異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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豪華商船サービニア、暁光を望んだ落魄者編

7.メイドさんにご奉仕して貰いたい1

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「ツカサ君、顔まっかだね……」
「こ……これは、さっきの酒がまだ残ってるだけで……」

 だからそんな、赤くなっているわけじゃない。
 なんかいつもと雰囲気が違うブラックにドキドキしてるワケじゃなくて、その……。

「ふふっ、もしかして何かいやらしいことでも考えちゃったのかな?」
「ばっ……! んなワケないだろっ!!」

 お前じゃあるまいしと眉を吊り上げるが、ブラックは一人掛けのソファに足を組んでゆったりと座ったままだ。その頬杖をついた様が、余計にいつもの相手じゃないように思えて胸の辺りがぎゅうっとなってしまう。

 そ……そりゃ、ブラックだって元は悪くないんだ。美形には違いないし、その、近くで見つめられたら誰だってドキドキするくらいには、格好良いし。悔しいけど。悔しい事に格好いいんだけど!!

 でも俺は別にえっちな事なんて考えてないんだからな。こ、この顔がカッカしてるのだって、酒が今もちょっと抜けてないせいとか……た、ただ単に、紳士っぽいカッコのブラックが物珍しくてアテられちゃってるだけっていうか……。

 そう、珍しい、珍しいからドキドキしてんの!
 だから別にえっちなこととか考えてないし、ブラックの前に立たされたって、その、お、俺は別に……。

「ツカサ君ってホント僕のこういうカッコ好きだよねえ。そんなに格好いい? 思わず惚れ直しちゃう?」
「だぁっ、だから違うってば!」

 そりゃドキドキしてますよ、確かにアンタのそういうパリッとした大人な紳士って感じの格好を見ると何故か知らんけどこうなりますよ。
 でもそんな事を正直に「ハイ」と言えるわけがないじゃないか。

 片や格好いい大人のオトコ、片や情けない不格好なメイド服だ。そんな自分の姿を顧みたら、俺だってなけなしの男としてのプライドが疼いてしまう。
 同じ男として、相手を素直に格好いいと思うのは何だか悔しかったのだ。

 例え恋人だろうと、相手が同性なんだからどうしたって嫉妬はするだろう。だから、俺のこの顔の赤みは断じてえっちな事を考えてる訳じゃないんだからな!

 ……という弁解を心の中で繰り返すが、それを知ってか知らずかブラックは余裕の笑みを浮かべながら、長い足をこれ見よがしに組み直す。
 なんだそれは、俺をバカにしてんのか。

 思わずドキっというよりイラッとした俺に、ブラックは目を細めた。

「ホントにドキドキしてない~? じゃあ、証拠見せて貰おうかなぁ」
「しょっ、証拠って、なに」

 ぎゅうっと拳を握ってブラックを見やると、安閑とソファに座ったブラックは――――とんでもないことを言い出した。

「スカートをめくって、ツカサ君の下着をみせて」
「…………ん?」
「ン? じゃないでしょーツカサ君。君は今メイドさんなんだから、僕の言う事に従ってくれないと……。ご主人様が下着をみせてって言ったら、メイドさんはスカートを全部めくって見せなくちゃだめなんだよ?」

 なにを語尾にハートマークをつけてカワイコぶった声を出してるんだお前は。
 とんでもない事を言われたが、お蔭ですっかり冷静になってしまった。

 俺はさきほどの自分の動揺を思い出して恥ずかしくなりつつも、毅然とした態度でブラックに返答した。……勿論お断りだとな!

「いや、俺はメイドさんじゃなくて客室係なのでご主人様っていうなら支配人のほうになると思うんだが……」
「お客様には主人に仕えるように振る舞えって研修で習ったんでしょ~? だったら、僕もツカサ君のご主人様で良いんだよねえ」
「うぐっ……そ、それは……確かに言われたけど……」

 確か、そんなような事を研修の帰り道でブラックに話した気がする。
 ああチクショウ、こんな事態になるなら、あの時「一緒に帰ろう」と言われて素直に帰らなければ良かった。もしかしたら、ブラックはこんな風に俺の退路を失くすためにわざわざ出かけて、それから俺と一緒に帰宅していたのかも知れない。

 だとしたらどんだけヒマなんだ……。
 ……いや、そもそも船に乗るまではヒマだったしな。その時間を何に使おうが、それは自由なのだ。ゆえに俺もブラックの行動は責められない。というか、なんであの時気付けなかったんだろうか……コイツがえっちなことを何もしてこない時は、なにかヤバい事を考えてるってのは分かってたのに……。

 しかし嘆いても仕方がない。
 ブラックは既に俺の弱点を見つけてしまったのだ。
 研修中に「ご主人様だと思って仕える気持ちで接客しなさい」と教えられたっていう事を……ああ、なんでこう俺ってば迂闊なんだろう……。

「だったら、僕のお願いも聞いてくれるよね? だって、今の僕は大事なお客様なんだもん。ツカサ君がえっちなことを考えてないか確かめるくらいいいでしょ?」
「ぐぅう……」

 別に、スカートをたくし上げることなんて恥ずかしくない。
 今の俺の格好は恥ずかしいが、しかし下着はえっちな物ではないのだ。ただ、女子しか穿かないだろうかぼちゃパンツだから恥ずかしいだけで、露出度を考えれば何も恐れるような事は無い。ある意味防御力が高いとも言える。

 だけど……男の俺が、西洋ファンタジーで女の子が穿くようなパンツを穿いて、このようなメイド服を着ていると言うのは……やはり、居た堪れない物が有って。
 それも含めると、やっぱりぱんつも恥ずかしくなってしまうのである。

 なのにブラックはそれを、俺自身がたくし上げてみせろと言っているワケで……。

「ほら、ちゃんとメイドらしく僕のことごっ、んふっ、ご主人様って呼んでみて」

 あっいま我慢し切れず素が出やがったぞこのオッサン。
 やっぱりお前だって俺の変な女装見て興奮してんじゃねーかこの!

 どの口が言うんだと怒鳴り散らしたい気分だったが……こんな問答を続けていても仕方がない。というか、帰りが遅くなるとまた支配人に怒られる。
 だったらもう、覚悟を決めて……。

「…………」
「あっ、無言でやったら情緒が無いよぉ! ちゃんとメイドっぽく『ご主人様に、ツカサの下着をお見せします』とか言ってくれないと……」
「へんたい!!」
「ほらほら、早くしないと料理冷めちゃうよ~。帰るの遅くなっちゃうよ~?」

 ぐぅうう、この野郎、いまさっき俺が思っていた事を……!
 そこまで読めているのなら、そもそもこんなえっちな命令をするんじゃねえ。

 俺は仕事中なんだからな!
 ちゃんとした客室係の仕事してるんだからな!?

 ギリギリと歯軋りをしてブラックを睨みながらも、俺は罵倒が出そうになる口をぐっと堪えてなんとか抑え込むと、意を決してエプロンドレスごとスカートを掴んだ。
 そして。

「……ご……ご主人様、の……ご命令で……俺の……」
「ツカサって言ってよぉ」
「つ……っ! つ……ツカサの、パンツをお見せします……っ」

 びきびきと自分の血管が青筋立つような音がするが、我慢だ、我慢だ俺。
 もう恥ずかしいのと理不尽なセクハラに腹が立って来た。モジモジしてたらオッサンの思うつぼだ。こういうのは一気に出せば良い、そしたら相手も萎えるだろう。

 恥ずかしいのか怒っているのか判別がつかないレベルで顔が熱くなっているのを感じながら、俺は一思いにとスカートを勢いよく上にあげた。

「わおっ。えへ……ツカサ君の下着……っていうかパンツ? 子供のパンツみたいにやぼったくて、これはこれで可愛いねぇ……」
「もう満足だろ……っ! こういうパンツだから見えても恥ずかしくねえんだよ!」
「そのワリには顔が真っ赤だけどなぁ」
「アンタが変な事ばっかさせるからだろーが!!」

 きいきいと叫ぶと、ブラックはニンマリ笑って再び長い足を組み替える。
 その仕草に思わずどきりとしてしまう俺に、相手は意地悪な猫のように目を細めてこれみよがしに口角を上げて見せた。

「そう思うってことは、ツカサ君やっぱり恥ずかしいんでしょ? 男の子なのに女の子のパンツを穿いて、こうやって自分から見せつけてるんだもんねえ。仕事中もずっと女の子のパンツでお仕事するんでしょ? ツカサ君大丈夫なの?」
「な、何言って……」
「だってさあ、そのパンツ、スカートが短いせいで、ツカサ君がせわしなく動くたびに、ちらちらと裾が見えるんだもん。いくら露出が低いパンツだって言っても……そんなに薄くてふわふわの生地じゃあ、ツカサ君のメス尻もむちむちの太腿も、見てるヤツにはしっかり分かっちゃうんだよ?」

 そう言いながら、ブラックは立ち上がると、俺に近付いて来る。
 手を降ろしたいのに何故か手が言う事を聞かず、また熱くなる頬の痛みを感じるが、相手はそんな俺になど構わず手首を掴んで俺をソファの目の前まで連れて行く。

 これじゃあ、座ったブラックの顔の近くに俺の股間が、そ……その……。

「ほら、近付いたらわずかにツカサ君のちっちゃなおちんちんの形が分かっちゃうじゃないか。露出が少ないのはいいけど、股間の生地がこーんなに薄いのは恋人としては頂けないなあ……ツカサ君たら、こんな恥ずかしいパンツを穿いてたんだね」

 は、恥ずかしい……恥ずかしい、のか?
 こんなに露出が少ない下着なのに、俺は恥ずかしい下着を穿いてたのか?

 でも、こんなの、女の子の下着っていうかメイド服の付属物だとしか思ってたし、誰に見られる事も無いって思ってたから、変にえっちな下着よりは大丈夫だって、慣れたら余裕過多のボクサーパンツみたいかもって感じだったし。
 だから「女物だ」ということ以外で恥ずかしいなんて思う事も無かったのに。

 なのに、ブラックに至近距離でそう言われると……どこか欲情したような、雄々しい笑顔で見上げられると、今まで思って来たのとは別の恥ずかしさが襲ってくる。

 このぱんつ、そ、そんな……動いたら色んな所の形が浮き出たのか……?
 ブラックが言うように、ケツとか股間とか、激しく動いたらそれだけ誰かにそういう所を見られる可能性があるっていうのか。
 それじゃあ、見られたら普通の下着より……ずっと……。

「あ……ツカサ君、目がうるんでるね……。ふふっ……女の子のパンツを穿いて、僕に恥ずかしい所を見せつけてるの、恥ずかしいよねえ。しかも、仕事中に僕とこんな事してるんだから……ツカサ君ってばわるいメイドさん」
「っ……!」

 そ、それは、アンタが命令したから。
 だから俺はこうやってアンタの言う通りに下着を見せてるのに。
 ソレが何で「悪いメイド」になるんだ。

 ワケが分からなくてブラックを見下ろすと、相手は愉悦に目を細めた。

「ねえツカサ君、さっき着替えたんだよね? でも下着はそのままでしょ? だったらさぁ……この下着も一緒に洗ったって、大した手間じゃあないよね」
「手間って……あ、アンタなにする気なんだよ……」
「そりゃあ、この雰囲気だったら……ね?」

 菫色の綺麗な瞳が、にっこりと笑う。
 ぎらぎらしてて、ちょっと怖くて。それでも、綺麗でドキドキするような色で。

 そんな目を近付けられて、じいっと見つめられると、体が動かなくなる。
 突っぱねる事も出来るのに、というか仕事中の俺は絶対に「駄目だ」って言わなきゃいけないのに、ブラックに微笑まれると、どうしても……声が、出なくて。

「安心して。仕事中にセックスしようなんて無茶は言わないからさ」

 そう平然とブラックは言うが、組んだ足を解いたそのズボンの股間部分は、どうにも取り繕えないほどに膨らんでしまっている。
 この状況で何をさせられるかなんて、もうほぼ決まっているような物で。

「……ばっきゃろ、スケベおやじ……!」

 恥ずかしさに声を震わせる俺に、ブラックはこの上なく楽しそうに顔を歪めた。











※ここんとこ寝不足で更新遅れがちです(;´Д`)モウシワケナイ…

 
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