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盛大な歓迎のその後に

33.言い訳すらも愛おしい*微

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「ほう。
…………誰が馬鹿だって?」

「…っきゃぁぁぁ!」

 まさか自分以外の人間がいるなんて思わなかったマリは、反射的に股を閉じ、足の先をピンと伸ばしながら膝を胸のあたりにつけるように身体を小さく丸くした。

 恐る恐る声の主を探すと、ベットルームのドアに片腕をつけ、悪い笑みを浮かべているハイデルがそこに立っている。

「君がきっと快感に苦しんでいるかと思って、わざわざ私の部屋へ連れて行くようカタリナに命じた優しい私が、まさか馬鹿呼ばわりだとは、心外だな…。」

「あ、わ、そういうことじゃ…」

 乱れた格好が恥ずかしくてたまらず、起き上がって横座りのような体制で、顔をブンブンと横にふる。

「じゃ、どういうことだい?こんなにも淫らで不義理な君の言い訳を、ゆっくりと聞いてあげるほどの余裕はないんだが…。」

 ベッドサイドにある小さなカウチソファに軽く腰掛け、足を組む。自分のベッドの上で自分の用意したドレスを着たマリが、許しを乞うような姿で座っている。とても淫らで唆られる姿だが、晩餐会まで残された時間はあまり無い。

「ハイデル様に、栓をされたお尻が…、ずっと…後ろから、犯されているみたいに…熱くて、苦しいんです。」

 自分の口から出る言葉のせいで、子宮がきゅんきゅんと剛直を欲して、疼くのがわかる。細い2本のリボンに抑えられているプラグは、無意識でも一度お尻から力を抜くと、リボンの圧で中に押し込むようにそこを刺激する。その刺激にどきりとしてキュッと力を入れてしまうと、今度は腹部の良いところに刺さる刺激が襲ってくる。

 そうやって、誰かに出し入れされてるわけでも無いのに、マリのふたつ目の穴は何度も刺激され、勝手に開発が進んでいた。

「そう…。それで、どうして私が馬鹿だと?」

 追い討ちをかけるように、でも優しい口調で、話を続けさせる。

 放置するなんて酷いと思ってつぶやいたひとつの言葉で、こんなに責められるとは思っていなかった。マリの中で、ほんの少しの怒りが込み上げる。

「だって…だって、馬鹿です…。私が、こうなるのなんて、ハイデル様には…全部、お見通しの、はずなのに…。置いていかれたら、私…どうしたらいいか…。」

 海外留学のホームシックみたいにまだ何も知らない世界で一人ぼっちにされたような、自分が大切に思っている人が手の届かない場所へ行ってしまったような。急激な孤独感が怖かったと、そう言いたいだけなのに、うまく言葉にできないのが悔しくて、次第にぼろぼろと大粒の涙が溢れる。

 そもそも、溺れた場所が泉じゃなかったら。私を見つけたのがハイデルじゃなかったら。きっと直視はおろか、彼から存在を認知されることすらなかったはずで。

 最初に「何かあったらすぐに契約を解除してほしい」とお願いした時は、別れを自分で決めたいと、いつでもすぐに離れられると、本当にそう思っていたのに、今はもう、彼無しでは生きていけないと思う。

「私には、最初から…っ、
ハイデル様しか、いないのに…っ勝手に…、居なくなったり、しないで……っ」

 「どうか手放さないで」とばかりに手を伸ばすマリがたまらず、ハイデルは言葉をさえぎって、強く抱きしめた。

「あぁ…可愛いマリ。すまなかったね、君を脅かすような形になってしまって。」

 ベッドに両膝をついて、チュールレースの海から救い上げるようにマリを強く抱きあげ、頭を撫でる。

「晩餐会の事で急ぎ指示することがあって、君を先に部屋へ連れて行くよう手配したんだ。この僅かな時間の間に、君からこんなにも僕を自覚してもらえるとは思っていなかったけれど。」

 少し身体を反らして瞳を見つめると、両手をそっとマリの顔に寄せ、ガラス細工に触れるように、涙の跡を優しく拭った。そっと手を後ろに回し、おでことおでこ、鼻と鼻を近付ける。口づけられる距離を我慢できるわけもなく、ふたりは静かに口付けた。
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