何の説明もなく異世界に飛ばされました

マカラヒト大陸3

トリアイナ回収作戦はこうだ。
先ずスケート用具を用意して向かい、滑って取りに行く、という単純明快な作戦であった。
「上手くいくといいけど…」
「大丈夫だろ。」
心配そうにする刹那とそれを慰める明日夢。
「それじゃ、レッツゴー！」
篠目が勢い良く手を上げると、皆もそれにつられて手を上げる。
こんなノリで大丈夫なのだろうか。

極雪国につくと、スケート靴を履いてトリアイナの回収に向かう刹那。
何とか取れたはいいが、戻るのに一苦労しそうだ。
何とか明日夢達の所に戻ってきた刹那は疲れ果てていた。
「残るはエクスカリバーだけか…」
「ここまで長かったね…」
東と篠目がそう呟く。
「目的のものも取れたし、寒いしホテルに戻ろうぜ」
そう告げる明日夢に賛成の声を上げる篠目なのであった。

ホテルに着くと、皆余程寒かったのかすぐ風呂に入った。
芯から温まる感触が癖になりそうだ。
しばらくすると明日夢が刹那の部屋にやって来る。
「トリアイナを砕くのは明日でも大丈夫か？」
「大丈夫だよ」
こくり、と頷く刹那。
「悪いな、能力使わせて」
「明日夢が謝ることないよ。」
「刹那は優しいな。」
「そう？ありがとう…」
照れくさそうに笑う刹那。
2人の他愛のない会話はしばらく続いた。
「さて、明日独楽大陸に戻るし今日は早めに寝るか」
「うん、おやすみ、明日夢」
「おやすみ、刹那」
そう言って別れを告げると、ベッドにダイブする刹那。
ウトウトとしているうちに眠ってしまっていた。

部屋に戻った明日夢は明日の事を考えていた。
「カミサマが私達の行動を予測しているはずなのにどうして黙認しているんだろうな…」
「恐らく私達はには不可能だと思っているのでしょう」
そう答えるルシフェル。
「そう言えば、刹那の元の世界での話聞いたことないな」
ふとそんなことを口にする明日夢。
「確かに。あの人間には魔力がありましたし…明日詳しく聞いてみましょうか」
「そうだな。」
こくり、と頷く明日夢。
独楽大陸へは2日かかるので話を聞くには充分時間があった。
明日夢はベッドに横になるとすやすやと寝息を立てて眠っている。
そんな主の姿を見るルシフェル。
「マスターは今日相当疲れているな。明日倒れなければいいが…」
ぽつりとそう呟くルシフェル。
主に対しては絶対の忠誠を誓っているので尚更不安になる。

いつの日だったか、明日夢と出会う前のルシフェルは傍若無人かつ傲慢極まりない性格であった。
ソロモンの指輪を持つ明日夢が現れてからは明日夢を主とし、忠誠を誓ってきた。
ルシフェルは他の71柱の魂を宿しており、時々その人格が再現される。
今はルシフェルのままだがそのうち違う悪魔も出てくるだろう。
そんな事を考えながら主を見守るルシフェルなのであった。