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海洞都市シムロ、海だ!修行だ!スリラーだ!編
22.いつまで経っても慣れない約束
しおりを挟む……頷かせておいてなんだけど、信用ならんな。
いや、しかしまあ、ブラックだって日本語に興味が無いワケじゃなかろうし、案外勉強していたらスケベな事も考えないかも知れない。
なんだかんだで「何かを知る」って行為が好きみたいだしな、ブラックも。
そう言う所は……き、嫌いじゃないけど。
とはいえ俺をぬいぐるみのように抱き上げるのはやめてほしい。腕に俺の全体重が掛かって苦しいんですけど。歩かなくて良いのは楽っちゃ楽だけどさあ。
ぐだぐだと考えている間に、ブラックは今日もあの狭い勉強部屋に入ってしっかりと内鍵を掛けた。別に鍵なんて掛けなくたって良いと思うんだが、二人きりの時間に水を差されたくないのか、ブラックは必ず鍵を掛けるんだよな。
そんなに二人きりになりたいんだろうか。
「………………」
今更な事をふと考えてしまって、また恥ずかしくなる。
ああもう今はそんな事考えなくて良いんだってば。
「ランタンを点けて……。よしっ、今日も色んな事たくさん教えてねツカサ君っ」
窓際の壁に掛けたままにしていた水琅石のランタンを灯し、ブラックは俺を抱えたまま勉強道具が積まれた机の前に座った。
当然、椅子の上にはブラックの体が有るので、俺は再び硬くて分厚いオッサンの膝に座る事に……いやもう良いんだけどね……。
「じゃあ、始めるか……まだ全然すすんでないけど……」
昨日と同じく国語の教科書を開いて、試験範囲をペラペラとめくる。
尻が妙に生暖かくて変に硬いのでなんだかもぞもぞするが、ヘタに動いたら困る事になりそうなので出来るだけ動かないようにしないとな……。
考えないようにしつつ、俺は指で摘まんだ試験範囲の分厚さに溜息を吐いた。
「なに? それ」
「え? ああ……アッチの世界でテスト……試験受ける時の範囲だよ」
「ふーん、そんだけで良いの? 凄く楽そうだね」
おう言ってくれるじゃねえか、お前には楽でも俺には厚すぎるんだよ範囲が。
これだから頭の良い奴はムカツクな……なんて思いつつも、俺はページを開いてノートを引き寄せた。そのノートにもブラックは興味を示したようだったが、紙の質などについては俺も説明が難しかったので、特に説明は出来なかった。
いやだって、説明するってなったら、紙の作り方から再生紙に成るまでの過程まで説明させられるんだぞ? ブラックは、そこまで詳しく聞いて来ようとするくらいの知りたがりなんだ。そんなの気楽に生きてるだけの俺に説明できるはずがない。
チートを持って異世界に放り込まれた奴が、全員物知りだとは限らないんだ。
きっと俺のような普通の高校生もいるはずだ。いると思わせてくれ。
「とにかく……勉強するんだから、静かにしてろよ。変な事すんなよ」
「はーい。……にしても、この『コクゴ』の試験って何するの?」
「えっと……作者のお気持ちとか文章の意味とか……とにかく、えっと……自分の国の言葉を理解したり的確に読み解いたり出来るかを確かめてる……のかな」
俺もよく解らんが、テストで良く出る問題ってそういう奴だよな。
作者の気持ちなんて理解しようも無いけど、先生が黒板に書いたモンをとりあえず覚えているだけなので、真意を問われると答えようが無い。
というか、そんなに深く考えながらテストしてないってば普通!
しかし、こんな曖昧な返答じゃブラックも満足しないんじゃないか。余計に答えを深堀りされないだろうか。そんな心配をしていたが、意外なことにブラックは興味を失くしたのか、ふーんと声を漏らしただけだった。
「曜術もない世界なのに、会いもしない他人の気持ちを考えるなんて、なんだか妙な教科なんだねえ。著者の気持ちなんて今まで考えた事もなかったよ」
「妙って……うーむ……」
そう言われると、そんな気もする。
漫画を読む時なんか別に「このページは作者がどんな事を考えてたんだろう」とか考えた事も無かったしな。考えてみれば不思議だ。
でもまあ、俺にとっては一番簡単な教科なので、なんとも言えないが。
やはり勉強して来た物や世界で感じ方も違うんだなあとしみじみ思いながらも、俺は暫くブラックと一緒に教科書を読んで勉強した。
相変わらずブラックは単語の意味や文章の中で出てくる事を質問して来たが、そこに何か引っかかることもなく、しばらくは静かに勉強し続けた。
……とはいえ、俺は国語ばかりにかまけているワケにも行かない。
次は社会。わけてもめんどくさい歴史だ。いや現代社会の教科も面倒臭いが、歴史は俺にとって覚える事が多過ぎて、とんでもなく強敵な科目だった。
国語の教科書をブラックに貸してやり、積んである教科書の中から歴史の教科書を持ち出すと、先程まで教科書をパラ見していたブラックが肩越しに顔を出してきた。
「えっ、新しいの? それなにっ、なにー? ツカサ君なんて書いてあるのこれ」
「んん……れ、歴史……えっと、世界史の教科書だけど……」
「世界史!? ってことはツカサ君の世界の全部のことがかいてあるの!?」
「わっ!」
にわかに興奮してきたブラックは、俺を抱き込んで体を前に押し倒してくる。
その勢いに負けて俺も腰を曲げてしまうが、ブラックはこっちの姿など気にせず、目を輝かせ荒い鼻息を漏らしながら歴史の教科書を開いた。
キュウマに序盤と試験範囲までだけをコピーして貰ったので、本物の教科書よりは薄い仕上がりなのだが、しかしそれでもブラックは物珍しそうに本を眺める。
どうやら、国語よりも写真が多くカラーな仕上がりになっている教科書に興奮しているらしい。……こう言う所は本当に“本が好き”なんだなってちょっと和むよ。
「あは……そっか、これを読んだらもっとツカサ君の世界が解るんだ……」
「いや、これで全部じゃないし、どっちかっていうと日本史の方が……」
「そんなに歴史書が有るの!? わーっ、見せて見せてー!」
「お、お前……そんなに俺の世界の歴史が知りたいの…?」
こっちの世界の歴史だけでも充分事が足りるだろうし、まだ解明されていない歴史だってたくさん在るだろうに、それでもまだ知りたいとは。
ブラックは本当に探究心と好奇心の塊なんだなあ。そんな事をぼんやり思っていたが、相手の動機はそうではなかったようで。肩越しに顔を出したブラックは、世界史の教科書を見つめながら……その横顔を嬉しそうにほころばせた。
「そりゃ知りたいよ。だって、これが全部読めたらツカサ君の世界のこと、たくさん解るようになるし……ツカサ君の生きて来た場所がどんなところか解るでしょ?」
「…………」
ちょっとだけ、胸が苦しくなる。
そりゃ、確かに自分の世界と違う場所の事を知りたいと思う気持ちは誰にでもあるだろう。ブラックだってそうだよな。でも、俺はその言葉が「好奇心」というよりも……「俺の事を知りたいから」という思いによるものだと、感じてしまっていた。
いや、ブラックは本当にそう思ってるんだ。
こんな事言うと自惚れてるみたいだけど、でも、解るんだから仕方ない。
ずっと一緒にいたんだし、それに……ブラックは、俺が自分の世界に帰還する事を、あまり快く思っていない。だから、少しでもアッチの世界が知りたいんだ。
……俺の世界の言葉にあんなに反応したのだって、そのせいだろう。
だから、俺はブラックの「教えて」を突っぱねられなかったんだ。
待たされているコイツの気持ちを考えると、なんとも言えなかったから。
でも……国語はともかく世界史って範囲広すぎるからなぁ……。
「ねっ、ツカサ君読んで読んで。早く教えてよ~」
俺を抱き締めて、背中に体をくっつけて来るブラック。
早速興奮しているみたいだけど、ガッカリさせたら悪いし釘を刺しとかないとな。
「あのな、歴史書って言っても、世界史になると俺が住んでる国の話なんてほとんど出てこないんだぞ? そもそも、教科書には住んでる街すら出て来ないし……」
「え……ほんと……? ツカサ君の住んでる国のこと、わかんないの……?」
俺の予想通りに、ブラックは目に見えてショボンと顔を萎ませる。
やっぱり俺の国の情報を知りたかったのか。改めて言われると、当たって嬉しいという気持ちよりも、気恥ずかしさが強くなる。
そりゃ……俺だって、ブラックが住んでた場所の事とか、冒険者としてパーティーを組んでた時の事とか知りたいと思うけど……でも、いざこうして「お前の事を知りたい」と態度で分かりやすく示されたら、なんか、なんかこう、い、居た堪れないっていうか……っ。
だって、お、俺だってブラックの事を知りたいのに、なんかブラックばっかり俺の事を知ってるみたいになるし、それになんか注目されてるみたいでなんかヤだ!
「うっ……べ、別に俺の住んでるトコなんて面白くないから、見なくて良いよ! だ、だから、世界史の方が戦争とか有ってすっごい迫力あるし……」
「そういうのが知りたいんじゃないんだよ」
「っ……」
唐突に冷静な声で言われて、体をゆっくりと後ろへ引き倒される。
そうして、ブラックは俺の頬に口付けて来た。
「んっ、ぶ、ブラック……」
「僕は、ツカサ君が“あっちの世界”でどうやって暮らして、どんな事をしているのかが知りたいんだよ……。ツカサ君の暮らしてる世界が全部知りたいんだ」
「ぁっ……や……っ」
横から口の端にキスされて、ねっとりと舌で舐められる。
思っても見ない行動に思わず体が退いてしまったが、逃げられるはずも無く膝の上で捕らわれたまま何度も頬や口元を吸われた。
ちゅっ、ちゅっ、と吸い付かれるたびに、ヒゲのザリザリした感触が頬を滑って、軽い痛みと共にむず痒さを押し付けてくる。
密着されているせいか、その感触をより強く感じてとても耐えがたい。
思わず足を閉じると、ブラックは片手を俺の太腿に降ろしてきた。
「ちょっ……! ぶ、ブラック……っ」
「僕だって色々……その、隠してるから……『ツカサ君の世界の事が知りたい』って言わないようにしようって思ってたけど……でも、やっぱり知りたいんだよ……。だってツカサ君、この世界から消えてるんだよ? 僕の手の届かないところにいるんだよ!? しかも想像もつかないところに!」
「ぅあっ!?」
太腿の間に強引に手を突っ込まれて、足を揉まれる。
別に股間を触られているワケでもないのに、大きな手が急所に近い場所を執拗に弄っていることに体がゾクゾクと反応してしまう。
堪えようと思うのに、指が太腿に食い込んで乱暴に揉みしだいてくると、俺の感情とは裏腹に反応してしまって辛い。
今は、そんな場合じゃないのに。って言うか、話すかセクハラするのかどっちかにしろよお前は!! なんでこんなワケの解らんことしてくんだよ!
「ねえっ、ツカサ君……僕寂しいんだ、一人で居るの辛いんだよ……」
「そっ、そん、なっ……だって、数時か……数刻っ、程度なのにぃ……っ!」
あっちでの一日は、こちらでの一時間程度だ。
逆に、こちらで一日過ごすのはあっちでは五分程度にも満たない。
キュウマが必死に調節して、今できる限りの最大の「設定」で俺の世界との誤差を捻じ曲げてくれているんだ。それに文句を言うのは流石にダメだろう。
だけど、ブラックは俺の太腿を揉みしだきながら首筋に食いついてくる。
「数刻って、凄く長い時間じゃないか! ツカサ君は僕がずーっと一人で待ってるのを想像してどうとも思わないの!? しかもツカサ君は世界のどこにもいないのに。どこにもいないから、僕は……また、ツカサ君がいなくなるんじゃないかって……」
「ふぁっ、あ、あぁ……っ!」
唇で食んで舌で舐められると、それだけの事なのに声が漏れてしまう。
答えたいのにどうしても言葉が出なくて、俺はブラックの服の裾を掴んだ。でも、それで相手が止まるはずも無い。大きな手はゆっくりと股間へ近付いて来て、言葉の激しさとは裏腹に優しく包んでくる。
ついに来たその感触に思わず両足を閉じると、ブラックは俺の顎を掴み強引に口を合わせて来た。声を出そうとしても、息と共に声を吸われて全てを奪われる。
舌を入れられて体を大きく振るわせると、ブラックはゆっくり手を動かしてきた。
「んん゛っ、んぅうっ、んん゛ん゛~~~ッ……!」
「っ、ぷは……っ。ねぇ……ツカサ君、もう帰らないでよ……ずっと、こっちの世界で僕と一緒に暮らそうよぉ……」
「そっ、なの……無理ぃっ……も、やだっ揉むな……っ、てば……っ!」
ズボン越しにゆっくりと揉むように擦られて、腰が動いてしまう。
でも、ここで流されて「ハイ」とは言えなかった。
だって、俺にとってはどっちの世界も大事なんだ。ワガママを押し通して、俺なりに一生懸命考えて、誰も悲しまない「日帰り」が出来るようにしたんだよ。
それなのに、今更ひとつだけ選べだなんて。それこそ横暴だ。
最初はブラックだって了承してくれたのに、なんで今になってぐずるんだよ。
せっかく、誰も悲しまない円満な結末になったってのに……。
……でも、ブラックにとっては、俺のしていることは悲しいことなんだよな……。
「ねぇ、ツカサ君……勉強がイヤなら、こっちに居ようよ。そんなつらいとこ、帰らないで良いでしょ……ね……? だからさ、こっちの世界で僕とずっと一緒にいて、婚約者らしいことしようよ……」
「っ、ぅ……んぅう……っ」
だ、だめだ。頷いてしまいそうになる。
快楽に押し流されたら絶対にロクでもないことになるってのに。
ああもう、どうしてこうなっちまうんだ。なんで今更ダダをこねるんだよ。
そんなに寂しかったのか。一人で居るのが嫌だったのか?
でも、別の世界には俺だけしか行けない。それは、動かせない決まりなんだ。
なのに、寂しいと言われても……。
……いや、でも、最近のブラックの行動を考えると……前以上にやりたい放題になっちまったのも俺のせいだって事になるよな。
俺が離れるから、ブラックは寂しがって今みたいにべたべたして来て……。
…………それを考えたら……やっぱり、俺のせいなんだよな……。
だったら……――――
「っ、わっ……わかっ、た……わかったっ、からぁ……っ、まっ、って……!」
「ふぇ……?」
気の抜けた声を出すブラックに、俺は必死に顔を向ける。
自分がどんな顔をしているのか解らなかったけど、股間の手の感触をなんとか感じないようにしながら、ブラックの菫色の瞳を見つめた。
呆けたような顔の相手に、俺は唾を呑み込んで、必死に訴える。
「な……なん、とか……キュウマに、そうだん、してみるから……っ」
「…………ずっとこっちに居てくれないの……?」
「……」
ブラックの望みは、それだ。
俺がこっちの世界に留まる事を望んでいる。
でも……それだけは、どうにも出来ない。だって、俺はキュウマを神様に選んだ時に、二つの世界を行き来することも「選んだ」んだ。それを覆すことになったら……どうなるのか、判らない。けれどそんな答えなんてブラックは望まないだろう。
解ってはいるけど……はぐらかすしかない。
俺は覚悟を決めて、息を呑み込むと……手を、ブラックの頬に伸ばした。
「その、代わり…………する、から……」
「え……」
虚を突かれたような顔をするブラックに、顔を寄せて――――唇を、合わせる。
何をしたか、言葉を頭の中に浮かべるだけで顔が熱くなった。でも、不義理な事を納得して貰う手段が、俺にはコレ以外考えつかなかったんだ。
……卑怯だと思うし、なに自分を高く見積もってんだって思う。でも、ブラックに俺がしてあげられる事なんて、こんな事ぐらいしかないんだ。
だから。
「キュウマに、相談して……なんとか、頼んでみるから……。だから、その間……俺、ブラックに……い……いっぱい……」
「えっ、いっ、イヒッ、い、いいいいっぱいなっ、なにかなっ!?」
う、ううう……は、恥ずかしいんだけど。期待されると恥ずかしいんだけど!!
でも、胸に触れる指輪を思うと……ブラックに変な顔をされてるのも、自分達が“そういう関係だから”って思えて、ブラックもそう思ってくれてるって確信出来て、少しだけ自信が出る。
俺みたいなのでも、ブラックは……興奮してくれるんだって。
だから、今は、こんな事しか出来ないけど……っ。
「い……っ、いっぱい……」
「いっ、いいいいっぱい!?」
ハァハァ言いながら見つめて来るブラックに、俺は……遂に、言い切った。
「いっぱい……きっ……キス、するから……っ!」
そう……き……キス……。
俺には、そんなことぐらいしか出来ないし、その……こ、恋人だと思える手段が、そういうのしかないから。だから……い、今まで、自分からしてやれてなかったし、これを機会に俺から……恋人、とか……こ、こんやくしゃ……らしいこと、出来たらなぁって……。そしたら、安心して貰えるかなって……。
あっ、でも別に、キスだけで逃れようとか思ってるんじゃないんだからな!
求められたからするんじゃなくて、本当なら自分からしたいって思うもんなんだもんな。恋人だから、お互いそう思うもんだって、そう言うのが特別なんだって、お、俺だってそこは理解してるし。
だから、自分から言い出すのが重要なんじゃないかって、そう、思ってだな。その。
……ああああもう!
とにかくコレが一番「お前を大事に思ってる」ってことじゃないかと思ったんだよ!
そう思ったから、一生懸命に、必死にブラックに伝えたのに。
「…………キスだけ?」
「……あ゛?」
「キスだけなの!? もっとこうっ『俺を好きなだけグチョグチョにしてっ』とか、『俺を気が狂うまで好きに抱いて!』とか色々あるでしょ!? そういうヤツでしょ!? ツカサ君は僕の婚約者なんだからさあっ!」
「ええええええ!?」
そんな力強く言われても困るんですけど!?
つっ、つーかなにそれ、俺がそんな事言うとかどう考えてもおかしいだろ!!
俺男なんですけど、そういうの言うキャラじゃないんですけど!?
っていうかそこまで行ったら俺自惚れてるとかそういうレベルじゃないでしょ!!
「んもー、ツカサ君たら本当初心なんだから……。いや、でも、いつでもツカサ君の方からキスしてくれるのか……それは……ふふ……いいかも……」
「……ほ、ほんと……?」
ダメかも知れないとちょっと思ったけど、ブラックは妙に機嫌が良い。
お、俺のキスなんかで本当に良いんだろうか……とは少し思ったけれど、そうする事でブラックが機嫌を直してくれるのなら、言って良かった……かも……。
じっと相手の菫色の瞳を見ると、ブラックは嬉しそうにニッコリと笑った。
「じゃあ……今から、もう一回キスしてくれる……?」
…………そう言えば……「キス」って単語も、俺の世界の言葉で……ブラックだけが正確な意味を知っている、特別な言葉なんだよな。
改めて思い返すと余計に気恥ずかしくなってしまったが、俺はそれを呑み込んで、騒ぎ出しそうな気持ちを抑えると……再び、ブラックの顔へと近付いたのだった。
→
※めちゃんこ遅れて申し訳ないです……_| ̄|○
古典とか現代文とかあるけどまとめて国語で表記(ヽ'ω`)
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