異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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聖都バルバラ、祝福を囲うは妖精の輪編

5.主人公とはすべからく修行をするものなり

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 あのね、久しぶりで変な体勢のえっちするのはいけないと思うんですよ俺は。

 おかげですっげえ太腿ふとももと腰に違和感があるんですけど。あるんですけど!!
 くそう、変態中年のおかげでまたしても一発やられてしまった……。

 あの後久しぶりの強烈な感覚にすっかり意識を飛ばしてしまったが、本当にしてやられた感が強い。ここ数日まったくセクハラをして来なかったから油断していたけど、そう言えばブラックは根に持つタイプだったんだ。

 たぶん、彩宮でボーレニカさんに折角のチャンスを邪魔されたのを、未だに不満に思っていたに違いない。だから寝込みを襲って来たのだろう。
 ……まあ正直、我慢できないのは解らないでもないが……それでも、時と場合と場所によりってのが有るよな?

 なに「おふとんの中でイタズラ」なプレイに持ち込んじゃってんだよ。
 しかも何度も何度も挿れたままで出しやがって……!

 もう途中から覚えてないけど、何か凄い事になってた気がする。……俺もなんか凄く酷かったような雰囲気が有るんだけども、記憶がぼやけすぎてて解らん。
 ぶっちゃけ、クロウが起きて来たのかどうかすら曖昧あいまいだ。

 ……でもまあ、今日すんなり起きる事が出来たって事は……三度も四度も五度も俺を揺さぶりまくった訳じゃないみたいだから、そこは良いけど。いやよくない。
 揺さぶらなくてもあいつ俺の事オナホにしてんじゃねーかぶっとばすぞ。
 人の体を何だと思ってんだあのオッサン。

「はぁー……ったくもう……ほんっとあのスケベ親父は……!」

 妙に体がすっきりしてるし、俺が意識を飛ばして寝てた間に綺麗にしてくれたんだろうけど、だからって許せる事と許せない事が有るんだからな。
 あんまりムカついたから、縄でベッドに縛り付けて簀巻すまき状態にしてきたわ。
 買ってて良かった長いロープ!!

「さて、俺は何しようかな……」

 一応バッグは持って来たけど、昨日必要な買い物は済ませてしまったので、正直今日はやる事が無い。アドニスがどこに行ったのか探すのも面白そうだが……ヘタに歩き回ったらまた厄介事やっかいごとに巻き込まれそうだし、どうしたものか。
 宿屋の廊下を歩きながら考えて……俺は、この村のそばに小川が有る事を思い出した。駐車場から村に向かう途中でちらっと見えて、久しぶりの川にちょっと興奮してたんだよなー。

「おお、そうだ。曜術の練習ってのもいいかも?」

 ここでは木の曜術をヘタに使えないが、水なら構わないんだよな?
 手持無沙汰てもちぶさたで散歩するのも時間の無駄だし、さっと行ってみるか。

「……そう言えば、クロウはどこ行ったんだろ?」

 朝起きた時からいなかったけど、散歩しにでたのかな?
 不思議に思いながら、一階の酒場に居る宿屋の親父さんにクロウの行方ゆくえを聞いてみると、外に出て行ったとの事だった。やっぱ散歩か。
 どこへ行ったかまでは解らないらしいけど……まあ小さな村なんだし、どっかで会うだろうから良いか。クロウも久しぶりの緑を堪能たんのうしたいのかも知れんし!

 俺は親父さんに軽い昼食を作って貰うと、それをバスケットに詰めて外へ出た。
 まあ、ブラックが何か聞いてきたら「小川に行った」と伝えてくれるように頼んでるし、このくらいの勝手は良いだろう。つーかこのくらいはさせろ。
 夜這よばいとか本当信じらんねえ。昭和かおまえは。

「つーかオッサンに夜這いかけられるって……俺の未来には夢も希望もないのか」

 村モノのエロ漫画とかで定番の「美女が子種を貰うために夜這いに来る」なんて素晴らしい展開は、このファンタジー世界でも俺にはやって来ないようだ。
 ……俺は一生童貞か……。
 考えると物凄くむなしくなったが、そんな事は解り切った上でブラックと恋人になっているのだから、今更なげいても仕方ない。

 しかし昨日の晩のような肉オナホ状態は流石に心身ともにこたえてしまい、俺は陰鬱いんうつな気持ちを抱えながら小川へと向かったのだった。



   ◆



「はえー! やっぱ水が有ると草も綺麗に生えるんだなあ……!」

 村から少しだけ離れた、どちらかというと保養地エリアに近い場所。
 そこに俺が目指していた小川があった。

 小川は俺が楽々と飛び越えられる程度の幅しかないが、しかしその周辺には芝生のように短く整った植物が広がっている。
 ぱっと見は春が来た小川のようで、とてもほがらかな気分になった。
 くもり空だけど、目に鮮やかな緑と小さな花々を見るだけで目の保養になるなあ。
 なるほど、これぞまさに保養地って訳か……納得。

 俺は思いっきりびをすると、小川に近付いて水に触れてみた。

「うわっ、冷たっ! や、やっぱこういう所は常冬の国だな……」

 ひええ、うっかり触れるんじゃなかった。この地域少し気温が高いから、余計に水が冷たく感じるぞ。いやいや、でもここで練習するって決めたからには、冷たさにも慣れなければなるまい。じゃないと昼飯も美味く食えなかろう。

「よーし、頑張って練習するぞー……!」

 少し腕をまくると、俺は草の上に膝をついて小川の上に手をかざした。

 ……ええと、俺の使える水の曜術は基本的には三つ。
 手持ちの水から倍以上の水を作り出す初級術・アクアと、術で出した物ではない水を操る中級術のカレント。そして、最上級の術であるアクア・レクスだ。
 応用編で、アクアで作り出した水を出した直後から操る「アクア・カレント」ってのも使えるけど……今回はよく使うアクアは使わないでおこう。
 となると、カレントと……あんまり使いたくはないんだけど、アクア・レクスの練習をする事になるかな。

 ――アクア・レクスは、水源や水脈を感知する術だ。認識出来る範囲の全ての水を鑑定し、自分の体と照合して有害か無害かを判定できる。 そして、この術で認識した水が鑑定できる物であれば、精神力と引換えに自分が認識した全ての水に変質させられる。……以上、全て本の受け売り。

 つまり、俺の技量によっては、数十キロ先の水源すら感知できる訳だが……今の俺に使える範囲と言うのがよく判らない。
 あと鑑定できるって効果もイマイチまだ解ってないんだよなあ。
 自分の体と照合してって事は、毒を取り込むことになるんだろうか。
 それとも術の効果で本当に鑑定っぽい事が出来るって事なのかな?

 うーん、練習できる時に限って会えてないから仕方ないんだけど、出来れば水のグリモアであるシアンさんに聞いておくんだった。
 シアンさんと会う時って、何故か大抵たいていが忙しいからなあ……。

 まあ考えていても仕方ない。
 もしアクア・レクスをマスター出来れば、仮に俺の薬が失敗作になっても術によって鑑定出来るかもしれないしな。まあ、やった事ないから解らんけど!
 とにかく練習してみるか。

 そう思って、俺は数時間ほど一生懸命いっしょうけんめい水の曜術の修練に励んだ。

 ……うん、いや、一言で済む程度の事だけど、結構大変だったんですよ。

 元々存在する水を操るカレントは中級の曜術だし、俺もずっと曜術を使って来たお蔭かだいぶんスキルアップしているらしく、精神力がゴリゴリ削れる事も無かったんだけど……問題はアクア・レクスだよ。

 地下水道遺跡で使った時ほど頭は痛くならなかったんだけど、やっぱりこの術はかなり危険だ。三回くらい使ったら悪い船酔いをしたみたいに頭が凄く気持ち悪くなってしまい、俺はその場に突っ伏してしまった。

「う……うぐぐ…………や、やっぱりこの術使いこなせる気がしない……」

 いや、原因は解ってるんだ。
 俺が船酔いしたようになる原因は、過度な情報の受信が負担になるからだろう。

 アクア・レクスを使うと、俺の脳内にはすぐに周辺の水の流れの経路図が浮かんで来たり、地中の水分量? みたいなのが解る変な感覚がして、それらが恐らく数キロ先の情報まで流れて来るものだから、そのせいで頭が情報を処理しきれずにオーバーヒートしてしまうのだ。

 術を制御しようにも、三度しか持たない俺の精神力では感知範囲を狭める所まで意識が働かない。だって、この術ったら発動してすぐに周囲の情報を全部読み取るんだもんんん。

 パソコンだって自分が許容しきれない記録は拒否出来るってのに、どうして俺はそれが出来ないのか。いや、熟練度の低い俺にはまだ使いこなせないほどに、この最上級の術は凄まじい威力があると言う事なのかもしれない。

 だって、この世界の医者は水の曜術師しかなれないんだし、その医者の曜術師達は、このアクア・レクスを自分の手足のように自在に発動できてるんだぞ。

 よくよく考えたら、頭の良い人が使う術を俺がすぐに使いこなせる訳がない。
 自慢じゃないが、俺のテストの点数はいつも赤点かギリギリ合格だ!
 ……いや本当に自慢じゃないな。興味のない事には全然頭が働かないってのに、この術を楽勝クリア出来るはずも無かった。

「うぅう……こ、ここに来て俺のバカさが足を引っ張るとは…………」

 ああ、水の曜術は三つしか術がねーのかよとか思って本当にすみませんでした。

 そりゃこんな最難関で最高の術を使いこなせるなら、医者にもなれるし博士にだってなれるだろうよ……だってこれ、もし体内の血液とか水分を辿れるとしたら、体全体の生命活動を把握はあくできるって事だよな?
 生物の体は水が無きゃ動けないんだし、となると生物の全体に水が存在するワケで水の曜術師はそれを……ああもう考えたくない、頭気持ち悪い。

「うっ……うげぇえ……も、もうお昼だというのにぃい……」

 先程曇天どんてんにごーんごーんとお昼を告げる鐘の音が響き渡ったので、俺だってもう昼ご飯を食べても良いだろう。だけどこの状態じゃちょっと無理。
 しかしこんな所で行き倒れていたら、通行人に驚かれるかもしれないしなあ。
 うう、どうすれば……。

 まだグラグラと揺れて吐き気を催す自分の頭を叱咤しったして、俺は顔を上げる。
 と、視界の少し向こう側に古びた小屋が有るのが見えた。

「…………う゛ぁ……?」

 小屋の周りは小川の支流がぐるりと取り囲んでおり、よく耳を澄ませてみると、小屋からはガタンガタンと規則正しい音が聞こえて来た。
 あれって……もしかして、水車小屋か何かかな……?

 俺の婆ちゃんの住んでる集落にも、一軒だけ水車小屋が有るんだよな。
 婆ちゃんの所の水車小屋は米なんかの脱穀をするための小屋で、夏休みとか長い休みの時には、たまに小屋を秘密基地とかにして遊んでたっけ。

 俺の住んでる所ってああいう基地に出来そうな場所が無かったから、ガキの頃はすっごく嬉しかったんだよなー。
 でもそんな遊び方ばっかりしてたから、学校の友達とはまるで話が合わず、俺はどんどんオタクの方へと流れて行ったんだがな……フフ……なんで外で健全に遊んでてオタクになったんだろうな俺は……。

 いや、今はそんな事はどうでもいい。
 水車小屋っていうんなら、少しぐらい隠れて休んでても問題ないよな?
 中に人が居れば頼めばいいんだし、寒い外で寝転がるよりは良いだろう。

「し、死体にだけは間違えられたくない……」

 避寒の保養地で殺人事件が! いや勘違いだった! とか迷惑すぎるわ。
 騒がれる前に移動せねばと思い、俺はフラフラと立ち上がって古びた水車小屋へと近付いた。う、うう、気持ち悪いけど歩いていると少し楽になって来たぞ。

「はあ……石造りの水車小屋なのか……」

 この村はオーデル皇国ではかなり珍しいログハウスのような家が多いが、水車小屋は流石にそうはいかなかったのか、しっかりとした石が積み上げられた頑強そうな小屋になっていた。あれかな、壊れたら困るからかな?
 色々と不思議に思いつつも、俺は渡り板を踏んで小屋に近付く。

 扉は鉄製と言う訳でもなく、普通に木の扉だった。

「ええと……。すみません、誰かいますか~……?」

 コンコンとドアを叩いて中に誰かいるかを確認する。
 しかし返事はなく、俺は古びたドアノブを回してみた。

「……おお、開いた……失礼しまーす……」

 一応声を掛けながら中に入ると、そこは滑らかな石の壁に囲まれた小さな部屋で、すみにはわらが山のように置かれていたり、農具が放置されていた。
 水車はごとんごとんと音を立てて動いているようだが、どうやら今は何にも使われていないみたいだな。部屋の中央に置かれている石臼いしうすの上には仕掛けをしてあるきねがあるが、上がったままで落ちてくる様子はない。

「まあ、使う人がいないなら好都合か……」

 まだちょっとおぼつかない足取りで中に入ると、俺は壁に背中を付けてゆっくりと地面に腰を下ろした。いや、流石に藁に潜り込むのはちょっとな。

「はー……」

 外よりも少し暖かい小屋の中に、思わずため息が漏れる。
 気持ち悪さはだんだんと治まって来たけど、やっぱえっちした後でこんなに術を使うと倍以上に疲れた気がするわ……。

 ちょうどいいから、ここで少し休憩をして仮眠しようかな。
 昼ごはんは後で良いや……。

 そう思って、目を閉じようとすると。

 突然、バンと強く扉を開ける音がして、何者かが侵入してきた。

「うぉおお!?」

 眠ろうとしていた所にいきなり大きい音を出されて、思わず座ったままで三センチくらい飛び上がってしまう。
 口から心臓が飛び出しそうな程に驚いている俺の目の前で、扉を開けた何者かが鼻をクンクンと動かしながら、のっそりと入って来た。
 その侵入者とは。

「え……えぇ……く、クロウ……?」

 そう。水車小屋に入って来たのは、何を隠そうクロウその人だったのだ。
 ……つーか何でここに。

「やっぱりツカサか。美味そうな匂いが二つすると思って誘われてきたが……」
「……二つって……」
「たぶん、そのバスケットの中の物と……ツカサの匂いだ。ちなみにより美味しい匂いはツカサのほうだぞ」
「だぞじゃねーよ!!」

 何変な事言ってんだと気分の悪さも忘れてツッコむ俺に、クロウは相変わらずの無表情で「何故怒る」と言いたげに首を傾げながらも扉を閉めて近付いてきた。

「まあ、それはともかく……」
「ともかくじゃねーよ」
「ツカサとは少し二人きりで話がしたかったから、ちょうど良かった」
「え……?」

 待て。話って、何? 何か話す事有ったっけ?
 ……まさか、昨日の夜の話じゃないよな…………。









 
※と言う訳で次はクロウとちょっと際どいえっち(挿れない)です注意
 
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