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豊穣都市ゾリオンヘリア、手を伸ばす闇に金の声編
15.「気付いてないのかな?」1*
しおりを挟む「えへへ……ツカサ君、お加減どうですか~。痛くない?」
「う、うん。……そうだな、アンタけっこー上手いじゃん」
てっきり力任せにガシガシやるもんだと思ってたけど、ブラックの手つきは意外なことに繊細で優しい。泡立った頭を労わるみたいにして、触ってくれるんだ。
手が大きいから激しくやらないで良いってのも有るんだろうけど、それと同時に俺の頭皮をマッサージするように指の腹でほんのり圧を掛けてくれる。
まるで、マシュマロを持つときみたいに凄く気を付けて髪を扱ってくれていた。
今まで知らなかったけど……なんかこれ……くすぐったいが気持ち良いな!
母さんがたまに「ヘアエステ行きたい!」とか煩く言うんだけど、もしかしてこういう事だったのか。こりゃ納得だ。
こんな事されたら、そりゃエステに行きたい気持ちもわかる。つーか、ブラックの手が普通に気持ち良過ぎてマジでエステじゃんこれ。いや俺エステに行ったこと無いけど。でもこの気持ち良さは銭湯のマッサージ器と同じはず。たぶん。
……いやまあ、それはともかく。
そういえば、たまに連れていってもらう理髪店でも洗髪ってやって貰うんだけど、アレって髪を洗うのが基本でこんな風な感じじゃなかったなあ。
あそこのオッチャンは良い人だけど、結構ガシガシ荒い感じだし。
だから、風呂場で髪を洗って貰うなんてガキの頃以来なんだけども……久しぶりの感覚過ぎて、なんか刺激の方ばっか感じちゃうな。母さんにやって貰った記憶なんてほぼ忘れてるのかも知れない。うーむ、ちょっと申し訳ないかも。
でも、それぐらい気持ち良いんだから仕方が無い。
それに、認めるのは悔しいけど……ブラックが髪を扱うのが上手いんだもんな。
俺はつんつんぼさぼさしてる髪なので、案外知らない内に絡まっててイテテとなる事もある。なので、正直櫛を通されるのは苦手だったりするんだけど……そんな中途半端に短い髪を、ブラックは的確に察して縺れをほぐすのだ。
そうして丁寧に洗ってくれる。面倒だろうに、手つきはかなり繊細だった。
これを上手いと言わずして何と言う。
むむ……そういうワザは俺の真骨頂かと思ったのだが、これだとブラックにお株を奪われそうだ。くそう、これだから器用なオッサンは嫌なんだ。
扱われてイヤじゃないのがまたジクジクと自尊心が疼く。
それにしても、なんでこう……ゾクゾクするような指づかいをするんだろ。
俺、こんな風に変に強弱を付けたりするような触り方してないはずなんだけどな。
というか、俺がくすぐったがりなだけなのかな。な、なんかむず痒い。
「ツカサ君の髪……ほんと黒くてツヤツヤで綺麗だねぇ……」
「え、そ、そう? でも俺の世界だと陰キャ……いや、俺みたいなので黒い髪なんて普通だしなぁ。一般的な髪だぞ」
思っても見ない事を呟かれてびっくりしてしまったが、俺の世界じゃ黒髪の奴とか探さなくたって見つけられるレベルで溢れてるしなぁ。
つーか今の台詞なんか聞いた事あるぞ。あれだ、女の子向けの漫画で見たな。
日本人転移者、黒髪だと髪の毛褒められがち説ってヤツだ。
でも今更そんな事を言われると思ってなかったからちょっとビビッたぞおい。
そもそも俺に髪が綺麗って豚に真珠みたいな話なのでは。
何を言ってるんだと眉間に皺を作ってしまったが、そんな俺の様子に気付いているのか、ブラックは「ふふ」と笑いながら俺の頭をゆるゆるマッサージした。
「こんな風に思うなんてこと、今まで無かったなぁ……」
「え?」
「ひとりごと。ツカサ君の髪が、一番好きってことだよ」
「な、なにをワケわからんことを……」
今までって、どういうことなんだろうか……と少し考えてしまったが、俺が何かを言う前に、ブラックは頭にお湯をぶっかけて来て口を塞いでしまった。
ごべべっ、とかしょうもない声を出してしまったが、俺に構わずブラックは横から顔をのぞかせて来る。
「ね、今度は洗いっこしよ。ほら、最初はツカサ君が僕の背中こすって」
「ゲホッ、う、うぅ……まあいいけど……」
……なんか話したくないことでも思い出しちゃったのかな。
湯気がもくもくして、そのうえ水滴が視界をぼかすせいで、ブラックがどんな顔をしていたのかは詳しく解らなかったけど、こう言う時のコイツは大概そうだ。
苦しい事があるなら聞かせて欲しいとは思うけど……話すのだって苦しい過去ってのも有るから、それを考えるとやっぱ聞けないんだよなぁ……。
そんなの無理矢理聞くなんて俺もヤだし、何よりブラックを悲しませたくはない。
だから、知りたいけど「見なかったフリ」をしてやるしかないのだ。
いつかは話してくれるだろうって思ってるけど……でも、自分で「一緒に入ろう」とか言っといて勝手に落ち込んでるのはイラッとするな。
ちょっとした意趣返しにゴシゴシ背中擦ってやる。
俺は長い髪を上にあげてやり、水に浸したタオルに泡立石を擦りつけ泡を取ると、デカいオッサンの背中をごしごしと擦り上げた。
「あ~……これこれぇ……。ツカサ君、もっと強くしてもいいよ~」
「な、なんだとっ」
俺的には、物凄く力を入れてゴシゴシしてんのに……!
バカにされてなるものかと必死の思いでゴシゴシとタオルを動かしたが、ブラックは痛がるどころか気持ちよさそうに背中を揺らす。
泡だらけで水にぬれた背中は、瑞々しいと言うよりもゴツゴツしていて、オッサンである事を隠しもしない点がいくつも見られた。
体毛が濃いのが大人の証拠なんだろうか。そう思ってしまうくらいだが、仮に俺の体に毛が生えたとて、大人と言えるものだろうかとも思ってしまう。
結局、体格だけじゃなく立ち振る舞いも大事なんだろうな……このオッサン、普段は全然大人だとか思えないしな……。
あー、気分が沈んできた。もうさっさと洗わせて風呂に入っちまおう。
俺の方はささっとやって貰えば良いか。後は自分で洗っても良いし。
そう思いつつ、自分で前を洗っているブラックに声を掛けて、首上から何回か湯を掛けて流してやる。ほどよい筋肉と太い骨がついているのだろうなと感じられる体をお湯が流れる様は、またもや俺に劣等感を抱かせたが、そこはグッと堪えた。
ないものねだりをするお子ちゃまじゃないからな、俺は!
「ぷはー……。はいっ、次ツカサ君だね」
「はいはい。あ、でもぱぱっとで良いからな。湯冷めしたら困るし」
「背中を向けて」と言うのでその通りにしてやると、ブラックは俺の言葉に何だか不満げな声を漏らしていたが、とりあえずという感じでお湯を掛けて来た。
少し体が冷えていたせいか、肩から流れるお湯にホッとする。
だけど、このままだと風邪ひいちまうな。俺も早く前を洗ってしまおう。
そう思ってタオルを手に取ろうとすると……ブラックが不意に話しかけて来た。
「ねえツカサ君……湯冷めしちゃうなら、温かいようにしてあげようか」
「ん……? そんなこと出来んの?」
背後を向くのが億劫で、背中を見せたまま答える。
と、ブラックは何度も頷くような音をさせながら「出来るさ」と返してきた。
「ね、だから……洗うのは僕に任せて。ツカサ君は楽にしてて」
「う……うん……?」
なんだかえらい自信満々だが、何をするつもりだろうか。
少し嫌な予感がしたが、まあここで押し問答をしても仕方が無い。とりあえず任すと言うと、ブラックは「へへっ」なんて軽く笑いつつ、時間を掛けてわしゃわしゃと泡と立てる音をさせると――――ぺたりと俺の背中に……って、あれっ。
この感触、タオルじゃ……。
「ふ、ふふ……ツカサくぅん……僕が隅々まで綺麗にしてあげるからねぇ……」
「ひあっ!?」
ぬるりと手が脇腹を伝って来る。
思わず体を跳ねさせると、背中をすっぽりと覆う温かさがひっついてくる。
これがタオルなワケはない。だけど、そう思う間に胸の辺りと臍の辺りに大きな手がくっついて来て、それぞれが滑ったものを擦りつけるように動き出した。
「あっ……やっ……ちょっ、ちょっと……!」
逃げようとブラックの手を掴むが、全然剥がれない。
それどころか、今度は背中でなにかがぬるぬると上下に動き出した。
これは、ブラックの体か。ってことは、俺の背中にはブラックがひっついて、泡を全身でなすりつけようとして来ているわけで……。
「あは……つ、ツカサ君の体って、ほんとつるつるで柔らかくて可愛いねぇ……」
「ひっ、やっ、ちょっやめっ、どういうつもり……っ」
「どういうって、ツカサ君を洗ってあげようとしてるんじゃないか。ああほら、ココも、ちゃんと出して洗わないと……」
「ふあぁっ!?」
ぬめる手が、今度は乳首の所を執拗に擦り出す。
わずかに膨らんでいるソコを指の腹で何度も何度も撫でられて、腰が勝手に震えて来てしまう。やめてほしいのに、両手の指で乳首をちろちろと優しく撫でられたら、声が勝手に出てしまいそうで俺はただ耐えるしかなかった。
それなのに、ブラックは調子に乗ったのか、早く乳首を勃起させようとして乳輪を指で挟み軽く引っ張ったり、胸全体を軽く掴んで揉んだりして来る。
女でも無い俺がそんな風に揉まれたって何にもならないのに、ブラックは俺の耳にぴったりと唇をくっつけて、息を吹きかけながらずっと胸を弄って来て。
「ぃ……あっ、い、やだ……っ、そんなの、い、痛っ、ぃ……だけ、だって……!」
「へへっそうかなぁ……。つ、ツカサ君の乳首、ほら……泡と水でこんなにツヤツヤ光ってぷっくりして……い、今にもっ、ふひっ、勃起しちゃいそうじゃないか……」
「そんなのアンタが刺激するからで……ッ、くあぁっ!」
「ほーら、さきっぽが出るトコをつんつんしたらそんな声だすぅ」
ホント、ツカサ君ってやらしいよね……なんて、耳元で囁かれる。
その声は低くて、お腹の奥に響くみたいで、止めて欲しいのに耳の穴へと声を流し込まれる度に下腹部がぎゅうっとなってしまう。
この感覚が何なのか、もう解っている。だからやめてほしいのに、ブラックは俺が何を嫌がっているかを知っていて、いっそう俺の胸をしつこくいじってくる。
それだけでもイヤなのに、背中にくっつく体が……い、いや……正確に言うと……背中にくっつく体の下で、俺の尻にぬりゅぬりゅと押し付けられている、明らかに「上半身」ではないやけにアツい棒っぽいモノが、その……っ。
「うっ、うぁあ……も、やだっ……こ、こんなの洗いっこじゃないぃ……っ!」
「ん~? じゃあ何なのかなぁ。僕わかんないなぁ~……。あっ、もしかしてツカサ君、コレが気になっちゃったの……?」
「ひぐぅっ!?」
胸全体をぎゅうっと揉まれたまま軽く体を引き上げられて、ぬるりと「熱い棒」が尻の谷間に入って来た。意識したくないのに、ソレを明確に想像したくもないのに、ブラックは俺に意識させるように先端で突くようにしながら、ソレ全体をぬるぬると尻から俺の急所にかけてすりつけてくる。
「ひ、ぐ……っ、んんっ……ぅ……うぅう……っ」
なんとか抑え込もうとして足を閉じるが、ブラックは全く止まってくれない。
俺だって頑張ってるつもりなのだが、全身を濡らした状態の体では、太腿でブツを抑え込もうとしても抜けられてしまうのだ。
それどころか、俺の牽制はブラックの「アレ」に余計な刺激を与えてしまったようで……股間と太腿に感じる熱い塊が確実に大きくなったのを確認してしまい、軽く死にたくなってしまった。も、もうヤブヘビじゃないか。
それなのに、ブラックは俺の苦悩を更に煽るみたいに、入る場所を探そうとして尻の谷間へと執拗にソレを擦りつけはじめて。
「うあぁっ、やっ、あっ……あぁあ……っ! やだっ、そ、それやだぁ……っ!」
「ん~……? 何がイヤなのかをハッキリ言ってくれないと、僕わかんないなぁ~。僕はこんなにツカサ君の体を洗うために一生懸命やってるのにぃ……」
「そん、にゃぉ゛っ!? ひっ……い、やっぁ、ばかっ、ばかぁっ! ケ、ケツに、すりつけるのダメ……! 洗いっこ、って、言ったのに……!」
「そうだよ、洗いっこだよ……? だから、ツカサ君のナカも、ちゃぁんと僕が綺麗に洗ってあげる」
何が洗ってアゲル、だよばかちんがー!!
俺はそんなことまで頼んだわけじゃないのに、何でお前はそうやっていっつも俺の同意もナシにえっちしようとしてこのばかああああ。
「おっ……おほっ、こ、これ……っ、今日はいきなり行ってもいいのかな……っ!? なんだか、す、すっごく吸い付いてくる感じ……っ」
「ぅえ……っ!?」
な、なに。吸い付いて来るってナニ。
アンタが突いて来てるだけで、俺は何もしてないってば。
まさか、なんか物凄くヤバい勘違いをしてるんじゃないか。
そう思い、ブラックの方を振り返ろうとするが。
「ま……まさか……っ。実はっ、つっ、ツカサ君も僕とセックスしたかったの!? ああっ、そうだよねえ、この前【二人きりの時ならセックスしていい】って約束してくれたもんねっ!」
「え゛ぇっ!?」
い、いつっ。いつ俺がそんな約束したって!?
全く記憶にないんだが、何を言っているんだろうかこのオッサンは。
とにかくヤバい声になってるし、ハァハァいってるし、早くやめさせないと。このままだと、準備も無しにガツンとやられて俺のケツが死ぬかもしれない。
自己治癒能力で治る事ではあるのだろうが、しかしブラックと一回以上えっちすると、数時間は確実に床に臥すんだぞ。この場合だと絶対一発じゃ終わんないぞ絶対。俺は寝込みたくない、鈍痛に呻くのはごめんなんだからな。
断固阻止だ、と、俺は体を捻ってブラックに強く拒否をしようとした。のだが。
「ああっ、も、もぉ我慢できないよぉ……! つっ、つ、ツカサ君っ、つ、繋がってから洗いっこしても良いよね、セックスしながらお風呂入ってもぉおおっ」
「ええええ!? ちょっ、ま、待てブラック、話せばわかる待て、まっ、っ゛、あ゛っ……――――!!」
強く、割り開かれるような感覚。
必死に力を入れて拒否しようとしたのだが、俺の体はブラックに覆い被さられて力を入れる事も出来ず――そのまま、強い衝撃に痙攣を起こした。
「っぁ゛……――~~~~~ッ……!!」
声が、出ない。
割り開かれる感覚が強くなってきて、足が強く突っ張る。
力を入れたせいで凄まじい圧迫感と痛みが襲い、俺は、悲鳴が出ない口を動かしたままその場に突っ伏した。
でも、ブラックは待ってくれなくて。
俺に体をくっつけたまま、慣らしても無いソコに強引に押し入って来る。
内臓が逆流するような感覚。久しぶりの強烈な異物感に喉が締まるが、そんな俺の緊張を緩和しようとしてか、ブラックの手が下に伸びて来た。
「や゛っ……っ……ぅ゛あ゛……っ、がっあ゛……あ゛あ゛ぁ゛……ッ!!」
「っは……はぁっ……あっ、く……う、ぅう……ん゛ん゛ッ……! つ、つかさくっ……ひ、久しぶりっ……す、ぎて……狭、きつ……っ」
「い゛、ぎっ、ぃう゛ぅう゛……っ!!」
快楽で舞い上がってもない状態で入れられて、誰が受け入れられるのか。
お前だけ舞い上がっても仕方ねえんだぞと説教してやりたかったが、そんな理性が残っているせいで余計に痛みと想像以上の苦しさを感じてしまい、簡単な言葉すらも口から出て来なかった。
ただ、息と汗だけが無限に出て来て体を伝う。
痛みを逃そうと呼吸をするが、もう、どうにもならなくて。
ただ熱さと圧迫感が腹の中を登って来る感覚でいっぱいで、俺は何も出来ず、ただ涙を流しながらブラックのモノを無意識に押し出そうと締め付けるしかなかった。
なのに、このクソオヤジときたら。
「あ゛っ、んはっぁ゛……! つ、ツカサ君たらっ、そ、そんな締め付けぇ……っ」
もういっそ意識が飛んでしまえばいつもみたいに甘い雰囲気にもなれたのだろうが、自分が素面だと認識できる今の状態では、それすらも叶わなかった。
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