのお嬢さん。団長がお呼びです。速やかに来て下さい」

「行ってきなよ。食器は俺が片付けとくからさ」

「すみません」



 アリッサは立ち上がった。
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