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聖都バルバラ、祝福を囲うは妖精の輪編
24.相手を詰るだけが嫉妬じゃない
しおりを挟む妖精の宴が始まったのは、日が暮れてからだった。
まず集落の広場で火を焚いて、妖精と俺達がその周りを囲う。
宴の始まりと共に踊り出した妖精達は、美しい鱗粉を尾に引きながら俺達の目の前で輪になって踊り始めた。
彼らは綺麗な透明の羽に炎を透かし、愛らしい姿でくるくると回る。
赤々と燃え上がる炎を中心にして美しい舞いを披露する妖精達は、御伽話の中の姿そのままで、俺は思わず手を叩いて喜んでしまった。
火が落ちた森の中だと言うのに、この集落だけは楽しい音と声が満ちていて、俺が昔聞いた「森の小人」の童謡そのままに楽器の音が耳を楽しませてくれる。
歌を聞いた時は小さな祭りのように思えていたが、実際はこれほど賑やかだ。
まさに宴そのもの。小さい妖精達と言えど、宴に大小は関係ないのである。
しかし、妖精の宴というとミニチュアサイズの食器や食べ物が出ると思っていたのだが、こちらは予想と違っていた。気を使ってくれたのか、俺達の前には木製の皿に果物や甘いお菓子が山盛りに乗せられていた。
そのどれもが普通の人間が食べるサイズで、どう考えても特別に用意してくれたとしか思えない。ウィリー爺ちゃんが連絡してくれていたみたいだから、わざわざ揃えてくれたんだろうな……。
しかし、どうやら彼らは街の妖精が作ったお菓子や植物しか食べないみたいだ。
妖精の国では妖精以外の動物が存在しないので、肉がないのは当然と言えば当然だが、甘い物が特別好きと言う訳でもないオッサン達は解りやすい程に困惑してしまっていた。まあ、確かに宴で甘い物オンリーは凄いよな……。
俺はこの世界では甘い物に飢えているし、別に食事がお菓子でも構わない人間だが、メシっていう認識が無い物をメシとして食べるのは普通の人には辛かろう。
でも宴を望んだ手前無碍にも出来ないので、ブラックとクロウはぎこちなく器の上の食べ物に手を付けつつ、代わる代わるやって来ては挨拶する可愛い妖精の女の子達に、愛想よく対応していた。
こいつらって、こういう時はわりと紳士なんだよなあ……。
自分に突っかかってくる奴には容赦しないけど、子供とか好意的な存在とかには表面だけでも物凄く優しく接するし。
そのお蔭か、若い女の子の妖精達なんてもーキャーキャー騒いでる訳で……。
いや、俺の所にも来たよ? 女子が来てくれたよ?
でも明らかに扱いが違うんだよ。特に若い女の子の妖精!!
俺にはカワイーとかなんとか言って頭触ったり頬触ったりするだけで、明らかに本命っぽい態度はブラックとクロウにしかしないんだよ!!
今俺を撫でて行った子達が、オッサン共やアドニスをみてキャーキャー言ってほっぺ赤く染めてるのを見て、俺はどういう反応をしたらいいんですかね!?
つーかあの、お姉さまやお婆ちゃんや子供達は良いけど、男の妖精の人、八割俺に近寄って来るのやめてくれませんかね!?
話すだけならまだしも「ほっぺ触らせて」ってなんすかね!
アドニスの方が美形なんだからアドニスの方行って下さい!!
子供達に懐かれるのは嬉しいし、じーちゃんばーちゃんの妖精に話しかけて貰えるのもなんか昔を思い出してホンワカするから良いんだけど、話聞きたいって感じじゃない妙齢の男の妖精さんは何を期待してるんだっていう。
そこに可愛い女の子いるでしょ……っていうか可愛い妖精だらけだろ……なんで俺に……あれか、俺が一番話しかけやすそうだったからか?
にしたって「恋人とか居るんですか」って聞くのはやめれ。何目的だよマジで。
ブラックやクロウがモテるのは、まあ格好いい顔してるから仕方ない。同じ男として負けを認めるのは悔しいが、あいつらは美形だもんな。
アドニスに至ってはもう、言うまでもなく物語の中の王子様レベルの美形だし……日本人顔ってこういう時に不利だ。
「可愛い~」じゃなくて俺もキャーキャー言われたいです。女子ってこう言う所ガチで露骨だから悲しくなるよなあ……。善意で褒めてくれたんだろうけど、その善意は時に男を傷つけるんですよ……。いっそ最初から俺に興味がない態度で居てくれたら、俺としてもふっきれたのにい。
うう、子供達とばーちゃんたちに囲まれて傷を癒そう……男は寄るんじゃねえ。
「ツカサ兄ちゃん、それで人族の街ってどういう所なのー?」
「お菓子屋さんがほとんどないなんて信じられない所だねえ」
「あたしそんなところじゃ生きていけない……」
「にーちゃん冒険者かっこいいー!」
ああ、外の世界の話をする度にキャッキャしてくれる子供達と老年妖精さん達にだいぶ救われてるぜ。ありがとうありがとう分け隔てのない人々よ。
やっぱ子供はかわいいなあ、俺将来保育士さんになろうかなあ……幼稚園なら誰がイケメンかどうかなんて関係ないよな、ふ、ふふ……。
とかなんとか思っていたら、隣で歓談していたブラックが俺の肩を叩いてきた。
「ツカサ君凄い顔してるけど大丈夫? 甘い物食べ過ぎたのかい?」
よーゆーわ! 肩や手に女子妖精はべらせといてっ!!
一番最悪なのが、コイツが女の子達に全く興味がない態度ってことだよ!!
男ならンなことされたら嬉しいだろ興奮するだろ優越感あるだろお!?
なのに、なんで涼しい顔して紳士みてーに華麗に女子の熱視線スルーしてんだよこの無精髭オヤジぃいいい!! 俺への当てつけか! 当てつけかあああ!!
俺だってそんなんやってみたいわコンチクショウやっぱムカツクううう!!
ふーっ、フー……いや、でも俺は大人だから? いっくら自分がモテないからって別に僻んでる態度を出したりしませんから?
出してるよねってツッコミはお願いだからしないで下さい。
とにかくもう見ない。
今日はもう右に居るオッサン二人なんて絶対見ないからな。
俺に優しくしてくれる妖精さんだけに視線を送ろう。うん。
見苦しく騒いで更にモテ度を下げたらほんともう生きていけない。
「ツカサ君?」
「ナンデモナイナンデモナイキニスンナ」
「何だいその凄い片言っぽい言い方」
「さー次は海の話をしてあげようなー」
わー、海ってなあにー。なんて言ってまた盛り上がる子供達に癒されつつ、俺は幸福度マックスで自分を取り囲む妖精達に外の世界の話をした。
そんなこんなで宴もそこそこ盛り上がっていると、長老が妙齢の綺麗なお姉さま妖精達を引き連れて、なにやら木製のコップを持って来た。
「皆様楽しんで頂けているようで何よりです。これはこの集落で代々語り継がれている【黄金蜜】という飲み物ですじゃ。是非とも飲んで下され」
そう言いながら、長老は笑顔で俺達にコップを渡す。
黄金蜜ってどんな飲み物だと思ってコップの中を見てみると、そこには焚き火の明かりにキラキラと光る液体がたっぷり入っていた。
なんだか甘い匂いのする飲み物だ。
「黄金蜜ってどういうものか聞いても良いですか?」
「ええもちろん。これは、この森の近辺に咲く花から蜜を絞って、若い娘達の羽の粉を混ぜて一年寝かせた物でしてな……古くから万病に効く薬と言われ、宴の席での最高のもてなしとしても使われておるのですじゃ」
「へぇ~……」
娘の妖精限定って、ワインを作るためのブドウ踏み娘みたいな感じかな。
でもお酒っぽい匂いはしないから、発酵させて作るジュースみたいな物かも。
一口飲んでみると、わずかに鼻に来るアルコールのような刺激があったが、味は蜂蜜を薄めた物のようにさっぱりと甘くコクがあり、独特の甘さが舌に残った。
なんというか……べっこう飴っぽい感じ?
俺的には結構懐かしい味だし、素直に美味いわコレ。アルコールっぽい刺激は、恐らくニッキっぽい香りのせいかな。妖精の粉が関係してるのかも。
うーん、それにしても飲みやすくて甘い!
かなり美味しいし、これに色々加えたらより美味くなりそうだが、妖精の国以外では作れそうにも無いな。お菓子はオーデルで見たお菓子ばかりなので、どうにかすれば人族の国でも食べられそうなんだけど……こういう特別な造り方の飲み物は難しいよなあ。うーん、出来れば持って帰りたいくらい美味い。
「気に入って頂けましたかな? もう一杯いかがです」
「はい! ありがとうございます!」
ブラック達は「妖精の粉」と聞いて躊躇っていたみたいだけど、俺はワインの話を知ってるから抵抗ないもんねー。飲めるときに飲んでおこう。
ぐびぐび飲んで水を挟み三杯目を呑む俺をみて、ブラック達はやっと勇気が出たのか、女子妖精達に見守られながらぐっと黄金蜜を呷った。
ほー、良い飲みっぷりじゃないの。
いいぞいいぞ、何か楽しくなってきた。女の子にモテなくったって美味いメシと優しい人達が居ればそれでいいや。もう構ってくれるなら男でもいいわい。
もう一杯貰おうと思い、カップに残っていた黄金蜜を全て飲みほした……途端、横から素っ頓狂な声が聞こえた。
「こっ、これ酒じゃないか!! うわああツカサ君三杯も飲んじゃって!!」
は? 酒?
そんなまさか。こんなに美味しいものが酒だなんて、そんな事有る訳がない。
まったくもう、ブラックったら少しでも酒っぽかったら過剰反応するんだから。いっくらなんでもこんな甘くておいしい物が酒なんてわけがないじゃないか。
「ほらもうツカサ君ヘラヘラしてる!」
「ふへ、そりゃ、お前、宴なんだから笑いもすんだろ。俺ぁ酔ってねえよ」
「ろれつが回らなくなり始めてるんだけど……」
むむ、ろれつってなんだっけ。
まあ細かい事はどうでもいいじゃないか。
せっかくみんなが開いてくれた宴なんだから、楽しまないと損だよな、損!
「あの……な、何かまずかったですかの」
ん? なんでドンジャさんは慌てたような顔をしてるんだ。
不味いってそんなバカな。用意してくれたものは全部美味かったのに。
「別になにも不味くなかったよなあ? ぜんぶ美味かったですおドンジャさん」
「まずいです……ツカサ君お酒に凄く弱いから、酔ったらこうなるんですよ……」
なんだよこうなるって。酒なんて飲んでないって言ってるのに。
ムッと顔を顰めてブラックを睨むが、何故だか視界に小さい人影がちらちらしてうまい事ブラックを睨めない。困っていたら、ブラックが何か凄い怒った顔で「しっしっ」とかやってたけど何だろう。虫でもいたのか。
「これ酒としてはかなり弱い部類なんですけどね……酔うんですか……」
「酔ってないっれ」
「ツカサが酔ってるの初めてみたぞ」
「僕が気を付けてたんだよ! ああもう、こんな顔真っ赤にして……」
「熱でもあるかな」
「お酒のせいだよ!」
ブラックったらいつの間にそんな鋭いツッコミを覚えたんだ。
子供達が怖がるじゃないか、もうちょっとソフトに突っ込んでくれよ。
「ごめんなー、ブラックは顔が怖いけど子供には優しいから」
「駄目だ、ツカサ君コップに向かって喋ってるよ」
「皆さんすみませんね、人族は酒の匂いに酔うと、寝るんじゃなくて夢現になるんですよ。幻覚キノコは食べてないので安心して下さいね」
なんか周囲が煩いけど、俺をバカにしてんのは解るぞ。
失敬な。良く解らんけど俺はお前らオッサン共よりまともだぞ!
「仕方ない……このままだと迷惑かけちゃうかもしれないので、僕が寝床に連れて行きます。長老さん、用意してくれた寝床はどこですか」
「ああ、それならワシの家の裏手にある大型の妖精族のための小屋ですじゃ。長く使っておりませんでしたが、今は手入れして布も敷いてあるので大丈夫ですぞ」
「すみません、ツカサ君を寝かせたら戻ってきますので……」
何だか勝手に話が進んでいるような気がする。
変だなあ……耳はちゃんと聞こえてるつもりなんだけど、何を言っているのかがぼんやりしてて良く解らない。脳が考える事を拒否してんぞこれ。
ブラックも立ち上がって何するつもりなんだろう。
「ツカサ君、もう寝ようね」
「んん~?」
なんで俺を抱え上げてんだブラック。
てかまたお姫様抱っこかよ! やめい! 俺は男だっつーに!!
「んん゛ん゛、こら、ばかっ、降ろせー!」
「はいはい降ろしても絶対歩けないでしょツカサ君。さあねんねしようねえ」
「俺はあかちゃんかー!!」
チクショウてめえバブバブ言うぞこの野郎。
ふざけんなと思って暴れるが、俺の体はあっという間に小屋まで運ばれてしまう。こんだけ簡単に運ばれてしまうといっそもう清々しい。
くそう、いつもはやらしい顔して俺に抱き着いて来るくせに、こう言う時だけは余裕なんて。大人ぶっててブラックのくせに生意気だ。
薄暗い小屋に連れ込まれてイラッとしたので、俺はブラックを困らせたい一心で腕を相手の首に回してぐっと近づいた。
「ブラックぅ」
「んっ、ん? な、なにかなツカサ君」
あは、分かり易く動揺してやんの。
楽しくなってきたからもっとからかってやろう。
近付いたまま、猫が甘えるような仕草で頭を肩にすり寄せると、ブラックは俺の思惑通りにびくりと反応してくれる。だけどこういう時は何故かいつもみたいに襲って来なくて、俺を布の上へと降ろしてしまった。
むう、こやつ中々やりおる。せっかく楽しかったのに。
「あぁ……またそうやって酔ったら積極的になる……。だからね、ツカサ君、そう言う事を他の奴にしそうだから、僕は君にお酒を飲んでほしくないんだよ」
「なんで?」
「なんでって……ツカサ君が他の男を誘惑する姿なんて見たくないからだよ……。そんな姿を目の前で見せられたら、その男を殺したくなるし……」
「ふあ……」
殺したく、なるって。
じゃあ、やっぱりクロウと昨日したことはダメなんじゃないのか。
ああいう事を許してても結局殺したくなるって、それじゃやっぱりクロウも殺しちゃうんじゃ。
まさかそんな……でも喧嘩はするかもしれない。そんなの見てる方が嫌だ。どうしよう。あれは俺が流されたから悪いって言ったら許してくれないかな。
俺は別に殴られたっていいけど、でも俺達の問題で別の奴が傷つくなんてそんなの我慢できない。何より、またあんな風に冷たくされるのはやだよ。
「ブラック……」
「えっ? うわっ、ツカサ君なんで涙目なの! ど、どうしたの、お腹痛い?」
飲みすぎるからいけないんだよ、と俺のコートの合わせを解いて腹に手を当ててくる相手に、俺は重たい首を振って違うと訴える。
「ち、ちが…………あの、ブラック…………」
内側から熱くなっていた腹に少し冷たい大きな手が触れて、体がゾクゾクする。
薄暗い所でもはっきりと解る、俺を心配そうに見つめる菫色の瞳に、俺は必死でクロウが悪者にならないように昨日の事を弁解した。
何だかよく解らないけど言葉がスラスラ出て来て、許してほしいという言葉すらすんなりブラックに言えて、頭がぼやけててよく解らなくなる。
でも許してほしいのも、申し訳ないのも本当で、ぐずぐずな声で必死に「俺が悪いから、謝るから」とブラックの袖を掴んで相手をずっと見上げて謝っていた。
許して貰えないかも知れないし、また冷たくされるかもしれない。
そう思うと怖くて泣けて来て、嗚咽を漏らしてしまう俺に、ブラックは。
「…………そう。あの熊にそんな事されてたんだ……」
「ご、ごめ……なさ……」
泣きながら謝る俺を真顔で見ていたブラックだったけど……ふっと笑って、俺の涙を両手の親指でぐっと拭ってくれた。
優しい顔だ。怒ってない顔だ。
……許して、くれたんだろうか。
でも、笑っていても怒ってる事なんてよくあるし……。
ブラック、怒ってないのかな。本当に笑ってくれてるのかな。
恐る恐る見上げると、ブラックは微笑んだまま俺を押し倒し、上に圧し掛かって来た。そうして、俺の熱い頬に生温い舌を這わせて来る。
黄金蜜の甘い匂いの息が鼻先を擽って、俺は思わず小さく声を漏らした。
それに、ブラックは喉を鳴らすように笑い声を漏らす。
「泣かないで、ツカサ君。ほんと君はお酒を飲むと可愛くなっちゃうんだから困るよなあ……。そんなに、僕に怒って欲しくない? 冷たくされるの、イヤ?」
優しい低い声が、耳から伝わって体をじんとさせる。
本当に怒ってない事が解ると、何だかとても救われたような気がして、俺は必死に首を縦に振った。そんな俺に、ブラックはまたキスをして来る。
唇に熱が伝わって来て思わず目を瞑ってしまうが、相手はそんな俺を面白がったのか、舌でちろりと唇の合わせをなぞって、何度も何度も角度を変えて啄ばむようにキスを繰り返してきた。
板床の冷たさと体の熱さがちぐはぐで、床にくっついた背筋が冷たさにゾクゾクして堪らない。何より、ブラックが俺のやらかした事を怒ってないのが嬉しくて、思わず相手の首に手を回して引き寄せてしまった。
俺の行為にブラックは大仰に体を震わせたけど、逆に俺を深く抱き締めて来て、もぞもぞと首筋に顔を埋めて来る。
ちゅっちゅっと短く聞こえる音が耳に届くのがむず痒くて、俺はだるさを覚える体を動かしてブラックのする事に小さく声を漏らすしかなかった。
「あぁ……可愛いなあ……。ずるいよツカサ君、こんなに僕のことを好きな君を、殴ったり嫌ったりできるわけないじゃないか……」
「ほ、んと……? も……あんな風に、ならない……?」
なんだか、胸が寒い。コートは来ている筈なのに真ん中が冷たい感じがする。
もしかして、服、上にずりあげられたのかな。ああ、ブラックが胸の下あたりにキスしてる……無精髭がチクチクして痛痒い。くすぐったくて、声が出る。
「ぶらっ、く……やら……」
「しないよ……もう、あんな風に不安になったりしないから……。だって、ツカサ君は僕の事が好きだから……僕には、こんな風に真っ赤になっちゃうんだよね?」
「は、ぅ……んう……」
「僕だけに……こんなふうに、不安になって……体を無防備に預けてくれる……。ふ、ふふ……。まあ、今回は僕の不注意だったからね……それに……ツカサ君がどれだけ僕に操立てしてくれてるのか解ったし……凄く機嫌が良いから、熊公の事も気にしなくていいよ……。まあ、欲を言えば、いつもこんな風に素直に反応してくれたら嬉しいんだけどねえ」
素直、って……俺、いつも素直だよな……?
そうじゃなかったっけ、あれ、もう良く解んない。ふわふわして、体が熱くって、でも寒いからブラックに居て欲しくてどうしたらいいのか解らない。
鎖骨から臍の下までじわじわとキスをされる。それがブラックが俺を許してくれている証拠のような気がして、俺は恥ずかしさを我慢して口を閉じた。
素直って何だかわからないけど、でも、ズボンをずらされて足の付け根の骨の所にキスをされると、腹の奥が熱くなって胸が痛いくらいにドキドキしてくる。
それが辛くて、ブラックに縋ろうと歪んだ視界を向けると、ブラックは俺の下腹部に顔をつけたまま……上目遣いで俺を見てにやっと笑った。
「でも、すんなり騙されて受け入れちゃうのは……いただけないなぁ」
「ふぁ……?」
だま、される?
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→
※次ブラック視点なんですけど、本当にブラックが酷い(主に暴力)ので
ご注意下さい。暴力はツカサに対してではないです。
あと全体的にまたおっさんどもが酷いですが、外道なんで許して…
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