66 / 112
君と紡ぐこれから
3
しおりを挟む
「病気で...医者には余命一年って言われてる。でも、最近はまだ調子が良いから気にする事は──」
ガシャンッと、彼が持っていた水の入ったコップが床に落ちる。
ゆっくりと顔を上げると、表情が抜け落ちた晴也が僕の事を見つめていた。「なんで..」とか細い声を漏らしている。
「なんで...もっと早く言ってくれなかったの」
「あ...いや、言う程の事でもないかなって...」
「言う程の事だろ!」
荒々しく叫ばれ、ビクッと肩を振るわせる。彼がこんなにも感情を露わにする所は初めて見たかもしれない。「言って...どうもならないから」と自分の声が震えて出る。
「気を遣われたくなかった。言うタイミングを逃していたのもあるけど...何となく言いたくなかった。僕は──」
晴也の事が好きだから。
──その言葉をグッと呑み込む。
溜息を吐いた彼は小さく首を振ると、無表情のまま続ける。
「一緒に住んでいる以上言わないといけないでしょ...なんでこんな....、....こんななら抱くんじゃなかった」
胸が張り裂けそうになった。
ふらっと立ち上がった彼が、床に散らばったガラスの破片を拾い集め始める。自分も無言でしゃがみ込み拾おうとすると「祐樹は触らないで」とピシャリと言われてしまう。「お願いだから...もう休んでて」と寝室の方へ視線を向けられ、病人として見られている事に気が付き悲しくなる。
「....僕は大丈夫だってば。今日迄殆どなんともなかった。言ってどうなるの?僕は死ぬ事に変わりはないんだよ。悲しい空気のまま死ぬより、好きに生きて死にたい」
「俺に何も言わずに?俺が何も知らされずに祐樹に死なれた時の気持ちを考えた事はある?俺が...祐樹を好きだって事、知ってて隠していたの?」
「知ってるから言えなかった!それに僕は晴也の事が──」
ガシャンッと、彼が持っていた水の入ったコップが床に落ちる。
ゆっくりと顔を上げると、表情が抜け落ちた晴也が僕の事を見つめていた。「なんで..」とか細い声を漏らしている。
「なんで...もっと早く言ってくれなかったの」
「あ...いや、言う程の事でもないかなって...」
「言う程の事だろ!」
荒々しく叫ばれ、ビクッと肩を振るわせる。彼がこんなにも感情を露わにする所は初めて見たかもしれない。「言って...どうもならないから」と自分の声が震えて出る。
「気を遣われたくなかった。言うタイミングを逃していたのもあるけど...何となく言いたくなかった。僕は──」
晴也の事が好きだから。
──その言葉をグッと呑み込む。
溜息を吐いた彼は小さく首を振ると、無表情のまま続ける。
「一緒に住んでいる以上言わないといけないでしょ...なんでこんな....、....こんななら抱くんじゃなかった」
胸が張り裂けそうになった。
ふらっと立ち上がった彼が、床に散らばったガラスの破片を拾い集め始める。自分も無言でしゃがみ込み拾おうとすると「祐樹は触らないで」とピシャリと言われてしまう。「お願いだから...もう休んでて」と寝室の方へ視線を向けられ、病人として見られている事に気が付き悲しくなる。
「....僕は大丈夫だってば。今日迄殆どなんともなかった。言ってどうなるの?僕は死ぬ事に変わりはないんだよ。悲しい空気のまま死ぬより、好きに生きて死にたい」
「俺に何も言わずに?俺が何も知らされずに祐樹に死なれた時の気持ちを考えた事はある?俺が...祐樹を好きだって事、知ってて隠していたの?」
「知ってるから言えなかった!それに僕は晴也の事が──」
166
お気に入りに追加
614
あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。
するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。
だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。
過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。
ところが、ひょんなことから再会してしまう。
しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。
「今度は、もう離さないから」
「お願いだから、僕にもう近づかないで…」

からかわれていると思ってたら本気だった?!
雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生
《あらすじ》
ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。
ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。
葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。
弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。
葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。
出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様
冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~
二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。
■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。
■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)
溺愛アルファの完璧なる巣作り
夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です)
ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。
抱き上げて、すぐに気づいた。
これは僕のオメガだ、と。
ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。
やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。
こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定)
※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。
話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。
クラウス×エミールのスピンオフあります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091
頑張って番を見つけるから友達でいさせてね
貴志葵
BL
大学生の優斗は二十歳を迎えてもまだαでもβでもΩでもない「未分化」のままだった。
しかし、ある日突然Ωと診断されてしまう。
ショックを受けつつも、Ωが平穏な生活を送るにはαと番うのが良いという情報を頼りに、優斗は番を探すことにする。
──番、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは親友でαの霧矢だが、彼はΩが苦手で、好みのタイプは美人な女性α。うん、俺と真逆のタイプですね。
合コンや街コンなど色々試してみるが、男のΩには悲しいくらいに需要が無かった。しかも、長い間未分化だった優斗はΩ特有の儚げな可憐さもない……。
Ωになってしまった優斗を何かと気にかけてくれる霧矢と今まで通り『普通の友達』で居る為にも「早くαを探さなきゃ」と優斗は焦っていた。
【塩対応だけど受にはお砂糖多めのイケメンα大学生×ロマンチストで純情なそこそこ顔のΩ大学生】
※攻は過去に複数の女性と関係を持っています
※受が攻以外の男性と軽い性的接触をするシーンがあります(本番無し・合意)

【運命】に捨てられ捨てたΩ
雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。
「君と番になるつもりはない」と言われたのに記憶喪失の夫から愛情フェロモンが溢れてきます
grotta
BL
【フェロモン過多の記憶喪失アルファ×自己肯定感低め深窓の令息オメガ】
オスカー・ブラントは皇太子との縁談が立ち消えになり別の相手――帝国陸軍近衛騎兵隊長ヘルムート・クラッセン侯爵へ嫁ぐことになる。
以前一度助けてもらった彼にオスカーは好感を持っており、新婚生活に期待を抱く。
しかし結婚早々夫から「つがいにはならない」と宣言されてしまった。
予想外の冷遇に落ち込むオスカーだったが、ある日夫が頭に怪我をして記憶喪失に。
すると今まで抑えられていたαのフェロモンが溢れ、夫に触れると「愛しい」という感情まで漏れ聞こえるように…。
彼の突然の変化に戸惑うが、徐々にヘルムートに惹かれて心を開いていくオスカー。しかし彼の記憶が戻ってまた冷たくされるのが怖くなる。
ある日寝ぼけた夫の口から知らぬ女性の名前が出る。彼には心に秘めた相手がいるのだと悟り、記憶喪失の彼から与えられていたのが偽りの愛だと悟る。
夫とすれ違う中、皇太子がオスカーに強引に復縁を迫ってきて…?
夫ヘルムートが隠している秘密とはなんなのか。傷ついたオスカーは皇太子と夫どちらを選ぶのか?
※以前ショートで書いた話を改変しオメガバースにして公募に出したものになります。(結末や設定は全然違います)
※3万8千字程度の短編です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる