さよならの向こう側

よんど

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特別番外編5

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ゆうちゃんも考え過ぎて悲観的にならない様にね──彼女の言葉を考えながら、駅に向かって歩いていく。片方の手で持っていた小さな紙袋がカサッと音を立てながら揺れた。













誕生日当日。
ゼミ内での打ち合わせが午前中に出来てしまった為、絶対夕方には帰って来るからと約束をして大学に行った晴也。誕生日会は元々夜にするつもりだったし、逆に好都合だった。この時間で部屋の飾り付けをして、ご飯を作って用意して、それから──

(ど、どれにしよう....)

誕生日ケーキだ。
当日にケーキを買うなんてあまりにも無計画過ぎるが、誰かの...それも好きな人の誕生日を丁寧に祝うのだなんて初めてで慣れてないから許して欲しい。
元々、このケーキ屋は前々から目星を付けていたので今日来てみたのだが、正解だったらしい。どれも色とりどりでまるで宝石の様にガラスケースの中でキラキラしている。

「──これ下さい」
「!」

不意に、どこか聞き覚えのある女性の声が耳に入り動きを止める。

自分以外誰もいなかったのに、いつの間にか客が入っていたらしい。影がゆらりと目の前で揺れるのが分かる。

「ありがとう御座います!苺のショートケーキですね。此方お一つで宜しいですか」
「はい。それと...このプレートも付けて名前を綴って頂きたいです」

そう言って女性が指したのは''Happy Birthday''と綴られた小さなチョコのプレートだった。店員は女性の言葉に笑顔で頷くと「お名前をお伺いしても宜しいですか」とメモの準備をする。そして、女性はゆっくりと口を開いた。

──、はるやでお願いします」

思わず、無意識に顔を上げて声の主を見つめていた。

端正な顔立ちの女性。
に似ている。

どこか寂しげな表情を浮かべた彼女は、視線の先のケーキを見据えて手元の財布をおもむろに取り出す。

「晴也の....お母さん?」




チャリン──乾いた小銭の音が店内に響く。あっ、と慌てて落ちた小銭を「すみません」と拾い上げて彼女を見上げる。女性は信じられない様に目を見開き、同じ様に蹲み込み僕を見つめる。

「──山内祐樹さん...」
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