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古代要塞アルカドビア、古からの慟哭編
53.託された望み
しおりを挟む『アクティー!』
裸足の足で駆け寄るクラウディアちゃん。
だが、アクティーは項垂れたままピクリとも動かない。
――――ほんの少し前まで、彼女の魂は元気だった。
なのに、ここまで血だらけになって動かなくなるなんて……それほど【礪國】の力を使うために魂を酷使されているというのか。
それとも、あの仮面の男達の支配が、それほど強いって事なのか?
どのみちアクティーをこのままにしておくわけにはいかない。
それに、彼女を解放する言葉だって伝えられていないじゃないか。
このままじゃ救えないまま終わっちまう。
俺も彼女に駆け寄ると、鎖がどこかから外れないか触れようとした。が、それを横に居たクラウディアちゃんが止める。
『お兄ちゃんだめ! この鎖に触れたらお兄ちゃんまで操られちゃうよ!』
「えっ……じゃあ、やっぱりこれがあいつらの術なのか……?!」
『この鎖は、アクティーの魂を縛ってるだけみだい。だけど、鎖自体が怖くて強い何かに支配されてる感じがするの。……たぶん、これって……あの熊のおじちゃんが今使ってる力と同じだと思う。……おじちゃんの力は、優しいけど……』
なるほど、じゃあこれは曜術の類で間違いないってことなのか。
それなら俺が触るのは危険かもしれない。精神を縛るモノなんだから、俺みたいなのが何も対策せずに触れば絶対に悪い事になるだろう。
だけど、それならどうすればいいんだ。
もうあまり時間は無い。アクティーの体力も限界だろう。
いくら時間が遅く流れているとは言っても、何が起こるか分からないのだ。世の中には、音速で動いたのかと思うくらい素早いヤツもいるし……うかうかしていたら、戦況が変わってしまう可能性もある。
しかし、どうしたものか。
「鎖の間から触れば、アクティーに届くかな」
『分からないけど……それしか方法は無いかも……』
クラウディアちゃんも判断できないようだ。
こうなったらもう、試してみるしかない。
俺は意を決して、鎖に縛られていないアクティーの逞しい肩に手を伸ばす。
とにかく触れさえすれば、突破口を見つけられるかもしれない。
そう思って触れる。と――――
「ッ……!!」
途端、全身を駆け回るような不快感に襲われる。
だがそれは悪寒が走るというようなレベルのものではない。まるで全身を激しく揺さぶられるような怖ろしい衝動が、手から這い登ってきたのだ。
まさかこれは、鎖の気配か何かなのか。
それほどまでに強い気配を持つ鎖に慄き、思わず手を離しそうになったが、何とか俺はグッとこらえてアクティーの肩をしっかりつかんだ。
……俺の体は、幸い何ともなっていないようだ。
怖気だけは未だに続いているが、それでも耐えられないほどじゃない。
俺が無事なのを見て、クラウディアちゃんはアクティーの目を覚まそうと大きな声で名前を呼び始めた。
『アクティー起きて、目を覚まして……! こんな悪い力になんか負けちゃダメ!』』
まだ年端もいかない少女らしい、素直な言葉の励まし。
クラウディアちゃんに倣い、俺もアクティーが解放されるように願いながら強い声で彼女が目を覚ませるようにと願いながら呼びかけた。
「アクティー、起きろ。起きるんだ! 鎖なんかに負けちゃだめだ、クラウディアちゃんが今目の前にいるんだぞ、君が大切にしている彼女のためにも目を覚ますんだ!」
鎖から彼女が解放されるように願いながら、名前を呼ぶ。
それだけで何かが変わるわけじゃない。だけど、やらずにはいられなかった。
ただ、アクティーが鎖から解き放たれる事と、再びクラウディアちゃんと出会える事を願いながら呼びかける。
――――すると。
「っ……!?」
アクティーの肩が、金色に光る。
いや違う。これは触れている俺の掌が光っているんだ。
その光が傷だらけで血を流しているアクティーの体を徐々に包んでいく。
どういうことなのかと目を丸くしていると、クラウディアちゃんが強く言った。
『お兄ちゃん、もっとアクティーの名前を呼んで! 解放して、自分の前に立つように思い浮かべながら、もっと……!』
――――その力はきっと【魂呼び】の力。
魂だけの空間だからこそ、お兄ちゃんの強い力が作用して、名前を呼んで望むだけでアクティーの魂を呼び出すほどの力が発動している。
もしかしたら、解放できるかもしれない。
……そんなクラウディアちゃんの言葉無き思いが俺に流れ込んでくる。
もし望みがかなうなら、いくらだって祈る。
アクティーがこの鎖からするりと抜けだし、また元気な姿でクラウディアちゃんと笑顔を向け合えるようになることを。
だから、お願いだから目覚めてくれ。
「アクティー……!」
苦しくなるほどの思いを込めて、そう叫んだ。
その、瞬間――――アクティーの体を完全に金色の光が包み込み、邪悪な光の鎖を内側から照らした。その光に、鎖がずるりと緩む。
すると、アクティーは目を閉じ項垂れたまま急に立ち上がり……
その鎖を、床に全て落とした。
『アクティー……!』
クラウディアちゃんが、泣きそうな声で名前を呼ぶ。
少女そのままの、可愛らしい声。聞いているこちらが切なくなってしまうような呼び声に、傷だらけのアクティーがゆっくりと目を開けた。
「…………く、らう……でぃあ……?」
金色の光は消えて、彼女は駆け寄るクラウディアちゃんの方を向く。
最初は呆けていたけれど、クラウディアちゃんが血を厭わずに抱き着いたことで、彼女はハッと我に返ったような顔をして小さな体を抱きとめた。
『アクティー……っ。ごめんね、今まで苦しい思いをさせて……!』
「……いや……私、こそ……ごめん……。やっぱ、り……止められ、なかった……。本当、なら、私が……自分で、抗わなければ……いけなかったのに……」
「それは……君のせいじゃないよ」
何と言っていいのか分からないけど、それでもアクティーのせいじゃない。
こんな大惨事を引き起こしたのは【教導】達だ。強制的に目覚めさせられて、魂すら縛られて「したくないこと」をさせられていたのに、なにが悪いと言うのか。
少なくとも、必死に抗っていたアクティーは絶対に悪くない。
「……ありがとう、ツカサ……。だが、私は今もこの体に縛られ操られている。私の魂を直接的に縛る鎖からは逃れられたが……魂になると、一度入ってしまった体の中からは出にくくなるものらしい」
「そんな……」
魂を解放しただけでは、体から出られないのか。
だとしたらやっぱり、彼女の本当の望みを伝えないといけないのかもしれない。
そう思った俺に、アクティーは覚悟を決めたような真剣な顔つきになると、俺の目を見据えて静かに告げた。
「……このままでは、取り返しのつかない事をしてしまう。……だから、その前に……私をこの場で、殺してくれないか」
「っ……!?」
「魂を殺せば、私は消滅して体は動かなくなる。きっと、この【アルスノートリア】の力も、モルドールの【皓珠】と同じように君の中に還り効力を失うはずだ」
「そんなこと出来るわけないじゃないか! 俺達は君を助けに来たのに!!」
思わず叫ぶが、彼女は意志を固めているのか微動だにしない。
ただ静かに俺を見つめるだけだ。その目は、俺より男らしい目だった。
「頼む、ツカサ。もう時間がない。だから、早く私を……」
「忘れちゃったのかよ、アンタ本当の望みを取り戻したいって言ってたじゃないか! 最初からずっと、違う事を願ってたって」
「それは……――――」
「アンタの願いは、消えることじゃないだろ!?」
今の状況を重く受け取りすぎたアクティーは、もう自分の事など構わず死人が出る前に消え去ろうと思っている。けど、そんなの間違ってるよ。
何のためにクラウディアちゃんがこんなに頑張ったんだ。
何のために、ブラックやクロウやロクが協力してくれたと思ってるんだ。
それは全部、アンタを救うためじゃないか。
誰も殺したくないと最後まで抗い続けてくれたアンタを、クラウディアちゃんが迷子になってまで探していたアンタを、救いたかったからだ。
それなのに今ここで殺してくれなんて、そんな願いは叶えられない。
少女だったアンタの願いは、望みはそうじゃないだろ。
「本当の……っ、アンタの本当の願いは……――――
クラウディアちゃん達、アルカドビアの王族の汚辱を払う事だったんだろ!?」
なのにどうして、今ここですべてを捨てて死のうとするんだ。
君が生きていた時、暴君と呼ばれ処刑されたネイロウド達を見て、自分達が悪者だと追い立てられ死んだ時、君は怨み以上に自分達に引き起こされた理不尽を怨み魂を保ち続けたんだろう。
だから【教導】に選ばれた。
でも、だからって国を壊すなんてこと、望んじゃいなかったはずだ。
誰かに愛されて育った子が、最後まで最愛の妹を守ろうとした女の子が考える事が、そんな生臭い願いであるはずがない。
操られてなおクラウディアちゃんのことを思い続け、あえて名前を借りた理由。
そして国を壊すと宣言した理由を俺なりに考えた結果……どうしても、あいつらが望む破壊の結論なんて出てこなかったんだよ。
クラウディアちゃんの記憶を見せて貰って、それは確信に変わった。
あの甘い記憶。涙が出そうなほど幸せだった記憶。
アクティーにとって最も幸せで輝いていた記憶は、操られて消えるほど脆い記憶じゃない。ずっとずっと、恨みと一緒に残り続けた思い出が、アクティーの心を今も守っていることが、その証だ。
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「そうだよ。……だからアンタは、誰かに『古代アルカドビア』の真実を探って欲しくてクラウディアちゃんの名前を借りたんだろう? 人を殺さず国を壊す事だけを考えて、誰かを殺すことすらできなかったのも、アイツらと同じになりたくなかったからだ。歴史の中で“暴君”にされてしまった人達の真実を、知って欲しい。クラウディアちゃん達が、優しい人だったと知って欲しい。だから……アンタは、ここまで抗えたんだ」
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――――獣人は、誇りを重んじる。
相手と正々堂々戦って喰うことにより相手の名誉は保たれ、自分も勝って命を頂いた事に誇りが持てるようになる。
弱肉強食でありながら、何よりも相手の名誉を重んじる不思議なこの世界の獣人達は、昔からずっとそうやって互いの品格を守って来たんだ。
こんなに小さなクラウディアちゃんでさえ、獣人としての厳しさや誇りを持っている。彼らにとって、獣人としての誇りや名誉は何よりも大事なことだったんだ。
だからこそアクティーは、大好きな人達が「国盗り」により徹底的に貶められ、暴君という名誉すら奪われた地位に置かれたことに、激しい怒りを燃やした。
クラウディアちゃんを守れない自分をどこまでも恥じて、名前も捨てたんだ。
……自分の名前なんて、命なんてどうでもいい。
だから、この名前を誰かに知って貰い「何故、古都アルカドアを先に襲ったのか」と疑問に思ってほしい。そこから歴史を正してほしい……なんて、消えない思いが、操られていても自我を保った彼女を動かしていた。
今までの不可解な行動は、全て「アクティーが心の底からクラウディアちゃん達家族を愛していた」から起こった、誰かを焚きつけるための大芝居だったんだ。
それで、結果的に俺達は歴史の真実を知ることになった。
……これが、偶然なんてありえない。
『アクティー……そんなに、私達のことを……』
「…………私が、クゥ達の……」
俺に捲し立てられたアクティーは、放心していた。
だが抱きしめていたクラウディアちゃんが名を呼んだことで、ゆるゆると顔を動かし、腕の中の小さな少女を見て、再びゆっくりと俺に顔を向けた。
その何とも言えない表情に、俺はもう一言加えてやる。
「……望みは、叶ったよ。俺だけじゃない。クロウ達熊族が、ソーニオの手記を持ってたんだ。その中に……書物には無い、本当の歴史とソーニオの後悔があった」
知った名前が出てきた事にハッとしたアクティーだったが、少し目を伏せて「そうか」と呟き、またこちらを見つめてきた。
「ソーニオは……やはり、後悔してくれたんだな。……怨みは有るが、それでも彼のお蔭で真実が白日の下に曝されたのだから、もう何も言うまい」
「最後まで、二人の事を後悔してた」
「…………なら、尚更何も言うまい。そうだな……ああ……やっと……心にすとんと、何かが落ちてきた気がする。そうか、私は……クラウディアと父上達の名誉を、何があっても取り戻したかったんだ。……それ以外、出来る贖罪など無かったから」
そんなことはない。
俺もクラウディアちゃんもアクティーに首を振るが、しかし彼女は緩く寂しげな笑みを浮かべると、自分も同じように首を横に振った。
「ようやく、魂だけで留まっていた時の気持ちを少し思い出したよ。……確かに私は、恨みや自分への憎しみで留まっていたが……それでも、隣で眠るクラウディアの事を思い出すと、この子だけでも無実だと理解してほしいという気持ちがずっと消えなかった。砂漠の中でずっと、自分達を見つけてくれる誰かを求めていたんだ」
歪に捻じ曲げられた「大罪人」ではなく「哀れで罪のない姉妹」という事を理解して、自分達の真実を認めてくれる誰か。
長い時間ずっと砂漠に佇み続けていた魂は、切望によって誰かを探すことで、恨みだけでない強さを獲得していたのかもしれない。
……アクティーはそう語って、息を吐いた。
なんだか憑き物が落ちたかのような、すっきりした表情だ。
魂は傷ついたままだけど、それでも今までの苦しそうな彼女とは違い、穏やかで心が晴れたかのような顔をしていた。
その表情に……何か、気付くことがあって。
俺は言うべきか迷ったが、それでも静かに問いかけた。
「…………もう、行くのか」
全てから解放され、望みを思い出した。
それは、彼女が現世に留まる理由が消えたことを意味する。
同時に、クラウディアちゃんの魂も、同時に現世への執着が消えることになるのだ。
彼女達は最初から互いを強く想いあい、決して多くの事は望まなかった。
だからこそ……ここまで来られたけど……。
「ああ。そうだな……今なら、この体から抜け出せる気がする。クラウディアがここに居て、私の望みは成就された。そのおかげで……天からの階が、見える」
『私も……こんな綺麗な階段初めて見た……!』
俺には見えないが、魂が導かれるべきところに行けるよう、誰かが示しているのかも知れない。だとすれば、この機を逃すわけにはいかないだろう。
「お別れなんだな……今度こそ、本当に……」
喜ぶべきことだ。
だけど、自分の中から徐々にクラウディアちゃんの心が分離していくような感覚は、大事な半身を失ったような喪失感があって、悲しくなってくる。
アクティーの姿が薄らと輝き透けはじめた事も、感情の揺らぎに拍車をかけた。
情けなく悲しむ俺に、彼女達は微笑む。
そして……近付いてきた。
「ありがとう、ツカサ。……他の人達にも、礼を言って欲しい。身勝手な事ばかりしてしまったが、それでも……感謝している、と。……そして、君に出会えてよかった」
『お兄ちゃん、本当に……本当に、ありがとう……!』
「――っ……!」
満面の笑みで、二人は笑って――俺を、ぎゅっと抱きしめてくれる。
魂だけの存在になっても、その腕の力強さと温かさは変わらない。むしろ、今は魂だからこそ、二人の暖かさや喜びが伝わってきて、俺は視界が水で揺らいだ。
こんな状況じゃなければ、もっと一緒に居られたかもしれない。
でも、悲しんでいる暇はない。彼女達が解放されるのを惜しがっていたら、いつまで経ってもクラウディアちゃん達が浮かばれないのだ。
俺はズズッと鼻水を啜ると、彼女たち二人を抱きしめ返した。
その行動に、姉妹は同じようにコロコロと可愛く笑う。
姿形は違っても、長い年月が経っても変わらない。生きている頃のように、可愛らしくて見ている人全員がつられて笑ってしまうような、幸せな笑顔だった。
「……どうか、あとの事は……頼む」
『お兄ちゃん、王都の人達を助けてあげてね』
「おう……まかせとけ……!!」
ゆっくりと体を離し、大丈夫だとおどけたポーズを見せると、二人は微笑む。
そうして、大きな手と小さな手を繋ぎ――――天を見上げた。
――――真っ暗な空間の中、一筋の光が俺達に当たっている。
今まで頼りなかったはずのその光が、急に大きくなり……目の前を、白で埋め尽くした。眩しすぎて、周囲が見えなくなる。もう黒い色は見えなかった。
『バイバイ、お兄ちゃん……!』
そんな強い光の中に、アクティーとクラウディアちゃんはゆっくり溶けていく。
だけど何故か霞み薄れていく彼女達の行く先は幸せな場所のように思えて、俺は寂しさよりも嬉しい気持ちの方が強くなった。
どうしてかは自分でも判らない。でも……やっと、彼女達は報われたんだ。
報われて、あとの事を俺達に託してくれた。
ならば、俺達は……その「託されたもの」を、完璧にやりとげるしかない。
「絶対に……誰も死なせない……。真実も絶対に伝えるから……!!」
誓うように叫んだ最後の言葉。
その言葉が掻き消されるほどの光が俺を飲み込む前に、二人の少女のくすぐったそうな幸せな笑い声が聞こえた気がした。
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