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3巻
3-2
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中からまず出てきたのはラルスだ。彼は続いて降りてきた女性に、絶妙なタイミングで傘を差した。
「ありがとう」
優雅にラルスに礼を言ったその女性――サラを見て、「ほう」と女店員の誰かがため息をついた。
そのまま王宮に行っても通用しそうなサラのドレスは腰高で、素材の良さと仕立ての見事さが際立つクリーム色の絹地が、陽光できらきらと光っている。
胸元にあるコサージュの留め金はプラチナで、贅沢にサファイアで彩られている。
そしてなんと言っても圧巻なのが、イヤリングの宝石と、頭のティアラだった。
とくに純銀に数個のルビーがあしらわれたティアラは、サラの青みがかったブロンドの髪をゴージャスに演出している。
ラルスの傘の下を歩くその姿には、気品が溢れていた。
続いて、この店の店員の良く見知った顔――カタジーナが現れる。
カタジーナは、ラルスと同じく、あとから来る女性のために日傘を差した。
「う……」
店主が、最後に現れた女性を見て声を詰まらせる。
「あ、ありがとう」
カタジーナにそう声をかけ傘の下を歩くのは、昨日店主が冷たく追い出した獣人族の娘――アリシアだった。
両サイドに並んで道を作る店員の女性たちも、それを見て固まっていた。
いつの間にか、近所から多数の野次馬が集まっている。
「ご紹介しよう。こちらはサラ様。シュウ商会のシュウ殿のパートナーであられる」
「う……は、はじめまして」
ベーゼルスからの紹介に、やっとの思いで店主は声を出した。しかし、「あら、昨日もお会いしてますよ?」とにこやかに受け答えるサラを前に、ぐびりと息を呑む。
「店主? サラ様はただの女性ではないぞ。シュウ殿の〝黒竜殺し〟と同じく、冒険者としての二つ名さえお持ちの方だ」
「ま……〝舞姫〟?」
「そうだ。決して無礼などせず、ひいきにしてもらうと良い」
「サラへの非礼は、僕たちへの挑戦みたいなもんです。きっと大丈夫ですよ、ベーゼルスさん」
シュウも笑いながらダメ押しする。
「それもそうだな、わっははは」
ベーゼルスがわざと大声で周囲に声を響かせた。
それを聞いた野次馬たちがざわめき出す。鎧姿や普段着のサラに見覚えのある者もいたが、彼らでさえ、やや興奮気味に、ドレスアップしたサラの美しさについて語り合っていた。
「さて店主、最後に紹介しよう。アリシア様だ」
「ア、アリシア……さま?」
「彼女もシュウ殿のパートナーのお一人だ。獣人族の前族長、バール殿の一人娘で、現族長のゼク殿の妹御であらせられる。また我々にとっては、『獣人族の秘薬』と名高い薬の、元締めのようなお方だ。決して粗相などないよう……おや、どうした店主?」
すでにショックで固まっていた店主は、ベーゼルスの説明を聞くと、へなへなと座り込んでしまった。
やがて店主が我に返ると、店員たちはサラとアリシアを店内に案内し、採寸したり生地を合わせたりし始めた。男性陣は客をもてなすラウンジに通されて、談笑している。
「そうか、昨日そんなことがあったか」
ベーゼルスがわざとらしく、重々しく言った。
「は、はい。誠にもって恥じ入る次第で……」
店主は深々とシュウに頭を下げる。
「これからは、サラにもアリシアにもこれくらいの対応をお願いしますね?」
シュウはそう言いながら、外の野次馬に目をやる。
この様子では、アリシアの噂も一両日で街中に知れ渡るだろう。反対に暮らしにくくならなければいいな……とシュウは思った。
「しかし店主、危うかったな?」
「は、はあ……」
「ホテル・レオナレルに目をつけられれば、この街で婦人服の仕立てなど、もう出来まいよ。それに、獣人族の秘薬の流通が止められでもしたら、どう責任を取ったもんだろうな?」
いたずらっ子のような表情で、ベーゼルスはまだこの店主を責めている。
「そ、そんな!」
真っ青になって救いの瞳を向けてくる店主に、シュウは「もういいですよ。これからはよろしくお願いします」と慰めの言葉をかけた。
それからサラとアリシアは、レオナレルの高級店を何軒も回ることにした。
罪滅ぼしのつもりなのか、仕立屋の店主が二人を案内してくれたので、シュウとベーゼルスは先に引き揚げる。
そのあとはサラの独壇場だった。
緊張で固まっていたアリシアは、着せ替え人形のように下着からドレス、宝飾品、帽子や手袋といった小物にいたるまで、次々と試着させられた。そのたびににんまりとご満悦のサラ。
あまりに「かわいい、かわいい」と連呼して喜ぶので、本当はへとへとに疲れ果てていたが、アリシアは最後までつきあった。
帰ってから思い返しても、アリシアにとって、まるで夢のようなひと時だった。
◇◆◇
「ちょっと体調悪いから、昨日の買い物の荷物、悪いけど引き取ってきてくれないかな? カタジーナと二人でさ」
翌日、朝食後にサラからそう頼まれたアリシアは、今日も馬車で街に出かけていった。
相変わらず活動的なショートパンツスタイルで、コートは着ていない。
二人を見送ったサラに、後ろからジルベルが声をかけた。
「どこも調子悪そうには見えんがの?」
「うん。これは……アリシアの仕上げ、かな?」
「ふむ」
昨日はサラとアリシアが一緒だったので、注目はサラに多く集まったが、今日は従者を従えたアリシア一人だ。これでレオナレルの住人にも、アリシアの印象が強く刻まれるだろう。
「なるほど、の」
ジルベルもうなずいた。
「ねえ、ジルも今度やってみない?」
悪戯っぽい瞳をきらきらさせるサラ。
「我は人の世を歩くより、この庭の陽だまりが一番居心地が良いわ」
ふんっと鼻を鳴らし、ジルベルはお気に入りの木陰に歩いていってしまった。
大散財して日用品やファッションアイテム、豪華な宝飾品や仕立て着、普段着などをふんだんに買いそろえたためか、アリシアに対するレオナレルの住民たちの覚えは良かった。
アリシアの馬車が着くと、店員たちは店を飛び出して出迎え、美しくラッピングされた荷物を渡し、総出で見送るといった有様だった。
「こ、これはこれで、街が歩きにくくなっちゃった……」
アリシアは困ってしまう。
「そのくらいでよろしいのですよ? アリシア様」
隣に座るカタジーナは、ほほっと笑ってそう言った。
「相手が身分・格式を要求するのであれば、アリシア様も、相手に同じだけのものを要求したらよろしいのです」
「う、うん……」
「それに、今後のアリシア様の言動が、獣人族全体や、シュウ様、サラ様の評判にも影響いたします。責任は重大でございますよ?」
獣人族だと言って偏見をむき出しにしてはばからない人間たちが、ここまで変わった。
そのことに対する喜びは確かにあるが、新しい状況への戸惑いや、いまカタジーナに言われた責任も、新たな課題としてのしかかってきたような気がした。
だけど――アリシアは思う。
シュウの横で生きていく、そう決めたのだ。
だったら、どんな状況も受け入れ、乗り越えなければならない。
「うん。ありがとう、カタジーナ」
アリシアは、レオナレルに来てから初めて、心からの笑みを浮かべてカタジーナにうなずいた。
カタジーナは、優しい微笑みで、そんなアリシアを見守っていた。
2
「ただいま戻りました」
ザフィアが、留守中竜の森の開拓を指揮してくれていた祖母、カトヤに頭を下げる。
カトヤも鷹揚に孫のあいさつを受けていた。
「良く戻った。無事で何よりじゃな」
『無事』という単語に生じた、孫の表情のわずかな変化を彼女は見逃さなかった。
「どうした? 無事ではないのか?」
「いえ、あの……」
ザフィアは淡々と、インズルピペでの冒険や、自らが死にかけた一件をカトヤに語って聞かせた。
「しばらく見ぬ間にずいぶん良い顔を――男らしい顔をするようになったと思っておったが……そのようなことがあったか」
彼に対していつもどこかしら冷たく、よそよそしかった最愛の祖母の、本当に久しぶりに見せる慈しみを含んだ笑顔に、ザフィアは危うく泣きそうになった。彼女がどうして自分を一個の男と扱い、愛しい孫として接しなかったのか、今ならわかる気がしたからだ。
「……俺は、生きながらえることを諦め、肉体の苦痛から一刻も早く逃れたいとさえ思った」
エルフは生来、生命に対する執着が薄い種族だ。
人間よりも精霊に近く、長命で賢く、身体能力や魔法にも秀でている。同時に、欲望のたぐいは人間より薄い。多産な人間に比べ、子孫を残すことにもあまり前向きでないところがあった。
それがどこかしら、エルフの儚い印象につながっているのかもしれない。
「だが、シュウが――あいつが泣きながら言うんだ。俺を助けたい。まだ一緒に旅がしたいってな」
ザフィアはこらえきれず、声を震わせた。
「あいつにはかなわない、と思った」
「……そうか」
万感の思いを言葉に出さず、カトヤはただ相槌を打つ。
ハイエルフ一優れた戦士であるザフィアは、今回の旅でずいぶん人格的な成長をしたのだろう。もはやカトヤが言葉にして聞かせなくても良いほどに。
するとカトヤは、唐突に「ザフィア、嫁を取れ」と言った。
「現在は世界樹が二ヶ所に存在し、二人の守護者がいる。エルフも二ヶ所に分かれなければならず、今後ますます手が足りなくなろう。お前一代で仕えるわけでもないしな。それに、こたびのように命をかけて働かねばならぬ時が、また来るかもしれぬ」
ザフィアは少しの間、難しい顔でなにやら悩んでいたが、「よく考えてみます」とだけ答えた。
カトヤは優しくうなずくと、それ以上は何も言わなかった。
◇◆◇
クリステルとザフィアをエルフの森まで送り届けたシュネが、シュウ商会の邸宅に帰ってきた。
サラはアリシアとシュネを連れて、またレオナレルで買い物をしたり、美味しいものを食べたりして楽しんでいる。
数日過ぎた朝、シュウがシュネに、「悪いけど、ザフィアのところに連れてってくれる?」と頼んだ。
「みんなで出かけるの?」
サラが聞く。
「ううん、ちょっと届け物。すぐ帰ってくるよ」
「え? 何を届けるの?」
「今は内緒。そのうちみんなにもわかるよ」
優しく笑って、シュウはそれ以上答えなかった。
竜の巣の麓に建設中の新しいエルフの里に、シュウがシュネとともにやってきた。
一通り案内を済ませて、ザフィアの家で休憩している時。
「ああそうそう、ザフィア。これ使ってよ」
シュウがアイテムガジェットから取り出したのは、美しい琥珀色をしたエルヴンプレートだった。
弓を主に使う者向けに考案された胸当ては、弓を引いた時、弦の邪魔をしないよう右胸の部分が薄い。逆に、体の左側面の防御に力点が置かれていた。
両手を自由に使えるよう指先が開放された籠手も特徴的だ。なにより、エルフの好むミスリル銀製で、軽いだけでなく硬い。
だが何より注目すべきは、地属性の最上位精霊ノームが自ら祝福したとわかる、そのエンチャントだ。本来白銀色のミスリルが美しい琥珀色に輝いているのは、非常に高レベルな地属性の魔力がふんだんに籠められている証だろう。
「……お前が作ったのか?」
「うん。もうザフィアが傷付かないように、ノームと協力して」
危うく泣きそうになるのをごまかすため、ザフィアはシュウの手を取り頭を下げ、「……ありがとう」と言った。
ガスガス!
突然足を踏まれたザフィアが、慌てて足下を見る。
そこには、シュウの姿を探し出し、抱きつこうと駆け寄ってきたユーガがいた。どうやらザフィアが邪魔でシュウに飛びつけないらしく、顔を一杯に膨らませて怒っている。
「す、すみません。ユーガ様」
すぐさまシュウの手を放すザフィア。するとユーガは満面の笑みを浮かべ、シュウの胸に抱きついたのだった。
「結婚?」
ユーガを膝の上に座らせ、エルフが用意してくれた茶菓子と紅茶を口にしながら、シュウはザフィアの話を聞いていた。
「それも、出来るだけ早いほうがいいとカトヤは言う」
「へえ。いいじゃない。相手はどんな人なの?」
「知らん。五人いるそうだ」
「候補が五人?」
「違う。ハイエルフが一人。後の四人は、ネクアーエルツを護る四つのエルフ氏族から一人ずつ。合わせて五人の嫁だ」
シュウは食べようとつまんだクッキーを落としかけた。
「……それってエルフでは当たり前なの?」
「いや、エルフも人間と基本的には同じ……一夫一妻が一般的だ」
「ザフィアって、王子様かなんかなの?」
「そう言えば俺は話したことはないが……カトヤかクリステルから聞いてないのか?」
「うん?」
「俺たちはグイードの直系だ。俺は父を亡くしてるし、一家の男は俺だけだから、グイードに何かあったら、俺が次のエルフの族長になる。まあ、あの様子では当分その心配はなさそうだがな」
知らなかった。確かにそうであれば、ザフィアには、後継を紡ぐため、人間の王族のような一夫多妻が求められてもおかしくない。
ネクアーエルツの各氏族から均等に一人ずつとなると、そこには何らかの政治的な意味合いも含まれているのだろうか。
ああそうか、とシュウは思う。
ザフィアがシュウになかなか打ち解けなかったのは、愛しい姉を奪われた、という理由だけでなく、生まれてからずっとグイードの後継として育成されてきた彼が、世界樹の守護者になれなかったと鬱屈していたからかもしれない。
「それにしても、お嫁さん五人か……すごいなあ」
「お前にだけは言われたくない」
ザフィアが渋い顔で逆ねじを食わせる。ザフィアの見るところ、シュウの周りに集まる女性は、自分の姉も含め、その誰もがこの世界でも屈指の美女であり、何より大物だった。
ふっと曖昧に微笑んで目を伏せたシュウに、ザフィアは聞いてみることにした。
「シュウ、お前こそどうなんだ?」
「どうって?」
「結婚、だよ」
「うーん。正直、今はまだ早いかな?」
何かを考えるような表情で目を宙に泳がすシュウ。こういう顔をする時は、十八という年齢よりずいぶん幼く見える。
「サラが嫌がるからか?」
「まあもちろんそれもあるんだけど……」
シュウは再び視線をザフィアに戻した。
「僕自身が、結婚も恋愛も、今はまだ早いと思ってるんだ。僕とサラがこの世界の人間じゃなかったのって、言ったっけ?」
「ああ」
「だから、まずはこの世界で何が起きても生きていけるような拠りどころが欲しい。それって、お金とかで何とかなるものじゃないしね」
なるほど、ザフィアも同意する。シュウが異様に商売にこだわる理由は、そんな動機が大きいのだろうとザフィアは思った。
「それに、シュネの家族探しもしなきゃいけないし……あと」
シュウは、急に表情を硬くする。
「僕らがこの世界に連れ込まれた『理由』を知ってるやつがいるんだ」
「……どういうことだ?」
「君を撃ったあいつだよ。あのダークエルフ」
シュウの話す「サラと同時に見た夢の話」を、ザフィアは笑い飛ばさなかった。
エルフたちは精霊に近い存在であるだけに、夢を非常に大切にする。時にとても重大な示唆が含まれることがあるからだ。
「僕たちはあいつに聞きたいことがある。ザフィアにも、その時は手伝ってもらわないとね」
「わかった」
茶化すことなく、ザフィアも同意した。
シュウの膝の上でクッキーをかじり、甘いハチミツ入りのミルクティを飲んでいたユーガがうたた寝を始めたところで、この茶会は散会になった。
その晩、ザフィアは、カトヤに結婚を了承すると伝えた。
満面の笑みを浮かべたカトヤは、さっそくザフィアとシュウを連れてネクアーエルツ大森林のグイードの元を訪ね、婚姻の儀式について報告をすることにした。
「僕はいいよ」と言うシュウに、カトヤが「グイード様がなにやらお話ししたいことがあるようなので、ご同道いただきたいのじゃ」と迫ったので、やむなくシュウも同行することにした。
「それに、シュウ殿にもザフィアの婚儀を祝福する立場で参加して欲しいのじゃが……」
突然の提案に驚くシュウ。
「ええっ? それって司祭みたいなことですか?」
「いやなのか?」
鋭いカトヤの突っ込みだ。
「嫌とかそう言うんじゃなくて……儀式みたいなのよくわからなくて、ダメなんですよ」
シュウも苦笑してつけ加える。
「もちろんお祝いは参加しますけど……」
「そのあたりはグイード様に手ほどきを受けなされ。シュウ殿、あなたもゆくゆくは竜の巣の真の守護者として、ご自身が先頭に立たねばならない身ですからな?」
「う……」
カトヤに諭されて反論も尽きたシュウは、すっかりおとなしくなってしまった。
翌朝、好天の青空を、一行を乗せた白竜シュネの美しい姿が、滑るように飛んでいった。
◇◆◇
「久しいですな」
「ご無沙汰してます」
グイードとシュウは、現在レジナレス世界に二人いる「世界樹の守護者」だ。
種族も年齢も経験も……何もかもが違う二人だが、やはりどこか通じるものがある。
シュウは彼といる時には非常に心安く感じるのだが、実は、グイードも同じ感覚をシュウに抱いていた。
がっちり握手した手の上に左手も添えて、長い長い時を経て滅多に感情を出さなくなったグイードが、珍しく全身でシュウとの再会を喜んでいる。
そんな二人を邪魔しないよう、ザフィアとカトヤは早々に、クリステルのいる居室に移っていった。
というよりむしろ、一気に話を進めようというカトヤが、援軍を求め、クリステルのところにザフィアを引きずっていった形だ。
クリステルのところに行ったのはシュネも一緒だった。
その中でカトヤは、シュネに「レオナレルに残っている一行を賓客として連れてきて欲しい」と依頼した。
「承知しました」
シュネは即座に了承すると、そのままシュウに確認を取り、レオナレルに飛び立っていった。
ザフィアが嫁を取ると聞いて、グイードは「ほう」とうなずいただけだった。
「シュウ殿」
「はい」
「こたびの婚儀、シュウ殿に仕切っていただきたいのだが」
グイードが、謹厳な顔を若干ほころばせながらシュウに頭を下げる。
「そのことですが、僕にはちょっと荷が重すぎます」
シュウは率直に、自分が若年であり、そうした経験がないこと、自分たちが元々いた世界では、未成年が婚姻を司るなど例がなく、気が進まないことを話した。
しかし、残念そうな表情をしたグイードを見てシュウの胸は痛む。
「でしたら、グイードさん。僕はあなたの隣で一緒に……というのはどうでしょうか?」
シュウにとってはここが妥協の限界だ。
