異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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飽食王宮ペリディェーザ、愚かな獣と王の試練編

33.君のためなら俺は1

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   ◆



 クロウは最近、寝るときには俺の胸に顔を引っ付けて、俺を抱き枕のように両足で挟み込むようにして寝る。
 とはいえ、体格が違うのでクロウは体を曲げてエビみたいに丸まってたりするんだけども……今日は、そういう寝方とは少し違った。

「えーと……クロウさん? 何してるのかな?」
「ふごふご」
「フゴフゴ、じゃないでしょ。なんで俺のシャツの中に潜り込んでんのアンタ」

 暗くたって、外の月明かりで何やってるかは丸見えなんだからな。
 っつーか、解らなくても徐々に下から潜り込んでくれば誰だって分かるわい。

 なんであからさまに変なことをしに来てるんだ。
 つーか髪の毛がくすぐったい、やめろっ。

「んゴ。ツカサ、手で押さえると進めないぞ」
「進ませねーってんだよ! いきなり何っ、つーかもう寝るんじゃないの!?」

 ベッドに入るなりこんなコトをしだして何を考えてるんだ、とシャツをぱっつんぱつんにしてるデカい頭を押し出そうとすると、熊の耳が服の中でもごもごと動く。
 ぐううっ、そ、そんな可愛い動きで俺は誤魔化されないんだからな。

 甘えさせるとは言ったけど、えっちなことをさせるとは言っとらん!

 つーか今日はお互い疲れてるんだから寝ろ、と、俺は小声で怒りつつ、クロウの頭をシャツから追い出そうとしたのだが。

「……すと言った」
「え?」
「子熊のように甘やかすといった。甘やかして貰わないと困る」
「い、いやだから今まで一緒に寝て……」
「子熊はそんなものでは満足しないぞツカサ」

 キリッとした声を出す前にシャツから出て行け。全然締まらん。
 聞いてやるからシャツから出ろと言うと、ようやく熊おっさんは出て行った。うう、肌に息がかかってたから出て行った後が生温い。

「……で、子熊はどうやれば満足するんだよ」

 オッサンが何言ってるんだっていうツッコミは、俺が「甘やかしてやる」と受諾した時にもう無効になっている。もし言えば、俺に「お前が良いと言ったんだ」とブーメランが帰ってくるのは間違いないからな……。

 まあ、ブラックも似たような物なので本当に今更だ。
 だけど今回はよくわからん。結局どうすれば満足なんだよ。

 俺に馬乗りになっている熊のクロウに問いかけるような目を向けると、相手はムゥと声を漏らしてから、特に躊躇いも無くさらっと答えた。

「一般的には、あまえたがりの子熊は乳離れしても暫く母親の乳を吸いながら寝る」
「…………うん?」
「母親の、乳を、吸」
「何度も言わんでいいーっ! ちょっ、えっ、ま、待て、要するにその……クロウは……ソレをやりたい……って、こと……?」

 恐怖なんだか恥ずかしさなんだか抗いたい何かの感情なのか、ともかくよく分からない衝動に顔が熱くなりながら再度問いかけると、クロウは頷く。
 そりゃもう、一片の迷いも無く振り下ろすくらいの勢いで頷きやがったのだ。

 …………。
 ニーハイをビリビリにして大興奮してた時も思ったが、クロウは顔に似合わずかなり業の深いことをやりたがるよな……。いや、嗜好についてどうこういう気はないが。

 まあでも、気持ちはわかる。俺だって男の子だもの。甘えたいと言えばママの胸だというのは痛いほど理解出来るし、俺だって女の子に「ツカサくん、甘えていいんだよ」なんてハート付きで誘われちゃったら、最早ダイブするしか選択肢はない。

 だから、クロウやブラックにとっては「メス」である俺に、そういう思いを抱くのは理解出来るんだが……出来るんだけどさあ……。

「……男の俺がやっても、おっぱいも出ないしぺったんこだぞ……」

 つーか毎回思うけど、ほんとによく俺をメス扱い出来るよなアンタら……。
 そりゃ俺には誇れる筋肉もないし、高身長だらけのこの世界じゃ俺は平均どころか子供扱いで体格差が凄いけども。でも、俺マジで胸もないし顔もガキっぽいとは言われるが、普通に男なんだけどなぁ……。

 メスの侍従服だって、本来なら胸の所でクロスした僅かな布におっぱいがたゆんと乗る事で超絶えっちな服になるのに、俺は男なので乳首隠し程度にしかならんし。
 そんくらい男なのに……メス扱いされるんだよな。

「何を言う。オレはツカサだから吸いた……安心して甘えられるのだ。……オレが、安心して弱い所も曝け出せたツカサだからこそ……」
「う……」

 な、なんだその真面目な声のトーンは。
 急に真剣なトーンで話し掛けられたせいで、思わず喉で声が引っかかってしまう。そんな俺に、クロウは顔を近付けて来た。
 ……橙色の瞳が、ジッと俺を見つめる。

 褐色の肌の中で、綺麗な瞳だけが月明かりに光っていて、何だか本当に不思議な存在に見つめられているみたいだ。
 この世界じゃ当たり前に暮らしている種族の一人だけど……こういう、王宮みたいな非日常の場所で、月明かりにだけ照らされた相手を見ていると……なんだか、今のことが現実じゃないみたいで頭がふわふわしてくる。

 別に、クロウの容姿が整ってるとかじゃないぞ。
 そういう意味で顔が熱くなってるんじゃないし、ドキドキもしてないんだからな。

 だから、その……。

「ツカサ、オレは……そういう子熊みたいに、お前に甘えてみたい……。それに、オレは今日頑張っただろう? だから……今晩くらいは、甘やかして欲しい……」
「う……」
「それに、どうせそろそろブラックが無理矢理引き剥がしてくるだろうしな」
「…………確かに……」

 つい数時間前にクロウ以上の駄々っ子になったもんな、アイツ……。
 そう考えると……これはクロウなりの譲歩なのかもしれない。そもそも弱っていたのは事実なんだし、自信はついても不安が消えないって訳じゃないんだよな。

 でも、そうやっていつまでもウジウジしてても仕方ないって思ったから……クロウも、自分は自信がついたからって思ってキリをつけようとしてるんだ。
 まだ本調子じゃないかも知れないけど、それでも男らしくいようとおもって。

 ……そんな覚悟があるんだとしたら、俺だってウダウダしてらんないよな。

 クロウは優しいヤツなんだ。きっと、ブラックの事も考えての事のはず。
 そんなヤツに独り立ちを強いているかも知れないんだから、俺だって覚悟ってヤツを見せなきゃならんだろう。俺だからこそ甘えられると言ったクロウのためにも。

「ツカサ……イヤか……?」

 ああもう、そんな風に熊耳を伏せてほんのり悲しそうな顔をするなって。
 わざとなのかもとは解っていても、そんな風にダメ押しされたらもう。

「……そ、それ以上の事はしないからな……」

 なんか、顔が熱すぎて声が上手く出てこない。
 だがそれを堪えてなんとか声を出すと……クロウの熊耳がピンと立った。
 ぐううっ、だからそれずるいんだってば!

「ツカサ……! 嬉しいぞ、シャツをたくし上げてくれるんだな」
「そこまで指示する!? だーチクショウっ、ほ、ホントにこれだけだぞ!?」
「ムゥ、わかっている。早く早く」
「急かすな!」

 ったく、誰のためにやると思ってんだ……。
 もうちょっと覚悟する時間が欲しかったが、こういうのは躊躇っていると余計に恥ずかしさが増してくるものなのだ。こうなったら一気にやるしかない。

 大体、服を脱がされたり脱ぐのを強要されたりなんて、前もあったんだ。
 クロウにも恥ずかしいところを見られっぱなしなんだから、何も恥ずかしい所は無い胸を見られたって平気だろう。何を恥ずかしがってるんだ俺は。

 そう頭の中で自分を落ち着かせながら、俺は息を深く吐きつつシャツを握る。

「首の所までたくしあげてくれ」
「……わ、わかってるよ……」

 両手で握ったシャツを手の内に手繰り寄せて圧縮しながら、上へと動かす。
 腹が見え、胸の下まで簡単に曝してしまった俺は、無意識に息を止めた。
 ……や、やっぱり恥ずかしい……。

 何度見られようと、やっぱり自分の裸を曝すのは居た堪れなくなる。
 相手はクロウだから恐怖や怯えはない。だけど、クロウもまたブラックと同じように俺を“そういう対象”として見ているって事を考えてしまって。だから……ベッドの上で自らシャツをたくし上げて見せつけるなんて、自分からヘンな事に誘ってるみたいで、なんかその……。

 う、ううう、ええいもう、そんな事を考えてるから余計に恥ずかしくなるんだろ!
 これ以上のえっちなことをされるよりマシなんだから、覚悟決めろって俺!
 ここは、お、大人としてこう……キリッと……俺が懐で受け止めてやる的な男らしい感じを出せば、恥ずかしくないはず。よ……よし、いくぞ。

「ツカサ」

 急かすように名前を呼ばれて、また顔の温度があがった。けれど、これ以上の遅延は死を招く。俺は出来るだけクロウから視線を外しながら、ぐっとシャツを上げた。

「っ……」

 砂漠の国だというのに、何故か涼しい部屋。
 そんな部屋であるせいか、急に外気に触れた腰から上が自分の生温かさに驚き、軽く反応してしまった。だがこれは俺のせいじゃない。
 クロウがさっきシャツの中でフゴフゴ呼吸してたから、熱がこもってたんだ。
 けど心配はない。クロウが再び近付いて来たら、そんな感覚も再び相手の呼吸の熱に埋もれてしまうだろう。だから、ヤるなら早くやってほしかった。

 それなのに、クロウは上半身を露出させた俺をじっと見て来るだけで。
 なんで何もしてこないんだと視線を再びクロウの方へ向けると……相手は俺の顔をじっと見ていたようで、驚いた俺にまたとんでもない事をお願いしてきた。

「ツカサの可愛い言葉で、吸っていいと言ってくれ」
「そっ……そんなことまで言わすの!?」
「……ウゥ……」
「わ、わかった分かった! 頼むからしょげるなってばもう!」

 やっぱ絶対わざとやってるよなっ。絶対にわざと熊耳をぺそっと伏せて、悲しそうな雰囲気を見せて来てるよな!?
 くそう、顔は相変わらずの無表情なのに、熊耳と纏う雰囲気で「悲しいクマァ……」みたいな感じを出してくるなんて卑怯だ。なんて卑怯な熊なんだ。

 でも約束したのは俺だし……ぐ、ぐぬぬ……可愛いってなんだそれ……。
 俺が知ってる可愛い感じの台詞を俺が言わなきゃ行けないって、どんな拷問だ。
 しかし言わないとクロウはこの状態で居続けるだろうし……。

 …………仕方ない……。
 恥ずかしいが、こうなったらもう……。

「ツカサ、いいか?」

 そう言われて、俺は視線だけでクロウを見ながらたくし上げたシャツを握り――――火が出るんじゃないかと思うくらい熱くなった顔を強張らせながら、言った。

「お……俺、の……おっぱぃ…………す、って……良い、よ……」

 ………………。
 な、何を言ってるんだ俺は。なんだおっぱいって。

 恥ずかし過ぎて頭の中をツッコミの言葉がぐるぐる回るが、しかし今はどうする事も出来ない。早くクロウに反応して欲しいが、けれど相手は押し黙って俺の胸をじぃっと見つめているだけで……あ、ああもう早くキモいでも何でもいいから言ってくれえ!

 そんなに見つめられてると逃げ出したくなるんだよ。
 やっぱドンビキされたんじゃないかって不安に…………あれ、なんだこの獣みたいな荒い息は。まさかこれ、クロウか?

 自分の発言が恥ずかし過ぎてついまた視線を逸らしていた俺は、恐る恐る相手の顔を見ようと頭を動かす。
 するとそこには、橙色の瞳をギラつかせて深呼吸をするクロウの姿が……。

「って、く、クロウちょっと待っ……」
「ツカサ……っ!」
「んぅっ、あ゛ぁっ!」

 手で遮って待ってと言おうとしたのに、クロウは素早く俺の手を掴んで阻止すると、そのまま顔を近付けて俺の右乳首に躊躇いも無く唇を押し当てた。
 あまりに唐突なその刺激を受け流す事も出来ず、俺は変な声を漏らしてしまう。

 しかしクロウは何かのスイッチが入ってしまったのか、俺の事なんて気にせずに右の乳首に唇を押し付け、軽くちゅっと吸い付く。
 そのうえ、何を思ったのか左の放っておかれた方にはでっかい手を置いて、平たい俺の胸をゆるく触るように揉んで来て……。

 こ、こんなの、相手が誰だろうが体が反応して腰を浮かせてしまう。
 つーか吸うって言ってそんなテクニカルに吸う奴があるか!

 それに、子供がやるような胸の揉み方じゃなくて、上へ寄せるような感じの、なんかやらしい感じに手を動かして来るし……これは子熊の甘え方じゃないのか。
 それなのに、右は、と、ともかく……左で存分に胸の感触を確かめてくるし……!

「クロ……っ、こ、これホントに子熊のっ、ぅ、うう……甘えかた、なの……!?」

 こんな風に手で揉んで、吸うと言うよりも唇で何度もキスするみたいに乳首の所を弄って来るのは、大人のやることなんじゃないのか。
 だとしたらやめて頂きたい。甘えるなら普通にしてよ頼むから……。

 けれど、クロウは離れる気配などない。
 変な声を出さないようにと堪える俺を一瞥して、クロウは軽く口を開き、そのまま俺の乳首から乳輪までまるごと口に含んでしまった。

「ダメっ、やっ、あ、あぁあっ! そ、そんな吸うなってば……!」

 乳首を勃起させようとしているのか、クロウは執拗に乳首にキスをして来る。
 ちゅっ、ちゅっ、と音がするたび軽めの刺激が襲ってきて、触られてないはずの下半身が反応してうごいてしまう。

 今は、まだモジモジして我慢出来る程度だけど……密着されたままで微妙な刺激を与えられ続けると、こっちまでヤバい事になるかも知れない。
 こ、これは寝るための「甘やかし」なのに、何故クロウはフルスロットルで俺の乳首を吸いつきに来てるんだよ、おかしいだろ、おかしいだろこれ!

「クロウ、こ、これホントに子熊がやることなのか……!?」
「そうだぞ。だから、ツカサも安心して眠ると良い」

 こんなことされて寝れるかあ!!

 ……と突っ込みたいんだけど、でも声が変な声になるから何も言えなくて。
 
 どう考えてもハメられたようにしか思えないのだが、しかしそれでも「ブラックに殴り込まれる前に甘やかして」と言ったクロウの健気さを無視できない。
 でも、でもさあ、なんでこうなるんだよ。

 うううう、こんなことなら安請け合いしなきゃよかったぁああ……。








※ツイッターで言うてた通りめちゃ遅くなりました_| ̄|○明け方
 長くなりそうだったのでいったん切ります

 
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