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ブラック×ツカサ
現パロ:ホームレスとDK 1
しおりを挟むホームレス(実は大富豪)ブラックと普通のDKツカサ
※よくあるシンデレラストーリーです。ブラックが物凄い汚い状態なので
ご注意を。(しかしそれが萌える)しかもかなり長いです。
アイディアを下さったM氏に最大の感謝を…!
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一般的な人の多くは、距離年齢問わず大体が「はじめてのおつかい」という行為をやった事があると思う。
俺も田舎の婆ちゃんの家に居る時は、ご近所さんにおすそ分けを届けに行ってたりしたし、高校生になってからも嫌々ながらにお使いを頼まれる事が有った。
それを言うとダチは「お前十七歳に見えないからなぁ。いつまで経っても初めてのお使いっぽいよな」なんてからかうので言わなくなったが、ぶっちゃけた話、両親の「おつかい」をこなすとお小遣いが貰えるのでやめられなかった。
この不景気な世の中で五百円は貴重なのだ。マンション暮らしとは言えど暮らしは慎ましい俺の家では、単行本一冊買えるお小遣いはとても貴重と言える。
不肖この潜祇 司、逆立ちしてでもお小遣いを貰いたい盛りの十七歳だ。親の金とは知りつつも、ついつい欲しい物を買うためなら親にも媚び諂ってしまうのである。
笑ってくれるな、世の高校生全てが満足な小遣いを貰える訳ではないのだから。
だから今日も、休日返上で一駅先の都会な街へとお使いに来たのだが……。
「………………まよった」
そう言いながら立ち尽くすのは、木々の隙間から木漏れ日が降り注いでくる、落ち葉の地面が柔らかい森の中だ。しかし、ここは「本当の森」ではない。
紛れもなく都会の町中にある場所で、しかも公園の一区画だった。……たぶん。
「ここどこだ? っていうか、なんで公園がこんなに広いんだよ!」
これも都会のデカさの表れなのか。公園もデカいってのか。
どうして電車で一駅越えるだけで、これほど街が栄えるのだろう。俺の住んでいる町は閑静な住宅街……と言えば聞こえはいいが、区域が広いだけで繁華街は何か昔っぽいし商店街もひなびた感じでジャス……いや、イオ……まあ、大型複合施設が幅を利かせるような「マジ都会!」と言えないような町なのに。
なのに、何故この町はこんなにも栄えているのだろう。公園もだだっ広くてデカいのだろう。スマホで「公園を横切るのが一番の近道です」と出ていたから従ったのに、迷うなんて聞いてないぞ。ううう。いや楽観的に従った俺も悪いんだけどさ。
「……しかしここ、マジでどこ……全然地図わかんねんだけど」
スマホで地図を確認してもサッパリだ。
公園の中まではきちんと道が表示されないみたいで、いま公園に居るのは分かるんだが、俺がどの道を通れば出られるのか分からない。
最初は「道が分からなくても楽勝!」なんて思って歩いてたけど、何故か森の中に迷い込んでしまうとはなあ……変だな、俺別に方向音痴じゃないのに。
「まあでも、歩いてたらたぶんどっかに出るよな」
そうだ、こういう時こそ楽観的に考えよう。
幸いここは公園だし、見当がつかない訳でもない。それにいざという時は、さきほどコンビニで購入した昼食代わりのお菓子とおにぎりとスポドリがあるから大丈夫!
田舎の婆ちゃんの集落は山に囲まれてたし、このくらいの森なんて軽い軽い。
落ち葉の地面は歩きやすいし、低木のせいで時々周囲が見えづらいけど、木もそれほど密集してないし、これなら少し歩けば道の先が見えるだろう。
田舎の森よりよっぽど優しいぜ。あとは木の根に躓かないよう気を付けるくらいだな。ふふふ、毎年高頻度で野山を駆け巡っている俺にはちょろいもんだぜ。
そんな事を考えながらサクサクと歩いていると……ふと、少し先の大きな木の根元に何かがモコッと落ちているのが見えた。
なんだろうかと近付いてみると……なんか……布?
いや、あれは人だ。随分と色あせた服を着ているが、そのモコッとしたものは妙に大きな誰かが丸まっている姿だったのだ。
…………しかし、なんでこんな所で……寝てる、のかな?
まあ、落ち葉の上だし寝てても不思議じゃないけど……風邪ひかないかな。
今は春先で夕方になるとまだ寒いし、こんなに丸まって寝てるんじゃ実は結構寒いんじゃなかろうか。起こしてあげた方が良いのかね。
「でもなあ、寝てるのを起こすのもな……」
しかし何だか妙に気になってしまって、ついつい近付いてしまう。
何と言うか、ちょっと言いにくいが、古着というよりみすぼらしい服と言った方がしっくりくる。丸まって膨らんだスウェード生地っぽいジャケットは薄汚れており、どこから拝借して来たのか、所々擦り切れている作業用ズボンからはスネがはみ出していた。わりかし剛毛なんだが……ってことはオッサン……?
いやでも、オッサンだからって見過ごすわけにはいかないよな。
病気だったら大変だし……こういう時は人助けだって婆ちゃんも言ってたしな!
よし、と気合を入れて、俺は大木の根元に挟まって丸まるオッサンに、出来るだけ優しげで小さな声をかけて見た。
「あのー……大丈夫ですか? そこで寝てると風邪引いちゃいますよ……」
助ける、とは言っても、そこまで近寄る事は無い。自慢じゃないが俺は運動音痴だ。もし襲って来られたらひとたまりもないからな!
というわけで、3メートルくらい離れた距離で問いかけてみたのだが――――当然ながら反応は無い。やっぱ近付かないと駄目だよな。
まあ俺は男だし、運動音痴と言ってもパワーで何とかできるし、こうなったら実力行使でなんとかしないとな!
「あのー、大丈夫ですかー!」
自信満々な事を思いつつも、じりじりと丸まった誰か……恐らく、デカい男に徐々に近付いて発声を強める。すると、泥や汚れが染みたジャケットが微かに動いた。
むむっ、やはり生きてはいるな。でも緩慢な動きだったから、やっぱり風邪か病気か何かあるのかもしれない。とにかく様子を確かめないと。
俺はさっきより丸まった男に近付いて、すぐそばまで来ると跪いた。
あ、この人ニット帽みたいなの被ってる。でも赤色はくすんでいて、所々薄汚れた色の毛糸がこぼれ出ており、そのせいで顔が隠れてしまっていた。
いや、顔が見えないのは丸まってるからってのもあるんだけど……かすかに見えた頬は、なんか赤茶けた毛っぽいのが見えてよく解んないんだよな。とにかく大丈夫か確かめないと。
「触りますよ。大丈夫ですか」
そっと服の上から肩に触れて、軽く揺する。
スウェード生地のジャケットは、最早細かい毛羽立ちなんて感じられないくらいにくたびれていて、触れると……なんというか、ちと鼻がキツい。
もしかしてこの人、ホームレスとかそういう類なんだろうか。そう言えば、独特の臭いが漂ってくるような気がする……いやでも放っておいて良いワケないよな。
俺にはどうにも出来なくたって、こう言う人を助ける団体とかあるんだし、お医者さんだって話せば分かってくれるかもしれない。
高校生の分際でとか言われるかもしれないが、でも死にそうなのかも知れない人を放って置いて逃げるのはどうしても出来ないよ。
せめて、意識だけでも確かめなきゃ。
「もしもし、起きれますか。病院に電話した方が良いですか?」
体を軽く押すように、なるべく揺さぶらない形で相手に触れていると……「病院」と言った所で体がようやく動いた。そして。
「う゛…………」
思った以上に低くて渋い掠れた声が聞こえたと思った刹那――――盛大な腹の音が周囲に響いた。……そりゃもう、びっくりするぐらいの。
「…………も……もしかして……お腹減って動けなかったのか……?」
いやまさか、そんな。
でもそれなら……コンビニのおにぎり、食べるかな。
モソモソと袋からおにぎりを差し出す。が、相手は動かない。あ、そうか、ニオイとか無いと分からないのかもな。
そう思い、俺はおにぎりを出して、海苔まで丁寧に巻いてやると、相手の鼻が有りそうな位置におにぎりを持って行った。その瞬間、目にも止まらぬ早業で俺がもっていたおにぎりが奪われたかと思うと、いつの間にか丸まっていた相手は起き上がっていて、ムシャムシャと俺のおにぎりを貪っているではないか。
「…………」
まあ、その……食べてくれたのは良いし、相手がホームレスでもなんでも別に俺は何とも思わなかったんだけど。でも……やっと起き上がった相手は、俺がぼんやりと想像していた「ホームレス」とはだいぶん違っていた。
だって、赤いんだ。髪が。
一番初めに目に入ったのは、顔半分をもっさりと覆った汚れて赤茶けている赤ヒゲと、日本人にしてはやけに高く整った鼻だ。そう言えば、ムシャついてる口は大きく顔もがっしりとしている。貧相な小男ではない。むしろすげえ大柄なオッサンだ。
そうか、だからボロボロの作業用ズボンがつんつるてんだったのか。
しかしそれだけでもびっくりなのに、目を隠しているうねった前髪や、赤いニット帽からはみ出た長すぎる髪は……汚れたヒゲと同じく赤かった。
そう、このオッサンはホームレスにあるまじき赤くて長い髪だったのである。
……どっかに赤い髪のホームレスさんがいたらゴメンだけど、俺は見た事が無いしここは日本だし許して欲しい……。
とにかく、びっくり容姿だったのだ。そりゃ絶句しても仕方ないよな?
「ン゛ッ、ゴホッ、ガハッ」
「あ、ああっ、あのこれ、スポドリだけど飲んでっ!」
慌てて食べ過ぎてお米が喉に詰まったのか、赤髭のおっさんは盛大にむせる。
袋の中から、開けたばかりのスポーツドリンクの蓋を取って差し出すと、これまた奪うように喉を曝して呷った。……よっぽど飢えてたんだなぁ、この人……。
なんだか妙に放っておけない気持ちになり、俺はその大柄なオッサンに残りのおにぎりとお菓子も差し出してやった。俺は家に帰ったらおかしがあるけど、この人には何もないし……それに、一期一会だもんな。
そう思っていると、赤髭のオッサンは喉仏を動かしながらスポーツドリンクの最後の一口まで飲み干して、ようやく一息ついたようだった。
……ハラいっぱいになったのかな?
「えっと……お腹、落ち着きました……?」
一応年上っぽいし初対面なので敬語を使ってみたが、相手は俺をじぃっと見つめるだけで、何も言わない。つうか、目元が長すぎる前髪で隠れているので見つめられているのかどうかも判らないんだが……何だろう。
不思議に思いつつも、俺もその顔じゅう毛むくじゃらのオッサンと見つめ合っていると……付き合いきれないと思ったのか、相手は無言のままですっくと立ち上がり、俺に目もくれずさっさと歩いてどこかに行ってしまった。
「…………行っちゃった」
お礼目当てでやったんじゃないし別に良いんだけど、大丈夫かなあの人……。
明らかにズボンの丈が合って無かったし、ボロボロの服だったし、それになにより住むところあるんだろうかレベルに汚かったし……うーん……今日日ホームレスの人でも身綺麗にしてる人は多いって言うのになぁ。
「外国人っぽかったし、もしかしてグループに入れてないとか……」
なんかテレビでそういうのやってたよな。
ホームレスって、公園なんかで集団で住んでる人達にはそれぞれの縄張りが有って、競争しないようにしたり助け合ったりしてるとかなんとか。
もしあの人が日本語も解らないなら、かなりの苦労をしてるのかも。
「……大丈夫かなぁ……」
そうは思ったけど、あまり遅くなると母さんに叱られる。
仕方なく俺はその場を離れた。
――――その後、なんとか森を抜けて公園からも脱出し、母さんの知り合いの人に荷物を手渡して、ケーキのおみやげを貰ったので……何となくまた公園の森で赤髭のオッサンを探してみたのだが、結局その日は見つける事が出来なかった。
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