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大叫釜ギオンバッハ、遥か奈落の烈水編
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眩く光る水琅石の明かりは、闇を消すが同時に心地良い眠りも奪う。
己が炎を操る存在だからかも知れないが、まるで闇を憎むかのように自らの体を削ってでも水の力を借りて光ろうとするその鉱石よりも、時折揺らぎほのかな明かりだけで頬を撫でる蝋燭の方が親しみやすく思える。
人の眠りを包む静寂の闇を殺さず融和するその炎の方が、好ましかった。
(…………ツカサ君だって、こんなにぐっすり眠ってくれるから……ね)
久しぶりの柔らかなベッドに包まれて、ツカサは闇の帳を甘受している。
暖かな蝋燭の炎は時折ちらちらと揺れ、陽の光に仄く染まったような彼の肌を淡く照らし、土に薄汚れた過去など微塵も無いように艶めいていた。
数週も薄汚れた場所で働かされていたというのに、彼のその幼さを色濃く残す体は少しも大人びる事など無く、風呂に入ってしまえばブラックが何度となく抱いて来た滅多に味わえない少年特有の柔らかさが戻る。
これも「例え塵一つになっても、時間をかけて元の状態に戻る」という呪いのような【黒曜の使者】の自己治癒……いや、自己回復能力のおかげなのだろうが、今回の事に限って言えば、すこし恨めしく思えてならなかった。
何故なら、ツカサの体に残された痕跡がほぼ掻き消える寸前だったからだ。
(はぁ……本当に厄介な能力だよ。……まあでも、おかげで……死ねばいい奴らに微塵も遠慮は無くなったけどね)
安らかな顔で眠るツカサの顔を見て、ブラックは口元を緩める。
少し開いた小さな唇を指の腹でたどれば、吐息がわずかに乱れた。柔らかで敏感なそこは、触れただけで相手の熱を感じ取るのだ。
穢れなど知らなそうな顔をして、その体は既にオスの好む体に仕込まれている。
その齟齬がオスの支配欲を満たすのだと思えば、ブラックは久しぶりのツカサの熱を感じたくて堪え切れず、思わず口付けをしてしまった。
「んっ……んん……つかひゃくふ……」
唇を何度も合わせ、明かりに艶々と光るまで舌で舐め回し吸う。
ベッドの横に座しているのが面倒になって、小さな体を覆うように乗り上げて四足の怪物のようにツカサの体を己の檻に閉じ込めるが、しかし彼はブラックとのキスで心地良い夢でも見ているのか、むっちりとした太腿を時折擦り合せて、途切れがちに熱い寝息を漏らすだけだった。
深い眠りのおかげで、何をしてもツカサが起きる事は無い。
張る意地も無いせいか、ただ純粋に体が快楽を求めもぞもぞと動いていた。
そのもどかしさに身悶える小さな体がたまらない。
「あはっ……あはは……つ、ツカサ君……っ」
勝手に笑みがこぼれて、少し分厚い掛け布を押し込むように手に力を籠めて布の上から強引にツカサの太腿の間に手を捻じ込み、掌でツカサの股間を包む。
さりさりと音を立てて軽く動かせば、布が動くだけでも敏感なツカサには辛いのか、小さな喘ぎ声を漏らしながら腰をびくびくと動かした。
「っぁ……ぅ……んん……っ、ふ……ぅ……」
鳴き声を漏らす子犬のような高い声音。
未だに大人になれない少年そのままの声で喘がれると、禁忌感があるせいなのか、強烈な刺激が股間を熱くさせる。半ば足をみっともなく開いて、股間を包まれた程度で反応しているツカサを上から見ていると、それだけでもう、ズボンを押し上げる熱が今にも達しそうで興奮が抑えきれなかった。
「つ、つかさくっ……ぅ、あぁ……」
何枚も重ねられた布越しでもわかる、柔らかな太腿。小さな股間。
幼さが色濃く残る顔はブラックの愛撫によって赤らんでおり、いつの間にか蝋燭の明かりの中ではぁはぁと息苦しそうに口を開いていた。
(あっ……あぁあっ……つっ、ツカサ君……っ、ツカサくんたらもう……!)
眠っているのに、そんな淫らな顔を見せるなんて、ずるい。
そんな顔を見せられたら、もう我慢など出来ないじゃないか。
頭の中で勝手に叫ぶと居ても立ってもいられず、ブラックは掛け布を剥ぐと、体温で暖まり切っていたツカサの体を再び跨ぎがちゃがちゃとベルトを外した。
慌てたようにズボンを半脱ぎにして下着をずらすと、一筋の煌めく糸を引いて膨張しきったペニスが飛び出してくる。
数日……いや、ほぼ数週間の“おあずけ”を喰らったせいか、こんなことで勃起してしまったのだ。あまりにも大人げないと自分でも思ったが、しかしそれだけツカサを恋しがっていたのだから、こんな風になっても仕方が無いだろう。
「いっ、いひっ、いや、しかし……いっ、いつになく、勃起しちゃった……」
笑いが勝手に込み上げて来て、どうにか我慢しようとする。だが出来ない。
ちらちらと揺れる蝋燭の明かりに合わせて、ブラックのペニスとツカサの顔の影が同時に動くのを見ているだけで、なんだか異様に劣情が揺さぶられる。
鈴口からぷっくりと滲んだ先走りが仄かな明かりで光を含んでいる様は、己の滑稽な姿を綺麗に見せようとしているかのようで、それがツカサの体に垂れる事を思えばより一層笑気がブラックを襲った。
もう、何度となくツカサをこうやって穢した。
愛しい恋人は非常に寝つきが良く、よっぽどの事をしない限りは、その小さな手を使っても腹の上に精液を零しても眠り続けているので、それを良いことにブラックは持て余した性欲を旅の途中でも宿でもかなりの頻度でこうして発散してきたのだ。
まあ、それもこれも「体力のないツカサに、ブラックの性欲を全て受け入れさせるのは酷だ」という優しさによる遠慮だったのだが、今はそんな事など関係ない。
今はただ、この手の中に戻ってきたツカサに己の欲望を早くぶちまけたかった。
ぶちまけて、彼が名実ともに自分の者である事を確かめたかったのだ。
「あはっ、あっ、ぁああっ……つ、ツカサ君……っ、はふっ、んっ、んん……っ、あ……つ、ツカサ……く……っ」
先端で膨らんだ先走りの液体を手でペニスに撫ぜつけ、ぬちぬちと擦る。
何日も我慢したせいか先走りの液体は零れて下へと伝おうとしたので、ブラックはツカサの服をたくしあげて体を仰向けに寝かせた。
「ふっ……ぅふっ、ふふっはっ、はぁ……ははは……っ」
粘性を持った液体が、手の勢いに押されてゆっくりと零れ出す。
一筋の線を引いて落下して行くのは、なだらかな起伏すらあるか怪しい、柔らかな肉ばかりのツカサの腹だ。ぽたぽたと落ちた先走りは、ブラックの手が扱く速さよりも増え、やがて潤滑剤のようにツカサの腹に溜まりを作り臍へと流れて行った。
「あ……あぁあ……あはっ……あ……」
自分の浅ましい欲望が、ツカサの中へと入っていくような気がする。
ちいさな臍穴に溜まる半透明の液体は、いまにも零れそうだ。
いつもブラックが注いでいる精液の一部にも満たない量だというのに、それでも、ツカサを侵そうとして滑らかな肌を流れている。
(ツカサ君……あぁ……帰って来た……帰って来てくれた、僕のところに……っ)
もっと顔が見たい。声が聞きたい。抱き締めたい。
だが、それ以上に……ツカサを思って積もり積もったこの切なく浅ましい欲望を、受け止めて欲しい。自分の想いを、体を、またその小さな体で包んでほしい。
この愚かな熱を、全身で許してほしかった。
「っ、ぅ……あぁあ……いれたい……っ挿れたい、挿れたいよぉツカサくんんん!」
起きていれば間違いなく犯していた。
だが今は都合が悪い。ツカサを起こしてはいけない。
少なくとも「毒が抜ける」までは、彼を動かす訳にはいかなかった。
しかし、それがこれほどもどかしいとは思わなかったのだ。
長い時間放置されて、我慢して来て、それでやっとツカサを取り戻した。
あの時にキスしたせいで、もうずっとブラックは熱を我慢していたのだ。
触れてしまえば、抱き締めてしまえば、どうしようもない。
熱が抑えきれない。どうしようもないくらいに、好きなのだ。
「あぁああ……っ、ぁっはっ、ハァッ、はぁあっあぁああ……!」
「ひっ……ぅ゛……!?」
自分よりも幼い体に覆い被さり、我慢出来ずに臍穴へと押し付ける。
先端すら入りきらない小さな穴だが、それでも液体で満たされたソコにぐりぐりと押し付ければ、肉が戻ろうとして下腹部に力が入りペニスの先端を刺激した。
入らなくても、性的な悦楽の無い場所でも、ツカサの体は頑張ってくれる。
その健気な動きに心が揺さぶられて、ブラックは何度もペニスを擦りつけた。
「つかひゃくっ、ひっ、うぅっぐっ、ひふっ、ふっ、ふははっあはっあはははぁ……!」
ぬるぬるした穴に押し入ろうとして何度も失敗し、柔らかな腹を滑る。
それは擦りつけるような自慰にも似ているが、感触が段違いだった。
ああ、これは間違いなく他人の体。愛しい恋人の肌の感触だ。男根を受け入れる事など出来ない穴であろうと、ツカサの体は自分を受け入れてくれる。
それが、嬉しい。
こんな事をしても、起きてこの事に怒っても、ツカサはきっと許してくれる。
そう思うと心が逸り過ぎて制御が出来ず、ブラックは不意の衝動に硬直した。
「あッ……ぐ、ぅ……っ!! ――――――ッ……!」
獣のように四つん這いになり浅ましく腹にこすり付けていた先端が、臍穴をえぐり腹を強く滑って竿を擦った刹那……我慢出来ず、ブラックは射精してしまっていた。
「っぁ……は、はぁあ……あ、ぁ…………」
嬉しい。頭の中が真っ白になって、心地良さに酔いしれる。
しばし余韻で震えていたが、ブラックは未だにビクつく己のペニスを握ると、最後の白濁まで絞り出すように扱いて、ツカサの臍穴に先端を押し付けた。
「ぃ……ぐ……ひっ、ぃ…………」
気持ち悪いのか、それとも気持ち良いのか。
ツカサは顔を真っ赤にして、両足を擦り合せながら身を捩っている。
だが、その光景を見て不快に感じているのだと思うものなど一人もいないだろう。
「あは……つ、つかさくん……ほんと君って、やらし……」
腹をさんざんに擦られただけなのに、ゆるく勃起しているなんて。
本当に淫らで好ましい。まあブラックにとっては願っても無いことだが。
「あぁ……早くセックスしたい……。一緒に精液まみれでどろどろになって、朝まで繋がりたいよぉ……。ツカサ君、早く目覚めて……」
萎えたペニスをぶら下げたまま、再び四つん這いになって頬を撫でる。
はぁはぁと息を荒くしたままのツカサは、本当に可愛らしい。寝顔のせいでいつも以上に幼く思えて、ブラックは再び欲が疼くのを感じた。
「も……もいっかいぐらい……今度は手で……」
「…………いい加減下で話をしに行ったらどうだ、ブラック……」
「……」
お邪魔虫の声がしたような気がするが、気のせいだと思った方が良いだろうか。
しかしそうやって無視をしようとしても、結局は無駄な事だ。ソレを嫌というほど理解していたので、ブラックは不機嫌な顔をして体を起こし、ドアの方を見やった。
「……僕とツカサ君のお楽しみを邪魔しといてよく言うな」
「なにがお楽しみだ。ツカサが毒を盛られているから毒抜きのために寝かせる、と言ったのはお前だろうが。何を当然のようにツカサを自慰道具にしてるんだ」
それはごもっともだ。だが認めたくない。
というか単純に駄熊に言われるのが気に入らない。
一瞬ぶっ殺してやろうかと思ったが、まあ確かにそんな場合ではなかろう。
ブラックは溜息を吐いてツカサの上から降りると、後処理をしてしっかりとツカサを元の状態に戻してから部屋を後にした。
――――気に食わない、とは言うが、相手は自分で宣言した「二番目の雄」という立場を遵守しているので、無暗に怒る事も出来ない。この熊公は、恐らく、ブラックがスッキリするまで待っていたのだろう。自慰の最中で突入するとお互いに不利益だと理解しているから、この駄熊はツカサに好意を寄せていながらもブラックの権利を優先して、終わるまで待っていたのだ。
それを思えば、この熊の行動は不愉快一辺倒と言うわけではない。
だが、そんな気を使うならいっそそちらで話を終わらせておいてほしかった。
(とはいえ、このクソ熊に全部任せられる話題でもないしなぁ……はぁ……)
さっきまで天国のような心地だったのに、一気に面倒臭くなった。
だがツカサのためにも、話は簡潔に終わらせてまとめておくべきだろう。
……ツカサにとって“あまりよくない話”になるのは確かなのだから。
(はぁ……またツカサ君が別の男のことで色々考えるのか……いや、そうなる前に、さっさとセックスしてスッキリさせちゃえばいいのでは? 心の不健康は肉体を健康にして治せって言うしな……)
そうなれば一石二鳥だ。
最終的にブラックだけを求めてくれるようになればいいのだから、そうなる過程はさして問題ではあるまい。むしろ、弱っている時こそが絶好の機会な気もする。
――そんな事を思いつつ階段を下りて、宿屋の一階にある“密談室”のドアをノックすると、中から「どうぞ」と声が返ってきた。
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「あ゛?」
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そんな考えが頭をよぎり、ブラックは自分の思考の変化に薄ら苦笑した。
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