上 下
10 / 21

独楽大陸

しおりを挟む
独楽大陸の中心国、神国。
カミサマを祀る鳥居の上。
そこには美しい九尾の狐が居た。
名を神楽。
ルトリッカでカミサマの次に魔力を持つ妖狐である。
「ふぁ…退屈じゃのう」
「神楽様、少しいいですか?」
そう言う1尾の狐、鞍馬。
鞍馬は神楽のお気に入りの妖狐だ。
「鞍馬か。良い。申してみよ」
「最近ルトリッカに異世界人が来たって噂だよ!黒髪の綺麗な女の子だって!」
「ほう…?1度会ってみるかのう」
鳥居から飛び降りると、簪からシャラン、と鈴の音を響かせる。
「少し席を外す。何かあれば鴉を通じると良い。」
「はーい!」
歩く度に鈴の音を響かせて神楽は独楽大陸の端の地区に向かうのであった。

「おい、人間、朝だぞ」
「んん…」
ふぁ、とあくびをする刹那。
ルシフェルが起こしに来てくれた様だ。
「起こしに来てくれたの…?」
「そうだ。マスターからの命令でな。」
「そっか…ありがとう、ルシフェル」
「礼を言われることは無い。」
相変わらずつれない態度のルシフェル。
「そう言えば、ルシフェルしか悪魔はいないの?」
「他にもいるぞ。私の中で眠っているがな」
「ふぅん…。」
他愛のない話をしながら廊下を歩く2人。
「お、刹那おはよう。」
「おはよう、明日夢。」
今日の朝食はリンゴの様な果実とパンのようなものだった。
「今日はユニコ大陸を案内しようと思ってるんだけど大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。」
こくり、と頷く刹那。
「じゃあ食べたら早速行こうか」
「うん。」
その時、屋敷のインターホンが鳴った。
「あたしが出るよ」
そう言うと明日夢は玄関に向かっていく。

「朝早くからすまんのう。新しい人間が来たと聞いて来たのじゃが…」
「神楽様!?」
「そうじゃ。妾が神楽じゃ。早う案内せい」
「は、はい…!」
慌てた様子で神楽を通す。
そこには朝食をとっている刹那とルシフェル、東に篠目の姿があった。
「神楽様、どうしてここに…」
驚く東と篠目に対してきょとんとした顔をする刹那。
「神楽…さん…?」
「そなたが新しく来た人間じゃな。妾が神楽じゃ。恐れ敬うが良い」
「神楽様が刹那に何の用で…?」
東がそう問いかける。
「なに、ただの挨拶ついでじゃ。」
「は、はぁ…」
「神楽さんはそんなに偉い人なの?」
刹那がそう問いかける。
「偉いも何も、独楽大陸の中心国、神国を治める主だよ…!」
冷や汗をかきながら答える明日夢。
「そういうことじゃ。今度神国に来てみるが良い。客としてもてなしてやろうぞ」
ケラケラと鈴の啼くような声で笑う神楽。
「じゃあ今度お邪魔しますね…!」
そう言って笑う刹那。

しばらくすると神楽は満足したのか帰って行った。
「あぁ、緊張した…」
「マスター、あんな狐風情に傅くことは無いと思いますが」
「そんな事出来るわけないだろ…!」
「…そうですか、それは失礼致しました。」
珍しく対立する明日夢とルシフェル。
「まぁまぁ、とりあえずえっと、ユニコ大陸に案内してくれる?」
「刹那切り替え早いね~」
ケラケラと笑う篠目とそう?と首を傾げる刹那。

明日夢に連れられてユニコ大陸行きの船に乗る。
船には人間だけでなく、悪魔や天使など様々な種族がいた。
「そろそろユニコ大陸に着くぞ」
「少し緊張してきた…」
「大丈夫だって。あたしに任せとけ」
ドヤ顔をする明日夢。
ユニコ大陸に着くと歓迎ムードか、市場が開かれていた。
骨董品や食料、ブレスレットなど色々なものが売られていた。
「凄い…港町でこんなに賑わってる…!」
「だろ?」
「おー!明日夢ちゃん!今日は連れがいるのか!」
魚を売っている男性が明日夢に声をかける。
「ん、今日はユニコ大陸を案内しに来たんだ」
「ほー、そうかそうか!そいつァいいな!」
ゲラゲラと笑う男性。
「良かったら今度うちの店に寄ってってくれよな!」
「勿論!おっさんの魚はユニコ大陸1番だからな!」
ニッカリと笑う明日夢。
つられて苦笑いをする刹那。

市場やカフェなど色んな場所を案内してもらうと、すっかり日が暮れていた。
「そろそろ帰るか」
「ん、そうだね」
2人は独楽大陸行きの船に乗ってユニコ大陸を後にする。
手荷物には大量の食材や日用品が詰まっていた。

屋敷に戻ると、ルシフェルが出迎えてくれた。
「マスター、夕食を作っておきましたので良ければどうぞ」
「ありがとう、ルシフェル」
夕食を終えた後、刹那は部屋に向かった。
どうやら日記を書いている様だ。
今日あった出来事を書き留めると、ベッドに横になる。
しばらくするとすやすやと寝息を立てて眠っていた。
波乱の1日はこうして終わりを告げるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

待ってはくれない世界で

浅間梨々
ファンタジー
記憶を失った少女カナデ。湖の盗賊ラビス。売れない画家トニファ。家出少女のアマテリ。数奇な運命を巡って出会った4人は、この世界「ケイプランドス」を侵攻する暗黒帝カルロスを倒すべく、冒険に出かける。 シリアス多めでコミカル少々、だけどちょっと心をえぐられる?

機龍世紀3rdC:暗黒時代~黒髪の騎狼猟兵

武無由乃
ファンタジー
 家の神社の裏にある禁足地に勝手に踏み込んでしまった小学生アストは、女子高生の姉カナデと共に異世界サイクレストへと飛ばされる。その世界にある三つの大陸のうちの一つソーディアン大陸で目覚めたアスト達は、突如謎の騎士の襲撃を受ける。その襲撃から命からがら逃げだしたアスト達だったが、その逃避行の間に姉カナデとはぐれ、ただ一人黒の部族と呼ばれる人々に助けられる。  そして……。  それから八年の後、逞しい戦士に成長したアストは、姉を探し出すためにソーディアン大陸を巡る旅に出る。 共に育った黒の部族の妹リディアと共に……。  神が食い殺された大陸を巡る、異邦人アストによる冒険物語。 ※ 本作品は、本編が『Chapter 〇』と『World Building 〇』というページによって構成されています。『World Building 〇』は世界設定を解説しているだけですので、もしストーリーだけ楽しみたい方は『World Building 〇』のページを飛ばして読んでください(ただし『World Building 0 ソーディアン大陸』は読んでいること前提でストーリーが進みます)。 ※ 『同時掲載』小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、ノベルアッププラス、ノベリズム、ノベルバ、Nolaノベル ※ 一部の投稿サイトには世界・地方地図が掲載されています。

魔王を倒した勇者

大和煮の甘辛炒め
ファンタジー
かつて世界に平和をもたらしたアスフェン・ヴェスレイ。 現在の彼は生まれ故郷の『オーディナリー』で個性的な人物達となんやかんやで暮らしている。 そんな彼の生活はだんだん現役時代に戻っていき、魔王を復活させようと企む魔王軍の残党や新興勢力との戦いに身を投じていく。 これは彼がいつもどうりの生活を取り戻すための物語。 ⭐⭐⭐は場面転換です。 この作品は小説家になろうにも掲載しています

最悪から始まった新たな生活。運命は時に悪戯をするようだ。

久遠 れんり
ファンタジー
男主人公。 勤務中体調が悪くなり、家へと帰る。 すると同棲相手の彼女は、知らない男達と。 全員追い出した後、頭痛はひどくなり意識を失うように眠りに落ちる。 目を覚ますとそこは、異世界のような現実が始まっていた。 そこから始まる出会いと、変わっていく人々の生活。 そんな、よくある話。

転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯
ファンタジー
 異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。  成長したアウルムは冒険の旅へ。  そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。 (ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)  お時間ありましたら読んでやってください。  感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。 同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269 も良かったら読んでみてくださいませ。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

僕は知っていた、彼女が魔女であることを

月兎 咲花
ファンタジー
ある日学校へ行くために立っていたホームで彼女が居たことに気付いた、誰も彼女のことを気にしない。 だけど僕だけには妙な確信があった。 会ったことも話したことも、ましてや名前すら知らない彼女は魔女であると。 その彼女も僕に気付くわけもなく、視線すら向けてこない。 今日こそはその彼女に声を掛けよう。 「キミは魔女だよね」、とーーーー

美人教師の飛鳥先生は、史上最も邪悪なサモナー(召喚士)らしい【1巻】

平木明日香
ファンタジー
青山学園の数学教師に就職していた日比野飛鳥は、10年前に失踪した幼馴染、杉山健太の行方を追っていた。 健太は霊界の“反逆児“と呼ばれるハデスの勧誘を受け、魔族たちの住む冥府へと旅立っていた。 生まれつき特異な体質を持っていた彼は、ハデスのある「計画」に利用できるのではないかと目されていた。 “触れた者の魂を無形化できる“ その、『特性』を。 ハデスは霊界の六王と呼ばれる魔導府の使者たちの追手を掻い潜り、ある“野望”を企てていた。 人間界と霊界の境界を壊す。 人間たちの心を融かし、すべての生命と原始大海が覆っていた太古の地平を取り戻す。 そのために、人間たちの魂で汚れた「不浄の土地」を一掃しようとしていた。 霊界を守護する、『魔法省』の転覆を手始めに。

処理中です...