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第二部 魔法使い、双子の悪魔との日々
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.....誰だ、こいつは。
自分でもびっくりする位大きく表情が歪んだのが分かった。ギョッとしたセルは「そんな顔しなくてもいいだろ」と不機嫌そうに指摘してくる。
「ヨルだってリュシーの前だとあんなににこにこ笑っているくせに」
「に.....、俺の事は別にいいだろ。それより、もう勝手に寝室に入ったりするな。起きた時どう言い訳するんだ」
何となく会話の端切れが悪くなり無理矢理打ち切る。どんどん変わっていくセルとは違って、俺はずっと何も変わっていない。最初に嫌な態度を向けていたからこそ最近の俺は凄く変わった様に思えるのかもしれないけれど、外面を良くして大人しくしているだけだ。.....それだけ。
(別にリュシーが喜ぶからとか、そんな事.....、.....別に関係ない)
言い聞かせれば言い聞かせる程、変に自分の気持ちと行動が矛盾している事に気付いていく。かぶりを振った俺はさっさと片付けを済ませるとセルより先に自室に篭った。
***
一緒に住む様になって二人と街へ出掛けるのは今日が初めてだ。
自前のローブを纏い、後ろに引っ掛かった長い髪の毛を前にする。そして、用意した二人用のローブを「じゃーん」と彼等の前に掲げて見せる。
「これは特殊な魔法を施した僕特製のローブなんだ。これを着ていると人間の目には別の者の様に映る『着る幻覚魔法』だよ」
二人の雰囲気に合わせて作った黒色のローブ。セルとヨルの身長がすっぽり隠れて、ふふっと無意識に笑っていた。
「二人ともまだまだ小さいね」
「.....これから伸びるんだよ」
ちょっとだけ不貞腐れるセル。
揶揄って嫌な思いをさせただろうか、そう思って「ごめんね」と彼に手を伸ばそうとした次の瞬間、胸位の高さだったセルがいつの間にか自分を見下ろして立っていた。セルを見てギョッとヨルが目を見開いている。
積み上げられた箱の上に乗ったセルの見慣れない視点に「セル」と動揺してしまう。
「──リュシーだって小さい。もう少ししたら直ぐに追いつく」
「.....ぁ」
吸い込まれる様な漆黒の瞳に見つめられ、か細い声が喉の奥からこぼれていく。セルから向けられた真剣な表情が新鮮で、まるで成長した青年と重なって見えて直視出来ない。
「.....ちょっと揶揄い過ぎたね」
ぽふん、とセルの頭に手を置いて撫でる。
キョトンと見上げてくる彼に笑い掛けながら「そろそろ出ようか」と家の扉を開ける。
何事も無かったかの様に無理矢理やり取りを終わらせた自分を見て、無言で箱から降りて着いてくるセル。そんなセルの隣でボソボソと何かを言うヨル。彼等に背を向けていた僕は──心臓をバクバクさせていた。
自分でもびっくりする位大きく表情が歪んだのが分かった。ギョッとしたセルは「そんな顔しなくてもいいだろ」と不機嫌そうに指摘してくる。
「ヨルだってリュシーの前だとあんなににこにこ笑っているくせに」
「に.....、俺の事は別にいいだろ。それより、もう勝手に寝室に入ったりするな。起きた時どう言い訳するんだ」
何となく会話の端切れが悪くなり無理矢理打ち切る。どんどん変わっていくセルとは違って、俺はずっと何も変わっていない。最初に嫌な態度を向けていたからこそ最近の俺は凄く変わった様に思えるのかもしれないけれど、外面を良くして大人しくしているだけだ。.....それだけ。
(別にリュシーが喜ぶからとか、そんな事.....、.....別に関係ない)
言い聞かせれば言い聞かせる程、変に自分の気持ちと行動が矛盾している事に気付いていく。かぶりを振った俺はさっさと片付けを済ませるとセルより先に自室に篭った。
***
一緒に住む様になって二人と街へ出掛けるのは今日が初めてだ。
自前のローブを纏い、後ろに引っ掛かった長い髪の毛を前にする。そして、用意した二人用のローブを「じゃーん」と彼等の前に掲げて見せる。
「これは特殊な魔法を施した僕特製のローブなんだ。これを着ていると人間の目には別の者の様に映る『着る幻覚魔法』だよ」
二人の雰囲気に合わせて作った黒色のローブ。セルとヨルの身長がすっぽり隠れて、ふふっと無意識に笑っていた。
「二人ともまだまだ小さいね」
「.....これから伸びるんだよ」
ちょっとだけ不貞腐れるセル。
揶揄って嫌な思いをさせただろうか、そう思って「ごめんね」と彼に手を伸ばそうとした次の瞬間、胸位の高さだったセルがいつの間にか自分を見下ろして立っていた。セルを見てギョッとヨルが目を見開いている。
積み上げられた箱の上に乗ったセルの見慣れない視点に「セル」と動揺してしまう。
「──リュシーだって小さい。もう少ししたら直ぐに追いつく」
「.....ぁ」
吸い込まれる様な漆黒の瞳に見つめられ、か細い声が喉の奥からこぼれていく。セルから向けられた真剣な表情が新鮮で、まるで成長した青年と重なって見えて直視出来ない。
「.....ちょっと揶揄い過ぎたね」
ぽふん、とセルの頭に手を置いて撫でる。
キョトンと見上げてくる彼に笑い掛けながら「そろそろ出ようか」と家の扉を開ける。
何事も無かったかの様に無理矢理やり取りを終わらせた自分を見て、無言で箱から降りて着いてくるセル。そんなセルの隣でボソボソと何かを言うヨル。彼等に背を向けていた僕は──心臓をバクバクさせていた。
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