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聖都バルバラ、祝福を囲うは妖精の輪編
23.自分の深刻な悩みは案外相手にはどうでもいい事
しおりを挟む……ど、どーしよ…………いくらなんでもこれ……浮気と違うか……。
今更だけど、なんか定義がおかしいかも知れないけど、流石に昨晩のは怒られたってしょうがないのではないか。
だって、今までクロウは「食事のため」っていう大義名分で俺に悪戯をしてきたけど、昨日のは完全にえっちしたいっていう気持ちからの素股だったし、その……いくらブラックが許可を出してるからって言っても、ああいうのっていいのか……?
エロ漫画とかだと複数プレイとかスワッピングと言うのがあるらしいが、実際にやってる人いるのかな。嫉妬とかしないもんなの?
いや、まあ、許可されてるんなら、クロウのためにもなるし素股くらいなら別に良いんだけど、でも……よくよく考えたらなんかヤバい気がするんだが……。
クロウは「内緒だぞ」って言ってたけど、ブラックに言えるはずがない。
なんで「他人に素股してあげました」なんて報告すんだよ。風俗かよ。そんな事素直に報告したらブラックが余計怒るわ。
でも、浮気……浮気か……そもそも浮気ってなんだろう……。
俺の行動って浮気になるんだろうか。その前に浮気の定義ってどこから?
自分がされたら嫌な事がもう浮気って事なのかな。
……でもなあ……正直な話、仮にブラックに浮気されたって、俺は何も言えないだろうしなあ。そりゃ、一応俺はアイツの恋人だから、物凄く悲しいし悔しくなるとは思うけど、俺からすれば女とえっちする方が自然だし、女に惹かれていくのはしょうがないからなあ……。相手が男でも、俺みたいな面倒臭いのより“美形で素直にスキスキ言ってくれる子”の方がよっぽどブラックには合ってるだろうし……。
…………考えたら物凄く胸が痛くなったが、俺は浮気されても仕方ないくらいの甲斐性ナシだから、文句を言えない部分もあるわけで……。
でもだからって、ブラックにこう言う思いをさせるのはどうかと思うわけだよ。
許可したって言うんだから、恐らくブラックの中では浮気に入らないんだろうが、俺としてはなんかモヤモヤしてしまう。
だって俺、別にクロウの事を浮ついた気持ちで考えてないんだもん。
自分が救った命で、自分で一緒に居ると決めた相手なんだ。今も苦しい思いをさせていると思えば、ブラックが許す範囲で何でもしてやりたいと思う。
ブラックに向ける気持ちとは違うけど、でも俺はクロウも好きだ。
だから、一緒に居たい。それだけは曲げられないんだ。
そう思うせいか、他の奴に触れられると拒否反応が出るのに、何故かクロウにはそんな事が起きないし、触れられた分だけ俺の体は変な事になってしまう。
こんな風になるのは、ブラック以外はクロウだけしかいなくて。
俺も、嫌がるどころか素直に反応してしまっていて。
だから……その……余計に悩むんだよぉ……。
「うぅ……」
台車をひきひき森の中を最後尾で歩きつつ、俺は呻く。
ああ、困る。本当に困る……。
何が困るって、そういう思いを抱いている俺が、熱に浮かされてたとは言え……あの時に、クロウに「挿れて欲しい」って思っちゃったって事だよ。
自分の開発されてる度合いの深刻さにも寒気を覚えたが、それより怖いと思ったのは、ブラック以外にもああなる自分の堪え性のなさで……。
ううう……やばい……こ、こんな事してたら本当にいつかメス堕ち女騎士みたいな恐ろしい事になりそうで嫌すぎる……。
しかも挿れてほしいってなんだよ、やだよ、めっちゃ気持ち悪いよ。
クロウの事は好きだけど、それと俺の思考の気持ち悪さは別なんだよ。
なに挿れて欲しいって。どう考えても俺頭おかしくなってない?
それじゃ俺本当に腐女子の言う所の「受け」になっちゃってんじゃん。冗談じゃないってばよ。ブラック以外にまでこんな事思う日が来るなんて物凄く嫌すぎる。
ブラックはその、まあ、こ、恋人だからそう思うのも、まあ仕方ないし!?
でも他はそうじゃないじゃん、違うじゃん!!
俺は男だ、女じゃない。ケツにモノ挿れられて当然だと思う人間じゃなかったのにぃいい!! 浮気かどうかもアレだけど、それが一番やだあああ!
違う違う俺はノーマルだ快楽に従順なだけでノーマルなんだああああ。
「ツカサ君、大丈夫……? なんか凄く顔色悪いけど……」
「ぉあっ!? な、なんでもなゅい!」
ヒイッ、なんか変な声出たっ。
ごごごごめんブラック俺何も考えてない、考えてないから!!
「やっぱり台車僕が引くよ。そんなに無理したら、体が鍛えられる前にツカサ君が倒れちゃう。ほら、貸して」
んんん……なんでこんな時に限って優しいんだよぉ……。
罪悪感めっちゃ出てきますやん、俺めっちゃ浮気男ですやん……。
ごめん、ブラック本当にごめん……お前が許可したって言うのは解っていても、なんかものすっごい申し訳なさがあるよ。
でもそんな事を言えるわけも無く、俺は言われるがままにブラックに台車曳きを変わって貰ってしまった。
……こういう時なのかなあ、浮気した父親が母親に指輪を買って償おうって思うのは……。でもあれも取り繕ってるって言われるんだよな。
そもそも、申し訳ないとか思ってないなら贈り物なんぞしようと思わない訳で、いやでもそれを「申し訳なさがあった」って大義名分にすり替える奴がいるから、本気で申し訳ないと思っている俺のような奴がワリを食うのか?
しかしどんな事情が有ろうが浮気をしてるんだからそれも言い訳にしかならないだろうし申し訳ないと思う行動が結局申し訳なくないのではないかと思わせてしまって結果的に何をやっても申し訳ないと言う気持ちが伝わら……ええーっともう何がなんだかわからなくなってきた。
とにかく、その……普段通りってやっぱ難しいよな……。
やっぱ話しておいた方が良いかも。内緒にしたままじゃ普通に接しててもウソになるし……ブラックは多分、俺に隠し事される方が嫌なんじゃないかなと思うし。
……自分は隠し事いっぱいあるくせにな。
でもまあ、それとこれとは別だ。もうベランデルンでの嫌な雰囲気にはなりたくない。なら、こう言う事はちゃんとしなけりゃ駄目だよな。
よし、そうと決まれば気合を入れよう。この事が終わったらちゃんと話すんだ。
クロウは約束してたって言うから酷い事はされないと思うけど……ああ、なんか悪寒がする。覚悟して回復薬沢山作っておいた方が良いかも知れない……。
「ああ、妖精達の集落がみえてきましたよ。夕方前に到着して助かりましたね」
うんうん悩む俺に、丁度良いタイミングでアドニスが声をかける。
言われるがままに前方を見てみると、森の木々の奥に何やら人工物っぽい物が見えてきた。あれは木製の小屋……かな?
そういえば……この森は外の世界みたいに木々の成長がまばらだな。
神泉郷を囲む森ってことで、色々と特別なんだろうか。
しかし小屋を目指して歩いているはずなのに、ちっとも小屋が近付いてくるような感じがしないな。森の中だから遠近感が狂ってるんだろうか。
そう思いつつ小屋の細部が認識できるほどに近付いて――俺は、自分の目の前にある集落の姿に思わず絶句してしまった。
「こ、これは…………」
「小さい……!」
そう。そうなのだ。
俺達がやって来た森の妖精の集落は……あまりにも、小さかったのだ。
どのくらい小さいかと言うと、家一軒の大きさがお人形さんの家レベル。しかも家は小鳥の巣箱のように木々の幹に取り付けられた台に乗っている状態で、何かが違うツリーハウスみたいな様相になっていた。
す……巣箱の集落……?
いや違う。これはあれだ。大きさから考えて、俺が「妖精の国」と言われて最初に想像していた、ティンカーベルのような妖精が住まう集落なのだ。
しかし、いままでアドニスのような人間っぽい妖精ばっかりみてたから、いざ真打登場となるとやっぱりびっくりするな。
「長老はいらっしゃいますか」
アドニスがそう言うと、一番大きい家のドアがぱかっと開いた。
するとそこから透けるような綺麗な羽を伸ばした小さな妖精が出て来て、俺達を不思議そうに見ながら近付いて来る。
服装からなにから、本当におとぎ話の小さな妖精だ。
もちろん相手は可愛らしい美女で、人形サイズだから興奮とかはしないけども、内心俺は「妖精らしい妖精やっとキター!」と盛り上がってしまっていた。
いやだって、リアルティンカーベルですよ。ガチの妖精ですよ。
これで興奮しなけりゃファンタジー世界の意味がないっしょ……!
「貴方がたは……街の人達かしら? あら、そっちの御三方は人族? 珍しいですわね、人族がいらっしゃるなんて。何百年ぶりかしら」
出てきた妖精さんは目をぱちぱちと瞬かせて、俺達の周りを優雅に飛ぶ。
虹色の光を含んだ透明な羽はとっても綺麗で、思わず俺は見惚れてしまった。
街の可愛い二頭身の妖精さんも良いけど、やっぱこのタイプの妖精さんは格別だよなあ……。妖精の粉だってこの人達のならホントに振り掛けたら飛べそう。
そんな事を思いつつぼけーっと見やる俺を余所に、アドニスが彼女に説明する。
「彼らはジェドマロズの御客人で神泉郷に用が有るのです。今日はもう日が暮れるので、ここで一泊させて頂けないかと思いまして」
「ああ、神泉郷に行くって貴方達だったの。長老様から話は聞いてるわ。長老様に取り次ぐから少し待って頂けるかしら」
そう言うと、お人形ハウスに戻っていく妖精さん。
いやあほんと、夢を見てるみたいだ。この世界自体ファンタジーなんだから今更ではあるんだけど、でも実際サイズが違うだけで俺達と同じ体つきをした存在って言うのを目の当たりにすると、妙に現実味がなくなる感じがするよ。
アドニスもそうだけど、こんだけ人と同じ形をしているのに曜気や大地の気から生まれたって言うのが凄い。妖精の体の仕組みって俺達と同じなのかな。
まあでも、獣人であるクロウが俺達人間とは少し違うんだから、俺が想像も出来ないような器官とか有るのかも知れないし……か、下半身も、俺達人間とは違うのかもだし……なんか怖い…………。
また昨晩見たモノが脳内に蘇って来てしまった……アカン……。
「おぉ、これはこれは殿下、それに人族の御客人とは珍しい。何もない所ですが、精一杯のおもてなしをさせて頂きますじゃ」
悩む俺の耳にしゃがれたお爺ちゃんの声が聞こえてきて、顔を上げる。
するとそこには裾の長いローブを着て頭にとんがり帽子を乗せた、白髭を胸の下までたっぷり蓄えた老人の妖精がふわふわ浮いていた。
すっごい長老っぽい……絶対この人長老だ……。
「ツカサ君、この人は森の妖精ピクシーの長老で、ドンジャと言います。【原始の二十七士】の一人で、とても学のある方なんですよ」
「も……森の木陰で……ドンジャラホイ……?」
「きみ時々頭のおかしい事言いますね」
仕方ないじゃん! 森の小さな妖精さんと来たらドンジャラホイだろ!
「ホッホッホ、よくわからんが楽しいお方じゃ。さ、今宵は宴を開きますゆえ、ゆっくり楽しんで行って下され」
そう言いながら手を叩いて他の妖精達を呼び出すドンジャさんに、俺は慌てて手を振る。いやだって、さすがにもてなして貰うのはずうずうしいだろ。
俺達は通りすがりの旅人だし、集落でキャンプするんなら小さな妖精さん達にとってはめっちゃ邪魔だろうし……。
「宴なんて悪いですよ。急に押しかけて来たのに……」
寝床だけ貸して頂ければ……と俺は遠慮するが、ドンジャさんは朗らかに笑って「大事ない」とばかりに髭を扱く。
「構わんですじゃ。我々も久しぶりに人族の土産話を聞けますのでな。まあ申し訳ないと思うのでしたら、皆にたくさん外の話を聞かせてやってくだされ。皆、退屈な森の暮らしには少々飽いておりましてな」
「う、うう……」
「いいじゃんツカサ君、今日は休ませて貰おうよ」
「うむ、宴と聞いたら断れない」
だーもーこのオッサン達は酒が飲める可能性が有ったらこうもホイホイと。
アドニスも、もてなされる事は当然みたく思ってるし……。
俺達用の食事なんて、小さい妖精さん達からすれば絶対大変だろうに、宴なんて開いて貰って本当に良いんだろうか。
ウィリー爺ちゃんから連絡は行ってたみたいだから、もう事前に用意してくれていたっぽいが……なんだか気が引けるなあ……。
「ツカサ君は遠慮しいだなあ。用意してくれるっていうんだから、素直に甘えちゃって良いんだよ。それに、断ったら逆に好意を無駄にしちゃうよ?」
俺の肩を掴んで体を寄せて来るブラックに、俺はビクっと体を震わせてしまう。
我ながら露骨すぎて自分のアホさ加減に殴りたくなるが、いきなりだったし仕方ない。ああもう、何でこう俺ってブラックには隠し事出来ないんだろう……。
こんなんじゃやっぱ早めに報告した方がいいよなあ。
ブラックは俺の態度に気付いてないみたいだけど、こいつの事だから「気付いてないフリをしてたんだよ」って言ってくる可能性もある。
……このまま内緒にすると、余計にブラックを怒らせるよなあ……うう……。
「ツカサ君、どうかした?」
「い、いや……なんでもない。無駄にするのは悪いし……仕方ないか」
ちょっとぎこちない表情をしてしまったかもしれない。
今の態度がブラックに疑念を抱かせたか心配になったけど、相手はただ俺の顔をみて人懐こい笑みを浮かべていた。
→
※次はちょっとらぶらぶ
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○どうでも良い話
ツカサは田舎の集落にいりびたってたんで知識がだいぶジジ…古臭いんですが
なんか機会が有ったら田舎の集落での過去の話とか書きたいですな
当然総受けだから田舎の友達にも攻め候補(淡い恋心レベル)はいたんですが
でもツカサは結局オッサンに堕とされてるので、その攻め候補からすれば
「神隠しにあった思い人が異世界で鬼畜中年に寝取られて帰って来るなんて」
みたいな某エロゲみたいな感じに見えてるんですかねこれ…フ夕レ夕ー…
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