さよならの向こう側

よんど

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僕と彼の関係

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母親の目尻からツーと涙が一筋頬を伝って落ちていく。そして僕の背中に腕を回して抱擁すると、耳元で「貴方の後悔のない様に好きに生きなさい」と呟いた。生きるという言葉にこれ程迄重みを感じた事なんてあっただろうか。






僕はどうやらもう長くはないらしい。
余命は一年程。

治療によっては早くなったり長くなったり、今後どうなるかは不明。今の所は全然動けるが、症状の進行によっては体調が悪化していくみたいだ。海外に行けば治療も可能だが、勝率の低い賭けみたいなものらしく成功するとはいえない。僕は取り敢えず治療の話は保留にした。

これはある意味チャンスかもしれない。
僕があいつのΩとしてじゃなく、僕らしく好きな事を見つけて好きな事の為に生きていく理由になるのだ。

治療の道を選んだとしてもどうなるか分からないし、死んでしまう可能性の方が高い。だったら、Ωである事に縛られない生き方をしたい。

(これであいつも俺に執着する必要はなくなる)

余命宣告されたのに、そう考えるだけで気持ちは晴れやかだった。もしかしたら人生が変わるタイミングなのは今日だったのかもしれない。

そう思った僕は母親と別れるや否や道中にある役所に向かい、一枚の紙を受け取り、真っ先に家に向かって駆け出した。
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