異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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邂逅都市メイガナーダ、月華御寮の遺しもの編

  実証※

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「うっ……くっ…………ッ……ふあぁ……」

 狭くきゅうきゅうと締め付ける雌穴。その奥に注ぎこむように、溜まりに溜まっていた濃厚な熱を吐き出す。

 ただの生殖行為の一端でしか無いこの行動も、ツカサを抱き締めながら彼の中に注ぎ込めば、えも言われぬ至上の快楽に包まれる。
 未熟なままで成人を迎えてしまった最早男には成れない体に、並外れた大きさのペニスをぎちぎちに嵌めこんで欲望のままに貪るのは、ツカサへの愛情とは裏腹に背徳感と倒錯的な感情を強く揺さぶり今までにない快楽を作り出す。

 なにより、ツカサの体の全てが、ブラックにとっては心地良い。

 上下に揺さぶれば柔らかな尻が自分の足にあたり、これほどまでに強く締め付ける雌穴にも関わらず体は軽くあどけない。そのくせ一人前の大人のように、こちら側の情欲に煽られて、薄紅色の小さな乳首と未熟な陰茎を一生懸命に勃起させる。

 精神も体つきも生娘のようなメスのくせに、既にオスとの情交を知った従順な娼姫のように、オスが涎を垂らし望む淫らな性器の姿と色に満ちた顔を見せるのだ。

 これほどまでにオスがもたらす肉欲に酔い、歓喜するがごとく不届きな侵入者であるはずのペニスを離すまいと締め付ける肉穴を持つツカサは、婚約者の欲目という視点を越えて、ただただ危うい存在にしか思えなかった。

 ――こんな姿を他のオスの目の前で曝せば、きっとただでは済まないだろう。

 ブラックのその予想を肯定するかのように、ツカサの背後でずっと突っ立っていた無様な熊は、醜悪な肉棒を勃起させ、食い入るようにツカサの揺れる尻を見つめていた。……毎度のことながら、見ているこちらの気分が悪くなる。

(なんでツカサ君との楽しいセックスの途中で、クソ熊の気持ち悪い肉棒を見なきゃならんのだ? さっさとそのモンスターしまえ……じゃなくて)

 つい正直な感想が口を突きそうになってしまったが、今回ばかりはそう言ってこの横恋慕熊を追い返す訳にも行かない。
 幸福に身を委ね享楽に耽るのは簡単だが、今日はそれが目的ではないのだ。

「ッ……ふ……ツカサ君……ちょっと、抜くよ……」
「んっ、ふ……んぅ、ぅ……う……」

 目の前の恋人の表情は、いつもより幼く見える。
 ブラックとのセックスに溺れきって目を潤ませ必死に息をする様は、それだけで欲を刺激した。顔中を液体でぐちゃぐちゃにして犯される快楽に溺れていたのだと思うと、本来であれば純粋だっただろう彼を穢したという暗い興奮で、今すぐにでも更に彼を犯してめちゃくちゃにしたくなってしまった。

(はぁ……でも、我慢我慢……っ。何の為に気絶したツカサ君で虚しく抜いてたのか分からないじゃないか)

 己の努力を無にすまいと何とか衝動を抑え込んだが――目の前にツカサの可愛い顔があると、つい顔を寄せてしまう。
 放心状態のツカサにキスをすると、高く掠れた短い矯正と共に、ブラックを受け入れていた雌穴がきゅむっとペニスを締め付ける。

(おほっ……んんっ、もう、ツカサ君たら本当に僕のペニスに媚びるのが上手いんだから……っ!)

 肉壁の反射的な動きがブラックのペニスを包むように蠢き、柔らかく弾力のある唇に何度も愛情を籠めたキスを落とすと、それだけでツカサは微かに可愛らしい喘ぎ声を上げ、ナカに入ったままのブラックのペニスを物欲しげに締め付け扱いた。

 娼姫と寝た時ですら感じた事のない、完全にブラックに屈服し愛を示す体。
 ブラックを想い、ブラックと同じように淫らな感情を持っているからこそ誘うのだろう雌穴の肉壁を感じると、それだけでもう我慢が出来ず膨張させてしまった。

「っく……ツカサ君たらっ、ホント……っ、無自覚にオスを煽って……っ」
「ひぐっ!? ぃ、ああっ! らぇっひっ、あ、う、動かしゃないれぇ……!」
「名残惜しいの? でも、ペニスを抜かないと体勢変えられないから我慢して」
「いやブラック、ツカサは別に惜しんで言ってるワケではないと思うぞ」
「うるせえ爆散しろクソ熊」

 せっかくの盛り上がりに水を差す邪魔者熊につい冷静に殺意を抱いてしまったが、良く考えるとその方がかえって良かったのかも知れない。

(ふー……いけないいけない……ツカサ君とセックスすると気持ち良過ぎて、つい腰を動かしたくなっちゃうからな……。今は抑えないと……)

 少し理性を取り戻した頭で欲望を抑えながら、ブラックは己のペニスを刺激しないように、ゆっくりとナカから退避する。
 しかし、ツカサは挿入セックスによほど意識が持って行かれたのか、こちらが動くとその都度ナカをきゅむきゅむと蠢かせ、名残惜しそうにブラックのペニスを絞った。

 ……実際は敏感すぎるが故の反射でしかないのだろうが、しかし、ツカサのコレに限っては、オスを無自覚に煽る性質が有るとしか思えない。
 異世界人とはいえ、メスになるべくしてなったとしか言いようのない体だった。

(……完全なメスにした僕が言うのもなんだけど、ツカサ君ってアッチの世界で変なオスに目を付けられたりしないのかな。いやまあ、セックスしないとツカサ君の良さは絶対に完全理解出来ないだろうけど、普段から八方美人だしなぁ)

 ツカサに何か有れば、クソ眼鏡神やツカサ自身が何かしらで教えてくれると思うので、今の所そういう事件にはなっていないようだが。
 それにしても、心配になるくらい敏感なメスの体だった。

「ひぐっ、ぅ、ううう……ッ!」
「んっ……ふぅ……」

 にちゅ……と、いやらしい音を立てて亀頭がようやく引き抜かれる。
 その音にツカサの腰がガクガクと揺れて、甘く可愛らしい声が漏れた。
 顔を伏せているが、なけなしの理性が辛うじて羞恥を感じさせたらしい。そんな姿を見て無意識にニヤついていると、横からざぶざぶと邪魔者が近付いてきた。

「で、どうするんだ。どうせだったらツカサの体を洗わせてくれ。お前の不味い精液が付着してると、ツカサの精液の味を阻害してしまう」
「その不要棒ズタズタにして引っこ抜くぞクソ熊。いいから洗い場に行け」
「ふや……」

 会話の意味は分かっていないのだろうが、ツカサが蕩けた顔で反応する。
 その仕草に、つい股間が反応してしまったが――――それは駄熊も同じだったようで、いつもの無表情が緩み涎を垂らしそうな顔になっていた。

(キモッ。耳だけじゃなく下半身までピクピクさせてんじゃねえよぶっ殺すぞ)

 凶暴な男根にオッサンと熊耳と座布団のような尻尾がついただけの存在に、ツカサはどうして可愛さを覚えられるのだろうか。全く分からない。
 ブラックからすると殺意しか湧かないのだが、ツカサの感覚は理解出来ない。

(いやまあ、だから僕が甘えてもキュンキュンしてくれるんだろうけど……にしたって、コイツまで甘やかさなくたっていいのにな……)

 自分が甘い汁を啜っている手前、ツカサの色んなものを可愛いと思える感覚には何も言う事が出来ず、ブラックは軽く息を吐きながらツカサを姫抱きにした。

「っ……ぁ……ぶら……ぅ……」

 快感の余韻で舌っ足らずになった声。
 セックスをすれば、彼の体に見合った幼く甘い声音がたっぷり聞ける。その背徳的な声で自分を呼ぶツカサに、ブラックは熱い息を吐いてキスをした。

 また、体の中で欲望が疼き出す。
 だが今はやることがあるのだ。

「ツカサ君……可愛い……」
「ん……ふ…………。ふぁ……ぅ……」

 ツカサが大好きなキスを額や頬、口に落としながら、彼を洗い場に連れて行く。
 そうして、ブラックは洗い場に腰を下ろした。

「ツカサ君、ちょっと辛いかも知れないけど四つん這いになってね」
「う……うぅ……? わかっ、ら……」

 コクリと頷いて、ツカサは素直に洗い場のお湯の中に膝をつく。
 未だに足に力が入らないのか、足がガクガクとしていたので、ブラックが足を掴んでしっかり四つん這いで立たせてやった。

「おい駄熊、ツカサ君の前に来て腕を吊れ」
「ン? ……だが、それだとツカサの顔の前にオレの肉棒がつくぞ」

 いいのか、と言われ……ブラックは、数秒思案したのち片眉を顰めて息を吐いた。

「ちょっと、試したい事が有る」
「……?」

 首を傾げた相手に炎が出そうになったが、堪えてブラックは続けた。
 ……今回、強引にツカサを風呂場へ連れてきたのは、そのためなのだから。

(でも、実際にやらせるとなると物凄く嫌な気分だな。……いずれ確かめなきゃいけない事だから、やらなきゃいけないんだけど……)

 己の冷静な部分は「早く実行すべきだ」と急かすが、だからといって感情が落ち着くわけがない。むしろ、性欲を抑えて冷静になったせいで、ツカサへの独占欲の方が強く滲み出て来て、いつもの駄熊を手伝わせる変態的なセックスよりも嫌悪感が強くなってしまった。

 本当に、こんな時に冷静になるものではない。
 だが今更後にも引けず――――ブラックは、観念したように熊公に告げた。

「今からツカサ君のナカから精液を掻き出して綺麗にする。それが終わったら、お前はツカサ君の口の中にお前の精液を流し込め」
「なっ……!? い、いいのか!?」
「ロコツに嬉しそうにすんなクソ熊! いいかっ、ツカサ君の口の中に入れるなよ! 仮にやったとしても舌だけだ!」
「むぅっ……! っ、つっ、ツカサの口に……ッ!」
「あっこら!」

 あからさまに昂奮して目を見開いた相手が、必死に四つん這いを保っていたツカサの両腕を掴み、体を引き上げて逸らせる。
 上半身が宙に浮いた状態のツカサは、何が起こったのか解らず呆けていたようだが、駄熊がわざと自分の肉棒の所に顔がつくように調整したせいで、ツカサの体は雄のニオイに反応しあからさまに震えた。

「ツカサ……ッ、はぁっ、は……お、オレの……っ、オレの、肉棒を……っ」
「ひぐっ……!? や……な、に……く、くろぉ……っ」
「はあっ、は……あぁっ……ツカサの柔らかい唇が……っ」

 死ね、という言葉を反射的に吐きそうになったが、ツカサが怯えるので口を噤む。
 だが実際、興奮する下卑た全裸の男のペニスを口に押し付けられ戸惑うツカサと言うのは、それはそれで実に股間を刺激した。

 もとより、ツカサが羞恥し泣きじゃくる姿が、ブラックにとって一番性欲を刺激する姿なのだ。愛するブラックの口ではなく、駄熊の獣ペニスでキスをされたツカサの体は、突然の事にビクビクと反応し逃げるように腰をくねらせていた。

 オスの性欲を見せつけられた事への本能的な怯えと、何度も見せつけられた駄熊の肉棒の感触への羞恥で、ツカサの体は再び興奮しているのだろう。
 何度見ても可哀想な体質だ。

 ……恥ずかしい行為を強要されればされるほど、ツカサは快楽に溺れる。
 彼の中の「男であるというなけなしの自尊心」が、メスとして扱われる体との齟齬で、快楽を余計に強烈に感じてしまうのだ。
 だから、ツカサは羞恥に人一倍反応する。本人がどれほど嫌がろうとも。

(可哀想ではあるけど、そこがまた可愛いんだよなぁ……ああ、ツカサ君が他の男に穢されてビクビクしてるの見たら、また興奮してきちゃったよ……)

 再び己の股間に熱が集まるのを感じつつ、ブラックはツカサの開いたままの雌穴に指をぬぷりと差し込んだ。

「んう゛ぅっ!?」
「ほぉらツカサ君、綺麗にしてあげるからねえ」
「ツカサ……ああっ……口に入れなくて良いっ、舌で舐めてくれ……っ」

 前は獣人の異様な肉棒を口に押し付けられ、後ろは小さな雌穴に大人の指を突き入れられてナカを徹底的に探られ掻き回される。
 流れる湯の音すら、耳にこびりつく卑猥な音を消せないだろう。

 ブラックが難なく三本目の指を入れ、一本を軽く折り曲げて前立腺をこりこりと刺激しながら奥から流れ出て来た精液を掻きだすようにクイクイと残りの指を動かすと、ツカサの体は面白いように痙攣し、ガクガクと足を震わせた。

 最早膝を立てている事も出来ず、ブラックの胡坐に足を預け開脚してしまったが、それでお湯に半勃起した稚茎が触れたのか、ツカサは一人で悶えている。

「んん゛~~~ッ!! んぐっ、ひっ、ぃ゛ぁっ、お゛っ、おう゛ぅ……!」
「あはっ、流れてるお湯におちんちん当たって気持ち良かったの? まったく……自分で四つん這いも維持できないくせに、気持ち良くなろうとする気持ちだけはあるんだから……。雌穴ほじられるだけじゃ足りなかったの?」
「ひがっ、ぁ゛っ、ひがうぅっ! らぇっ、お、おゆ゛やらっ、おひりいやらぁあっ!」

 必死に首を振って、ツカサは「そうじゃない」と訴えて来る。
 明らかに快楽に溺れかけているというのに、それでも必死に抗おうとしていた。
 そんな姿が余計にオスを煽るのだが、ツカサはきっと一生気が付かないのだろう。そう思うと哀れな気持ちと同時に劣情が湧いて来て、ブラックはつい酷い言葉を浴びせかけてしまった。

「綺麗にしてあげてるだけだよ? ツカサ君のおちんちんがお湯に浸ったのだって、体勢を崩した自分のせいなのに……ホントにツカサ君って、恥ずかしい格好して気持ち良くなろうとするのだけは得意だよねえ」
「~~~~~ッ!!」

 両腕を掴まれて上半身を浮かせたまま、下半身は無様に足を開いておちんちんも雌穴も丸出しにしたうつ伏せの格好。
 ブラックの体を跨ぐように開脚しているため、逃れられないのは当たり前だ。
 それはツカサも分かっていて、残りわずかな理性で憤慨している事だろう。しかし、体はセックスした後で満足に動けない。だから、ツカサは今の状況にただ耐えるしかなく、羞恥を募らせて尻を震わせているのだ。

 なんとも幼く、可愛らしい意地。
 だが、耐えたとてツカサの体は解放される事など無い。

(あぁ……可愛い……こんな状況じゃ無きゃ、もっといっぱい恥ずかしがらせてあげるのになぁ……)

 ツカサの震える体を、ひくひくと動く下半身を見つめる度に、征服欲にも似た強烈な欲望が湧いてくる。愛したいと思う気持ちと同時に、どこまでもツカサを追い詰めて、自分だけが見られる表情をもっと見たいという激しい渇望が暴れ出すのだ。

 しかし、今はぐっと堪えてツカサのナカから自分の残滓を残らず掻き出す。
 数分かけてじっくり指で弄ったせいか、ふやけた指を全て抜いたころには、ツカサも再び頭が働かない状態になっており、いつのまにか従順になって駄熊の肉棒に拙く舌を這わせていた。

 気持ちよさそうに顔を歪める駄熊が、ツカサの腕をひとまとめに掴み、ツカサの頭を愛おしそうに撫でている。やっていることは、蛮族が捕まえたメスを拘束して無理に舐めさせているようにしか見えないのだが、その表情を見ていると――――

 自分となにか似たような嗜虐性を感じて、薄ら寒くなる。

 この邪魔な熊もまた、ツカサを愛していると同時に全てを奪い尽くしたいと思う凶暴性を持っているのだろう。

(似た者同士とは思いたくないが、まったく嫌な所ばかり気が合うよ)

