731 / 952
古代要塞アルカドビア、古からの慟哭編
14.戦の前の一休み1
しおりを挟む◆
あれから数時間して、ようやく会議はお開きとなった。
もう後半あたりは何を話しているか俺にはチンプンカンプンだったので、少し離れたところに移動して、ロクとナルラトさんと一緒に気の抜けた顔で手遊びをしていたのだが、なんとか話はまとまったらしい。
こういう時に「話し合いを全部任せてしまって悪いなぁ」と思うんだが、政治や戦略と言った話にトコトン疎い俺が話を引っ掻き回すより、ここは頭のいい人たちだけで話を纏めて貰って、その結果を分かりやすく教えて貰う方がスマートだろう。
そもそも、万年赤点ギリギリ常習犯の俺が戦略を語れるはずもない。
今回は悪友達のおかげで頑張った……と思ってるテストだって、結果が心配ないとは言えない状態なんだからな。自分で言うのもなんだが、俺のようなヤツでは絶対にブラック達の話についてけないだろう。
フフ、これがアレだ。
「まあ……俺じゃわからないか。このレベルの話は」ってヤツだ。
……俺だって自虐はしたくないが、嘘をつくわけにもいくまい。自分の力不足を素直に認めるのもオトナの度量ってヤツだよな。
ともかく、話し合いが無事に終わったのならそれでいい。
部屋に戻ろうというブラックとクロウに頷き、俺はロクと一緒に会議室を後にした。
途中途中で休憩は挟んでいたけど、それでもあれだけ議論してたら疲れただろうな。つーかそもそも、ロクとブラックは大変な任務から帰ってきてすぐだったんだし……。
ううむ、これは部屋に帰ったら腰の一つでも揉んでやらねばならないだろうか。
ブラックがそんなジジむさいとは思ってないけど、でも戦った後すぐに会議だなんて流石にオーバーワークすぎる気がする。
いくらブラックが超人的な体力を持っていても、疲れるものは疲れるのだ。
まだ柘榴ちゃんに貰った蜂蜜はたくさんあるし、なにか作ってもいいかも……などと思いつつ、俺達はやっと客室へと戻ってきた。
外はもう夜中で、外廊下には点々と明かりが灯っている。
部屋の中も、王宮勤めの侍従の人が整えてくれたらしい。俺達が会議室にこもっているという話が伝わっていたのか、円座の横の小さなテーブルには黄金の大きな杯に入った果物の盛り合わせや、お酒などが置かれていた。
お肉などは冷えちゃうから流石になかったけど、気を使ってくれたらしい。
この王宮を訪れた最初は、こんな厚待遇を受けるなんて思ってもみなかったな……やっぱりこの大陸じゃ「強い」は正義ってことか……うーむ世知辛い。
「果物か……ムゥ……肉が良かったぞ……」
「……まあ、王都も閉鎖状態だし、仕方ないだろうよ」
クロウが素直に文句を言うのに、珍しくブラックも賛同する。
やっぱり疲れてるしお腹も空いてるのか……そりゃそうだよな。それに、ブラックって肉料理大好きだから、基本的に肉ばっかり食べるし。人参嫌いだし。
そんな肉食系オジサンなんだから、そら果物じゃ不満顔になるよな。
でも折角の行為に不満顔をするもんじゃないぞ。
「けっこうな時間になっちゃったし、これしか用意できなかったんじゃないか? 折角のご厚意なんだから、美味しくいただこうよ」
「キュー!」
ロクちゃんはお肉以外も好き嫌いせず食べる良い子なので、すぐに果物に飛んで行って、ブドウっぽい果物の房から粒をもいで食べている。
ウッ……か……可愛い……っ。
「ツカサくぅ~ん! ねえねえロクショウ君ばっかり見てないで、僕もみてよぉ! ホラみてこのおなかが空いて可哀相な僕の目をっ」
せっかくロクの可愛い姿を見ていたってのに、急にオッサンが俺の視界にズイッと割り込んで来て、わざとらしい潤んだ瞳を見せつけてくる。
……いや、お前な、誰がどう見たって今のお前じゃ瞳よりヒゲの方に目が行くって。朝から忙しすぎたせいで、ヒゲ凄いことになってるぞ。
「お前なぁ……食べ物の前にヒゲどうにかしろよ……」
「今日はもう誰にも会わないから良いじゃないかぁ。それより、ツカサ君お肉ぅ。今からお肉焼いてよ~。僕、果物だけじゃお腹と背中がひっついちゃうよう」
「ちょっ、ちょっと、急に近づくなって……!」
ロクショウを見させまいとしてか、ブラックは俺の肩を掴んで顔を近づけてくる。
まさか、今から俺に肉を焼けというのだろうか。
確かに……船で貰った食糧や、万が一のためにと思って入れておいた肉の塊などは【リオート・リング】に入ってるけど……でも、今から厨房って借りられるのか。
さすがにこの時間じゃ無茶ってものなのでは……。
怖気づくが、しかしブラックはそんな俺に更に畳み掛けてくる。
「ねー、ねー、ツカサ君お願いぃ~……僕、今日とっても頑張ったんだよ……? 凄く頑張ったんだよ……? だから、僕のこと甘やかしてよう……じゃないと僕、もう今日は疲れて何も話す気がなくなっちゃう……」
「ぐっ……お、お前な……」
さっき「結果を話す」とか言ってたくせに、どういう風の吹き回しだ。
そんな風に人を脅しやがって……こうなったら、無視してクロウにでも聞いたほうがいいんじゃなかろうか。と、思ったが、クロウを振り返るとコイツも腕を組んで沈黙の構えを取ってやがった。
こ……このオッサンども……肉を食うまでテコでも動かないつもりだな……。
「ね~、ツカサくぅんん……お肉が食べたい~……久しぶりにツカサ君の手料理食べたいよ~……」
「ぐぅう……」
だあもう、近づいてくるんじゃないっ。ただでさえむさくるしい無精ヒゲだってのに、今のアンタは通常に輪をかけてヒゲが濃くなってんだぞ。
そんな風に目を潤ませて顔を近付けてきても全然キュンとしないし、べ、別に……その……別に、ドキドキしたりなんて……っ。
「ふへ……。つ、ツカサ君……」
「ううううるさいっ、変な声を出すなっ!! へにゃっとした顔をするなーっ!」
何故か顔が熱くなる。それが恥ずかしくて必死にブラックを押しのけようとするが、相手は何が嬉しいのか顔を笑みに緩めて口をすぼめてくる。
そ、その顔やめろっ。これみよがしにタコみたいな口になるんじゃない!
あーもーさっきはあんな真面目だったのに、なんで身内だけになったらこんな風にスケベオヤジみたいになるんだよアンタは!
「ツカサ、観念して肉料理を作るのだ。それしかブラックの執拗な口づけから逃れる術はないぞ。逃れられないと今夜はきっと酷いことになるぞ」
「こ、こんにゃろクロウうううう」
「ツカサ君んん~」
ぐわあああ、こ、こんなことしてる場合じゃないってのにっ。
でもこのままじゃ、昨日の二の舞になってしまう。ヤドカリも近付いてきてるに違いないのに、またブラックに撃沈されるわけにはいかない。
だったら、もう俺には選択肢はないワケで……。
「う、ううぅう、分かった、分かった作ってやる! だから離れろってばー!」
「ふふふ……ツカサ君ならそう言ってくれると思ってたよっ」
「ウム、では早速調理場をどこか使えないかアンノーネに聞いてこよう」
……正直、アンノーネさんも疲れてるんじゃないのかなぁ……。
オッサン達のワガママで胃が痛くなりはしないだろうかと心配になったが、そんな事を言えばブラック達が何を言うか分からなかったので、俺は口を噤んだのだった。
→
※ちょっと長くなりそうだったので切りました。次は肉うま回
更新が遅くなっちゃうときは、ツイッターもといエックスで
事前にお知らせしておりますので、フォローするかはともかく
もし更新が気になるのであれば覗きに来て下さると嬉しいです!
更新のこと以外は作品と日常のことしか呟いてない木端アカです!
いやー、ここ最近めちゃ時間がまちまちなので……(;´Д`)
五月くらいまでには体調も整えてもとに戻せるよう頑張ります…!
21
お気に入りに追加
1,010
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる