異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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魔境山脈ネイリ、忘却の都と呪いの子編

22.ナイリ山脈考

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   ◆



 【呪い】のことも、クラウディアちゃんの事も色々気にはなるけど、今は生憎と俺達が優先すべきことが別にある。
 早いとこ、怒りんぼ殿下ことカウルノス殿下をナイリ山脈の狼族んトコに連れて行かねばならない。というか、そうしないといつまで経っても緊張状態だ。

 “根無し草”の鼠人族・ヨグトさんの「不穏な状況だから気を付けて!」という言葉に従い気を付けたいところだが、現在の状況では他にやる事と言うと「マハさんに砂漠周辺の情勢」を聞くぐらいしかないのだ。
 歴史を調べても現在の状況とどう繋がるかピンとこなかった以上、もう俺達がやる事はそれぐらいしかなかった。

 ……というわけで、三日目の朝も俺達は男むさい三人ベッドでモゾモゾと朝支度を済ませ、今日はマハさんの執務室へと足を運んでいた。

「クロウクルワッハはともかく、お前達はこの周辺の地理には疎いのだったな。まあ、我が領土を多種族に易く知覚されても困るが! ハッハッハ!」
「妃殿下、御客人が困惑なさっておいでです。冗談はほどほどに」
「分かっている。いいからさっさと地図を出せ」

 お付きのクールなげっ歯類っぽい耳のお兄さんに言われ、マハさんは渋々と言った様子で命令する。あの人は文官か執事かそういう人なのだろうか。
 眼鏡は無いけど有能そうだなと思っていると、その有能なお付きのお兄さんは即座に執務机の背後の棚に積まれていた巻物から一つ取り出し、対話用の広いテーブルへと持って来てくれた。何も言わずに広げてくれるのもさすがだ。

「この赤い砂漠は西と北に海を臨み、あとはナイリ山脈に囲まれている。この山脈は西方極地を区切り、更にこの赤い砂漠を中心とした西北部と、三方を山、一方を海と完全に遮断された小さな西南部に切り分けているのだ」

 だいぶふんわりした地形と曖昧な縮尺で描かれた地図を指で辿り、マハさんは指で大陸の左端をトントンと叩く。
 なんだか北海道の形に微妙に似てるような、そうでも無いような土地は、確かに西の方を山脈で区切られていた。……というか、大陸自体が二つの山脈によって三等分されてるっぽくて、霧がかった絵が描かれている右の東側地域以外は、すべて色の違う砂漠や荒野で埋め尽くされている。

 ナイリ山脈とは別の大きな山脈が東側を区切ってるみたいだが……ここは未踏の地って感じなんだろうか。西側と同じく、一か所からしか入れないみたいだけど……うーむ、まだまだ謎が多いなベーマス大陸。
 ……しかし、こうして見るとホントに石と砂の国なんだなあ……この大陸。

 周囲にわりと大きな島も見えるけど、そのどれもが砂漠なんだろうか。
 南側がほぼヤバそうな砂漠だし、たぶんそうなんだろうな。

 うーむ……こういう環境なら、モンスターの本能が無くても弱肉強食になっても仕方ないのかもなあ。そんな場所で国として長年貿易や統治を行ってるクロウの一族は、やっぱ凄いとしか言いようがない。

「東側が誤魔化されているが?」

 ブラックの言葉に、マハさんはニヤリと笑う。
 よくぞ言ったなという感じの表情だ。

「おお、そっちは調査が進んでいないのだ。……という建前だが、実際は無暗に人が立ち入らぬようにあえてそうしている。お前達は我が国の食卓に並ぶ果物や野草を見ただろう? アレらは実は東側の民族が売りに来ているものなのだ」
「えっ、じゃあベーマス大陸の東側って緑があるんですか!?」

 驚いて問うと、彼女は頷いて続けた。

「まあな。だが、迂闊に入ると恥になるほどの無残な死が待っている。東側の奴らは我々砂漠の民を略奪者として毛嫌いしているからな。そんな事情も有って、地図には正確なことは記しておらんのだ。まあ、地図がある事すら普通は知らんだろうが」
「獣人は、オレ達のように書物を読むことがないからな。こういうものを解するのは、大体が王族や大きな群れを持つ知恵ものの長の一派くらいだ」

 クロウが補足してくれてありがたい。そうそう、そうなんだよな。
 獣人って身体能力が高いし鼻も動物並に利くから、砂漠を旅する時も親や群れの大人に教わった道を記憶して地図ナシで歩くんだ。
 大概は口伝えだから、書物なんて無いんだよな。そもそも紙が貴重なワケだし。

 それに、多くの獣人はナワバリ意識もあるだろうから、そこまで遠くに行かないので地図も要らないのかも。獣人達は書物の類を読んだりしないけど、それは先人からの教えで上手く回ってるから必要ないものになってるんだろうな。

「定住しない“群れ”はどうか知らんが、まあ王族と言えどもバカは出ると言う事だ」
「妃殿下」
「おっと、話がそれたな。地理や歴史なんぞ誰も学ばんから、久しぶりに話が出来てつい要らんことまで喋ってしまった。昔はクロウクルワッハも読み聞かせをせがんで来てくれたのだが、少し育つとどいつもこいつももう一人前ぶって……お前達の母の一人として悲しいぞ、私は」
「そ、そういう話をするのは勘弁して下さい……」

 血は繋がってないが、本当のお母さんと一緒にクロウを見守ってくれていたらしいマハさんの言葉には、さすがのクロウもタジタジなようだ。
 俺としては微笑ましくて笑ってしまったが、まあ恥ずかしい気持ちはわかる。
 男ってのは、友達や好きな相手の前では一人前で居たいモンだからな。俺も自分の母親にこういうエピソードを暴露されたら恥ずかしくて死ぬ。

「妃殿下、お戯れが過ぎます」
「はいはい解っておるわ。……で、ナイリ山脈のことだが……端的に言って、最近はモンスターによる被害報告は無い。ここ一年ほどは平和そのものだな。商人達が使う山道を警備する兵士達からも目立った報告は無い」
「じゃあ、道中に危険はないってことですね」
「……それはどうかな」
「え……」

 急に真面目な顔になったマハさんに、部屋の空気が固まるような感覚を覚える。
 平和である事を疑問視するなんて、何故なのだろうか。頭上に疑問符を浮かべた俺達に、彼女は口をへの字に曲げながら続けた。

「お前達も、ナイリ山脈には凶暴なモンスターが生息しているのは知っているだろう。それゆえにそこに潜む“群れ”も強く、ほとんどの者は立ち入らない。一種の魔境と言っても良いだろう」
「そういう形容をするからには、平和過ぎるのはおかしいってことか」
「うむ。実際、記録簿には月に数度必ずモンスターと出くわしたり戦ったという報告がある。それなのに……ここ一年の間は、まったくその報告が無いのだ。これを妙だと言わぬのはただの愚か者だろう」

 確かにそうだな。
 野良猫を見かけなくなった、とかいうレベルじゃなく、相手は人を喰らう獣でしかも定期的に襲って来てたってんだから、一年も襲撃なしってのは異常事態だ。
 数が減ったってんならその原因が気になる所だし、なんにせよ平和でよろしいって事にはならない。何かの理由が分かれば、それで解決ってことになるんだけど……マハさんの口ぶりからすると未だに不明みたいだし、なんか不安だなぁ。

「原因はわからないんですか」

 訊くと、マハさんは難しい顔をする。

「うむ……こちらでも調査しているが、モンスターの数が“何故か急激に減った”という事ぐらいしか解らなかった。山に潜む“群れ”が過度な狩りをしたのなら、山では騒ぎになっているだろうし、彼ら同士の争いも勃発していただろう。……それなのに、山脈は恐ろしいほどに静かだ。山を下りる【灰狼族】と話をしてみた事もあるが、そういう事は全く知らないとのことだったしな」

 【灰狼族】ってのは、怒りんぼ殿下が受ける“三王の試練”を執り行う【天眼魔狼族】の長が率いているっていう“群れ”の一つだ。
 定期的に山から下りて来て、周辺の集落に施しをしたりする修行っぽい事をしてるらしいが、そういう人達なら山の異変にも敏感なはずだよな。

 なのに、全く知らないってのは……ホントに妙な話だ。

「どうにも解せないな」

 ブラックの言葉に、マハさんとお付きのお兄さんは「まったくだ」と頷く。
 普通の獣人だったら気にしないんだろうけど、クロウ達の一族は国を運営しているからこそ、こういう周辺のキナ臭い話題には敏感なんだろうな。

 改めて国のトップに立つマハさんやドービエル爺ちゃんの手腕に舌を巻くが、その息子である二人が暗殺計画を企ててるんだから本当に気が重い。
 王族にはよくあるって聞くけどさあ、三人とも優しい両親に育てられたのになぁ。

「ともかく……警戒しなければいけないのは確かだ。我が息子とお前達がモンスターに負けるとは思えんが、モンスターの数が減っているとなると山のどこぞの“群れ”がお前達を捕食しようとするかもしれん。あまり無茶な事はしないことだな」
「は、はい。ありがとうございます」

 そのナイリ山脈の“群れ”のことや、安全なルートなどはヨグトさんに、詳しく聞いていたけど、こっちを襲って来るかも知れないと思うと肝が冷えるな。
 しかしモンスターが減ってるかもしれないなんて知らなかった。

 ……こう言うのも、強い獣人行方不明事件に関係あるのかな。
 ゲームとかドラマとかだと、こういう一件が繋がってたりするんだよな。俺はそういうのにとても詳しいんだ。婆ちゃんとか母さんが見てたからな。

「あの……そういえば【海鳴りの街】で強い獣人が行方不明になってるって話があるんですけど、山のモンスターが減ってる件と関係あると思いますか?」

 一応聞いてみようと思ってマハさん達に質問すると、二人は眉根を寄せて悩むような顔をしながら同時に首を傾げる。仲がいいなこの主従。

「どうだろうな……。山に強者が入り修行するなんてことは珍しくないが、今のところは何とも言えん。私達は【海鳴りの街】のような無法の都市には不可侵の立場だし、彼らも私達に介入されるのを嫌うからな……」
「ですが、見慣れない獣人が山にいれば報告くらいはあるはずです。それがないのであれば……彼らが山に居るとすれば、故意に隠れているか……それとも、なんらかの目的が有ってモンスターだけを狩っているという事になりますね」
「うむ……強者が群れて騒ぎにならないのも不可解だ。山に潜んでいるという可能性は低いと思うが、その辺りは調べんといかんかも知れんな」

 どうも、マハさん達は行方不明事件自体を知らなかったらしい。
 情報提供感謝すると言われて恐縮してしまったが……そんな事ってあるのかな。

 無法者の街は国とかの巨大な共同体が嫌いっては言ってたけど、それにしたって周辺の治安を守っているマハさんの所に情報が来ないのは何か変な気もする。
 誰か教えてくれなかったんだろうか。何か理由があるのかな。

 だけど、その理由を考えても俺にはしっくりくる説明が出来ず。

 ――――結局、モヤモヤしたまま部屋を後にする事になってしまった。

「あのネズミに教わった道を使うか、普通に使われている道を使うにしても、なんだか変な事に巻き込まれそうで気が進まないなぁ」
「ムゥ……。オレもナイリ山脈に滞在していた事があるが……どこかに潜もうとするのであれば、モンスターか他の群れに必ず出会うはずだ。それを兵士のみならず魔狼族ですら知らないのは、なんだか解せない。だが、何事も無くモンスターが減るというのも納得のいかん話だな」

 廊下を歩きながらブラックが愚痴をこぼすが、今回はクロウも同意なようで納得がいかないというような雰囲気を醸し出しながら腕を組んでいる。
 行方不明の強者が消えてそれ以降音沙汰なしだというのなら、ナイリ山脈にいる可能性が高い、と二人とも思っているんだろうか。

 確かに……この大陸は広いけど、砂漠にはポツポツ集落が有るらしいし、獣人族の五感が有れば見慣れない気配も敏感に感じ取れるはずだ。
 開けた砂漠であれば、強者がいたらすぐ解かるだろう。

 そう考えると、隠れる場所が多い山の方が隠れるのにうってつけだけど……なんで山に隠れるのかってのがまず解らない。

「はぁー……こっちも理由が不明でモヤモヤなままかぁ」
「まあ仕方ないよ。この大陸は情報網がしっかりしてるワケでもないし、この国以外は種族ごとに固まってるから、他種族に情報なんて渡す義理も無いんだ。どこかに答えが在るとしても、今更探すのは難しいだろうねえ」
「結局、戦う可能性があるという覚悟を決めるくらいしかオレ達には出来んな」

 こういう時は達観してるんだからもう。
 けど、悩んでたって仕方ないか。明日にはもう出発しなきゃ行けないんだし、今後はクロウに刃を向ける殿下を警戒しないといけないワケだし……。

 遠くの敵に怯えるよりも、まずは近くの敵に対処しなければ。
 ……怒りんぼ殿下が心変わりしてくれれば、そんな必要も無いんだけどな。
 でもあの人、昨日話した感じじゃ頑固過ぎて話し合いじゃ無理そうだし……結局、相手が手を出せず自滅するか、こっちが受けて立って撃退するしかない。

「……明日からまた移動だけど、何事も無いように気を付けなきゃな」
「ウム。山を登る際は、オレも周囲を警戒しておくぞ。ナイリ山脈はそもそもが強者の住む山だからな。それなりに地理を把握しているから任せておけ。外から敵が来ても、オレが必ず守ってやるぞツカサ」

 いや、敵が来るのは内側で守られるのはクロウの方なんだよ。
 ありがたいけど、あまり無茶はしないでね……。

 そんな俺の心と同じ気持ちになっているのか、ブラックは凄く面倒臭そうな顔をして眉をひそめていたのだった。
 ま、まあ、いざとなったら守りの要はブラックだしな。

 よし、移動中は肉料理づくしでご機嫌になって貰おう。
 とはいえ、移動中は怒りんぼ殿下と一緒の食事だから、ブラックは全く御機嫌にはなれないかも知れないが……。

 ああどうしよう、なんか今から不安になって来た。
 こんな「解からない」だらけの出発で大丈夫なんだろうか。

 うう……どうか、無事に【天眼魔狼族】の“群れ”に接触できますように……。










※:(;゙゚'ω゚'):だいぶ遅くなってしまいました…スンマセン…
 最近眠気が凄すぎて体がいうことをきかねえ…

 
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