 だからこそ協力し合える面もあるのだろうが、そういう部分も含めて気に食わないので、出来れば早急にむごたらしく死んでほしかった。

 そんなことを思うブラックを余所に、駄熊は膨張し切って異常な大きさになった肉棒を、ツカサの顔に押し付けるように腰を動かす。
 背中越しに時折見えるツカサの横顔からは、小さな舌が出ていて、ちろちろと一生懸命に獣の欲望を慰めていた。

 きっと普通のメスよりも拙いだろう奉仕。
 だがその慣れていない必死の奉仕が、オスの本能を刺激する。

 駄熊も例にもれず我慢出来なくなっているのか、人族とは比べ物にならないほどの先走りを漏らし、発射できないことに苛つくように裏筋をピクピクと動かしていた。

 見ているのも嫌な光景だが、もしかすると「許し」を待っているのかも知れない。
 ブラックは暗澹たる気持ちになったが、本来の目的の為に許してやることにした。

「出せ。ただし、ツカサ君の口にその汚いモンを差し込むなよ。あくまでも精液だけを呑ませるんだ。破ったら、そのいらん生殖器切り落とすからな」
「ッ……くっ……ウ゛ゥッ、つ、かさ……っ、ツカサ……ッ!!」

 返答は出来ずとも、命令は聞けるらしい。
 駄熊はツカサの顔を掴むと、無理矢理に顎を開けさせ――――躊躇いも無くその開いた小さな口に、驚愕するほどの量の精液をぶちまけたのだった。

「うわっ! キモッ!! おいツカサ君を溺死させんなよクソ熊!!」
「ぐぅう……! ッフー、フーッ、フグっ、ゥ゛、ぅううう……ッ!!」

 明らかに人族のペニスの動きとは違う、別種の生き物のような蠢きを見せた獣人の肉棒は、どこで作ってたんだと思うくらいの量の精液をツカサに浴びせた。
 このままだと、ツカサの顔が汚い精液だらけになる。そう確信し、ブラックは頃合を見てツカサの体を引いて退避させた。

「あ~……ツカサ君の髪がガビガビになる……! ちったぁ加減しろ殺すぞ!!」
「ヌッ……ぬぅ……すまん……」

 そう素直に謝るが、間抜けにも自分で扱いて未だに止まらない精液を絞り出そうとしている駄熊に気持ち悪さをしっかりと感じ、ブラックは目を逸らす。
 あんなものをずっと見てはいられない。可愛い恋人の顔で上書きしなければ。

 そう思い、放心状態で目を閉じたツカサを抱きかかえ、顔を洗ってやる。

(…………これで、一応は……条件を満たした気がするが……どうなんだろう)

 ――ここに来るまでに考えていた、懸念の一つ。
 まだ覚醒しないが、もし……もし、ブラックの予想が確かなら。

(目を開けた時、ツカサ君は……)

 洗い場に落ちる湯を掬い、彼の体に優しくかけていく。
 ブラックの神妙な顔に気付いたのか、やっと落ち着いた駄熊が洗い場に足を踏み入れて来た。そうして、黙ってツカサの顔を覗く。

 こざかしいが、ブラックが何か確かめようとしているのに気付いたのだろう。
 しかしそれを鬱陶しがる余裕も無く、ブラックは裸でツカサを抱きかかえたまま、彼が目を覚ます時を待った。すると、ツカサの体がゆっくりと動き。そうして。

「――――…………」
「ッ!? ぶっ、ブラック、目がっ、ツカサの目が……これはどういうことだ!?」

 普段は無表情で呆けている駄熊が、驚く声を上げて目を剥く。
 その夕陽色の瞳に映るツカサは、ブラックの顔をじっと見つめていた。

 だが、ツカサの表情には、いつもの生気が無い。

「…………やっぱり、そうなるのか……」

 目覚めて、ブラックを見つめて来た、ツカサの目。

 その目には――――


 濃密な琥珀の瞳ではなく、駄熊と同じ夕陽色の瞳が嵌めこまれていた。










※エックス通り、だいぶ遅れちゃいました…(;´Д`)

 
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