143 / 952
竜呑郷バルサス、煌めく勇者の願いごと編
2.エロゲのバステは実際にはつけたくない
しおりを挟む「……今日も、どっと疲れたな……」
俺の隣で、太眉固太りな「まさに柔道部!」って感じの親友が呟く。
いつもは俺に対してヤレヤレな態度を見せつけて来るのだが、しかし今日は別の事に辟易しているみたいで、俺が住んでいるマンションのロビーまで辿り着くと、肩を落としていた。
しかしまあ、さもありなん。
俺だって今日は凄く疲れたのだ。
とみちゃん先生に教室へと投げ込まれた後、俺と隣にいる親友――尾井川、他二人は、とにかく防戦徹底で迫りくる脅威を回避していた。
例えば、好奇心の目を向けるクラスメートに反感を持たれないよう気を付けながらやんわりお断りしたり、授業中にもジロジロみられるのにも耐えたり、昼休みには外に行こうとしたら絡まれそうになったり、ストーキングして来るヤツを必死に撒いて俺達がいつもメシを喰う場所にコソコソ移動したり……とにかく大変だったのだ。
こんな状況では、そりゃあ守る側の尾井川は疲れて当然だろう。
ヒロ(野蕗って奴の事な)とクーちゃん(セミナーティーという名前の伊日ハーフだ)も明るく振る舞ってはいたが、気力を持って行かれたのは確かなはずだ。
だらだらしていた学校生活が急にこんな風に変わっちまうんだから、そりゃみんな戸惑ってダウンしてしまうだろう。そう思うと、本当に申し訳ない。
俺は守られる側だけど、それでも何キロか痩せたんじゃないかと思うほど、精神が摩耗してるし……本当に、尾井川達には申し訳ない事をしていると思う。
だけど、俺には解決する術がない。
この世界じゃ何の力も持たない俺は、ただ悪友や周囲の大人の人の厚意に甘える事しか出来ないのだ。それが、なんとも情けなかった。
でも……本当に大変なのは、俺を守ってくれている尾井川達なんだもんな。
俺がここで「疲れた……」とか思っちゃいけない。せめて、感謝して労わらねば。
そう思いつつ、尾井川と一緒にエレベーターに乗って温かいまなざしを送ると。
「なんだその目は……いつにもまして気持ちわりいぞお前」
「酷い!! 親友になんてことを!」
掌で怒りの肩ペシをするが、尾井川のシャツの肩部分をパンパンにしている贅肉の内部には、硬い筋肉が眠っている。なので、そんな尾井川の肩はマッスル過ぎて、俺の貧弱な手などバインと弾いてしまった。
チクショウ、これだから体育会系ってイヤなんだ。
「おいおい、こっちは疲れてんだからパンチは勘弁してくれよ。いつものお前の攻撃でもダメージ1くらいは喰らうぞ」
「いつもはノーダメだと言いたいのかお前はー!!」
「あーほらほらエレベーターの中ではお静かにしろって……それよりお前、俺が家庭教師すんの終わったらまたアッチに行くのか?」
数秒、何を言われているのか解らず、エレベーターの上昇する音を聞いてしまったが……そういえば、尾井川だけは俺が「異世界とこちらの世界を行き来している」という事を知っているんだっけか。それを思い出し、こくりと頷いた。
……今更だけど、まさか尾井川が信じてくれるとは思わなかったよなぁ。
尾井川は俺が師匠とあおぐほどのエロオタクで、他のマニアックな知識にも造詣が深いのだが、その反面妙にリアリストで元々はオカルト否定派だったのだ。
しかし、尾井川は今も昔も俺の親友だ。もしかしたら、俺の事を一番理解してくれているかもしれない。そのくらい、一番長く付き合ってきた。そのお蔭か、俺の話も全部信じてくれて、最初の時は俺が異世界に戻る手伝いをしてくれたのである。
まあ、俺がこの世界に帰って来た時に色んな光景を目の当たりにして、そのせいで信じざるを得なくなった……ってのも有るかも知れないが。
ともかく尾井川は、俺の真実を知る唯一の存在なのである。
……アッチの世界だと、俺が「異世界から来た」って事実を知っている奴が何人もいるんだけど、本当こういう時って現実主義な世界だと困るよなぁ……。まあ、何でもかんでもオカルトだと言われるのもそれはそれで疲れるけども。
ゴホン。話が逸れた。
まあそんなワケで、尾井川はコッチの世界での頼れる協力者なのだ。
今日だって、勉強が遅れがちでしかも期末テスト対策も何も出来ていない俺の事を案じて家庭教師をしてくれるのである。ホントに、何度感謝してもし足りない。俺には勿体ないくらいの親友だ。是非ウチで夕食食って行ってください。
尾井川が居たら俺の親が焼肉を焼いてくれるんだよ。楽しみだなあ焼肉……。
「何ボーッとしてんだ。行くのかって聞いてんだよ」
「うえっ、は、はいはい! 行きますよそりゃもちろん!」
かなり頭の中で話がずれて「焼肉楽しみ」しか残らなくなりそうで危うかったが、頭をブンブンと振って問いに答える。
だって行かなきゃブラックが拗ねるんだもん。ほっといたら変な無茶をしそうだし行かなきゃならない。……まあ、流石に「向こうで俺の恋人のオッサンが待ってるんです」とまでは言えなくて、彼女が待っているんだと勘違いさせてるけども。
…………言えない、絶対に言えない。この首から下げた指輪をくれたヤツが、親友よりも男むさい無精ひげだらけのオッサンだなんて……。
「お前なぁ……相手が恋しいのは分かるがよ、週一であんな寂れた神社に行ってたら流石に特定されるぞ。待ち伏せでもされたらどーすんだよ」
「う……で、でも、最近は夜中に外に出てるし……」
「だからそれが危ないんだっての! なんでお前はそのナリで肝だけデカいかなあ」
ムッ、失礼な。まるで「他の所はデカくない」みたいに言いやがって。
俺だってなあ、まだまだ成長する余地が有るんだからな。ちんちんだって何か……なんかこう……鍛えたらぜったいデカくなるし大人になれるんだからな!
他のダチと違って尾井川は数センチの身長差だし、背もすぐに追い抜いてやる!
「…………そういう幼稚な思考の脱線の仕方をするから心配なんだよお前は……」
「ハッ!? なんでお前俺の思っていることが……」
「……もう良い、お前と話していると俺まで知能指数下がりそうだわ」
「なにをー!」
尾井川はこう言う言い方で俺をバカにしてくるからいけない。
いくら親友と言えど、怒る時は怒るんだからな。そう思いながら両手を上げて襲いかかろうとした俺の耳に――チーンという音が聞こえた。
……ああ、家が有る階に到着してしまったようだ。チッ、命拾いしたな。
歩きなれた自宅への廊下を進もうとすると、尾井川が俺のシャツを引っ張った。
「外側歩くな。見つかるぞ。腰を屈めて俺の横に隠れろ」
おっと……そう言えば俺のマンションは外廊下みたいに片側の壁が無くて、外から玄関口が見えるような造りになっているんだっけ。
俺の家はマンションだが、古い会社の社宅に使われるような古いものなので、構造自体がセキュリティとは無縁だったりして大変なのである。
太鼓腹の尾井川の陰に隠れてコソコソ移動しつつ、俺は自分の家に辿り着いた。
尾井川に鍵を渡して開けて貰っていると、またもや相手が何やら言い出す。
「とにかく、外出は控えた方がいいと俺は思うぞ。外の野次馬はともかく、学校内のヤツはお前の動向を簡単に探れるんだからな。家の前で待ち伏せされて、出てきた所をつけられでもしたら一発アウトだ。……それでも行くのか?」
「う……。それは、そうなんだけど……」
けれど、それでも……行きたい理由が有るんだ。
そりゃブラックのためってのは第一だけど……そうじゃない、理由も有るし。
「ぐー太」
小学生の頃から変わらない、尾井川だけ使うあだ名で答えを急かされて、俺は口をギュッと引き締めたが……その場に腰を屈めたままで、尾井川を見上げた。
「待ってる人がいるってのも、なんだけど……やっぱり家でじっと待っているだけじゃどうにかなりそうでさ……。あっちの世界なそれなりに自由だって思うと、どうしても行きたくなっちまうんだ。会いたくなる。…………尾井川達に迷惑を掛けるっていうのは解ってるんだけど……」
でも、あちらへ行きたい。
ブラック達が待ってくれていると思えば、自由にどこへでも行けるのだと思えば、俺は無意識に異世界の事を考えてしまうのだ。それはもう、どうしようもない。
あちらの世界で長い時間過ごした俺は、その自由に慣れ切ってしまっていた。
そんな正直な気持ちを打ち明けると――――尾井川は深い溜息を吐き、俺の家の鍵を回してガチャンとドアを開けながら言った。
「まあ、そらそうだわな。……お前も大変だし、この世界じゃ監視の目が多過ぎて、息が詰まるのも無理はない。…………だが、お前は警戒心がなさすぎだ」
そう言いながら、尾井川はドアから手を離して自分のカバンを探り始める。
何をするのかと思ったら――――俺に、緑色の小さな葉っぱのような飾りが付いた丸っこい物を、投げて手渡して来た。
「んん?」
何だろうかと思ってキャッチした手を開くと、そこには赤い南天の小さな目がちょこんと乗った、葉っぱの耳の雪うさぎキーホルダーが乗っていた。
「わは、なんだこれ可愛い!」
「親戚の姉ちゃんが持ってたのを思い出したんだ。一見すると普通のキーホルダーに見えるが、ソイツの中にはコレの発信源が入っている」
そう言いながら見せて来たのは、なにかの地図だ。
……俺の家の周辺を映してるな。いや、その俺の家に、なんか白いウサギちゃんの可愛いマークがペタンと付いているぞ。これはもしや……今流行りの【位置情報確認アプリ】と言う奴かい尾井川さん。
俺が理解したのを見取ってか、相手は頷いて見せる。
「防犯ブザーは見た目的に分かりやすいし、お前に万が一の事が有っても音だけじゃどうにもならんからな……。一応、お前の行きそうなところは全部インプットして、何か変な動きがあればすぐアラームが鳴るようにしてある。……本当は親御さんにも渡したいところだが……お前はアッチに行くからな」
なるほど、その手が有ったか。
俺の行動がいつもと違う場合があったら、それはつまり異常事態が起こったと言うことだ。最近の俺の行動なんざ決まり切っているから、これがあれば万が一のことが起こったとしても尾井川がすぐに対応してくれる。
ストーカーアプリとはよく言われるが、しかし今の俺にはありがたい追跡機能だ。
これが有れば、尾井川が必ず異変に気付いてくれる。だったら、持っていたほうが良いだろう。変質者の盗撮は防げないけど、追いかけられて逃げてるのをすぐに察知して助けに来てくれるって事だしな、コレ。
でも、そうか……そうなると、また尾井川の負担が増えるんじゃないかな……。
「コレがあれば俺もありがたいけど……でも、尾井川に余計に迷惑かかんない?」
心配になって顔を見上げると、相手は苦笑して、それからニヤリと笑った。
「お前に迷惑かけられんのはいつもの事だろ。珍しく殊勝な顔してねえで、さっさと家に入って勉強始めるぞ」
「う、うん……」
言いながら、勝手知ったる他人の家とばかりにあがりこむ尾井川の背中を見つつ、俺は心の中で真剣に「ありがとう」と言った。
言えば尾井川は照れて怒って来るから言えないけど、でも、本当に感謝してる。
俺が無茶なことを言っても、尾井川は俺を理解して……解決策を必ず授けてくれるんだ。ずっと昔からそうだった。
本当に、ありがたい。
「…………ありがとな、尾井川」
「なんか言ったか」
「何でもない!」
こっちの世界にも、やっぱり大事な奴がたくさんいる。
それはとても幸せな事なのかも知れないなと思いつつ、俺は尾井川に続いて家に「ただいま」を言ったのだった。
「――――というワケで、ゆきうさキーホルダーを持って来たのです」
「お前な、新しい物を持って来る時は、必ず事前に言えとあれほど口を酸っぱく……いや、まあ今回は良い。情報量はともかく質量は少なかったからな……」
あいも変わらずの白い空間。
……だが、三回四回と出入りを繰り返せばそれなりに作業も進み、異世界の神様であるキュウマの住環境も少しずつ整ってきているようで、今回は丸い卓袱台と座布団が白い部屋にポツンと置かれていた。
そのちゃぶだいの向こう側には、相変わらず空に浮かぶいくつもの映像パネルと、キュウマが記録したのであろう真新しい本が何列も雑に詰まれている。
几帳面っぽいキュウマがああやって放置しているのだから、まだ作業は続いているのだろう。それを思うと申し訳なかったが、こればっかりは報告しようが無かった。
すまんと手を合わせて謝った俺に、キュウマは渋い顔をしながら眼鏡を指で直したが、今回の話を聞いて納得してくれたのかそれ以上は何も言わなかった。
そんな相手の懐の深さに感謝しつつ、俺はカーテンで仕切られた試着室に入る。
神様の部屋に似合わない設備で今日もモゴモゴと着替え、装備を整えていると――再びキュウマが話しかけて来た。
「それにしてもお前、大変な事になってるな……」
「うん……なんか、全然お前の両親探しとか捗って無くてごめんな」
「まあ行き来を始めて一か月も経ってねえんだから、そこは仕方ないさ。不可抗力な事は謝らなくていい。……とは言え……人に注目されているとなると心配だ」
「なんで?」
キュウマも何か気付いた事が有ったのだろうか。
いつもの簡素なズボンとシャツとベストを着込んで試着室から出た俺に、キュウマは難しそうな顔をしながら言葉を続けた。
「…………お前、グリモア達に対して発情しやすくなってるのに気付いてるか?」
「え゛っ!?」
いきなり何を言うのかと変な声で聞き返すと、キュウマは「茶化しているワケじゃないぞ」と言わんばかりに不機嫌な顔になりながら目を細める。
「黒曜の使者のバステの一つだよ。聞いてなかったか? 七人のグリモアに対しては、黒曜の使者は支配された時に抵抗しないために、触れられると気持ちが良……」
「わーっ! なんか知ってます知ってます言われたなぁそういうこと!」
キュウマの口から言われると余計恥ずかしくなって必死で返した俺に、相手は何故だか呆れたような顔をすると、やれやれと肩を竦めた。
「知っているなら良いが……ああ言っておくけどお前の体が悪いんじゃないからな。俺だってグリモア相手に興奮せざるを得なかったわけだし」
「え……そういうことあったの……?」
意図して触れられた時、黒曜の使者はどうしてもグリモアを拒む事が出来ない……なんて感じで妙に抵抗できなくなってしまうのだが、もしかしてキュウマもそれで男相手にイヤ~な思いをしたんだろうか。
あんなに大勢の嫁さんが居たのにか。そうか、それはちょっと胸が透くな。
しかし、キュウマは俺の想像をバッサリと斬り捨てた。
「いや、俺の時は七人全員が女のグリモアだったからな。息子が興奮して乾くヒマが無かったと言うのが俺の体験だ」
「てめえええええええ」
「テメェじゃねえ! お前な、嫌でもチンコが勃起して死ぬほど痛くなる感覚が解るか!? 赤玉出るレベルでもう出ないつってんのに、嫁に触れられると猿もびっくりなほどに勃起すんだぞ毎日勃起だ! これがコントロール出来るようになるまで大変だったんだからな!」
「頼むから爆発してくれよ……なぁ……一回でいいからさぁ……」
久しぶりに……キレちまったよ……。
……つーか、な~にがチンコが乾くヒマがないだこのモテモテクソ野郎め!
男が大多数の俺の時代と代われ! マジで代われお前ぇええええ!!
憎しみで人が殺せたらと怒りに我を忘れそうになっていると、キュウマは話が脱線しかけているのを感じたのか「とにかく」と呟き、咳を一つ零した。
「ゴホン。……とにかく、これは明確なバステ……永久に消えない傷跡みたいなもんなんだが、困った事にこれが別の奴にも掛かる事があってな」
「あ……クロウとかそういうの有ったような……」
「うむ。あの熊獣人の男もそうだが、どうやらグリモアを受け入れる事の出来る実力を持つような存在には、節操なく【黒曜の使者】の体は反応してしまうらしい。お前の代でも“そうなった”って事は……そのバステは永続発動中なんだろうな、まだ」
……と言う事は、俺は強い奴に触れられたら、黒曜の使者の呪いで「ああ~ん」と感じちゃうってわけなのか。まさか。いや、そんなはずは。
しかし実際、グリモアでもないクロウにその力が発動していたらしい事を考えると、あながちキュウマの指摘もウソとは言えまい。
えぇ……じゃあ俺、マジで節操なしの体になってんのぉ……。
「イヤ過ぎるぅ……可及的速やかに解いて欲しい……。いや、でも、それとアッチで注目されるのに何が関係あんのさ」
「……お前は今、前例のない立場に居る。黒曜の使者であり、異世界と俺達の世界を繋ぐ唯一の存在だ。それは、未知の存在と言っても良い。……だとしたら……最悪の場合、お前の能力が俺達の世界で発動するんじゃないかと思ってな」
「こ、怖いこと言うなよ……」
両方の世界で曜術が使えたら便利で嬉しいかも知れないけど、バッドステータスを持ち込まれたらアッチの生活が狂いそうで嫌過ぎる。それだけは無いと言ってくれ。
だけど、慎重で頭のいいキュウマは、もう既に「もしかして」を考え始めてしまっているらしく……俺の願いなど余所に、腕を組んで考え始めてしまった。
「そうなると、こちらの世界の影響が出てくるかもな……。いや、これはまだ仮説でしかないが、お前が行き来する事で何らかの変化が起こる可能性は高いんだ」
「…………俺、どうにかなんの……?」
「そればっかりはどうとも言えん。俺は神だが未来予測は出来んからな。……だが、お前のことだし大丈夫かな。そうそうグリモア候補なんているわけないし、まあ……あっちの世界じゃほぼ大丈夫だろう」
不安にさせるだけ不安にさせておいてこの言い草!
やっぱり神様なんて理不尽な存在だ。人民を弄んで楽しんでるんだぁ。
「なるのかならないのかだけでもハッキリさせてくれよ!」
「あーならんならん。大丈夫。……それより、早く恋人の所に行ってやれよ。大変な事になってるし、凄く煩くて記録つけんのが面倒臭いぞ」
「えっ、ブラック達がどうかしたのか!?」
慌ててキュウマの近くに駆け寄ると、相手は何故か嫌そうな顔をしたが、ハァとか大きな溜息をこれみよがしに吐いて、俺の隣に異世界へ通じる穴を開いた。
「お前マジでアイツの事……いやまあ良い。とにかく行ってやれ」
「ぶ、ブラック達……」
「心配いらんけどうるさいから行けっつーんだ!」
「わっ」
強引に穴に近付けさせられて、飛び込みをさせられる。
何をするんだと振り返ろうとしたところで――――キュウマが俺に言った。
「じゃあな。いつもみたいにタイムリミットが来たら呼びに来る」
「わーっ、ヒトデナシー!!」
「そりゃ俺は神様だからな」
ああそうでした。
チクショウ、なんでコイツが神様なんだろう。
俺が手助けしたにもかかわらず改めてそう考えてしまうが、考えが思い浮かぶ前に頭から地面にぶつかってしまい俺は崩れ落ちた。
「ぐっ、ご……ごぉおお……ッ」
い、い゛だい゛。ちくしょうキュウマの野郎、毎回変な落とし方しやがって……。
黒曜の使者の超回復能力が無かったらいつか死んでるぞ、なんて思いながら、俺は体を起こして前方を見やった。と――――。
「おい熊公右回れ! クソ貴族でしゃばんな!」
「ええいお前こそでしゃばって野蛮な剣技で俺の美技を邪魔するんじゃない!」
「お、落ち着いて二人とも……」
うるさいオッサンの声と、うるさい青年の声。
それに困ったように挟まる、麗しくて聞いただけでドキドキしちゃうような、一度聞いたら忘れられない綺麗なおばあ様の声……!
思わず目を凝らした、草原の先には――――
巨大な紫色の竜っぽい何かを前に、デカい三人の男が連携も無くバラバラに戦っている光景が見えた。
→
※あけましておめでとうございます!
今年も楽しく更新し、読者さんにも楽しんで頂けるように
頑張って精進していきますので、よろしくして頂けると嬉しいです(*´ω`*)
2021年は漫画やゲームも作って行きますので
もしよろしかったら見てやって下さると作者がよろこびます…////
20
お気に入りに追加
1,010
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!


【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる