5 / 34
本編
一ノ巻-4
しおりを挟む
「お前、妙だな」
「…?」
「私を見ても怖がる素振りを見せない。何故そんな従順な態度を見せるのだ。今迄の供物達は皆泣き叫び、許しを請うの繰り返しだったのに」
愚問である。
それは貴方様が怖いから以外、何もないだろう。
人間離れした美しさを振り撒いているのにも関わらず、その花には毒を持った鋭い棘がある。綺麗なモノ程触れると怖いと聞く。今迄の彼等は死ぬ覚悟が出来ていないから恐怖を感じていたのだろう。でも僕は違う。
「貴方様に喰われる為に産まれてきたので恐怖なんて感情はいりません。私の存在意義は全て貴方様にあるのです」
「──そうか」
スッと椅子から立ち上がった彼は、コツン、コツン、と靴の音を響かせながら近付いて来る。いよいよかと歯を食い縛り目を閉じたが、目の前迄来た彼は僕を見つめ、手を掲げたかと思いきや人差し指をピッと僕に指して言う。
「残念ながら私に供物等必要ない。お前は此処で生き、死ぬ迄私に仕えろ」
…………今なんて?
いつもは感情が乏しいと言われる自分ですら分かり易いくらいに驚いていたと思う。
暫しの沈黙の後「面を上げよ」という言葉と共に、龍神様は僕の顎を掴み、グイッと無理矢理上に向けた。透き通った青い瞳で僕を値踏みする様に見つめながら「よく聞け」と続ける。
「もう一度言うが私に供物等必要ない。何故ならお前は不味そうだからだ。本当は追い出したいが、喰われる運命だったお前に帰る場所など無いだろう。だから此処で生き、死ぬ迄私に仕えろと言っている」
「.......情けを掛けたつもりですか。契約を反故になんて、いくら神様だからって先祖代々続いていた儀式を無しにするなんて、そんな事許されない筈です」
命乞いでもさせてくれると言うのだろうか。だとしても僕を生かす意味なんて無いのにどうしてこんな事を──
(それに今、僕の事を不味いって…)
金色の瞳に花模様の有る人間は一番喜ばれると言われていたのに…と考え込んでいると「おい、聞いているのか」と顔を覗き込まれる。
途端にスーッと冷たい冷気が身を包み「うっ」と身体を震わせる。龍神様はハッと顔色を変えて「....すまない」と冷気を一瞬で封じ込み謝ってきた。
「感情が昂ると時々冷気を出してしまう。悪気はなかった。....すまない」
「.....」
スッと彼の頬に手を伸ばし、触れてみる。ピタッと動きを止めた彼の瞳を改めて見据えながら「あぁ」と一人で腑に落ちる。水の神様。だから青なんだ。
「…?」
「私を見ても怖がる素振りを見せない。何故そんな従順な態度を見せるのだ。今迄の供物達は皆泣き叫び、許しを請うの繰り返しだったのに」
愚問である。
それは貴方様が怖いから以外、何もないだろう。
人間離れした美しさを振り撒いているのにも関わらず、その花には毒を持った鋭い棘がある。綺麗なモノ程触れると怖いと聞く。今迄の彼等は死ぬ覚悟が出来ていないから恐怖を感じていたのだろう。でも僕は違う。
「貴方様に喰われる為に産まれてきたので恐怖なんて感情はいりません。私の存在意義は全て貴方様にあるのです」
「──そうか」
スッと椅子から立ち上がった彼は、コツン、コツン、と靴の音を響かせながら近付いて来る。いよいよかと歯を食い縛り目を閉じたが、目の前迄来た彼は僕を見つめ、手を掲げたかと思いきや人差し指をピッと僕に指して言う。
「残念ながら私に供物等必要ない。お前は此処で生き、死ぬ迄私に仕えろ」
…………今なんて?
いつもは感情が乏しいと言われる自分ですら分かり易いくらいに驚いていたと思う。
暫しの沈黙の後「面を上げよ」という言葉と共に、龍神様は僕の顎を掴み、グイッと無理矢理上に向けた。透き通った青い瞳で僕を値踏みする様に見つめながら「よく聞け」と続ける。
「もう一度言うが私に供物等必要ない。何故ならお前は不味そうだからだ。本当は追い出したいが、喰われる運命だったお前に帰る場所など無いだろう。だから此処で生き、死ぬ迄私に仕えろと言っている」
「.......情けを掛けたつもりですか。契約を反故になんて、いくら神様だからって先祖代々続いていた儀式を無しにするなんて、そんな事許されない筈です」
命乞いでもさせてくれると言うのだろうか。だとしても僕を生かす意味なんて無いのにどうしてこんな事を──
(それに今、僕の事を不味いって…)
金色の瞳に花模様の有る人間は一番喜ばれると言われていたのに…と考え込んでいると「おい、聞いているのか」と顔を覗き込まれる。
途端にスーッと冷たい冷気が身を包み「うっ」と身体を震わせる。龍神様はハッと顔色を変えて「....すまない」と冷気を一瞬で封じ込み謝ってきた。
「感情が昂ると時々冷気を出してしまう。悪気はなかった。....すまない」
「.....」
スッと彼の頬に手を伸ばし、触れてみる。ピタッと動きを止めた彼の瞳を改めて見据えながら「あぁ」と一人で腑に落ちる。水の神様。だから青なんだ。
21
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる