異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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断章 かつて廃王子と呼ばれた獣

28.言葉にならないほど愛している*

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   ◆



「ひぐっ、ぅ゛、ぁ……あ゛ぁ……っ……もっぃ゛ぁ、あ゛……」
「まだ三回目だぞ? ヘソでイッたのを含めたら四回目だ。まだまだ足りんぞツカサ。もっと、もっとオレに食わせてくれないと」

 ぢゅっ、と、わざとらしく音を立てて液体まみれの小さく可愛らしい肉棒をすする。
 それだけでツカサはビクビクと腰を動かし、もう出ないとうつろな目で泣きじゃくった。

 普段から食われ慣れているとはいえ、やはり何度も連続で射精させられ、イキっぱなしの肉棒をいじられつづけるのは、心身ともに相当な苦痛なのだろう。
 ヒクつく先端の穴を舌でぐりぐりといじれば、ツカサは力の入らない足をバタバタ動かして強すぎる快楽をこばもうとする。だが、そんな抵抗など無意味だ。

「うぅうう゛~~! やら゛っ、も゛っぃやっ、ちん、ちん゛触るな゛ぁあ!」
「可愛い駄々っ子だな。だがツカサは立派な大人なのだろう? ならば、大人としてオレを受け入れてくれないと。ほら、もっと足を開いて」

 ツカサが恥ずかしがるように、両手で足をこじ開け秘部を全てさらすようにする。
 ぐっとちからを込めて、足の付け根にわざと負担を感じるようにすれば、ツカサは自分が股間をさらしている事に気付いて、赤い顔をさらに赤くした。

 何度も追い立てたせいで、幼さが色濃く残る顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている。だが、それもクロウが作り上げた表情だと思えば、食欲と共に性欲が増し、のどがゴクリとつばを飲み込んだ。
 まったく、本当にツカサは際限なくオスをあおる。

 今だって、もう頭の中はぐずぐずだろうに、それでも強すぎる快楽への恐怖と己の恥部をさらす格好に羞恥を覚えて心をしぼっているのだ。

「ぅあぁっ…や゛ぁああ……くろ、ぉ……も、やめへ……っ」

 足が、抵抗するようにかくかくと動く。
 しかしもう力は残っておらず、そんなことをしても無様ぶざまな格好を強調するだけだ。
 ツカサもその事に気が付いたのか、おのれの恥ずかしい姿を思って涙を流していた。

 ――――どうして、そんなにオスを惹きつける顔が出来るのだろうか?

 ついそう思ってしまうが、ツカサに問いかけても答えなど出てこないだろう。
 彼自身理解できないからこそ、これほどまでにオスの嗜虐心しぎゃくしんあおるのだ。

 そしてその体液、いや、肉の全てが……獣人の空腹を、完全に満たす。

(たまらんな……)

 口内でくたりとちからを失くしているツカサの“子供おちんちん”を舌で無理矢理立たせながら、その裏筋を根元から念入りに撫でてやる。

「ぃ゛っ、ひぃっい゛ぁっあ゛っ、あぁあ……っ、ひぐっ、やめ、へぇ……っ」

 まるで、幼いメスを強姦しているような声だ。
 そういった経験がなくとも、泣くツカサの懇願こんがんは「ひどいこと」をしているように思えてくる。年に見合わぬすえ熟さを色濃く残したその容姿が原因なのだろうが、そんな少年を自分勝手に捕食して泣き喚かせているのだと思うと、背筋をゾクゾクとした快楽が這い上ってくる。

 ――――獣人の根本は、獣。

 おのれの本能と欲望のままに食らい、犯し、暴虐の限りを尽くす存在の血族だ。
 だからこそ、獣人はもう半分の「ヒト」としての理性をとうとび、ほこたかることで、獣人という己の不可解な存在を獣と切り離し「ヒトである」と肯定した。

 だが、いくら理性をあがめようと、本能は切り離せない。
 獲物を追う時、獲物を食らう時、好きなメスに欲情した時……――

 その理性は、容易たやすく「獣」の本能に食らい尽くされる。

 ……どれほどすましていようが、獣人の本性は獣だ。
 ゆえに、こうして「いま、自分は禁忌を犯している」と思うと……

 おのれの中で眠っていた「なにか」が、腹を食い破って出て来そうになる。

 目の前であえぐ愛しくて愛しくて仕方のない“やさしい”メスを食らい、すすり、その血肉を全ておのれの物として噛み砕いてしまいたくなるほどの

 “ばけもの”の本性が。

「ハァッ……は、グ……グゥ、ウ゛……んんっ、い、いかんな……っ」

 このままでは本性に流されて、何をするかわからない。
 そう思い、クロウは一旦いったんツカサの小さな肉棒から口を離した。

「ん゛ぅう゛っ!!」

 しかしその勢いは強すぎたのか、敏感になっているツカサは思わずあごを反らして腰をビクンと浮かせてしまった。
 これだけで感じてしまう体に、また股間が痛くなるが――なんとか、こらえる。

 ……このまま舐め続けるのは、非常にまずい。
 もっとツカサを喰らいたいのは山々なのだが、すでに己の肉棒が興奮で勃起している今、勢いに任せてツカサと一線を越えてしまう可能性があった。そこまで理性をくずしたら、今度こそ触れさせてもらえなくなるのだ。

 そうなるのは……本当に、まずい。
 息も荒くなってズボンの股間部分を押し上げているクロウは、どうしたものかとくちを引き締めてツカサの放心した様子をじっと見つめた。

(もっと喰いたいと思っていたのだが……こう性欲も湧いては、いつ肉棒をんでしまうか分からんな。下手をすると、ツカサに触れられなくなる。まあ、そう要求するのは、ツカサではなくブラックだろうが……。ともかく、ブラックが近くに待機している今、ツカサを本能のまま犯すわけにはいかん……)

 全身で呼吸をして必死に熱を逃そうとするツカサをながめながら、クロウは口内に少量残っていた残滓ざんしを飲み込む。

 さすがに四回も吐き出すと、ツカサの小さなおちんちんではすぐに精液を作れないようだ。回を増すごとに美味さは跳ね上がるのだが、希少なぶんそれも仕方がないだろうとクロウは妥協だきょうしていた。

 羞恥と快楽を上乗せしたツカサの体液は、一度味わえば満腹でもずっとしゃぶっていたいと思うほどに甘露だが、そのぶん理性をどんどん失わせる。
 だからこそ、ツカサの“二番目のオス”である現在は、回を増すごとに減る精液を「欲張らないで済む量」だと思って良しとしていたのである。

 しかし今回は、おもきわまっての行為だ。
 情けない自分の過去を話し、受け入れてもらい、欲望までさらした。
 そんなこと、今までの自分では考えられなかった行為だ。いや恐らくは、ツカサでなければ全てを話す事など出来なかっただろう。

 それほどの、初めての暴露。
 クロウにとっては、愛しい人に全裸をさらしたも同然だった。

 だからこそ、解放感も相まって愛しさと欲望が爆発して。
 何もかもを曝け出したうえで受け入れて貰えた嬉しさがあり、クロウの理性は何度もタガが外れそうになっていた。

(い、いかんな……嬉しさと興奮のせいで、もっとツカサの精液が欲しいと思ってしまう……。それに、しばらくのあいだ、離れるかと思うと……欲ばかりが先行して……)

 我慢できていたはずの量に、耐えられない。
 精液を喰えないのなら、その先の「もっと美味しい」を……

 ツカサの雌穴に肉棒をんで犯すことでしか味わえない、彼が絶頂した時の快楽を、喰いたいと思ってしまう。

(ダメだ……ど、どうも……あの【銹地しょうち】とかいう【グリモア】を取り込んでから……抑制が、効かん……っ。ツカサが、欲しい……ツカサを犯したい、ぐちゃぐちゃにしたい、全部、全部喰いたいっ、おのれを解放してでも……っ)

 くちを離したはずなのに、またくちを付けたくなってくる。
 ツカサの足を抑えたままの手も、その柔らかさにつめを立て傷を作り、血のにじんだ肌にしてすすってやりたいと知らずに力がこもっていた。

 明らかに、いつもの興奮ではない。
 そう考えて……クロウは、息を呑んだ。

 ――――まさか、これがブラックの言う【グリモア】の「渇望」なのか。

「く……くろ、ぉ……っ、も……お……わ、り……?」

 おのれの変化に気付いて硬直したクロウに気付かず、とろけた表情のままツカサが必死に言葉をつむいで問いかけてくる。
 呼吸が整わないまま、恥ずかしい場所を開脚させられてなんとか喋ろうとするその愛らしさに、またも股間がうずく。

 食欲と性欲が、とまらない。
 このままでは本当に……。

「ッ……」
「クロウ……?」
「……ツカサ……と……止まらん……。っ、はぁっ、は……す、すまない……肉棒が、ツカサを愛しすぎて、勃起してしまった……っ。このまま、では……っ、お、お前、を、犯してしまう……っ」

 クロウの荒い呼吸じりの言葉に……ツカサの真っ赤な顔が、歪む。
 拒絶ではない。だが、明確に危機感を覚えたような表情。
 これほどまでに快楽で頭をぐちゃぐちゃにされても、まだツカサはブラックに貞操を捧げ、メスとしての屈服にあらがっているのだ。

(っ……あぁ……そうだ、ツカサはそういうメス、淫乱で、貞淑ていしゅくで、美味い、精液も血肉も全て欲しくなる、最後の最後まで“オレのただひとり”で居てくれる、メス……っ)

 もしクロウが最初に出会って、堕としていたら。
 きっと、生涯その体を自分だけのものと誓ってくれただろう。

 荒い息で深く呼吸し、そう想像したと同時。

 ――――ぷちん、と、頭の奥で何かがはじけた。

「あっ……く、ろう……鼻血……っ」

 心配したようなツカサの声が耳に届く。

 それと同時に、ぞわり、と、髪の毛が逆立つような感覚を覚えた。
 今まで感じた事のない、感覚。

 体が熱くなると同時に耐えがたい衝動が襲ってきて、頭が、体が、体の中の欲望を吐き出したいとでも言うようにうごめく。
 それはまるで、たった数日前に開放したおのれの真の姿を現した時の感覚のようだ。

 ……ツカサが分不相応ぶんふそうおうな「魔王」という称号で呼んでくれた、おぞましい姿。

 その姿をあらわす時のような衝動が沸き起こり、クロウは思わず鼻をおおった。

「ゥ、グ……ッ!!」
「く……クロウッ……だいじょうぶか……っ?!」

 自分が「魔王化」した感覚は無い。
 だが、ツカサの目にはクロウに何らかの変化があったと見えたのだろう。
 まだ体を動かせないのに、必死にこちらに手を伸ばしてくる。

 しかし、そんな可愛く献身的な姿を見せられたら、また肉棒が反応してしまう。
 いけない。本能と欲望に流されれば、今度こそブラックに引き離される。
 これが【グリモア】の衝動なら、尚更なおさらおさえなければならない。

(しっ……しかし……こんなっ、こんなにドロドロに喰われても、オレを心配してくれるツカサを見て興奮しないなど、オレには出来ん……っ! 肉棒も限界だっ……こ……このままでは、本当にツカサを犯してしまう……!!)

 唇まで伝って来た鉄臭い血の味を舐めとり、クロウはうなる。
 今、自分の姿がどうなっているかはわからない。だが、肉棒がふくがり、理性を圧倒しようとしているのだけはわかる。
 このままでは、理性がはじけ飛んでしまう。

 ツカサと一線を越えないためには、この肉棒をどうにかしないといけない。
 だったらどうすべきか。発散させるのに一番いい方法はなんだ。
 ツカサを犯さずに済む方法……いや、あわよくばツカサと肌を合わせたまま、二人で一緒に気持ち良くなれる方法。どうせならもっとも犯すことに近い……。

「く……クロウ……?」
「っは……ハァ……はぁ……つ、ツカサ……耐え切れん……っ。どうか、し、尻を……尻の谷間でいい、尻の谷間にっ、肉棒を押し付けたい……! それで我慢する、そこで、子種汁を出させてくれ……!!」

 …………自分は、何を言っているのだろう?

 頭の中のなけなしの理性が真顔で自問自答するが、もう遅い。
 我慢できずにズボンをいて肉棒を取り出すと、熱気がこもっていた布の内部から涼しい外に出たせいか、ひやりとした感触に先走りの汁がどぽんと勢いよくこぼれた。

「っ~~~~!!」

 ツカサはクロウの肉棒の様子を目撃してしまったのか、驚いて目を見開きせっかく落ち着いて来ていた顔を再度赤く染める。
 クロウの勃起して張り詰めた肉棒を、ツカサが見ているのだ。
 それだけで肉棒が大きく動いたが、クロウは足りないとツカサに詰め寄った。

「頼むツカサ……っ、並みの快楽ではおさまらん、疑似交尾でもしないと、こ……この、体がおかしくなる欲望が、お前を犯してしまうかもしれん……っ!」
「そ、そんなに……!?」
「ああ、だから頼む……っ、尻に、擦り付けさせてくれ……っ!」

 そう言いながら、手はすでにツカサの腰をつかんで引っくり返そうとしている。
 我ながら浅ましい行為だ。しかし、もう止められなかった。
 欲望は増幅され、抑える事など出来なかったのだ。

 そんなクロウの姿を、何故か頭頂から下部まで見つめていたツカサは……恥らいながらも、ぎこちなくうなずいてくれた。

「は……はさむ……だけなら……」

 ――――犯されるなんて微塵みじんも思っていない、信頼しきった言葉。

 惜しげもなく尻を差し出してくれるその姿は、慈愛にあふれている。
 ツカサは、やはりクロウにだけは甘く優しいメスでいてくれるのだ。

「う゛……うぅうウウ゛……! ツカサっ……ツカサぁあ……!!」

 そんな許容をされて、止まれるはずも無かった。
 クロウはすぐさまツカサの腰を固定し、待ちきれずにぼたぼたと先走りの液を垂らしていた己の肉棒を突き出した。

「つ……ツカサ……っ、ンはっ、はぁっ、し、尻にっ、尻に肉棒擦りつけるぞ……っ、つ、ツカサの可愛い尻にぃっ」
「いっ、いわないで……っ」

 ツカサが、可愛い声をらす。
 もう会話する意識も途切れ途切れだろうに、それでも恥ずかしそうにする。

 その可愛い顔が、どこまでも自分達をあおると言うのに。

「また、そんな……オスを煽る顔をして……っ!」
「ひぐっ!?」

 腰を引き、ぺたりと尻の割れ目に肉棒を添える。
 だがすぐに我慢が出来なくなり――クロウは、その割れ目に強引に肉棒を割り込ませると、大きく腰を振り始めた。

「はぁっ、ぁ、はあぁあ……っ!! ツカサっ、ハァッ、ツカサの尻っ、尻肉たまらんぞっはさんだだけなのに、こんなに……っ!」
「ぃっ、うっ、ぅあぁっ、や、やらこれっ、や、あっ、へ……変になるっ、おっ、おしり……変になっひゃうぅ……!」

 腰をつかんだ手の掌底で尻肉を寄せて、逃げ場をなくす。
 そうするとよりクロウの肉棒の動きを感じるのか、ツカサは敷き布をにぎり、荒い息で「変になる」と繰り返した。

 さもありなん。クロウのいきり立った肉棒は、ツカサの雌穴を何度も先端でつつき、竿さおこすげながら動いているのだ。
 雌穴も弱いツカサには、そんな生殺しの刺激は耐えられないだろう。
 だが、今はクロウもツカサを気にかけている余裕がない。

 それどころか、自分の肉棒で快楽を拾い始めたツカサに興奮していた。

「あぁ、可愛い……っ。 可愛いっ、かわいいな、ツカサっ、くっ、ツカサっはぁっはっ、グッ、ウ……ツカサっ、あぁ……ツカサの尻……っ、たまらん……っ!」。

 挿入してもいない。犯す事にも満たない、児戯じぎのような行為。
 ただ、腰をつかんで尻の谷間に肉棒を割り込ませているだけなのに、ツカサの尻肉の柔らかさと、動くたびに先端にすぼまりがかすめるその背徳感で陰嚢がせりあがる。

 例え挿入できなくとも、ツカサが尻を許してくれるのは自分とブラックだけ。
 その雌穴をほぐすために指を入れる事を許されるのも、舐めてほぐすことも、ブラックの他に許されたものはクロウしか存在しないのだ。

 そう。
 自分だけが、他のオスどもを差し置いて
 【ツカサの次の夫】になる権利を有している。

「ツカサ……ツカサぁ……っ!!」

 息が、荒く、深くなる。
 気が付けばツカサの腰を掴んでいる自分の手は異形の手に変化し、手の甲から骨のように生えて覆う黒爪こくそうが、ツカサをのがすまいと柔肉やわにくに食い込んでいた。

 腕にも、紋様が浮かんでいる。
 ざわつく髪の合間からは、きっともうつのが露出してしまっているのだろう。

 ああ、そうだ。
 自分は今、本性をさらしたおぞましい姿で……ツカサを、抱いている。

「ふっ、グッ……ゥウ゛……っ!!」

 おのれの姿を知覚した瞬間、こらえていた快楽が一気に噴出ふんしゅつする。
 血管の浮きあがる肉棒から勢いよく精液を吐き出し、ツカサの背中を汚した。
 しかし……治まらない。

 ビクビクと別の生物のようにうごめく肉棒は、萎えて縮むどころかその硬度をたもつづけたまま、ビキビキと音を立てるように再度かえっていく。
 出したばかりだというのに……もう、体は次の快楽を求めていた。

(あ、ぁ……ああっ……だ、だめだ……っ、ツカサを、お、犯す……っ、オレの本性の姿のままでっ、つ、ツカサの肉穴をオレの肉棒でっ、お、犯したいっ、あぁああっ、オレのメス、ツカサはオレのメスだっ、だから、だからぁ……っ)

 理性が飛んだわけではない。だが、頭の中でそう繰り返し声がする。
 腹の中が快楽で煮えたぎり、ツカサに触れているところ全てがじんじんして、肉欲をあおりにあおった。このまま抱きしめてしまえば、きっと挿入してしまう。

 おかしい。自分が変だ。
 そう思って汗がすが、どうにもならない。

 ただ、脳内で欲望となけなしの理性があらそい、その中でもまだ浅ましく快楽を求めて、クロウは再びツカサの尻に肉棒をなすり付けた。
 何度も、何度も何度も尻肉に欲望を押し付けて、二度目の射精する。

 だが欲望が尽きる事はない。
 よほど溜まっていたのか、それとも【銹地しょうちのグリモア】のせいなのか、ツカサを犯したい、食らいたいと言う欲望で際限なく肉棒は復活してしまう。

 気持ちがいい。だが、これではいけない気がする。
 理性がすべて吹き飛んだとき、自分は、何をするか分からない。

 こんな初めての衝動に、対応するすべがないのだ。
 それが、怖い。

 ……今のクロウは、まるで初めてメスを組み敷いた童貞の若者のようにあせり、混乱し、自分のままならぬ欲望におびえて――――無意識に、涙を流していた。

「っ……ぁ……く、ろう……。クロ、ウ、こっち……こっち、むいて……っ!」
「え……」

 ぼたぼたと、目から水がこぼれる。
 不意に耳に届いた可愛らしいかすごえに意識を寄越よこすと、そこには必死に腰をひねり、クロウの方へ手を伸ばしている……愛しい少年の姿があった。

「あ……あぁ……っ、ツカサ……っ、つかさぁ」

 思わず、名前を呼ぶ。
 ずび、と鼻が鳴り、情けない声が口かられたが――――
 それでも、ツカサはクロウを見つめて、微笑んでくれた。

「す……素股すまた……素股すまたに、しよ……? そっちの方が、ぎゅって出来るから……っ。お……俺……クロウの、こと……ぎゅって、したい……」
「…………!!」

 抱き締めたい。
 オレを、抱き締めてくれるというのか。

 こんな姿にってまでお前を犯そうとしている、おぞましくて悪い大人を。

 つい、そう思って目を見開いたが、ツカサは驚きもせずただクロウが自分の胸の中に入って来られるように、手を伸ばし続けている。

 ……腰をひねった無理な体勢で、きっとつらいだろうに。
 何回も射精させられて、息もえだろうに。

 それなのに、ツカサは……どこまでも自分を許し、救おうとしてくれていた。

「う、あぁ……っ、ああああ、ツカサっ……ツカサぁあっ!」

 つかんだ腰をひねり、強引にツカサの体をうつぶせから仰向あおむけへ変える。
 乱暴な動きにツカサは小さく「ん゛っ」とうめいたが、しかしクロウのことをおもんぱかってくれているのか、それ以上はこらえて、ただ両手を広げて受け入れる姿勢をたもった。

 そんな小さな少年が愛おしくて、好きで、好きでたまらなくて、肉棒がよだれらす。

 こらえきれずツカサの両足を合わせ、その間に肉棒をはさみ小さな体を曲げさせた。
 そうすることで、さっきよりも密着できるのだ。
 肉穴ではなく、腰を動かせばやわらかい太腿ふとももからはみ出た先端が、ツカサの腹をつつく形になってしまったが、それでも気持ちいい事に変わりはない。

 それに……これは、人族が基本とする交尾の姿勢のようで……胸に、様々な思いがこみ上げてくる。恥らいながら自分を見つめるツカサを見返すと、混乱の涙が嬉し涙に変わっていくようだった。

「ああっ、ツカサっ、つかさっ、つかさ、好きだ、愛してるっ、ツカサ、ツカサぁっ!」
「っ、ぅ……んっ、んん……! く、ろぉ……あっ、あぅ、う……クロウ……!」

 腰を激しく打ち付けるたび、ツカサの腹に先端が届き、同時にツカサの小さな肉棒を擦りたてる。太腿ふとももやわい肉はクロウの肉棒を十分に満足させ、先走りの液体のせいか、ぬちぬちといやらしい水音を立てていた。

 その音が恥ずかしいのか、ツカサは腕でくちを隠して必死に声をこらえている。
 可愛い。まるで、本当に交尾を……いや、セックスを、しているようだ。

 彼の恋人にしか許されない行為。
 きっと自分が初めてのオスだったとしたら、やはり……ブラックのように、他のオスには許さなかっただろう、愛するための性交。

 それに近しい事を、自分は行っている。
 ブラック以外では、誰も許されたことの無いこと。

 クロウでなければ、ツカサも受け入れないだろう。
 そんな特別なことを、いま、受け入れて貰っている。

「う゛っ、グ……ウゥウ゛ウ……! ツカサっ、ァ゛、あぐっ、ゥ゛、ん、ぅう゛……っ!」

 情けない声が漏れて、腰がうずく。
 ビクビクと痙攣けいれんし、肉棒が大きくふくらむ感覚があったと同時――――また、勢いよくクロウの精液がツカサめがけて飛び散った。

「――――~~~っ……!」

 その勢いに、ツカサも体を震わせる。
 だがあまりに勢いが良過ぎたのか、尋常ではない量の精液は腹をしとどに濡らしただけではなく、ツカサの顔にまでかかってしまったではないか。

 しばらくそのことを認識できず、押し寄せる凄まじい快楽の余韻よいんひたっていたクロウだったが……ようやく気付き、あわてて足から肉棒を引き抜くと、ツカサの顔に近付いた。

「ぅ、あ、つ、ツカサすまん……っ。こ、子種汁の勢いはオレにも制御できんのだ」

 肩で息をして言葉も失っているツカサの赤面を、慌てて舌で舐める。
 が、それが自分の出した精液であることを思い出したクロウは、思わずゲッと顔をしかめてしまった。どうして普通の精液はこんなにまずいのだろうか。
 というか、そもそも自分の精液を率先そっせんして舐めたくない。布を使うべきだった。

 今更いまさらな事に気が付いて舌を出すクロウに、ようやく放心状態から抜け出したのか、ツカサのひかえめな笑い声が飛んで来た。

「っ……ふふっ。バカだなぁ……」

 罵倒ばとうの言葉なのに、まったくののしられている気持ちがしない優しい声。
 「仕方のないやつだな」と言われているような、その優しい言葉に目をしばたたかせると、ツカサはくすぐったそうに苦笑してクロウのほおに手を伸ばしてきた。

「つかさ……」
「気にしなくて、いいから……。それより……すっきり、した……?」

 きっと疲れているだろう。そう思うのに、ツカサはそんなことなど言わない。
 ただクロウのほおを撫でて、愛おしそうな目で見つめてくれる。

 いつも、そうだ。
 ツカサは泣きじゃくった自分の姿を見ても、情けない男だと思うより「仕方のない奴だな」と、苦笑して……いつも、自分を抱きしめなぐさめてくれるのだ。

 どんなことをされても、嫌ってくれない。
 ずっと、ずっと、愛してくれる。

 こちらの愛をぶつける以上に包み込んでくれる愛が、ここにあるのだ。

「う、うぅ……っ、ツカサ……ず……ずぎだ……っ、好きだぁ……っ」

 もう、言葉にならなかった。
 ただその愛にこたえたくて抱きしめると、ツカサは「わぷっ」と可愛い声を出す。

 けれど驚くことはなく、クロウの言い表せぬ思いに応えるように背中に精一杯手を回してきてくれた。

 ……あたたかい。
 小さくて、やわらかくて、温かいツカサの体温が流れ込んでくる。

「俺も、クロウのこと……好きだよ……」

 耳に心地いい、ツカサの声。
 その「好き」が自分とは少し違うものであろうとも、それでもツカサはクロウの欲望を肯定して、この“本性の姿”すらも気にせずに抱き締めてくれた。

 クロウを、特別な存在だと思ってくれているから。

「ん、んん゛……っ。んんん゛ん゛……」

 また涙が溢れてくる。それが恥ずかしくて、クロウは口を閉じ唸った。
 だがツカサは気にせず、そんなクロウの頭を胸に導くと、頭をギュッと抱きしめて、無言で「泣いていいよ」と示してくれた。

 まるで母親が幼子に胸を開くかのように、こんな情けない大人を。

「これからも、いっぱい……甘えて良いから……」

 何もかも解決して、ほこりを取り戻した立派なオスに、言う言葉ではない。
 だが、自分が欲しい言葉は称賛でもなんでもない。
 ツカサの、この言葉が欲しかった。

 誰に笑われても良いから、たった一人……いつでもそばに居てくれるひとに、何もかもをさらけ出せるような言葉を言って貰えれば、それだけで救われたのだ。

「ツカサ……好きだ、愛してる……っ」

 その言葉に感謝するように、思いを呟く。
 ツカサの胸に顔を押しつけたままこぼした言葉だったが、クロウの低い声に反応してしまうツカサは、その言葉にまた体温があがったようだった。

 しかし、それをさとられまいとしてか……急に、変な事を言い出す。

「あーっ、あのさ、その……クロウ、このツノ……触っても良い……?」
「ン……? うむ、かまわんが……いいのか……?」
「うん。だって格好いいじゃん、このツノ」

 そんなこと、初めて言われた。
 思わず顔を上げてツカサをみるクロウに、少し恥ずかしげな表情を浮かべつつニッと笑ったツカサは、優しくクロウのツノを撫で始める。

「む……ぅ……。気持ちいい……」
「ホント? あは、じゃあ良かった。これからはツノもお手入れしような」

 …………ツカサは本当に、こんな自分の姿すら嫌がらずに愛してくれる。

 それがどれほど稀有な事なのか、今はもう言い募る余裕もない。
 ただ、このあどけない少年が好きで、好きで、愛おしくてたまらない。

 おのれの本性すらいとわずに容易たやすく抑えてくれる“唯一のひと”が、今こうしてクロウを抱き締めてくれている。その事実が、どうしようもなく嬉しかった。

「ツカサ……」

 名前を呼び、そのふわふわした胸に顔を擦りつける。
 そんなクロウの甘えに苦笑するツカサは、愛おしげにこちらを見つめて、いつまでもツノや頭を優しく撫でてくれていた。












 
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 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

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【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

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🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

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戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

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