「それは良い。例のないことではあるが、なに、『守護者』が二人いるのも何かの縁だろうからの」
「ありがとう」
優雅にラルスに礼を言ったその女性――サラを見て、「ほう」と女店員の誰かがため息をついた。
そのまま王宮に行っても通用しそうなサラのドレスは腰高で、素材の良さと仕立ての見事さが際立つクリーム色の絹地が、陽光できらきらと光っている。
胸元にあるコサージュの留め金はプラチナで、贅沢にサファイアで彩られている。
そしてなんと言っても圧巻なのが、イヤリングの宝石と、頭のティアラだった。
とくに純銀に数個のルビーがあしらわれたティアラは、サラの青みがかったブロンドの髪をゴージャスに演出している。
ラルスの傘の下を歩くその姿には、気品が溢れていた。
続いて、この店の店員の良く見知った顔――カタジーナが現れる。
カタジーナは、ラルスと同じく、あとから来る女性のために日傘を差した。
「う……」
店主が、最後に現れた女性を見て声を詰まらせる。
「あ、ありがとう」
カタジーナにそう声をかけ傘の下を歩くのは、昨日店主が冷たく追い出した獣人族の娘――アリシアだった。
両サイドに並んで道を作る店員の女性たちも、それを見て固まっていた。
いつの間にか、近所から多数の野次馬が集まっている。
「ご紹介しよう。こちらはサラ様。シュウ商会のシュウ殿のパートナーであられる」
「う……は、はじめまして」
ベーゼルスからの紹介に、やっとの思いで店主は声を出した。しかし、「あら、昨日もお会いしてますよ?」とにこやかに受け答えるサラを前に、ぐびりと息を呑む。
「店主? サラ様はただの女性ではないぞ。シュウ殿の〝黒竜殺し〟と同じく、冒険者としての二つ名さえお持ちの方だ」
「ま……〝舞姫〟?」
「そうだ。決して無礼などせず、ひいきにしてもらうと良い」
「サラへの非礼は、僕たちへの挑戦みたいなもんです。きっと大丈夫ですよ、ベーゼルスさん」
シュウも笑いながらダメ押しする。
「それもそうだな、わっははは」
ベーゼルスがわざと大声で周囲に声を響かせた。
それを聞いた野次馬たちがざわめき出す。鎧姿や普段着のサラに見覚えのある者もいたが、彼らでさえ、やや興奮気味に、ドレスアップしたサラの美しさについて語り合っていた。
「さて店主、最後に紹介しよう。アリシア様だ」
「ア、アリシア……さま?」
「彼女もシュウ殿のパートナーのお一人だ。獣人族の前族長、バール殿の一人娘で、現族長のゼク殿の妹御であらせられる。また我々にとっては、『獣人族の秘薬』と名高い薬の、元締めのようなお方だ。決して粗相などないよう……おや、どうした店主?」
すでにショックで固まっていた店主は、ベーゼルスの説明を聞くと、へなへなと座り込んでしまった。
やがて店主が我に返ると、店員たちはサラとアリシアを店内に案内し、採寸したり生地を合わせたりし始めた。男性陣は客をもてなすラウンジに通されて、談笑している。
「そうか、昨日そんなことがあったか」
ベーゼルスがわざとらしく、重々しく言った。
「は、はい。誠にもって恥じ入る次第で……」
店主は深々とシュウに頭を下げる。
「これからは、サラにもアリシアにもこれくらいの対応をお願いしますね?」
シュウはそう言いながら、外の野次馬に目をやる。
この様子では、アリシアの噂も一両日で街中に知れ渡るだろう。反対に暮らしにくくならなければいいな……とシュウは思った。
「しかし店主、危うかったな?」
「は、はあ……」
「ホテル・レオナレルに目をつけられれば、この街で婦人服の仕立てなど、もう出来まいよ。それに、獣人族の秘薬の流通が止められでもしたら、どう責任を取ったもんだろうな?」
いたずらっ子のような表情で、ベーゼルスはまだこの店主を責めている。
「そ、そんな!」
真っ青になって救いの瞳を向けてくる店主に、シュウは「もういいですよ。これからはよろしくお願いします」と慰めの言葉をかけた。
それからサラとアリシアは、レオナレルの高級店を何軒も回ることにした。
罪滅ぼしのつもりなのか、仕立屋の店主が二人を案内してくれたので、シュウとベーゼルスは先に引き揚げる。
そのあとはサラの独壇場だった。
緊張で固まっていたアリシアは、着せ替え人形のように下着からドレス、宝飾品、帽子や手袋といった小物にいたるまで、次々と試着させられた。そのたびににんまりとご満悦のサラ。
あまりに「かわいい、かわいい」と連呼して喜ぶので、本当はへとへとに疲れ果てていたが、アリシアは最後までつきあった。
帰ってから思い返しても、アリシアにとって、まるで夢のようなひと時だった。
◇◆◇
「ちょっと体調悪いから、昨日の買い物の荷物、悪いけど引き取ってきてくれないかな? カタジーナと二人でさ」
翌日、朝食後にサラからそう頼まれたアリシアは、今日も馬車で街に出かけていった。
相変わらず活動的なショートパンツスタイルで、コートは着ていない。
二人を見送ったサラに、後ろからジルベルが声をかけた。
「どこも調子悪そうには見えんがの?」
「うん。これは……アリシアの仕上げ、かな?」
「ふむ」
昨日はサラとアリシアが一緒だったので、注目はサラに多く集まったが、今日は従者を従えたアリシア一人だ。これでレオナレルの住人にも、アリシアの印象が強く刻まれるだろう。
「なるほど、の」
ジルベルもうなずいた。
「ねえ、ジルも今度やってみない?」
悪戯っぽい瞳をきらきらさせるサラ。
「我は人の世を歩くより、この庭の陽だまりが一番居心地が良いわ」
ふんっと鼻を鳴らし、ジルベルはお気に入りの木陰に歩いていってしまった。
大散財して日用品やファッションアイテム、豪華な宝飾品や仕立て着、普段着などをふんだんに買いそろえたためか、アリシアに対するレオナレルの住民たちの覚えは良かった。
アリシアの馬車が着くと、店員たちは店を飛び出して出迎え、美しくラッピングされた荷物を渡し、総出で見送るといった有様だった。
「こ、これはこれで、街が歩きにくくなっちゃった……」
アリシアは困ってしまう。
「そのくらいでよろしいのですよ? アリシア様」
隣に座るカタジーナは、ほほっと笑ってそう言った。
「相手が身分・格式を要求するのであれば、アリシア様も、相手に同じだけのものを要求したらよろしいのです」
「う、うん……」
「それに、今後のアリシア様の言動が、獣人族全体や、シュウ様、サラ様の評判にも影響いたします。責任は重大でございますよ?」
獣人族だと言って偏見をむき出しにしてはばからない人間たちが、ここまで変わった。
そのことに対する喜びは確かにあるが、新しい状況への戸惑いや、いまカタジーナに言われた責任も、新たな課題としてのしかかってきたような気がした。
だけど――アリシアは思う。
シュウの横で生きていく、そう決めたのだ。
だったら、どんな状況も受け入れ、乗り越えなければならない。
「うん。ありがとう、カタジーナ」
アリシアは、レオナレルに来てから初めて、心からの笑みを浮かべてカタジーナにうなずいた。
カタジーナは、優しい微笑みで、そんなアリシアを見守っていた。
2
「ただいま戻りました」
ザフィアが、留守中竜の森の開拓を指揮してくれていた祖母、カトヤに頭を下げる。
カトヤも鷹揚に孫のあいさつを受けていた。
「良く戻った。無事で何よりじゃな」
『無事』という単語に生じた、孫の表情のわずかな変化を彼女は見逃さなかった。
「どうした? 無事ではないのか?」
「いえ、あの……」
ザフィアは淡々と、インズルピペでの冒険や、自らが死にかけた一件をカトヤに語って聞かせた。
「しばらく見ぬ間にずいぶん良い顔を――男らしい顔をするようになったと思っておったが……そのようなことがあったか」
彼に対していつもどこかしら冷たく、よそよそしかった最愛の祖母の、本当に久しぶりに見せる慈しみを含んだ笑顔に、ザフィアは危うく泣きそうになった。彼女がどうして自分を一個の男と扱い、愛しい孫として接しなかったのか、今ならわかる気がしたからだ。
「……俺は、生きながらえることを諦め、肉体の苦痛から一刻も早く逃れたいとさえ思った」
エルフは生来、生命に対する執着が薄い種族だ。
人間よりも精霊に近く、長命で賢く、身体能力や魔法にも秀でている。同時に、欲望のたぐいは人間より薄い。多産な人間に比べ、子孫を残すことにもあまり前向きでないところがあった。
それがどこかしら、エルフの儚い印象につながっているのかもしれない。
「だが、シュウが――あいつが泣きながら言うんだ。俺を助けたい。まだ一緒に旅がしたいってな」
ザフィアはこらえきれず、声を震わせた。
「あいつにはかなわない、と思った」
「……そうか」
万感の思いを言葉に出さず、カトヤはただ相槌を打つ。
ハイエルフ一優れた戦士であるザフィアは、今回の旅でずいぶん人格的な成長をしたのだろう。もはやカトヤが言葉にして聞かせなくても良いほどに。
するとカトヤは、唐突に「ザフィア、嫁を取れ」と言った。
「現在は世界樹が二ヶ所に存在し、二人の守護者がいる。エルフも二ヶ所に分かれなければならず、今後ますます手が足りなくなろう。お前一代で仕えるわけでもないしな。それに、こたびのように命をかけて働かねばならぬ時が、また来るかもしれぬ」
ザフィアは少しの間、難しい顔でなにやら悩んでいたが、「よく考えてみます」とだけ答えた。
カトヤは優しくうなずくと、それ以上は何も言わなかった。
◇◆◇
クリステルとザフィアをエルフの森まで送り届けたシュネが、シュウ商会の邸宅に帰ってきた。
サラはアリシアとシュネを連れて、またレオナレルで買い物をしたり、美味しいものを食べたりして楽しんでいる。
数日過ぎた朝、シュウがシュネに、「悪いけど、ザフィアのところに連れてってくれる?」と頼んだ。
「みんなで出かけるの?」
サラが聞く。
「ううん、ちょっと届け物。すぐ帰ってくるよ」
「え? 何を届けるの?」
「今は内緒。そのうちみんなにもわかるよ」
優しく笑って、シュウはそれ以上答えなかった。
竜の巣の麓に建設中の新しいエルフの里に、シュウがシュネとともにやってきた。
一通り案内を済ませて、ザフィアの家で休憩している時。
「ああそうそう、ザフィア。これ使ってよ」
シュウがアイテムガジェットから取り出したのは、美しい琥珀色をしたエルヴンプレートだった。
弓を主に使う者向けに考案された胸当ては、弓を引いた時、弦の邪魔をしないよう右胸の部分が薄い。逆に、体の左側面の防御に力点が置かれていた。
両手を自由に使えるよう指先が開放された籠手も特徴的だ。なにより、エルフの好むミスリル銀製で、軽いだけでなく硬い。
だが何より注目すべきは、地属性の最上位精霊ノームが自ら祝福したとわかる、そのエンチャントだ。本来白銀色のミスリルが美しい琥珀色に輝いているのは、非常に高レベルな地属性の魔力がふんだんに籠められている証だろう。
「……お前が作ったのか?」
「うん。もうザフィアが傷付かないように、ノームと協力して」
危うく泣きそうになるのをごまかすため、ザフィアはシュウの手を取り頭を下げ、「……ありがとう」と言った。
ガスガス!
突然足を踏まれたザフィアが、慌てて足下を見る。
そこには、シュウの姿を探し出し、抱きつこうと駆け寄ってきたユーガがいた。どうやらザフィアが邪魔でシュウに飛びつけないらしく、顔を一杯に膨らませて怒っている。
「す、すみません。ユーガ様」
すぐさまシュウの手を放すザフィア。するとユーガは満面の笑みを浮かべ、シュウの胸に抱きついたのだった。
「結婚?」
ユーガを膝の上に座らせ、エルフが用意してくれた茶菓子と紅茶を口にしながら、シュウはザフィアの話を聞いていた。
「それも、出来るだけ早いほうがいいとカトヤは言う」
「へえ。いいじゃない。相手はどんな人なの?」
「知らん。五人いるそうだ」
「候補が五人?」
「違う。ハイエルフが一人。後の四人は、ネクアーエルツを護る四つのエルフ氏族から一人ずつ。合わせて五人の嫁だ」
シュウは食べようとつまんだクッキーを落としかけた。
「……それってエルフでは当たり前なの?」
「いや、エルフも人間と基本的には同じ……一夫一妻が一般的だ」
「ザフィアって、王子様かなんかなの?」
「そう言えば俺は話したことはないが……カトヤかクリステルから聞いてないのか?」
「うん?」
「俺たちはグイードの直系だ。俺は父を亡くしてるし、一家の男は俺だけだから、グイードに何かあったら、俺が次のエルフの族長になる。まあ、あの様子では当分その心配はなさそうだがな」
知らなかった。確かにそうであれば、ザフィアには、後継を紡ぐため、人間の王族のような一夫多妻が求められてもおかしくない。
ネクアーエルツの各氏族から均等に一人ずつとなると、そこには何らかの政治的な意味合いも含まれているのだろうか。
ああそうか、とシュウは思う。
ザフィアがシュウになかなか打ち解けなかったのは、愛しい姉を奪われた、という理由だけでなく、生まれてからずっとグイードの後継として育成されてきた彼が、世界樹の守護者になれなかったと鬱屈していたからかもしれない。
「それにしても、お嫁さん五人か……すごいなあ」
「お前にだけは言われたくない」
ザフィアが渋い顔で逆ねじを食わせる。ザフィアの見るところ、シュウの周りに集まる女性は、自分の姉も含め、その誰もがこの世界でも屈指の美女であり、何より大物だった。
ふっと曖昧に微笑んで目を伏せたシュウに、ザフィアは聞いてみることにした。
「シュウ、お前こそどうなんだ?」
「どうって?」
「結婚、だよ」
「うーん。正直、今はまだ早いかな?」
何かを考えるような表情で目を宙に泳がすシュウ。こういう顔をする時は、十八という年齢よりずいぶん幼く見える。
「サラが嫌がるからか?」
「まあもちろんそれもあるんだけど……」
シュウは再び視線をザフィアに戻した。
「僕自身が、結婚も恋愛も、今はまだ早いと思ってるんだ。僕とサラがこの世界の人間じゃなかったのって、言ったっけ?」
「ああ」
「だから、まずはこの世界で何が起きても生きていけるような拠りどころが欲しい。それって、お金とかで何とかなるものじゃないしね」
なるほど、ザフィアも同意する。シュウが異様に商売にこだわる理由は、そんな動機が大きいのだろうとザフィアは思った。
「それに、シュネの家族探しもしなきゃいけないし……あと」
シュウは、急に表情を硬くする。
「僕らがこの世界に連れ込まれた『理由』を知ってるやつがいるんだ」
「……どういうことだ?」
「君を撃ったあいつだよ。あのダークエルフ」
シュウの話す「サラと同時に見た夢の話」を、ザフィアは笑い飛ばさなかった。
エルフたちは精霊に近い存在であるだけに、夢を非常に大切にする。時にとても重大な示唆が含まれることがあるからだ。
「僕たちはあいつに聞きたいことがある。ザフィアにも、その時は手伝ってもらわないとね」
「わかった」
茶化すことなく、ザフィアも同意した。
シュウの膝の上でクッキーをかじり、甘いハチミツ入りのミルクティを飲んでいたユーガがうたた寝を始めたところで、この茶会は散会になった。
その晩、ザフィアは、カトヤに結婚を了承すると伝えた。
満面の笑みを浮かべたカトヤは、さっそくザフィアとシュウを連れてネクアーエルツ大森林のグイードの元を訪ね、婚姻の儀式について報告をすることにした。
「僕はいいよ」と言うシュウに、カトヤが「グイード様がなにやらお話ししたいことがあるようなので、ご同道いただきたいのじゃ」と迫ったので、やむなくシュウも同行することにした。
「それに、シュウ殿にもザフィアの婚儀を祝福する立場で参加して欲しいのじゃが……」
突然の提案に驚くシュウ。
「ええっ? それって司祭みたいなことですか?」
「いやなのか?」
鋭いカトヤの突っ込みだ。
「嫌とかそう言うんじゃなくて……儀式みたいなのよくわからなくて、ダメなんですよ」
シュウも苦笑してつけ加える。
「もちろんお祝いは参加しますけど……」
「そのあたりはグイード様に手ほどきを受けなされ。シュウ殿、あなたもゆくゆくは竜の巣の真の守護者として、ご自身が先頭に立たねばならない身ですからな?」
「う……」
カトヤに諭されて反論も尽きたシュウは、すっかりおとなしくなってしまった。
翌朝、好天の青空を、一行を乗せた白竜シュネの美しい姿が、滑るように飛んでいった。
◇◆◇
「久しいですな」
「ご無沙汰してます」
グイードとシュウは、現在レジナレス世界に二人いる「世界樹の守護者」だ。
種族も年齢も経験も……何もかもが違う二人だが、やはりどこか通じるものがある。
シュウは彼といる時には非常に心安く感じるのだが、実は、グイードも同じ感覚をシュウに抱いていた。
がっちり握手した手の上に左手も添えて、長い長い時を経て滅多に感情を出さなくなったグイードが、珍しく全身でシュウとの再会を喜んでいる。
そんな二人を邪魔しないよう、ザフィアとカトヤは早々に、クリステルのいる居室に移っていった。
というよりむしろ、一気に話を進めようというカトヤが、援軍を求め、クリステルのところにザフィアを引きずっていった形だ。
クリステルのところに行ったのはシュネも一緒だった。
その中でカトヤは、シュネに「レオナレルに残っている一行を賓客として連れてきて欲しい」と依頼した。
「承知しました」
シュネは即座に了承すると、そのままシュウに確認を取り、レオナレルに飛び立っていった。
ザフィアが嫁を取ると聞いて、グイードは「ほう」とうなずいただけだった。
「シュウ殿」
「はい」
「こたびの婚儀、シュウ殿に仕切っていただきたいのだが」
グイードが、謹厳な顔を若干ほころばせながらシュウに頭を下げる。
「そのことですが、僕にはちょっと荷が重すぎます」
シュウは率直に、自分が若年であり、そうした経験がないこと、自分たちが元々いた世界では、未成年が婚姻を司るなど例がなく、気が進まないことを話した。
しかし、残念そうな表情をしたグイードを見てシュウの胸は痛む。
「でしたら、グイードさん。僕はあなたの隣で一緒に……というのはどうでしょうか?」
シュウにとってはここが妥協の限界だ。
「それは良い。例のないことではあるが、なに、『守護者』が二人いるのも何かの縁だろうからの」
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