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物足りない※
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(身体の不調は病気とは関係あるのかな)
僕の身体は順調に蝕まれている。
そのまま死を受け入れるか、手術の道を選ぶのか、考えなければいけないと思っていながらずっと放置していた。そんな事がどうでもよくなるくらい、ここ最近ずっと晴也の事で頭がいっぱいになっていた。
(病気とか風邪じゃなくて、普通に知恵熱みたいなやつの気がする...)
最近ずっと色んな事を考えぱなしだったからかな。額に当てられた手がひんやり冷たくて気持ちが良い。目を閉じると「気持ち良い?」と優しく見下ろす彼が居た。
「身体、無理させたね。ごめんね、祐樹の身体の事を考えずに....しかも熱が出ているの気付かずに好きに動いてしまって」
「──ばか」
思わずそう毒づいていた。「え」と驚く彼の額にデコピンをかます。額を痛そうに押さえる彼に「何で晴也が謝るんだよ」と背を向ける様に寝返りを打つ。
「僕がしたいって誘ったんだから謝る必要ないでしょ。それに....気持ち良かったし」
「!」
......また柄にもない事を言ってしまった気がする。
そのせいか晴也が明らかに嬉しそうな上擦った声で「祐樹」と肩を揺さぶってくる。背を向けた状態で返答をせず、ジッとしていると彼が顔を覗き込む様に前のめりになる。
「祐樹。顔が見たい」
「....嫌だ」
「耳迄真っ赤」
「う、うるさい。晴也だっていつも──」
反論していて思わずムキになり身体を起こし、言葉を止める。「いつも...?」と首を傾げる晴也の顔はにこにこと穏やかである。
いつも...僕を見る度に嬉しそうで。
可愛い可愛いって毎回言って──
あれ....
(──そうか。好きなんだ、晴也の事が)
直感で僕はそう思った。
恋愛が何かずっと分からなかった。
説明してと言われると今でもちゃんと出来ない。
でも──好きと思ったら、ストンとあっさり胸の奥底に落ちていった。
「祐樹....?大丈夫...?疲れさせてしまったね。側にいるから安心して寝ていいよ」
僕の隣で微笑む彼の言葉に胸の鼓動が高くなり始める。
僕は...彼に可愛いって言われると嬉しい。触れられるとドキドキする。
不意打ちで距離が近くなると途端にどうすればいいか分からなくなり振り回される。
これは──紛れもなく恋だ。
僕は彼に恋をしている。
僕の身体は順調に蝕まれている。
そのまま死を受け入れるか、手術の道を選ぶのか、考えなければいけないと思っていながらずっと放置していた。そんな事がどうでもよくなるくらい、ここ最近ずっと晴也の事で頭がいっぱいになっていた。
(病気とか風邪じゃなくて、普通に知恵熱みたいなやつの気がする...)
最近ずっと色んな事を考えぱなしだったからかな。額に当てられた手がひんやり冷たくて気持ちが良い。目を閉じると「気持ち良い?」と優しく見下ろす彼が居た。
「身体、無理させたね。ごめんね、祐樹の身体の事を考えずに....しかも熱が出ているの気付かずに好きに動いてしまって」
「──ばか」
思わずそう毒づいていた。「え」と驚く彼の額にデコピンをかます。額を痛そうに押さえる彼に「何で晴也が謝るんだよ」と背を向ける様に寝返りを打つ。
「僕がしたいって誘ったんだから謝る必要ないでしょ。それに....気持ち良かったし」
「!」
......また柄にもない事を言ってしまった気がする。
そのせいか晴也が明らかに嬉しそうな上擦った声で「祐樹」と肩を揺さぶってくる。背を向けた状態で返答をせず、ジッとしていると彼が顔を覗き込む様に前のめりになる。
「祐樹。顔が見たい」
「....嫌だ」
「耳迄真っ赤」
「う、うるさい。晴也だっていつも──」
反論していて思わずムキになり身体を起こし、言葉を止める。「いつも...?」と首を傾げる晴也の顔はにこにこと穏やかである。
いつも...僕を見る度に嬉しそうで。
可愛い可愛いって毎回言って──
あれ....
(──そうか。好きなんだ、晴也の事が)
直感で僕はそう思った。
恋愛が何かずっと分からなかった。
説明してと言われると今でもちゃんと出来ない。
でも──好きと思ったら、ストンとあっさり胸の奥底に落ちていった。
「祐樹....?大丈夫...?疲れさせてしまったね。側にいるから安心して寝ていいよ」
僕の隣で微笑む彼の言葉に胸の鼓動が高くなり始める。
僕は...彼に可愛いって言われると嬉しい。触れられるとドキドキする。
不意打ちで距離が近くなると途端にどうすればいいか分からなくなり振り回される。
これは──紛れもなく恋だ。
僕は彼に恋をしている。
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