2 / 5
【承】生きてみることにする。
しおりを挟む「着いたぞ。」
わぁ、思ってたよりずっといい家だ。
木と木の間を縫うように歩いていたけど
気づいたら開けたところに家があった。
これ、外出たら間違いなく迷子だな。
「あー、嬢ちゃん。
とりあえずこの辺に下ろすな?」
あー、自分で歩かなくていいの、
楽だったのにな。
悲しそうな顔をしてしまったらしい。
お兄さんが困ったように笑って
頭をくしゃってしてくれた。
優しい悪魔だ。
「えーっと、お兄さん?悪魔さん?
それとも悪魔様?
あ!逆に堕天使さん?」
「何が逆なのかわからんが
とりあえず不便もねぇし当面はお兄さんでいい。」
「わかりましたお兄さん。」
「お前は?」
「お嬢ちゃんでも幼女でも女でもいいよ。
ポチ?ミケ?タロウ?ハナコ?
巨乳でもナイスバディでも可。」
「よく聞け嬢ちゃん。
Aカップは巨乳とは言わない。」
「寄せてあげればBカップ。」
「だとしても貧乳だ。」
「お兄さんは巨乳が好きなの?」
「胸はあって困るものじゃない。」
真剣な顔で諭されちった。
ちょっとした冗談なのに。
ブラもしてないスペーンな胸を見下ろして
少し凹んだ。
胸が凹んだんじゃないよ。
さて、一人で悲しくなったところで
お兄さんの横に付く。
「ん、どした?」
「どこにいたらいいかわからないので
とりあえずお兄さんの近くにいようと思って。」
お兄さんは笑って手を引いてくれた。
「俺も困らんし当面は嬢ちゃんでいいか。
ほら、案内する。」
「私は何したらいい?
やっぱりナニ?」
「女の子がそんなこと言うもんじゃねぇぞ。」
「女の子は下ネタを言わないなんて
考え方が古いよお兄さん。」
「嬢ちゃんはどういう教育を受けてきたんだ、、?」
「まともな教育を受けてないから
こうなったとしか言いようがない。」
「どうやったらこうなんだよ、、。」
「それは割と私も知りたい。」
「本人がそれじゃ迷宮入りだろ。」
「教育の闇ってやつだね。」
「口の減らねー嬢ちゃんだな。」
「口は一つしかないからね、
これ以上減ると
あんなことやこんなことができなくなっちゃう。」
「それ以上に困ることがあんだろ、、。」
「お兄さんにとってはそれが大事じゃ無いの?」
「俺は餓鬼に手を出すほど飢えてねぇよ、、。」
「やっぱり胸なの?」
「、、、、、。」
「胸なのかぁ、、。」
見下ろした絶壁に再び凹んだ。
胸がじゃないってば、、。
心で泣いた。
お兄さんと話すのは楽しい。
返事が返ってくるし、喋ってて怒られないし、
殴られないし、物も飛んでこない。
まぁ殴られても物を投げられても
別に反省はしないんだけど。
「あぁ、そのせいでこうなったのか。」
「なに自己完結してんだよ。」
「私がなぜこうなったのか理解したとこ。」
お兄さんは呆れた顔でこちらをみている。
「お兄さんイケメンだね。」
「なんだ、藪から棒に。」
「呆れた顔すらイケメンだから
何してもイケメンだなきっと、と思って。」
「そりゃどーも?」
「対応が雑、、言われ慣れてるのか。」
お兄さんは笑って抱き上げてくれた。
ぬぅ、、行動すらイケメンだ。
そして歩かなくていいの楽だな。
一生歩かず過ごしたい。
「それは筋力低下するからやめたほうがいいぞ。」
「あれ?口から出てた?」
「出てたでてた。」
「私ってば隠し事とかできないタイプだな、、。」
「自分で言うのかよ、それ。」
それでも下ろすことなく
抱えて歩いてくれるお兄さんまじイケメン。
その間にトイレ、風呂、キッチン、リビング、書斎に案内してくれた。
ほぼ覚えてないけど。
「私は床とかで寝ればいいの?」
「なんで部屋があんのに床で寝んだよ。」
「え、家には連れてきてやったけど
気まぐれだし意味もないから
死ぬまでその辺で転がってろってことじゃないの?」
「お前な、話聞いてたか?
嬢ちゃんは俺に愛されて生きるんだよ。
その手を取った嬢ちゃんに拒否権はねぇよ?」
赤い目が、じっと私を見つめてくる。
心なしか責めるような視線だ。
あー、早いとこ、、
見切りをつけるつもりだったのにな、、。
仕方ないか。
信じてなんかいないけど、
いつか捨てられるその時まで、
とりあえず生きてみることにする。
「悪魔に拐かされたんじゃ、
死に逃げることもできないか。」
ポツリと漏らした声を聞いてお兄さんが悪魔みたいに
にぃっと笑った。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~
瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)
ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。
3歳年下のティーノ様だ。
本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。
行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。
なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。
もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。
そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。
全7話の短編です 完結確約です。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる