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その1
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「あっちー……」
今日はこの夏、新しくオープン予定のリアル脱出ゲームのモニターのアルバイトとしてやってきたリホとワタル。
まだ5月だというのに、まるで真夏の様な日差しでセミの声でも聞こえてきそうだ。
案内された待合室は空調の利きが悪いのか、風が無い分、屋外より蒸し暑く感じる。
「ほんとね……まいっちゃうわ」
さっきまで着ていたジャケットを脱ぎ、汗で張り付いたタンクトップを掴んでパタパタと風を送りながら、うんざり顔で返事を返すリホ。
パタパタ仰ぐたび、窮屈そうに収まった胸の谷間がチラチラ見える。
「リホちゃん……暑いからってだらし無い!ノーブラは良くないぞ?」
「ちょっと何見てるのよ……これはブラトップよ!」
「へ~……どれどれ?」
タンクトップの胸元を掴んだかと思うと一気に下へとずらすワタル。
ぷるるん!
リホの大きくて張りのあるオッパイ。そして綺麗なピンク色の突起が飛び出す。
「きゃあ!何やってるのよ!」
「グブ」
速攻で飛んできたパンチを顔面に受けるワタル。
「……たく……ワタルの格好の方がよっぽどだらし無いわよ」
暑さでまいっているのか、ワタルのいたずらにもパンチ一発で済ましてしまうリホ。
くたびれたTシャツにジーンズとサンダル姿の、コンビニに買い出しへ行くようなスタイルのワタルを一瞥し、気怠げに言い放つ。
「それに、そんな大荷物背負って……いったい何を持ってきたのやら」
ワタルの背には、一際異彩を放つ大きなリュックが。
「いてて……いや冒険するのに用心し過ぎることはないってね」
いつもの調子で待合室で話す二人の元に、担当者がやってきた。
「いやいや。お待たせして申し訳ない。色々立て込んでててね」
「いえいえ、お気になさらず……」
『ピロロロ……』
リホの返事を遮り担当者の携帯が鳴る。
「チッ……」
軽く舌打ちをしながら電話に出る担当者。そのままついて来いと二人に手招きをする。
「なんだか忙しそうだね……」
「そうね……どこも不景気で人手不足なのかしら?」
確かにまだオープン前ではあるが、ほとんどスタッフを見かけることもなく、見かけても皆バタバタと忙しそうに走り回っている。
「まったく……すまないね。想定外のトラブルが色々あってね……部屋も暑かったでしょう?ホント申し訳ない」
電話を終えた担当者が、二人を足早に先導しながら今日の業務内容の説明を始める。
「二人には頭脳と身体を使って、からくり屋敷から脱出するリアル脱出ゲームのモニターをしてもらうんだけど……まだ未完成の部分も多いんだが兎に角普通に遊んでくれれば良い。その後色々気が付いた所を答えてくれれば……」
説明を受けながらアトラクションの入口に到着する。
洋館をモチーフにした入口ゲート。重厚な扉が参加者を出迎えている。
『ゴゴ……ゴゴゴゴ……』
担当者が両手で重い扉を押し開ける。
3人が部屋に入ろうとした途端にまた携帯が鳴る。
「全く今度はなんだよ……はい……なんだって!?」
2人を部屋に招き入れた後、何の説明も無いまま踵を返し、元来た通路を足早に去っていった。
『ズズン……』
重厚な扉がピタリと閉じられると、シンとした静寂に包まれた。
「……えっと ここで待ってれば良いのかな?」
訳もわからず部屋に取り残された2人であった。
今日はこの夏、新しくオープン予定のリアル脱出ゲームのモニターのアルバイトとしてやってきたリホとワタル。
まだ5月だというのに、まるで真夏の様な日差しでセミの声でも聞こえてきそうだ。
案内された待合室は空調の利きが悪いのか、風が無い分、屋外より蒸し暑く感じる。
「ほんとね……まいっちゃうわ」
さっきまで着ていたジャケットを脱ぎ、汗で張り付いたタンクトップを掴んでパタパタと風を送りながら、うんざり顔で返事を返すリホ。
パタパタ仰ぐたび、窮屈そうに収まった胸の谷間がチラチラ見える。
「リホちゃん……暑いからってだらし無い!ノーブラは良くないぞ?」
「ちょっと何見てるのよ……これはブラトップよ!」
「へ~……どれどれ?」
タンクトップの胸元を掴んだかと思うと一気に下へとずらすワタル。
ぷるるん!
リホの大きくて張りのあるオッパイ。そして綺麗なピンク色の突起が飛び出す。
「きゃあ!何やってるのよ!」
「グブ」
速攻で飛んできたパンチを顔面に受けるワタル。
「……たく……ワタルの格好の方がよっぽどだらし無いわよ」
暑さでまいっているのか、ワタルのいたずらにもパンチ一発で済ましてしまうリホ。
くたびれたTシャツにジーンズとサンダル姿の、コンビニに買い出しへ行くようなスタイルのワタルを一瞥し、気怠げに言い放つ。
「それに、そんな大荷物背負って……いったい何を持ってきたのやら」
ワタルの背には、一際異彩を放つ大きなリュックが。
「いてて……いや冒険するのに用心し過ぎることはないってね」
いつもの調子で待合室で話す二人の元に、担当者がやってきた。
「いやいや。お待たせして申し訳ない。色々立て込んでててね」
「いえいえ、お気になさらず……」
『ピロロロ……』
リホの返事を遮り担当者の携帯が鳴る。
「チッ……」
軽く舌打ちをしながら電話に出る担当者。そのままついて来いと二人に手招きをする。
「なんだか忙しそうだね……」
「そうね……どこも不景気で人手不足なのかしら?」
確かにまだオープン前ではあるが、ほとんどスタッフを見かけることもなく、見かけても皆バタバタと忙しそうに走り回っている。
「まったく……すまないね。想定外のトラブルが色々あってね……部屋も暑かったでしょう?ホント申し訳ない」
電話を終えた担当者が、二人を足早に先導しながら今日の業務内容の説明を始める。
「二人には頭脳と身体を使って、からくり屋敷から脱出するリアル脱出ゲームのモニターをしてもらうんだけど……まだ未完成の部分も多いんだが兎に角普通に遊んでくれれば良い。その後色々気が付いた所を答えてくれれば……」
説明を受けながらアトラクションの入口に到着する。
洋館をモチーフにした入口ゲート。重厚な扉が参加者を出迎えている。
『ゴゴ……ゴゴゴゴ……』
担当者が両手で重い扉を押し開ける。
3人が部屋に入ろうとした途端にまた携帯が鳴る。
「全く今度はなんだよ……はい……なんだって!?」
2人を部屋に招き入れた後、何の説明も無いまま踵を返し、元来た通路を足早に去っていった。
『ズズン……』
重厚な扉がピタリと閉じられると、シンとした静寂に包まれた。
「……えっと ここで待ってれば良いのかな?」
訳もわからず部屋に取り残された2人であった。
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