さよならの向こう側

よんど

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特別番外編5

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※絵麗奈が生まれる前の話です


「....あ」

カレンダーに×と記していて、とある事に気が付く。大学も二年目を迎えた春──僕のお腹は少しだが僅かに丸みを帯び始め、僕と晴也は穏やかで愛おしい日々を過ごしていた。

僕は体調面と相談しながら大学に通い続け、授業が終わると晴也が必ず迎えに来てくれる。事情の知っている教授や蘭ちゃんは色々と気に掛けてくれ、快適な生活を送っている。

「もう直ぐ晴也の誕生日だ....」

お腹の中の赤ちゃんと出会える日迄カレンダーに印を付ける習慣を続けて、ふと気付いたのだ。一週間後──四月二十八日、晴也の誕生日だ。去年は祝う事の無かった...というより、知っていたものの今みたいな関係では無かったのでスルーせざる得なかったのだが....

(今年は一味違う)

キュッと晴也の誕生日にケーキのマークを描きながら思う。今迄祝えなかった数年間分、沢山お祝いしたい。

誰もいない部屋でカレンダーを眺めていた僕は心の中で小さくガッツポーズをつくった。









「二十八日は早く帰ってきてね」

食事中、誕生日という直接的な表現を避けたそんな一言を吐いた。目の前の晴也は持っていた箸を箸置きにコトンと置きながら「二十八日?」と不思議そうに首を傾げる。思わず「とぼけなくていいから」と揶揄う様に笑う。駄目だ、サプライズなんて性に合わないから言ってしまう。

「晴也の誕生日じゃん。お祝いだから早く帰って来るんだよ」
「...誕生日」

初めて聞いた言葉みたいに目を見開いてポカンとする晴也に、こっちが逆に驚いた反応をしてしまう。「まさかだけど...忘れてた?」と恐る恐る聞くと、既に食事の続きを再開していた彼は頷きながら続ける。

「誕生日なんて、もう何年も縁のない日だったから。祝われる価値もないから忘れてた」

またそういう事を言う──と思わず言いそうになって留まる。彼が僕にした事は消えないし、僕はもう良いと何度言ったとしても、彼の中では過去になっていない。
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