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盛大な歓迎のその後に
39.心も丸裸
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部屋へ帰り、早々にドレスを脱がせてもらったマリは、久しぶりにひとりの夜を迎えていた。彼がいつも近くにいたから寒さなんて感じなかったのに、今日はなんだか冷え込んでいる気がする。
ベッドからシルクのシーツを抜いて、全身を包むように羽織った。さっきまでのヒールよりも低い、普段履いているミュールを履く。この間まで、この変態!と心の中で思っていたのに、今ではハイデルが用意してくれたものがすべて、とても輝いて見えた。
……変態だなぁとは、正直まだ思ってはいるけど。
冷静に考えてまだたった半月ちょっとしか経っていないのに、ここにはずっと長く住んでいる場所のような居心地の良さがある。きっと、ここにきてからのうち、ほとんどの時間をここで過ごしているからだろうな、とあまり深くは考えなかった。
今日は、この国の文化や歴史を自分が何も知らないこと、周りを助けてくれている人がこんなにもたくさんいるのだということ、そして…ハイドと自分が同じ気持ちを抱いていてくれていたこと。多くの事を肌で感じた一日だったと思いを巡らせた。
ベッドに腰かけ、彼の事を思い出すと、身体はもう抱かれたいと声を上げるほど、心も体も彼の虜になっている自分がいる。思わず恥ずかしくなってベッドに突っ伏し、もだもだと動き回っていると、ベッドサイドに人の気配を感じた。
「マリ様~。もう、そんなにはしゃいで、何があったんですか。湯浴みの用意が整いましたから、
……恋のお話はそちらで伺いましょう!」
でました、名探偵カタリナ!どうしてそんなに推察力が高いのか。不思議ねーっと思いながらカタリナの顔を見つめると、マリ様のお顔にすべて書いてありますよ!と返され、二人で顔を見合わせて笑った。
「このカタリナには、何を隠したって無駄ですからねぇ~?」と、腕を組んで人差し指を立てて話す姿は、やっぱり受験予備校の先生のようだった。
この神殿のお風呂は、いわゆるバスタブというよりも、もはやジェットバス。
大理石みたいな、クリームをマーブル上に混ぜたような模様の石の大きなドーナツの中に、ぶくぶくと泡を立ててお湯が湧いている。私サイズの人間が向かい合わせでふたり入っても、脚の先くっつくかな?くらいの直径で、温泉だとは聞いてないけど…お湯からはなんだかミネラル感というか、お出汁みたいな匂いがするから、きっと温泉なんだと思っている。
初めて入った日からずっと気になってたけど、これってどうやって用意してるの?と聞くと、魔力によって温度や湯量がずーっと調整されていて何時でも暖かく、誰もこれがどういう構造になっているのかは知らない…らしい。
追い炊き装置付きのジェットバス温泉ってことよね…最高じゃない。
「魔力って本当に…便利なものですよね。」
側面から泡がぶくぶくと出ている様子は、どう見てもプールとか温泉に1つはある、ジェットバスと同じように思える。
「魔力を持っていても、私達下級貴族は使いこなせませんから、私と、平民の方々は、ほとんど大差ない感覚だと思いますけどね。」と、冷静に返された。
「ふーん…。ハイド様はあんなに簡単そうにいろんな事やるから、カタリナも何か使えるのかと思ってたのに。」
一瞬、眼をカッ!と開いたカタリナは、3メートルほど離れていた距離をカツカツカツ!っと一気に歩み寄る。
「そんなことよりマリ様、そうです、それです…っ!
そのお名前の呼び方は、どういうことですか?わたくしが今朝お支度をさせていただいていたところから、何が、どんなことが、あったのですか?わたくしはお風呂の作りなんかよりも、そっちのほうが気になります。」
すごい詰め寄り方だった。カタリナの圧に、思わず苦笑いをしてしまうくらいの勢いがあった。
「あ、そ、そうですよね。実は、朝、カタリナが部屋を出たあと、彼からキスをされたんです。」
「まぁ………!私が初めてお会いした日、マリ様に感じていたハイデル様との運命は本物だったんですね…!」
カタリナは手を組んで泉の方へ身体の角度を向け、ニンフ様ありがとうございますと呟いたあと、すぐにマリからシーツを奪ってカゴに入れる。ドレスを脱いだ後、必要ないなと思って下着を着けていなかったので、もう丸裸。カタリナは彼につけられただろうキスマークにも一切動揺することなく、マリの手を取りゆっくりと浴槽へ案内した。
冷えた足に、ぶくぶくとしたお湯が当たって、じんわりと溶けるように暖かさを感じる。もしかしたらこのジェットバスは、体が冷えた人が入っても、熱すぎることがないように、ぶくぶくとかき混ぜられた状態にされているのかもなぁ、なんて都合のいいことを考えた。
「……カタリナはそんな風に、思ってくれてたんですね。
私は正直言って、巫女のこと、今でもよく知らなくて。ただただ、自分が助かるために巫女になって、快楽に流されて、だんだんとハイド様に惹かれて…。
今日、この国の、皆さんの姿を見るまで、自分のしていることが何に繋がっているのか、何もわかっていなかったんです。
だから、今日、お披露目で皆さんに会えてよかったです。少しだけ…この国にも、ハイド様の心にも、近づけた気がします。」
マリの、心からの本音だった。
ベッドからシルクのシーツを抜いて、全身を包むように羽織った。さっきまでのヒールよりも低い、普段履いているミュールを履く。この間まで、この変態!と心の中で思っていたのに、今ではハイデルが用意してくれたものがすべて、とても輝いて見えた。
……変態だなぁとは、正直まだ思ってはいるけど。
冷静に考えてまだたった半月ちょっとしか経っていないのに、ここにはずっと長く住んでいる場所のような居心地の良さがある。きっと、ここにきてからのうち、ほとんどの時間をここで過ごしているからだろうな、とあまり深くは考えなかった。
今日は、この国の文化や歴史を自分が何も知らないこと、周りを助けてくれている人がこんなにもたくさんいるのだということ、そして…ハイドと自分が同じ気持ちを抱いていてくれていたこと。多くの事を肌で感じた一日だったと思いを巡らせた。
ベッドに腰かけ、彼の事を思い出すと、身体はもう抱かれたいと声を上げるほど、心も体も彼の虜になっている自分がいる。思わず恥ずかしくなってベッドに突っ伏し、もだもだと動き回っていると、ベッドサイドに人の気配を感じた。
「マリ様~。もう、そんなにはしゃいで、何があったんですか。湯浴みの用意が整いましたから、
……恋のお話はそちらで伺いましょう!」
でました、名探偵カタリナ!どうしてそんなに推察力が高いのか。不思議ねーっと思いながらカタリナの顔を見つめると、マリ様のお顔にすべて書いてありますよ!と返され、二人で顔を見合わせて笑った。
「このカタリナには、何を隠したって無駄ですからねぇ~?」と、腕を組んで人差し指を立てて話す姿は、やっぱり受験予備校の先生のようだった。
この神殿のお風呂は、いわゆるバスタブというよりも、もはやジェットバス。
大理石みたいな、クリームをマーブル上に混ぜたような模様の石の大きなドーナツの中に、ぶくぶくと泡を立ててお湯が湧いている。私サイズの人間が向かい合わせでふたり入っても、脚の先くっつくかな?くらいの直径で、温泉だとは聞いてないけど…お湯からはなんだかミネラル感というか、お出汁みたいな匂いがするから、きっと温泉なんだと思っている。
初めて入った日からずっと気になってたけど、これってどうやって用意してるの?と聞くと、魔力によって温度や湯量がずーっと調整されていて何時でも暖かく、誰もこれがどういう構造になっているのかは知らない…らしい。
追い炊き装置付きのジェットバス温泉ってことよね…最高じゃない。
「魔力って本当に…便利なものですよね。」
側面から泡がぶくぶくと出ている様子は、どう見てもプールとか温泉に1つはある、ジェットバスと同じように思える。
「魔力を持っていても、私達下級貴族は使いこなせませんから、私と、平民の方々は、ほとんど大差ない感覚だと思いますけどね。」と、冷静に返された。
「ふーん…。ハイド様はあんなに簡単そうにいろんな事やるから、カタリナも何か使えるのかと思ってたのに。」
一瞬、眼をカッ!と開いたカタリナは、3メートルほど離れていた距離をカツカツカツ!っと一気に歩み寄る。
「そんなことよりマリ様、そうです、それです…っ!
そのお名前の呼び方は、どういうことですか?わたくしが今朝お支度をさせていただいていたところから、何が、どんなことが、あったのですか?わたくしはお風呂の作りなんかよりも、そっちのほうが気になります。」
すごい詰め寄り方だった。カタリナの圧に、思わず苦笑いをしてしまうくらいの勢いがあった。
「あ、そ、そうですよね。実は、朝、カタリナが部屋を出たあと、彼からキスをされたんです。」
「まぁ………!私が初めてお会いした日、マリ様に感じていたハイデル様との運命は本物だったんですね…!」
カタリナは手を組んで泉の方へ身体の角度を向け、ニンフ様ありがとうございますと呟いたあと、すぐにマリからシーツを奪ってカゴに入れる。ドレスを脱いだ後、必要ないなと思って下着を着けていなかったので、もう丸裸。カタリナは彼につけられただろうキスマークにも一切動揺することなく、マリの手を取りゆっくりと浴槽へ案内した。
冷えた足に、ぶくぶくとしたお湯が当たって、じんわりと溶けるように暖かさを感じる。もしかしたらこのジェットバスは、体が冷えた人が入っても、熱すぎることがないように、ぶくぶくとかき混ぜられた状態にされているのかもなぁ、なんて都合のいいことを考えた。
「……カタリナはそんな風に、思ってくれてたんですね。
私は正直言って、巫女のこと、今でもよく知らなくて。ただただ、自分が助かるために巫女になって、快楽に流されて、だんだんとハイド様に惹かれて…。
今日、この国の、皆さんの姿を見るまで、自分のしていることが何に繋がっているのか、何もわかっていなかったんです。
だから、今日、お披露目で皆さんに会えてよかったです。少しだけ…この国にも、ハイド様の心にも、近づけた気がします。」
マリの、心からの本音だった。
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