異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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聖都バルバラ、祝福を囲うは妖精の輪編

  惚れた弱みにつけこんで2※

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 チクショウ、こうなってしまっては腹をくくるしかない。
 でもさすがに脱衣所でお互いの裸をまじまじと見るのは嫌すぎたので、俺はさっと服を脱いでそのまま風呂場へとダッシュで駆け込んだ。
 こ、このくらいは許せよ。お互いの裸をまじまじと見るなんてことになったら、それこそ心臓がいくつ有っても足りない。

「っ、と……意外と狭いな」

 人族用の部屋を作るので精一杯だったのか、それとも風呂場を欲しがった存在がこの程度の風呂が良いと思ったのか、風呂場はマンションによくある少し手狭な感じだった。でもまあ猫足のバスタブだしシャワーもあるし、風呂に入る分には全く問題はない。それどころか、普通にシャワーが有る事に俺は感動してしまった。

「この世界ってシャワーが有る国と無い国があるけど、あの差って何だろう?」

 ライクネスは普通の平民なら井戸から水をんで水浴びが普通だったけど、少し南に下るとアコールはお湯を使える所も出て来るし、ラッタディアなんて古代遺跡の影響でこのお風呂みたいにお湯が出るしシャワーもある。

 ベランデルンの風呂事情はアコールと似たり寄ったりだったけど、オーデルは冬の国であるせいか風呂は常備だからなあ。でも、こんな風にちゃんとしたシャワーヘッドがないホースだったし、本当に技術の差が良く解らん。
 まあ平民レベルだとオーデル以外なら水浴びが普通なんだけどさー。

 色々考えながらバスタブのそばにあるコックを捻ると、直でお湯が出てきた。

「うおお、やっぱ水じゃなくてお湯が出るのか……。どっからお湯を引いてるんだろう? こういうのも妖精の力なのかな?」

 妖精達もお風呂に入るのか、それとも前にここに来たらしい人族の要望なのか。
 どっちにしろホイホイ作れちゃうのは凄いよなあ。
 でもさすがに鏡はないみたいで、そこはちょっと安心だが。
 だ、だって、鏡が有るとブラックが見える……いやそれはどうでもいい。
 今はバスタブ。お風呂の事だ。

 興味津々でバスタブの中にお湯が溜まって行くのを見つつ、俺は台の上に置いてあった荒い目のタオルと粘土ねんどのような白い塊を取った。
 これ、もしかして石鹸せっけんかな? カボチャなみにデカいけど、ちゃんと泡立つんだろうか。石の台を引き出して座ると、俺は桶でお湯を掛けタオルで石鹸らしきものを泡立ててみた。するとまあ、モコモコとヒツジのようなアワが!

「わーっ、すげえこれ! ラスターの所に有った石鹸と一緒かな!? でもこれはなんか甘くていい匂いするし、別物かなー?」

 何にせよ物凄く泡が出て来て楽しい。
 これあれじゃね? 泡風呂とか出来るんじゃないかな!?
 いやでもあれ実際どうやるんだろう? まさかラスターの所みたいに泡風呂かけ流しみたいな勿体もったいない事をするのだろうか。シャワーがあるから良いのか?
 泡風呂って札束風呂と同様やってみたい気はするけど、後処理とかどうやったら成功と言えるのかわりと謎いよなあ……。

「まあ、いっか……」

 満杯になりそうなお湯を止めて、まず体を洗おうかと布に改めて石鹸をこすりつけようとする。と、背後から誰かが風呂に入って来る音がした。

「いやー、流石に二人で入ると狭いねえ」

 は、入って来やがった、いきなり!
 反射的にドアの方を見て、俺は一気に顔の熱を暴走させてしまった。

「っ……!」
「シャワー、だっけ? こんなものがあるなんて、妖精の国も意外としっかりした文明持ってるよねえ」
「ばっ、バカ!! せめて股間隠して入ってこいよ!!」

 おっったまんま入って来る奴があるかバカ!
 お前の魂胆こんたんは丸わかり過ぎるんだよ、なんで俺がお前の素っ裸見て顔を真っ赤にしなきゃならんのだ!! ああもう自分で分かるくらいに顔が熱いのが嫌だ!

 咄嗟とっさに顔を背けたが、まだ目にブラックの体が焼き付いていて胸が痛い。

 う、うう、男の裸なんて見てドキドキするとか頭おかしいのに、なんで……。
 いやでも肉体美ってあるよな? 股間のアレはともかく、ガツンと筋肉がある体と言う物は男女問わずスゲーってなるもんだよな?

 だ、だってほら、ブラックも言動はアレだけどちゃんとした大人だし、肩幅も広くてがっしりしてるし、筋肉だって飛び出る程じゃないけどしっかりと起伏のある格好いい感じについてて、そりゃ、まあ、見惚れる奴が居ても、まあ……。
 それに、その……また、なんか、髪降ろしてるし……。

 だめなんだって、なんかこう、寝起きの時のは慣れて来たけどさ、こういう時とかに髪を降ろされると俺だめなんだってば!

「ツカサ君なに固まってるの? ねえねえ、こっち向いて」
「っ、むっ、向いたらお前のとんでもないモンが見えるだろうが!!」
「ん~? んふふ、ツカサ君たらも~可愛いなぁ~! ホントに見たくないのは、僕の格好でしょ? ツカサ君、僕が裸になって髪を降ろしてる姿が好きだもんね」
「ばっ、ご、誤解を招くような事言うな!」

 それじゃ俺がアンタの素っ裸に興奮してるみたいじゃないか!!
 ふざけるなと思わずブラックの方へ顔を向けてしまい、難なく肩を捕えられてしまった。そうして、身体を無理矢理に方向転換させられる。

「ツカサ君……ね、僕の事見て……」
「っ、ぅ…………」

 嬉しそうに緩んだまなじりに、菫色すみれいろの瞳がとろりとした光を灯している。
 うねった赤い髪は、たくましく太い首や男らしいブラックの輪郭りんかくに流れ落ちていて、それが俺を妙にたまれなくさせる。
 見ているだけでドキドキして、心底嬉しそうな顔で見つめられると胸が苦しくなるから見たくなくて、俺は震え始める顔を背けようとしたけど、ブラックは俺の頭を手で掴んで離してくれない。
 それどころか、顔を近付けて来て。

「ぁっ、ぶ、ブラック……!」
「恥ずかしがることないよ……僕だって、ツカサ君の顔も、身体も、全部大好きなんだよ? ほら、それって僕と一緒じゃないか。だからね、ツカサ君が僕の体に興奮してくれるのが凄く嬉しいんだ……」
「う……うぅ……」
「ねえ、恥ずかしがるよりもさ、素直に認めた方が恋人らしいって思わない?」

 そう言いながら、ブラックは俺の口に軽く触れるだけのキスをする。
 俺は小さくうめいたが、それが好ましかったのか、ブラックは二三にさん度角度を変えてついばむようなキスに変えてきた。
 うるさいくらいに耳の奥が脈打ってるのに、キスをしている相手はとんでもない姿なのに、小さな音を立ててキスを繰り返されると、何故だか恥ずかしさよりもまどろむような気持ちが強くなってしまう。

 目を細めて息を漏らした俺に、ブラックは小さく笑うとやっと顔を離してくれた。

「僕がツカサ君に興奮するのと同じように、ツカサ君も僕の体に興奮する。それって、恋人なら自然な事だろう? ツカサ君は僕としかセックスした事ないから解らないかもしれないけど……好きな子が自分の体で興奮してくれるのって、とっても嬉しい事なんだよ? ……だから、恥ずかしがらないで……」
「ん……」

 そう言うと、頭を撫でられる。

「良い子だね」

 下半身の収まりがついていないくせに、妙に大人ぶってさとしてくる相手に、俺は戸惑いながらもぎこちなく頷いてしまっていた。

 でも、確かに……そうかもしれない……。
 俺は抱かれる方の気持ちなんて知らないけど、でも、自分を組み敷く相手の裸に興奮するっていうのは、物凄く恥ずかしい事だと思う。
 だってそれは、あくまでも「抱かれる側」としての興奮であって、俺が本来もよおすような「抱く側」としての興奮じゃないんだ。男にとって、それは敗北にも等しい悔しさや、納得のいかなさを覚える事でもある。一言で言えば屈辱だった。
 けれど、相手は……俺の、恋人だ。

 俺が自分自身で好きだと認識して、自分で一緒に居たいと願って、今だってキスされて内心喜んでしまうほど想っている……どうしようもない、恋人なんだ。
 男である以上、恥ずかしさはどうしてもぬぐえないかも知れない。
 でも、相手に対する衝動しょうどうを否定するのは、ブラックを好きだって気持ちを否定するのと同じ事だよな。どんなに納得がいかなくても、俺は……ブラックにドキドキして、今の姿の相手が物凄く好みだって、身体で体現してしまっている。
 それはもう、否定しようも無い事だろう。

 そこで嘘をついてしまえば、俺はただの面倒臭い嘘つきでしかない。
 ブラックは素直に俺の体が好きだと言って、グロいイチモツが起立しているのを隠しもしないのに……これじゃ、俺の方が男らしくないみたいじゃないか。

 ……そうだよな、俺は、こいつの恋人なんだ。
 だから、好きな格好の一つや二つあったって、何も変じゃない……けど……。

「……でも……悔しい…………」
「ん?」

 ぽつりと呟いた俺に、ブラックは首をかしげる。
 その仕草がまた俺の中でもどかしさを生んだが、もう恥塗はじまみれの今の状況なら何を言っても構わないだろうと思い、俺は情けなく震える声で、ブラックを見上げた。

「だって、あんたこんなろくでなしなのに……こんなの……」
「ろ、ろくでなし……」
「なのに……お、俺だけこんな……恥ずかしいくらい、ドキドキするなんて……」
「ツカサ君……っ」

 ああもう、目の前でしょげたり顔を明るくしたり忙しいオッサンめ。
 お前のそう言う態度が余計に俺を居た堪れなくさせるのに、どうしてこういう時に間抜けな顔ばっかしてくるんだよ!

 くそっ、もう、なんでこうお前って奴は……っ。

「ツカサ君、そ、そんなに僕の体が好きなの……!!」
「バカー!! 言葉を変な感じに捻じ曲げるな!!」
「ふあぁ……つ、ツカサ君が、ツカサ君が僕の事そんなに好きだなんて、ちゃんと自分の口から言ってくれるだなんてぇ……! うれしい、嬉しいよツカサ君!!」

 よだれを垂らしそうなほどに口ぽかんと開けて目を輝かせるオッサンなんて、見てて気持ちの良い物じゃない。どんだけ喜んでるんだよと呆れたが、そのまま抱き着かれて、裸の胸にぎゅっと体を押し付けられると、また熱が上がってきて。

「ちょ、ちょっと……っ」
「あぁああ可愛い可愛い可愛いよぉお……っ!! も、もう、今のでちょっと精液出そうになっちゃったじゃないか、もうぅツカサ君は本当に小悪魔なんだから!」
「やめてドンビキする……」

 その報告要らない、本当に要らない。ドキドキが失せた。
 思わず顔を歪めてしまったが、そんな些細ささいな事など、俺に抱き着いて分厚い胸板を押し付けてくるブラックには関係ない。
 相手はひとしきり俺に抱き着いて雄叫おたけびを上げ終わると、なにやら子供のように目を輝かせながら再び俺の顔を覗き込んできた。

「じゃ、じゃあさあ、今度は僕がツカサ君の事どんなに好きか教えてあげるよ」
「教えるって……」

 今更すぎないか。いや待て、相手の気持ちをはかれてると思うのは傲慢ごうまんだな。もしかしたら俺が思う以上の何かをブラックは抱いているのかも知れない。
 それに「貴方が私を好きな事なんてお見通しよ!」って台詞は、実際に言われて気分の良いもんじゃないしな……。俺も言いたくない。
 どんだけ自意識過剰なんだって自分でツッコミ入れたくなるし。

 だけど、教えるって何を?
 言葉で言う以上に伝えられる事なんてあるんだろうか。
 ……いや、えっちは抜きにしてね。

「さ、まずは僕に背中を向けて」
「うん……?」

 なんだろ、背中を流してくれるんだろうか。
 さっきはモブおじさんかよみたいな台詞ばっかり言ってたけど、背中を流す事で俺に男としての裸の付き合いって奴で語ってくれるのかな?
 それだとありがたいし、まあ、恥ずかしくはあるけど耐えられるんだけどなあ。
 ……その、ぶっちゃけ……ブラックに好きって言われるのは、嬉しいし……。

 俺の横にある石鹸の塊に、ブラックの手が伸びる。手を滑らせて多量の泡をまとわせているが、タオルはどうしたんだろうか。
 もう片手に持っているのかな? と思っていると……不意に、背中に少し冷たい人肌の感触があって、俺は思わず体を跳ねさせてしまった。

「なっ、なに?!」
「僕の手だよ、安心して。……ほら、ツカサ君の背中を何度も行き来した手。……覚えてるでしょ?」
「っ……ぅ……う、ん……」

 確かに、武骨で骨の太い大きな手だ。少しカサついたその感触は、覚えがある。
 いつも俺の背中を支えて揺さぶる、強い男の手……。

「あ、今ちょっと照れた? 耳が赤くなってるよ」
「あっアホ、これは風呂場が熱いから……っ」
「ふふ……はいはい、そう言う事にしておこうか……。でね、僕がどんなにツカサ君の事が好きかって言うとね……」
「い……言うと……?」

 背中に張り付いていた手が、二つに増える。
 片方はとてもぬるぬるしていて、少し炭酸が泡立つような音が聞こえた。きっと先程の泡をなすりつけたのだろう。その考えが正解だとでも言うように、ブラックはもう片方の手を滑らせて、ぬめった感覚を背中全体に伸ばし始めた。

 う、わ……これ……手で、洗ってる……。

「まず、背中かな……。ツカサ君は僕達よもり幼くて小さいくせに、よく僕達の前に立とうとするよね。……ああ、不満だって事じゃないんだよ? 僕はね、それが好きなんだよ。だって、僕達の前に立つって事は、僕に“守られたい”んじゃなくて、僕を“守りたい”ってことだろう? 僕だって同じ気持ちだけどさ……でも……無意識に僕に背中を見せてくれるのが、とても嬉しくて……好きなんだ」
「っ……」

 そ、そんなだったっけ……解んない、覚えてない……。
 確かに俺は守られるだけなんてぴら御免ごめんだったし、アンタ達の役に立ちたくて、出来れば守ってやれるくらいに強くなりたくて、躍起になってた。
 でも……言われても、そんなの覚えてない。
 俺がいつも見ていたのは、ブラックの背中だったから。

 ……広くて、大きくて、俺が手を回しても背骨にまで手が届かない程の、背中。
 今まで他人の背中なんて意識してなかったのに、アンタの背中だけはどうしてか今もはっきり思い出せるほどに頭の中に残ってしまっていて。

「…………」

 やだ……こんなの、俺がブラックの事を「どう思ってるか」ってのを余計に気付かされているようなもんじゃないか……。
 ブラックの「好き」を教えられているはずなのに、どうして俺自身が気付かなかった事を教えられているような気になって来るんだろう。
 うう、また何か耐えられなくなってきた……。

 素っ裸な事も相まって、俺は手持無沙汰で不安になるのが嫌で、両手を足の間に挟み込んでぎゅっと腕を太腿で固定した。
 背中を丸める格好になった俺に、ブラックはまた軽く笑う。

「ツカサ君の髪も好きだな……。ざんばらで色気も無い黒髪だけど、飾らない君の姿に良く似合ってるし……ツカサ君の元気な表情と一緒だと、黒髪も無垢で可愛いと思えてくるからね。それに、うなじも好き……」
「っあ……!」

 聞いているこっちが恥ずかしくなるほどの台詞を吐きながら、ブラックは滑る指で俺のうなじを触ってくる。いつもとは違うなめらかさで何本もの指が項をくすぐる感覚に、俺はびくりと反応してしまった。
 だけど、ブラックは構わず話し続ける。

「ツカサ君の黒い髪が汗で項に張り付いてたりするのって、凄く扇情的なんだ……君はいつもは全然色気なんてないのに……そう言う時は物凄く僕を興奮させて、思わず抱きしめたくなっちゃう」
「やっ……ぁ……!」
「首筋とかもそうだよ。首もそう。男の子なのにまるで成長してない、簡単にくびり殺せそうなくらいに幼くて柔らかい……キスして、噛み付いて、自分のモノだって痕を残すと本当に幸せな気持ちになるよ」

 後ろから首を掴まれる。だけど、俺はその事に恐怖するどころかまたドキドキしてしまっていて。指が泡を絡ませて喉仏のある部分を擦ると、勝手に俺の喉が唾を飲み込んで締まってしまう。

「小さく浮き出てる鎖骨も良いよね……肩だって、もう十七歳なら成長してて良いはずなのに、こんなに頼りない。でも、この腕……僕を抱き締めてくれるこの柔らかい腕がね、僕を抱き締めてくれると……ツカサ君って、僕よりずっと大きな存在なんだなあって、温かいなあって……凄く思うんだ」
「っ、ん……っ」

 足の間に挟み込んだ腕を、ブラックの両手がそれぞれに別れて掴む。
 脇から二の腕に掛けて指をくるくる回して泡を擦り付けると、そのまま下へ降りて手首を掴み、ゆっくりと上下に手を動かしてくる。
 その反動で足の間に挟んだ手が動いてしまい、俺は思わず息を詰まらせた。

 泡が垂れてくる。その感触が敏感な腿に当たって谷間に染み込んできて、何だか再びじわじわと熱が上がって来た。

 だ、ダメだ。我慢しなきゃ……。
 せっかく、ブラックが好きって、言ってくれてるのに……。

 ブラックの手にはスケベな気持ちが無かったし、腕だって丁寧に洗ってくれてるのに、俺だけいやらしい気持ちになってどうするんだ。

「ほら……手を出して……。僕はツカサ君のこの手も好きだなぁ。僕の髪をいつも優しくいてくれて、時々だけど僕の頭を撫でてくれてさ……。同じ男の手のはずなのに、ツカサ君の手はとっても柔らかくて優しくて……」
「う……うぅ……」

 泡だらけの大きな手が、俺のてのひらを揉みながら擦ってくる。
 指の股を何度も何度も行き来する感覚が、ぞわぞわと背中に甘い感覚を送って来て、俺はよくわからない自分の変化に戸惑いながら息を漏らしていた。
 なんで、なんでこんな事に……。

 手を洗って貰ってるだけなのに、なのに、なんで……。

「ブラッ、ク……」
「ああ……その声も好き……。ツカサ君の堪えてる声って、物凄く興奮するんだけど、ツカサ君全然解ってくれないんだよね……。でも、今日はツカサ君も僕の声に反応してくれてるみたいで嬉しいよ」
「え……」
「だってほら、僕の大好きなツカサ君の可愛い乳首がこんなに育ってる」

 そう言って、唐突に俺の両方の乳首をきゅっと指で摘まむブラックに、俺は何が起こったのか解らないままに思いっきり喘いでしまった。

「っあぁあ!?」
「ふ、ふふ……可愛いなぁ……。小さくて処女みたいな色をしてるのに、僕に何回も触られていくうちにこんなに敏感に育って……」
「やっ、ぁっ、いやぁあっ……! だ、めっ、こすらなっで……!」

 軽く引っ張られ、指の腹同士でこりこりと執拗に捏ね繰り回される。
 ブラックの手を掴んで急な悪戯を止めさせようとするが、俺の体はもう力が入らなくなってしまっていて。身をよじって逃れようとするのをいさめるように、ブラックが乳首の根元を縛って先端を何度も軽く指で擦りあげて来る。そんな事をされると下腹部がまたきゅうっと熱くなってしまい、俺は強く足を擦り合わせてしまった。

「ああ……はっ……はは……ほら、乳首を軽くいじめるだけで、可愛いツカサ君のおちんちんが勃っちゃった……でも、ツカサ君はここも好きなんだよね……?」
「はっ、ひゃっ!? やらっ」
「イヤ? 嘘だよねえ。ツカサ君はおへその穴も僕に犯されるのが大好きだよね? 僕もツカサ君がこんな所を犯されて喜ぶ所をみるのが大好きだよ……あは……ねえ、ほら……ここに泡が入って、指でずぼずぼされたら、ツカサ君のおちんちんは喜んじゃうだろう?」

 そう言いながら、ブラックは手にまとわりついた泡を擦りつけるように胸全体を触って、身体の真ん中の線を指でなぞるように手を下へ降ろしてくる。
 ゆっくりと下がってくる感覚にすら俺はぞくぞくしてしまって、その事に耐えられず俺は首を振って必死にブラックに止めてくれと言おうとしたが……その前に指が臍に辿り着いてしまい、中に入り込む感覚に俺は悲鳴を上げてしまった。

「ちがっ、や、だめっあっあぁあ゛っ! や゛ぁあっぁっ、ひ、ぅあ、あああ!」
「はっ、はははっ、ほらほら、触ってないのにおへその穴を犯されただけで完全に勃っちゃったねえ! あはははっ、先走りまで垂らしちゃって、本当にツカサ君はえっちで淫乱な子だなあ……!!」

 なに、これ。違う。
 好きな所を教えてくれるって言ったのに、なんでこんな事に。

「ああ……僕の大好きなツカサ君のちっちゃくて可愛いおちんちんも、しっかりと洗ってあげないとね……!」
「や゛ぇ、な、なにっ」
「ちゃんと洗ってあげるから、汚しちゃだめだよ……?」

 背後から低く笑う声が耳を犯して、俺の震える足が無理矢理開かれる。
 ぬるぬるした手は膝を掴んでいたが、そこから内腿へと見せつけるように迫って来て、ついに俺のモノを握り込んでしまった。

「ひあぁっ!」
「陰嚢も、付け根も、しっかりと洗ってあげるね」
「だえっ、い、や、やっ、あぁあっあ、ぅああぁ……っ!」

 蟻の門渡りから陰嚢の裏までを指で擽り、もう片方の手がぬちゃぬちゃと嫌な音を立てながら俺のモノを擦りあげて来る。
 洗うためだと言いながら先端に触れて、ぬめる指で亀頭をこね回されてしまうと、もうどうしようもなくて俺はブラックの腕にすがりついてビクビクと腰を震わせてしまっていた。いつもとは違う感覚がもどかしくて、摩擦が少ない事がやけに物足りなく思えて、それが恥ずかしくて俺は首を振って声をかみ殺す。

 汚さないように、と言われたのが何を指すのか解っているのに、俺はもう、そのもどかしさだけで達してしまいそうで、それが怖くて堪らなかった。
 だけど、ブラックはそんな俺を追い詰めるかのように更に強くしごいて来て。

「はっ、はははっ……ツカサ君のお漏らしのせいで、ちっとも綺麗にならないよ? いやらしいなあ……こんなに我慢汁だだもれさせて……ッ!!」
「ひあぁあっ!! やあぁあっ、や、もっ、さきっやらっ、いじららぃえっ」
「先っぽ? あははっ、ココの事かなぁ!!」

 心底楽しそうな興奮した声が俺の耳に強く打ちつけられて、俺は背を弓なりに反らす。くちゅくちゅと音が立つくらいに何本もの指で愛撫される先端は、真っ赤になってもう我慢の限界だった。

「ぃあっも、いぐっ、いっひゃ……よごしゃうぅ……!」
「まったく、っふ……ククッ……ツカサ君、は……ホントに淫乱なんだから……! 仕方ないなあ、じゃあ……あとでまとめて洗ってあげるから、出せよ……ッ!!」

 そう言って、ブラックは俺の背中を押して四つん這いにさせる。
 獣のように這いつくばった俺に、ブラックはまた悪人のように笑うとすぐに尻に手を掛けた。まるで余裕がない、そうぼんやり思うが、それから先の行為を知っている俺は、ブラックの手が谷間を開く感覚に期待して、動けなくなってしまう。

 熱と蒸気で頭がぼやけて、気持ちの良い事だけしか考えられなくなる。おちんちんが爆発しそうなくらいに脈打ってぼたぼたとカウパーを漏らしているのに、俺は後ろからの強烈な刺激に気を取られて、触ることすら考えられずただ床に這いつくばってブラックのペニスを待っていた。

 欲しい。あの、強い刺激で、腹の中でぐるぐると籠っている熱を掻き回して霧散させてほしい。こんな煩わしい事なんて考えないように、早く。

「ぶらっ、く……っ」
「ははっ、ははは……! ツカサ君、もう意識飛んでるの? 今日は早いね……っ、やっぱり恥ずかしい事をされて高まっちゃってたのかな……ッ!!」
「っあぁあ!!」

 指を埋め込まれて、身体が震える。
 だけどもうそれだけの快楽じゃ我慢できなくて。
 指が増えて動き回る感覚にすら物足りなさを覚えて腰を揺らす俺に、ブラックは高笑いを漏らしながら……指を引き抜き、熱い物を押し込んできた。

「――――――ッ!!!」

 ロクに慣らしもしていないソコに、声すらでないような熱くて大きなものが侵入してくる。無遠慮に割り開いて、ナカを擦りあげて、意識を喰らい尽くしてくる。

「ツカサくっ……はっ、はぁ……ツカサ君……!!」
「っあぁあ……!! ぁっ、あぁあっ、も、っと、もっ、して……っ……!!」

 激しく体を揺さぶるブラックの手と、体内を擦りあげる凶暴な熱。
 その最中に体を抱き締められて、俺は何度も何度も同じ言葉をささやかれた。

「すき、だよっ……つかさくっ……っ、ぁ……好き……っ好きだ……っ」

 いつも言われてる、何百回も聞いたはずの言葉。
 なのに、抱き締められて、揺さぶられて、必死な声で叫ばれて――――
 それだけで、俺はたとえようもない快楽に打たれて簡単に籠絡された。

 後はもう、あまり覚えていない。

 泡だらけの中で、何度かナカに出される感覚がして……俺は意識を失った。













 
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