158 / 952
竜呑郷バルサス、煌めく勇者の願いごと編
12.拗ねるも慰めるも
しおりを挟む「ところでツカサ君……あれっ、なんか元気ないなぁ。どったの?」
不意に振り返ったブラックが、俺の様子に気付いて首を傾げる。
ゲッ、やばい。元気のない顔とか言われてる、完全に顔に出てたのか。
こんな風に何か言われたいがために考えてたんじゃないのに、これじゃ面倒くさい構ってちゃんじゃないか。違う、違うからな。俺はそういうんじゃないんだっ。
変に心配されたくないと思い、俺は慌てて首を振った。
「ななななんでもないっ! 気のせい気のせいだっ、なあロク!」
「キュゥ~?」
くそう、こんな風にバレるんなら考えなきゃ良かった。ごまかさねば。
どうにかブラックの「気のせい」で済まそうと思い、殊更明るい声で否定すると、相手は不思議そうに眉根を寄せたものの――案外簡単に「そう?」とだけ言って引き下がってくれた。
あ、あれ……なんだか今日は妙に素直だな……。
まあ良い、ここで根掘り葉掘り聞かれたら、何を考えていたかバレちまうしな。
……ブラックの過去は知りたいけど、困らせたいワケでもないし、「お前の過去を全部知りたい!」とわざとらしくアピールしたいわけじゃないんだ。
俺は「今のブラック」が良いんだから、過去なんて本当は関係ない。
これはただの、嫉妬や拗ねだ。俺だってそれなりにブラックを大事に思っているのに、それでも蚊帳の外にされているみたいに思ってしまったから、今更こんな過ぎた事を思ってるんだよな。……前に「知らなくても良い」って結論を出したのにさ。
そう思うと自分の子供染みたワガママが恥ずかしく思えて、顔に熱が溜まって来るのを感じつつも、それに耐えてしばらく黙って歩いた。
とにかく今は手に入れた食料品の整理をしなくっちゃな。
そんな事を再度決心していると、ブラックがまたもや振り返って来た。
「ねー、ツカサ君。僕の買って来たのも一緒に木箱に入れるから、部屋に来てよ」
「え? 今持ってるのが全部じゃないの?」
顔を上げて相手を見やると、頷きが帰って来る。
「遺跡調査だから、不足が有ったらいけないと思って考えられる限りの道具を買って来たんだ。でもちょっと色々買い過ぎちゃって……」
「んー……そんなら仕方ないか。でもお金は足りたのか?」
そんだけ色々買ったって事は、かなりの金額だったはずだよな。
大丈夫なんだろうかと首を傾げると、ブラックはニッコリと笑った。
「大丈夫だよ。シアンには先に小切手を貰ってるし、不足分は約束状を書いて、僕の金庫からお金を出すようにしてあるから」
「き、金庫ってアシ出てんじゃん!」
「うん。でも僕のお金でちゃんと払ったから心配いらないよ」
そ……そういえばコイツ、昔取った杵柄でかなりの金を蓄えてるんだっけか。
銀行のような場所にそりゃもうたくさん資産があるとのことで、出会った時はその金をチラつかせて俺に色んな物を買ったり、金で解決しようとしてたっけ……。
要はそんだけお金持ちですって事なんだろうけど、でもそうやって軽々と金を使うのは小市民の俺からすれば心臓に悪い。
そうやっていつか貯えが無くなっちゃったらどうするんだお前は。
「お、お前なぁ、貰ったお金の範囲内で買ってくれよ頼むから……心臓に悪い……」
「だってツカサ君が全然使ってくれないし、僕だって他に良い使い道も知らないんだもん。こんな時ぐらいは使わせてよ。ねっ」
「貯えが無くなっちゃっても知らないぞ」
「その時はツカサ君と一緒に稼ぐからいいもん。ツカサ君の慎ましやかな路銀でも、ちゃんと旅出来てるし、心配ないって」
「お前ほんと一言多いな」
そりゃあ普段は贅沢とは言えないし、毎回毎回分不相応にお偉いさんと知り合ってうまいこと泊めて貰ったり出来ているだけで、そういう事が無ければ冒険者の中でも下の上みたいな生活かも知れないんだけども。だけども!
でもお金って大事だし、冒険者稼業なんていつ何が起こるか分からないんだから、アンタの稼いだ分はアンタがちゃんと持っててほしいんだってば。
それに……ブラックの昔の金に頼るなんて……なんか、ヤだし。男らしくないし。
「まあ、ホントに使い所ないし……心配しなくたって、こんなぽっちのはした金程度じゃ全然減らないから安心してよ。ねっ、ツカサ君!」
「てめコラさりげに金持ちぶってんじゃねえぞオイ」
「だって本当のことだもーん」
キイッ、普段はゴロゴロしてるくせにっ。
でもいざって時にはやるから余計にムカツクんだよなあもう……。一番ヤなのは、そんなブラックにぐうの音も出ないくらい敵わない俺なんだけども。
勝ち誇ったが如くニタニタと笑うブラックをどつき回したい気持ちになりつつも、俺はロクを撫でて必死に冷静さを保ちながら宿に戻った。
……色々ムカつくが、とにかく今は明日の準備だ。
荷物を持ったままブラックの部屋に向かうと、俺達は早速荷物の仕分けを始めた。
「えーと、生鮮食品は【リオート・リング】の前の方に配置して……」
「ツカサ君お肉どんだけ買ったの。すごい量なんだけど。これたぶん多いよ?」
「じゃあそれ、使わなさそうな分はひとまず冷凍しよう」
いつもの事ながら、何の装飾も無い普通の金の腕輪に見える【リオート・リング】を振って、その形を人が入れるぐらいに大きくする。
とある事件で知り合いになった妖精王・ジェドマロズから感謝のしるしとして受け取ったこの【リオート・リング】は、俺が大地の気を籠めながら振ると、俺が望んだ通りに輪が大きくなり、人が中に入れるようになるのだ。
リングの中は天井が高い氷の壁に守られた部屋で、冷蔵冷凍庫として利用できる。しかも、調理などの加工をしていない素材そのままの物なら半永久的に保存が可能で、山のように大きなモンスターでさえ、俺が膨大な気を注ぎさえすればすっぽりと入ってしまうのである。
さすがは時を止める能力を持つと言う、氷雪を司る王様の腕輪だ。
まあでも、あくまでもこれは冷蔵冷凍庫なので、間違って奥の方に物を放り込んでしまうとカチンコチンになってしまうし、さっきも言ったけど加工品は普通の冷蔵庫と同じレベルでしか持たないので、チートもの小説では定番の【インベントリ】とか【収納魔法】とは違うんだけどね。
それでも、このリングがあるお蔭で俺達はだいぶ助かっているのだ。
「うおー山の中で使うとさすがにさっぶい! ブラックお肉くれー」
「はいはい」
リングの中に入り、ブラックに受け渡して貰いながら買った肉を奥に置いて行く。まるで倉庫作業員だが、本来の仕事はこんなに楽では無かろう。
バイトの先輩が冷凍庫の作業員は二度とやりたくないと言ってたし、よく分からんけど凄く大変な仕事のはずだ。それを思うと、俺の肉保存作業など楽チンである。
まあでも、丁度良い所に置かないと肉が凍るので、これは俺のセンスが大事になる仕事なんだけどな!
「ツカサ君まだあるよぉ」
「よっしゃ持って来い。幾つかは冷蔵エリアにおいとこう」
さくさくとリングに入れられる食料を置いて行き、最後に根菜っぽい野菜達を一番近くに置いて、俺はリングから出るとデカい輪になっているリングを掴んで振った。
瞬間、リングは元の小さな腕輪に戻る。
搬入作業は大変だが、出す時は中に入れた物を思い浮かべながら振ると勝手に出てくる機能も有るので、そこは楽なんだよな。
「よし、これで食料は完璧だ。……んで、ブラックは何を買って来たの?」
そう言うと、相手はベッドの脇に置いてあった麻袋を軽々と掴んで持って来た。
椅子に座る俺の目の前に、袋が置かれる。が、ドンと床が揺れたのを感じて、俺は思わずマジマジと袋を見つめてしまった。
……これ、そ、そんなに重いの……?
「とりあえず買って来たのは、ロープに蜜蝋に使い捨てのナイフ。それと鉄」
「てつ!?」
なんでそんな物をと相手を二度見すると、ブラックは「おかしな事を言った覚えはない」と言わんばかりに不思議そうに首を傾げた。
「僕が居るんだから、縄を繋ぐ金具なら作ればいいでしょ。まあこれは予備だけど、持っておいた方がいざって時助かる事も多いからね」
「はぁ~……なるほど……。あれ、でも、双眼鏡とか方位磁石とか鍵開けの道具とか定番の冒険者道具は……」
「双眼鏡なんて【索敵】があれば不要だよ? 方位磁石も査術で事足りるし、鍵開けだって金の曜術師の僕に任せておけばいいじゃない」
「…………たしかに……」
なるほど。そうか、曜術師って魔法使いだもんな……。
特にブラックはSランク級である【限定解除級】なんだから、そりゃ道具に頼る事も無く冒険が出来ちゃうワケだ……査術ってのも、かなりの術者でないと自由自在に使う事なんて出来ないって聞くしなぁ。
しかし、それはそれで冒険の醍醐味みたいなものが無い気がするんだが……。
「あとは、コレだね。他の奴にも渡すけど、ツカサ君は絶対持っててね」
「ん……?」
何を取り出すんだろうと思って、麻袋を探るブラックをロクと一緒に見つめていると――――相手は、妙な石を取り出した。
「はい、これは収納せずに持っててね」
「それなに……?」
「ウキュキュ?」
手渡された卓球のボールくらいもある大きさの意志は、赤紫色と青色が混ざった、マーブル模様の奇妙な石だ。これは何だろうかとブラックを見返すと、相手は口元を緩めて同じ石を持った。
「これは【探知石】というもので、自分の周囲の空気がおかしい時に光って知らせてくれる道具だよ。例えば毒霧が迫っていたら、光る事で教えてくれるんだ。大きさによって探知範囲が異なるから……これは大体、この部屋の二倍ぐらいの範囲なら探知できるかな」
「はぇえ……そんな道具があんのか……」
そう言われると、なんだか凄い石に見えて来るのでゲンキンなものだ。
でもこんな石、都会の冒険者の店でも見た事が無かったよな。いや、貴重そうな物だから、おいそれと出せない場所に保管してあったんだろうか。
不思議がっていると、その疑問を読み取ったのかブラックが答えてくれた。
「この石は、普通は鉱山で作業をする奴が使う石だからね。ダンジョンとか森林では毒霧なんて滅多に出ないし、そういうモンスターも生息地が把握されているから……そういう場所が近くにある店でしか出してないのさ。それに、こういう専門的な鉱石は出したってバンバン売れるってモンじゃないからねぇ」
「なるほど……でもこれ、高かったんじゃない?」
「そうでもないよ。需要が少ないけど良く採れるって石は、大体安価なもんさ。……でも遺跡の調査となると、罠も多いからね。今回は必要だと思って買ったんだ」
そう言えば、この世界では遺跡とダンジョンは違うんだっけ。
ダンジョンは【ダンジョンの主】がきちんと存在する場所だけど、遺跡はそう言う物が存在してなくて、モンスターが出るような遺跡は【空白の国】の遺跡くらいで、そちらには主と言える存在が居ない事も多いらしい。
まあそもそも【空白の国】って言うのは、この大陸の歴史に記されていない古代の国や建物などの総称で、超古代のオーパーツが存在するような特別な場所だから……罠だって存在してもおかしくはないんだけど。
あれ、てことは……その【サウリア・メネス遺跡】も【空白の国】関連なのか?
「なあブラック、今回の遺跡って【空白の国】なのか?」
そう問いかけると、ブラックは緩んだ顔を引き締めた。
急に真面目になった顔にドキリとするが、相手は俺を気にせず眉根を寄せた。
「それは……ちょっと判断が難しいかな。だけど、あのクソ貴族が持って来た図面を見ると、どうも普通の遺跡じゃないような感じに思えたからね。用心は何重にしても悪いモンじゃないから……一応ね」
「そっか……」
ブラックがそうまで言うなら、気を付けなくちゃいけないよな。
俺も冒険者とは言えまだペーペーだし、何より薬師としても修行中の身だ。今回は回復薬の材料の調達もまだ出来てないし、いつも以上に気を引き締めないとな。
だって、本格的な遺跡の調査なんて久しぶりだし……今回は、今までの所とは少し趣が違う感じだったし。
そう思いつつ、ぎゅっと【探知石】を握る俺に、ブラックは不意に立ち上がり――――何を思ったか、俺の脇に手を差し入れて抱き上げて来た。
「わっ、わっ!? な、なにやってんだお前っ」
「んもぉ~ツカサ君たら可愛いんだからぁあっ! そんなに心配しなくたって、僕が守ってあげるから心配いらないってばっ」
「ぎゃふっ」
抱き上げられたと思ったら、そのままベッドに雪崩れ込まれてぎゅうぎゅうと腕で体を絞められる。ぐ、ぐるじい。なにしやがるっ。
慌てて逃げ出そうとするが、ブラックは俺に抱き着いたまま髪の毛に顔を埋めて、ずりずりと何度も頬擦りをして来た。いでででやめろっ無精髭っ、ヒゲがチクチクと頭に刺さって痛いんですけどっやめろ!
「キュゥッ、キュー」
「ほ、ほらロクショウもやめろって……」
「ごめんねえロクショウ君、僕もツカサ君と遊びたいんだよぉ。だから、申し訳ないんだけどクソ熊の所に行っててくれるかな」
バカめ、そんなおためごかしに俺の可愛くて賢いロクショウが……。
「キュー!」
「ああっロクショウの素直でカワイコちゃん!!」
賢いけど純粋なのがアダになってしまった……そうだ、俺の最高に可愛いロクは、人を疑う事など知らないピュアで天使のようなトカゲヘビちゃんだったんだ。
ああっ、いつまでも可愛く居て欲しいと思った結果こんな事になっちまうとは!
「えへへぇ、ツカサくぅぅん」
「わ゛ーっ! 頼むからヒゲでじょりじょりすんのやめてくれってばあ!」
頬に無精髭だらけの頬を擦りつけられてジタバタと暴れてしまうが、ブラックはと言うと、ニコニコと上機嫌で悲しむ事もしない。
それどころか、俺が暴れるとブラックは更に腕の力を強めて来て、俺の足にデカい筋肉質の足を絡めてきやがる。
もういい加減やめろ、と、声を荒げようとした所で……ブラックは、俺の耳に吐息を吹き込むように低い声で囁いて来た。
「えへ……ツカサ君をやっと独り占め出来たぁ……」
「え……」
思っても見ない言葉に、相手を見上げる。
と、ブラックは蕩けたような顔でにへらと笑った。
「ここに来た日からずーっと誰かが一緒に居たから、ツカサ君を独り占め出来なくて僕すっごく悲しかったんだよ……? ツカサ君の恋人は僕なのに、あんなクソ貴族と一緒に出掛けちゃうし、セックスだって怒られちゃうし……」
「そ、そりゃアンタが好き勝手やるからだろ……」
「そりゃ好き勝手するよ。だって今までツカサ君と離れ離れになってたんだよ……? 大好きな子がこの世界にいない時間を味わわされたんだから……そのぶん、いつもよりたっくさん甘えるのは当たり前でしょ……?」
そう、言いながら、ブラックは俺の目をじっと見つめて来る。
菫色の綺麗な瞳が潤んでいるように思えて、無意識に息を呑んだ俺に……ブラックは、切なそうに眉根を寄せて額にキスをして来た。
「んっ……」
「だから、少しぐらいは二人きりでイチャイチャさせてよ……ね……?」
「…………う……」
……ずるい。
そんな切なげな顔をしてそういう事を言うなんて、本当にずるい。
だけど、そう言われてしまうと俺は何も言えなくて。
ブラックがこの世界でどんな思いで待っているかを考えると……俺が今までずっと考えてモヤモヤしていた事よりも、そっちの方に胸が苦しくなってしまって。
「ツカサ君……」
トドメと言わんばかりに切なげな声で名を呼ばれてしまえば、拒否なんて出来ようはずも無かった。
「……ちょ……ちょっとだけ……だからな……」
とりあえず、食料品は調達したし……きちんと収納したし……。
だから、ちょっとの時間だけなら……。
「ふはぁっ、ツカサくぅぅうん!」
「わ゛ああああさっそくジョリジョリするうううううう」
許した途端にまたもやヒゲで攻撃されてしまったが、自分で認めたことを今更ダメとは言えず……いや、まあ……いいか……。
ブラックだって、寂しかったんだもんな。
俺だって、ちょっとした会話で大人げなく拗ねて、危うくブラックにバレそうになってたんだから……今日ぐらい、好きにさせてやるか。
どうせ明日はこんな風にじゃれたり出来ないんだから。
→
20
お気に入りに追加
1,010
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!


【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる