さよならの向こう側

よんど

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物足りない※

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「──祐樹?大丈夫?」

意識飛んでいたよ、という彼の言葉でハッと引き戻される。今えっち中なのに軽く意識が飛んでた...。というか僕は何を考えてて──

バッと顔を上げると、ゆっくり身体を揺さぶる彼の姿が。「無理させたかな。水、持って来ようか?」と心配そうに頬に手を添えてくる。

....こいつに触れられると、なんだか頭がふわふわする。思わずすりっと頬を擦り寄せながら「へーき」と短く返す。グッと何かを押し殺した様な表情を浮かべる彼の背中に腕を回しながら続ける。

「そのまま続けて欲しい。....一緒にイきたいから」
「....!うん...一緒にイこうか」

柄にもなく、一緒にイきたいなんて言ってしまった。

少しずつスピードを早めていく晴也。僕の身体に負担が掛からない様に優しく抱いてくれているのが伝わってくる。「遠慮しなくていいから」と耳元で囁くと、彼は答える代わりに勢いに拍車を掛けていく。僕の声も段々高くなっていき、次の瞬間僕の身体を挿入した状態で抱き起こし、顔を近付け深いキスをする。そうして口付けたまま、僕達は一緒にイった。

終わった後も、暫く余韻が続く中、僕達は軽いキスを何度も重ねた。

「──少し待ってて。タオルとかお水持ってくる」

寝かせた僕の頭を撫で、髪に指をさらりと通して立ち上がる晴也。

うつ伏せのまま動けない僕を見て、彼は寝室を後にする。誰もいなくなった静かな寝室で、僕は唇にそっと触れる。まだキスの感触が残っている気がする。唇だけじゃない。彼が触れた箇所が未だにずっと熱い。

僕を抱く時の顔、優しく気遣う時の顔、意地悪で楽しそうな顔──頭の中も彼の些細な時に見せた表情でいっぱいだ。

(この.....じわじわと侵食される感じは何なんだ)

色んな思いがぐるぐると巡ったその直後、プツッと何かが切れたみたいに僕は完全にショートした。寝室に水を持って戻ってきた晴也が、ベッドの上で気絶して動かなくなる僕を見兼ねて「祐樹!」と叫ぶ声だけが、意識を失う直前に聞こえた。








────
──

「38.5....熱だね。季節の変わり目だし風邪か何かかな」

体温計を手にベッドに寝かされた状態の僕の額に手を当てる晴也。さっき迄繋がっていたベッドの上で今度は病人として横たわる僕って一体.....
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