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その5

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「ごめんなざい……」

 3往復ビンタで顔をパンパンに腫らし、リホの後ろを着いていくワタル。
 今度の部屋は「バランスの間」
 説明書きにはシンプルに「谷底に落ちることなく、前に進め」とある。
 薄暗く先が全く見えない長い通路。床は平均台の様な細さのものが2本平行に走り、それ以外は真っ暗な穴が広がっている。
 まさか落ちれば死ぬなんてことはないだろうが、先程の電気ショックの件もあり、慎重に行かざるを得ない。

(ちょっとは痛い目見るといいわ!)

 ワタルの謝罪を完全無視し、一人進むリホ。
 運動神経抜群のリホ。左右片足ずつ平均台に乗せ、少し股を開く格好で、落下の恐怖に臆することなく快調に進んでいく。

「ちょっと待ってよ!置いていかないで!」

 度が過ぎたいたずらにご立腹のリホ。声を無視しズンズン進み、あっという間にワタルとの距離を離す。

「ちぇ……つれないなぁ……なにが起こるかわからない、こんな時こそ協力しないといけないのに……」

 すっかり見えなくなったリホの後ろ姿に、一人ごちるワタル。
 ガサゴソと背中のリュックをかき回し、何やら道具を取り出す。

「じゃじゃーん 暗視カメラ付き高性能ドローン!」

 取り出したドローンは、天才発明家ワタル特性。小型ながらもパワフル。結構な重量のものも運べる優れもの。

「まずは状況確認っと」

 ドローンとリンクした眼鏡型ディスプレイをかけ、まずは穴の様子を探る。
 深さはせいぜい3メートル程、底に厚いクッションも敷かれており、落ちても全く問題はなさそうである。

「ここは流石に安全面は考慮されてるか……」

 ドローンを操り、身の回りの安全確認を終えたワタル。
 次はゲームの攻略である。

「でわでわ。これにちょちょいと結び付けてっと……いざテイクオフ!!」

 ドローンにロープを括り付け発進させる。
 ゴールまでロープを通し、それを頼りに進もうという作戦だ。

 ヒューン……

 軽快な音を立て、ロープを運びながらもかなりの速度で突き進む。

 「お!いたいた!」

 先を進むリホが見えた。



「お先に!」

 あっという間にリホの足元を潜り抜け、さらに先を突き進むドローン。
 しばらく進むと次の部屋への扉が見えた。

「ん~……ただ長いだけで全然面白いアトラクションじゃないね」

 まだ未完成なのか。途中仕掛けらしいものも無く、すんなり最後まで来てしまった。

「まぁいいや。それならこっちで面白くしちゃおう!」

 ドローンから小さなマニピュレーターが出現し、器用にロープを解き、代わりにゴール扉の取っ手に括り付ける。

「これでよしっと」

 ロープを引っ張り手ごたえを確認するワタル。
 しっかりと括り付けられた感触を確認し、グイっとロープを手繰り寄せながら平均台を進む。

「順調順調♪」

 落ちても平気という安心感とロープを手にしたワタル。徐々にリホとの差を詰めていく。
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