異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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彩宮ゼルグラム、炎雷の業と闇の城編

16.これ俺の世界の子供の作り方と何か違う

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 翌日。ヨアニスが仕事をしている間、俺とアドニスは彩宮さいぐうの中に居る人達にそれとなく近付いて、話を聞いて見る事にした。
 アドニスは「いつになったら研究が出来るんですかね」と不満げだったが、それでも命令を投げ出したりはしなかった。

 ヨアニスが言うには「利害関係の一致」らしいが、他人の気持ちなど気にしないこの変人が素直に従うのだから、アドニス的には内心恩を感じてるのかもな。
 凄い研究施設を貰ったわけだし、世界中どこでも好きに出かけられるわけだし、研究者としては潤沢な資金を用意して貰ってるってだけでもありがたいし。

 人の気持ちなんて解ろうともしないけど、借りは借りと認識したり、ロサードの事は素直に友達と言うあたり、やっぱこの人もズレてるだけで善悪はしっかりした大人なんだろうなあ……普段の行動からはそうは見えないけど……。
 いまだにどう接したら良いか解らない相手だが、まあ、俺の腹を切り開いて解剖かいぼうとかしないあたり常識人ではあるんだろう。うん。

 どうでもいいけど二人とも名前の最後が「ニス」でややこしい。
 閑話休題。

 まずはメイドさん達に話を聞くのが良いだろうと思い、給仕長にお願いして俺達は裏の通路を見学させて貰う事にした。
 彼らは俺達の事情を知っているので、俺をソーニャとは呼ばないものの、丁寧に接してくれている。俺も出会った時には挨拶しているので、悪印象は無いだろう。てなことで、煉瓦れんがの迷路ような裏の通路を歩き、部屋やら仕事場を片っ端から案内して貰い、その際にさりげなーく色んな人達から話を聞いた。

 その結果、以下のような事が判った。

「ソーニャさんは宮殿の皆から好かれていて、庶民派だったからメイドさん達や裏で仕事をする人達には凄く好かれていた……。ソーニャさんも特定のメイドに対してはアレクの事を明かしたりしてたけど、何故隠しているかの理由は教えて貰えなかったって感じだったな」

 誰も居ないサロンに籠って鍵を掛け、俺とアドニスは庭園の東屋あずまやした一角に座り、片肘をついて改めて見聞きしたことを反芻はんすうする。
 アドニスは俺の言葉に逐一ちくいち頷きながら、周囲を囲む青々とした植物を観察しつつ言葉を継いだ。

「まあ、皇后と言う立場上子供を一人で育てるのは困難ですし、協力者がいると思っていましたが……信頼しているはずの使用人にすら話さなかったと言うのは、やはり怪しいですね」

 緑が全くない国なのに、植物園やアドニスの実験室、そして彩宮の中のこういう皇帝が使う部屋には何故か植物がわさっと生えている。
 木の曜術師であるアドニスも、やはり身近に植物が有ると気にせずにいられないようだ。普通の木の曜術師ってこういう感じなのかな。
 厳密に言うと二人目ではあるけど、ライクネスのリタリアさんは曜術師って言うか普通に「木属性の人」って感じだったし……。

 いや、今はそんな事を考えている場合じゃないか。
 頭を振って関係ない事を脳内から消し去ると、俺は話を続けた。

「あんだけ口の堅い人達ばっかりだったのになあ……。ソーニャさんとアレクの事だって、このアレクから預かった指輪を見せなければ話してくれなかったし」

 そう、ここでも役に立ってくれたのは、やはりアレクの指輪だった。
 ソーニャさんに協力していた年配のメイドさん達にこの指輪を見せて、アレクは無事であり世界協定に保護を頼んでいる事を伝えると、あからさまにホッとしたり涙を流す人も居た。

 彼女達は、ソーニャさんが幼いアレクにこの指輪を手渡す所を見ていたらしく、その時の事も含めて色々と語ってくれたのだが……残念なことに、ソーニャさんがどうして失踪してしまったのかは知らないようだった。

 失踪した時も部屋に手紙が一つ置いてあるだけで、唐突に失踪してしまって申し訳ないと言うような謝罪の文言以上の事は書いていなかったらしい。
 その手紙を見せて貰ったが、確かに謝罪と――それから、とてもぼかした物言いで、アレクと自分を世話してくれた事への感謝が記されていた。

 綺麗な字でつづられた手紙からは苦痛や悲しみを察する事は出来なかったが、しかしそれを匂わせないようにと思って手紙は書かれたのだと思うと、俺はより彼女の境遇に悔しさを覚えずにはいられなかった。

「……ソーニャさん、一体何から逃げてたんだろう……。そもそも、どうして彼女とアレクは殺されそうになったんだ? かなりお腹が大きい時期に流産って、どう考えても二人とも殺す目的だったんだよな?」

 正直俺には妊娠の事は良く解らないし、この世界の妊娠ってのが俺の世界と同じなのかは分からないが、人が人を生むのには凄いエネルギーが必要だって事は解るし、お腹の子供が大きくなればなるほど母親の負担が大きくなって危険だってのも知っている。

 その状態で階段を落ちた……いや、誰かに落とされたのだから、これは確実に彼女を殺そうとしたと言う事だろう。
 ソーニャさんの妊娠を無かった事にしたいのならば、もっと初期に行動するはずだ。階段から落とさなくたって毒薬を使えば簡単だし、方法はいくらでもある。だけどそれをしなかったって事は……。

「事情が変わって、二人を殺さざるを得なかったのか……それとも、その状態にまでならないと殺せなかった……とか?」
「それはそれで疑問ですがね。正真正銘皇帝と皇后の世継ぎであるなら、祝福しない理由がありませんし、ソーニャ様の息子であるアレクセイ様は確実に皇帝陛下の子供だった。なら、普通の臣下なら彼女達を殺す理由は有りません。第一、人族の妊娠は最初から父親が“自分の子だ”と把握出来るようになってますし、陛下も違和感を感じなかったのだから、托卵なんて事はありえないでしょう」
「え、そうなの?」

 ナニソレ初めて聞いた。DNA鑑定とかいらないじゃんめっちゃ便利。
 驚いて目を見張る俺に、アドニスは「無知ですね」と言わんばかりに呆れたようにぐるりと目を回したが、親切に教えてくれた。

「普通、子を成すと言う行為は、子供の“種”を植え付けられた【母】と、その種に自分の精液だとか愛液だとかを注ぐ【父】の二人で行われます。種を持つ【母】は自分の体内の気を種に分け与える事で、己の能力や情報を“食わせ”ますが、【父】は【母】に己の血や精液、愛液等を吸収させる事で、間接的に種に自分の情報を受け渡します。その過程で【父】たる存在は【母】の腹を触る事で、自分の曜気などを感じる事が出来るんですよ」
「……かんじることができるんですか」

 青ざめて言葉を口から零す俺に、アドニスは頷く。

「逆に、感じる事が出来なければ、その子供は自分の気で育った子ではないと言う事ですね。……まあ、そう言うのも【父】が尋常じゃない程に体液を注げば種は【父】の気に染まって、他人の気は消え去るので……【父】が頑張りさえすれば、托卵なんて事にはなりませんけどね。これで解りましたか?」
「…………解りたくないけどわかりました」

 なるほど、原理は良く解らないけど、それなら同性同士でも子供出来ますね。
 種だもんね。種植えつけられるんだもんね。そりゃ性別関係ないわ。
 それに托卵……他の男の子供を育てるって事にもならなくて凄いですね。
 だって、夫婦「仲良く」して毎日お腹に手を当てれば、子供は確実に自分の子になるんですもん。わーいわーい円満解決だー……いかん頭痛くなってきた。

 どう出産するのかはもう知りたくもないが、妊娠させられた方は強制的に相手の液体を摂取しなきゃいけないってそれどんなエロゲなの? 子供の種を発芽させるためとは言え、どう考えても変態プレイ過ぎませんかそれは。

 だって妊婦(夫?)に食ザーだぞ。百合でも結構ヤバイけど、血を飲ませるならまだしも食ザーってなんだよ。この感じだとえっちもすんの? それは流石にないよね? ハラボテファックとか一般的な思考じゃないからね? だからお願い無いと言って物凄く怖くなってきた。なんなのこの世界嫌すぎる。

 いや、うん、そんな事を言ってはいけない。それがこの世界では普通の事なんだ。色眼鏡はいけない、けど、どうしてもブラックの顔が浮かんでしまう。
 どうせはらまされるのは俺なんだろうなとか、その場合俺は「ハラボテ男子」とかいうどこに需要が有るのか解らない存在になるのかとか、なにより万が一にも種をブラックに植えつけられたら、それ以降毎日食ザーとかさせられるとか言う俺的には地獄のような日々が待っている訳で……それを考えると今からもう家出をしたくなってくる。

 ごめんブラックお前何も言ってないのにな。でも、アンタ本当にやりそうだから怖いんだよ。絶対楽しんでやりそうじゃん。変なプレイしようとするじゃん。
 世のお父さんはこんな事して子供作ってるとか知りたくなかった。
 この世界で今一番知りたくない事実だった。

 いや待って、この世界のお母さん強すぎない? 俺絶対嫌なんですけど。
 恋人っつったって、出来る事と出来ない事はあるだろ!?
 てかそれヨアニス達もやったの!?

 あ、いやだ、俺の中では綺麗なカップル扱いのヨアニスとソーニャさんでそんな事考えたくない!! 人の親でそう言うの想像したくねえ!!
 アレ、あのアレだよね! ヨアニス達は多分血液とか唾液程度だよね!?
 お願いそうだと言ってお星さま!!

 やばい聞かなきゃよかった。ああもう嫌だ、俺妊娠したくない絶対。
 いやする予定ないけど! ないけどな!!

「貴方冒険者なのにそう言う事は知らないんですねえ」
「人を孕ませる予定なんぞ俺にはなかったもんでね!?」

 うるせー俺だって保健体育は真面目に勉強してたけど、こんなエグい内容は聞いた事なかったんだよ。別に教科書の絵もえっちじゃなかったし。
 ああもう、俺は見た事ないけど、両親がえっちしてる所見た時ぐらいにショックなんですけど。一体なんなのこの世界。なんで時々そんなエグくなるの?
 思わず頭を抱えて唸ってしまう俺に、アドニスは眉を上げて肩を竦めた。
 ちくしょう呆れるんじゃない。ていうかもう別の話に行ってお願い。

「と……とにかく……アレクは正真正銘二人の子供だってことだよな!? じゃ、じゃあその子供が生まれると不都合がある人が犯人って事かな!?」
「空元気で押し進めるのやめません?」
「うるせーさっきの情報忘れさせてくれや!」
「やれやれ……。まあでも、色々考えると母子共に殺すためか予定が変わったかという見方が普通でしょうね。そこから考えても、ソーニャ様を慕っていた使用人達が彼女をおとしめるとは考えにくいし……もし内部に犯人がいるとすれば、臣下と言う事になるのでしょうねえ」

 何だかんだ言いながら話を元に戻してくれたアドニスにホッとしつも、その言葉に思う所が有って俺は顔をしかめる。
 臣下って事は……文官達やパーヴェル卿みたいな側近、あとは護衛の兵士の中に犯人がいるって事になるけど……なんかキナ臭い理由しか想像できなくて嫌だな。政治的策略……! とかだったら手におえないんだけどどうしよう。
 これから臣下の人達に探りを入れるとしても、ヘタにつつくとこっちの事を感付かれそうだし……うーむ……。

「辞職したっていうソーニャさんの護衛の人に会うまでは、ヘタに動かない方が良いかな……。使用人の人達に話を聞くのとワケが違うし」
「そうですねえ。私も貴方も、貴族や兵士の扱い方に慣れていない。上手く聞きだすには、外部の人間の力を頼った方が良いでしょう」
「護衛の人、来てくれるといいけどな……」
「大丈夫だと思いますよ。私も一度だけ彼を見たことが有りますが、誠実さを絵に描いたような人間でしたし」
「そっか……」

 名前はまだ判らないけど、協力してくれたらいいんだけどな。
 凄く責任感が強そうな人だし、ヨアニスも引き留めてたくらい信頼できるっぽいから、その人が付いていてくれればとても助かるんだが……。
 まあこればっかりは心配してても仕方ない。もし来てくれなかったら、ブラック達に頼むという手も有るし。ブラック達には手間を掛けさせちゃうけどな。

「何か話してくれるといいんだけどな……」

 そう思ってうれう俺に構わず、アドニスは席を立つと周辺の植物を状態を探るように触り始めた。まるで俺との話に飽きたと言わんばかりだが、そのくせ背中を向けながら俺に気楽そうな一言を投げて来る。

「まあ、貴方なら簡単に聞きだせるんじゃないんですか?」
「なんで」
「だって、ツカサ君は人を丸め込んで騙くらかすのが得意じゃないですか。あれほど口が堅そうだった年配のメイドですら、ああも簡単に口を割りましたし」

 なんじゃそりゃ、人を口が上手い詐欺師みたいに……。

「人聞きの悪いコト言うなよな。やましい所が無かったら、誰だって真摯しんしな態度で丁寧に訊けば話してくれるってば」
「今後付き合うかどうかも分からない相手に気を使うなんて、ずいぶん面倒臭いんですねえ聞き込みと言うのは。植物の方がよほど素直に答えてくれると言うのに……おや、これは……」
「ん?」

 屈んだアドニスに釣られて、俺も席を立ち隣まで移動する。
 なにか見つけたのだろうかとアドニスが手を伸ばした方へ視線をやると、そこには枯れ草色に変色している蕾を付けた花があった。
 良く見ると、その周辺約数十センチの部分の植物が枯れかけている。

「うわ、この辺だけ植物が枯れてる……なんで?」
「おそらく、燃料を土に伝える排出管が壊れたのでしょう。枯れてしまった植物はもう取り除くしかありませんが……他の植物に被害が及ぶ前に、排出管を取り換えましょう。そうすれば安心だ」
「燃料って……皇帝領の明かりの燃料と一緒なのか?」
「ええまあ。……ここで大人しく待っていて下さいね」

 そう言うと、アドニスはさっさとサロンを出て行ってしまった。
 アイツ植物の事になるとかなり行動早いよな。やっぱ植物が好きなのかな。
 まあ俺もこの世界に来てからは結構好きになったけどね。とは言っても、観賞用じゃなくて野草とか薬草とかそう言うたぐいの方だけども。

「うーん……でも、可哀想だな……。燃料が無くなると枯れるって事は、燃料ってのは肥料にも使えるようなものなんだろうか?」

 クロウが土の曜気や大地の気がないと植物は育たない的な事を言っていたけど、肥料ってそう言えば土の曜気を含んだ何かなんだろうか。
 探ってみたら燃料の正体も解るかな?

「どれどれ……?」

 漏れ出ているなら好都合だ。
 俺は枯れている植物達をじいっとみて、俺が今まで見た事のある曜気の光がそこから溢れていないかを注意深く観察した。すると、周囲の植物に淡く弱々しくかかる緑色の光と、うっすらと浮き上がる光の粒が見えて来る。
 これは……他の植物の木の曜気と、大地の気……かな?
 土の曜気はないんだろうか。

 まあ、土の曜気は捉えにくいって言われてたので、もしかしたら俺には見えないだけかもしれないが……それでもここの土には大地の気が有るってのは凄いな。

「でも、めっちゃ見ようとして見たから見えてるだけで、実際言うほど大地の気がないのかな……? だから他の植物も全然元気がないんだろうか」

 あまり見ようとしたことが無かったが、他の国の植物だったらこんなに弱々しい光じゃなく、曜気がはちきれてますって感じの光に包まれてるんだけどな。
 アドニスの所で見た凄い植物は例外としても、これほどギリギリで生きてそうな植物達ってのはちょっと可哀想と言うか……。

「アドニスもこういうのを見て、緑化計画を思いついたのかな……」

 ボールが友達なんて人もいるように、もちろん植物を友達と思う人もいる。
 アドニスも実はそんなタイプなんだろうか。それなら少し親近感湧くけどな。

「うーん……せめて、少しでも元気に出来ないかな」

 俺は項垂れている花の蕾を下から手で支えて、軽く木の曜気を送ってみる。
 ……すると、蕾は少しだけ緑色を取り戻したが……枯れそうになっているせいか項垂うなだれたまま元気になる事は無かった。

「やっぱ大地の気がないとダメか? いや、木の曜気だけだったから活力が足りなかったのかも……そう言えばあの畑もそうだったもんな。やっぱ土に元気がないと、植物も元気にならないのか」

 と言う事は……畑でやったように大地の気が出てくるようにすればいいのか。
 俺は一旦蕾から手を放すと、枯れている場所を改めて確認して、その部分にだけ黒曜の使者の力が掛かるようにイメージした。
 いくらなんでも全体にってのは無理だし、必要以上にやったら何かヤバそうだしな。小さなところから試してみよう。

「よーし、この辺だけ、この辺だけ……この辺の植物を生き返らせる程度だけのちから……ああもう加減が判らん、ゲージとかないのかな!」

 範囲内にある植物が息を吹き返し、元気になってくれるように土から大地の気や土の曜気が溢れて……なんだか頭が混乱してきたが、とにかくこの枯れそうな植物が元気になるくらいの力で!

 そう考えていると、俺の両腕に、小さな葉を茂らせた蔦のような光の帯が伝い始める。しかし不思議な事に、その光は白、橙、緑と脈動するように変化し光の帯の数を今までにない程に増やしていた。
 な、なんだこれ……ごちゃごちゃ考えてたから?

 戸惑うが、しかし腕から手の先までぐるぐると巻き付いた光は俺の最初の意思を履行するかのように勝手に動き、ひとりでに土へと染み込んでいく。
 やがて、俺の腕に会った光全てが地面へ潜ってしまうと――――その部分が淡く光りはじめた。

「うわっ……!」

 その光に呼応するかのように、植物が動き始める。
 まるで早送りをするかのような動きで小刻みに揺れながら、枯れかけていた植物達はしっかりと立ち上がり、その色を徐々に青々とした色に染め変え始めた。
 枯れ草色だった茎も葉も全てが綺麗な緑になり、葉は最早もはや他の範囲の植物よりも瑞々しく広がっている。

 そうして、枯れかけていた蕾はあっという間に花開き……生き生きと綺麗な花を咲かせてしまった。

「……マジか……。いやでも、これで枯れた植物を元に戻す方法は解ったな」

 種は曜気を蓄えているから、どんな大地であっても黒曜の使者の力を使えば長く生きられるけど、曜気すら失って枯れかけた植物に対しては、大地の気や土の曜気と言った栄養も与えないと戻らないんだな。
 って事は、もしかしたら水の曜気も与えたらもっと元気になったのかも?

 うーむ、ほんと魔法って一筋縄じゃいかないんだな……。
 例によって原理は全くわからんが、とにかく成功したので良かった。これで失敗とかしてたら本当目も当てられないからね……。

「でも良かった。こんな土地でも頑張って育ったんだし、どうせなら種を残すまで生きて欲しいもんな」

 種。……うん、そうだね、子孫残すよね。種……種か……。
 嫌な事を思い出してしまった……いや、忘れよう。今日教えて貰った事は重要な事以外すべて忘れよう。そうだ、それが俺の為だ。
 悪寒がするのは気のせいだろう。ああきっとそうだ。そうに違いない。

「あ、アドニスまだかなー……」

 呟いても一人。
 ……ああもう! 一人でいたら余計にさっきのエグい話を思い出しちゃうから、本当もう早く誰でも良から帰って来てー!!

















※他の妊娠もの実は知らないんですが、設定エグかったらすみません…
 あとツカサは否定してましたが子種を育てるには飲ませるより体内に
 注ぐ方が効果的です。ハハハ

 
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