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帝都ノーヴェポーチカ、神の見捨てし理想郷編
16.突き詰めればなんだって芸術に昇華される
しおりを挟む※ものすごくツカサが下品です、許して下さい…(;´Д`)
艶芸小屋、と一口に言っても、その艶芸は多種多様だ。
俺が想像していたストリップショーは勿論だが、曜術を使った芸にエロい踊りを加えた物や、濡れ場……エロいシーンがあるお芝居、それにとにかく普通の芸とは全く違う十八禁な芸なんかを披露する小屋も含まれているらしい。
お芝居は昔あったって言うポルノ映画館みたいなものなんだろうか。
ボーレニカさんにどこに行きたいか聞かれたが、俺はとりあえずストリップショーをお願いしておいた。いやー、こういうのはやっぱり基本からでしょう。
そんな訳で、俺達は艶芸小屋が立ち並ぶ下民街の一画……第三区遊興街に俺達は立っているのだが……。
「すげー人の多さですね、ボーレニカさん」
「おう、ここはノーヴェポーチカ一の歓楽街だからな。お貴族様は楽しめねーが、俺達は充分に楽しむ事が出来るってんで、みんながハメ外しに来てんだよ」
「そんなにこの国下民に厳しいんですか」
「身分に関しての締め付けはな。……でもまあ、この国の奴らはその程度でへこたれるようなヤワな性格じゃねえからよ。雪のせいでやる事も少ねぇってんで、みんなこういう分かりやすい所に来るんだよ」
「なるほど……」
楽しい物が沢山ある場所には人が多いってのは解っていた事だけど、しかしこの第三区遊興街とかいう所は、正月の神社かってくらいに人が多かった。
まるでお祭り騒ぎで、色とりどりのネオンらしき灯りに照らされた人達が、すし詰め状態でそぞろ歩いていた。
そんな人々を、そこかしこの建物の入り口で艶めかしいお姉さんやお兄さんが誘っている。なんなら二階の窓からも愁眉を送っている人達がいた。
なんていうか……すげー熱量だ。
ラッタディアの歓楽街は飲み屋が多くてもうちょい健全な感じがしたけど、この場所は人の性欲に直接訴えかける店ばかりだからか、かなり刺激的……というか、どうかすればエグい。
それでもジャハナムの無法地帯プレイよりかはマシだけど、さすがは蔓屋本店がある場所だなと思い知らされた。
うーん……帝国っぽい冬の国って言うから、てっきり禁欲的な所だと思っていたんだけど……意外と性に奔放な国だったんだな、オーデル皇国。
「おう、俺のおすすめの店はあそこだぜ。さ、行こうや」
歓楽街の雰囲気に圧倒される俺の肩を叩き、ボーレニカさんはニカッと笑って、少し先の方にあるピンク色の建物を指さす。
そこには看板に艶めかしい女性が描かれており、ひっきりなしに人が出入りしていた。どうやらかなり人気の店らしい。
「び、美女の店ですね。間違いなく美女の店なんですね」
「おう? 男の艶芸がみたいなら別の店があるが」
「いや女で! 美女でお願いします!!」
やっぱそっち系の店も有るんですね! ごめんなさい俺さすがにそっちの方ではオナれませんので遠慮します!!
改めてボーレニカさんに要望を伝えると相手は苦笑したが、俺を店へと案内してくれた。ああ、忘れていたけどブラックとクロウも一緒に。
二人もちょっとは反省しているのか、いつもはやんややんや言うのに、今回は俺がウキウキしていても何も言わない。ただ静かに付いて来るだけだ。
まだ顔が赤いから酒は抜けてないみたいだけど、まあ好きにやらせて貰えるならそれで良い。たまには俺も娯楽を楽しませて頂きたいしな。
「ごめんよっと」
ボーレニカさんの声と同時に店に入ると、そこには受付があってやり手そうな婆ちゃんが座っていた。受付の隣には二つのドアが有り、それぞれ「入口」と「出口専用」と書かれている。店の壁に書いてある説明には、扉の奥にストリップの劇場とその他の施設があるらしい。
婆ちゃんに四人分のお金を払って再び扉を潜ると、そこは映画館のロビーの様な造りになっていた。お土産物屋っぽい売店コーナーと、いくつかの両開きになったドアが在る。
そのドアにはそれぞれ一枚の紙が貼りつけられていた。
「あれは今日芸をする女達の似顔絵さ。時間帯によって変わるが、大概は同じ劇場で踊ってるんだぜ。通うなら覚えておくといい。どれか好みの女はいるか?」
「え? えーっと……」
女性と言う以外特に希望は無いが、一応四つの扉に貼られた紙を見てみる。
こちらの似顔絵は壁画レベルではなくかなりの精密な模写で、それぞれの女性の美しい容貌と得意な踊りが書かれていた。エロ本はあんななのに何故……いやそれはもう良い、忘れよう。とにかくどの人も美女でかなり迷ってしまう。
俺には決められなかったので、もうすぐ次の演目が始まると言う三番目の劇場に入ってみた。
ロビーは映画館っぽいのでてっきり席がある物だと思っていたが、劇場は地べたに腰を下ろして舞台を見る方式だった。
舞台の方も特殊な造りをしていて、中央から観客席に通路が伸び、その先にまた円形の小さなステージが作ってある。遠くに座っている人への救済措置なのだろうが、俺達の席はその円形のステージの正面なのでなんだか凄くドキドキしてきた。
「こういう所って、なんか本当に特殊なんですね……」
「おう、そうか? 舞台自体はよくある造りだがな……まあ、使う目的によって、建物もその目的に合うように自然と雰囲気が変わってくんだろうな。だから特殊にみえるのかもしれねーぞ」
「へぇ……なんか不思議っすね」
建物ってただの入れ物だと思ってたけど、使う人次第で様相が変わるんだな。
まだ人の入りも少なく演技が始まる前だったので、周囲をキョロキョロと見回していると、俺の背後に座ったブラックが急に話しかけて来た。
「あの……ごめんねツカサ君……僕も今回は流石に反省したよ」
お……。なんだ、やっと俺の気持ちを考えてくれるようになったのか。
いや、解ってくれたなら良いんだよ。そんなにしょんぼりすんなって。
ブラック、お前もな、絶対に人の気持ちが分からないんじゃないんだし、調子に乗らなきゃそれ相応に大人なんだからさ、そう言う所をもっと大事にしてくれよ。そうしてくれりゃあ俺だって文句なんて言わないんだよ。
俺に説明してくれる時のキリッとしてるアンタは好きだし、歩いて他愛ない話をしてる時だって俺は楽しいよ。そう、だから、自重してくれたらそれで良いんだ。
そんな事を思いながら、ブラックに「もう気にしてないよ」と言おうとしたら。
「ツカサ君がそんなに僕だけのモノで居たかっただなんて嬉しいよ! 今度からはお酒に飲まれないように気を付けるからね!」
「ちげえええええええよ!!」
なんなの、なんでそんな発想に飛ぶのアンタは!
こらそこクロウも「なるほどな」みたいな顔で頷いてるんじゃありません!
お前らさてはまだ酔いが醒めてねーんだろコラァ! お願いだからもうちょっと冷静に俺の気持ち慮って!
「おっ、はじまるぞー」
「ああっ、悪いタイミングで!」
否定しようとしていた所に開演のブザーが鳴り響く。
し、仕方ない。二人に訂正するのはショーが終わってからだ。
俺は席にしっかりと座り直すと、暗くなった劇場で舞台に目を凝らした。
「むむ……」
すると、舞台に誰かが出てきた気がする。
いつの間にか劇場に集まっていた男……のみならず、女の人達も、舞台の方へと首をやる。その動きが合図だったかのように、劇場に急に艶やかな音楽が響き始めた。おお、これがこの国のえっちな雰囲気の音楽……なんかアップテンポだな。
変な部分が気になっている俺に構わず、今度は舞台の中央に桃色のスポットライトがバッと現れた。そのライトの下に、誰かが立っている。
それはもちろん、刺激的な服を着た豊満な肉体の美女だ。彼女は観客達に愛想を振りまき投げキッスをすると、くねくねと腰を動かして舞台を歩き出す。
音楽に合わせたウォーキングは、それだけで女性の肉体の艶やかさをいやと言う程観客に見せつける。童貞な俺なんかはもう、腰を動かす度に上がるお尻の丸さに魅了されてしまって、正直鼻息が荒くなってしまっていた。
同じように興奮している観客に、美女は蠱惑的に微笑んで踊りながら自分の服を脱いでいく。下着姿になってあられもないポーズをこちらに見せつけるが、ちっとも下品ではなく、むしろその動きには芸術性すら感じられる。
えっちいのにえっちくない……興奮するのに下品だとは思えない……!
動き一つ取っても、プロのそれとしか思えないほどの完成度と美しさ……これが、ストリップショーという物なのか……!
なんだ、こんな凄い物見てるんなら別に恥ずかしくも何でもないじゃないか。
こんな風に芸術性の高っあーっ下着! 下着を脱いでおっぱいが!
「ツカサ君鼻血でてるよ……」
「うげっ」
「こんなので興奮するの……?」
背後から胡乱な顔で俺を見るブラックに、俺は当然だろうと顔を顰める。
こんちくしょう、楽しいおっぱい、違う、楽しい時間に水を差しやがって。
「お前だって鼻血出すだろ、興奮したら」
「僕ツカサ君以外に興奮しないし」
「俺は! 興奮するの!! ほらだって見てみろよ、あの美しいお姉さんのしたぎーっパンツ!! パンツが! うわっちょっ、うわー!」
「ツカサ君うるさい」
「バカおまっ、ぱっ、パンツだぞ!? パンツ脱っ、うわっ、うわー! えっ、ええっ現実のアレもやっぱタテスジなんだ!?」
お前ら本当見ろって。俺の事は良いから見ろって!
舞台の上でお姉さんがパンツ脱いだんだぞ、丸見えなんだぞ!
お金を払うだけで目の前で脱いでくれるなんて、物凄くありがたいじゃないか。しかもあれだぞ、美女だぞ美女。歌と踊りつきだぞ!
うわっ初めて見た、ナマで初めてアソコ見た! 遠くてあんまり解んないけど!
「ツカサ君……本当に童貞だったんだ……」
「可哀想に……」
「お前ら二人とも憐れんだ目で俺を見るな!!」
俺が女の子とえっち出来ないのは半分以上お前らのせいなのに、なんで憐れんだ目で見られなきゃなんないんだ!
ちくしょう、俺の世界じゃ未成年で童貞だってまだ許されるけど、この世界じゃ十七歳は成人扱いだ。童貞に対する目が厳しすぎる。
「なんだ坊主童貞だったのか。まあ……その顔なら先に処女が散ってるよな」
「ボーレニカさん冷静に判断下すのやめて!」
この場に俺の味方は居ないのかと嘆いていると、なにやら舞台を見ていた人達の声がこちらに向いたのを感じた。
どうしたのだろうかと、彼らの声が向いた方……俺達の目の前にある円形の小さな舞台を見ると――そこにはなんと、先程までむこうの舞台に居た美女が俺達を見下ろして艶やかな笑みで微笑んでいた。
「あっ……」
凄く近い場所で見る美女の体は、本当に黄金のようになめらかで柔らかそうで、それでいて男の本能を刺激するおっぱいやお尻は、こちらを挑発するかのように豊満に実って小さな動き一つ一つに細かく揺れている。
思わず息を呑んで股間を押さえてしまった俺に、美女は嬉しそうに微笑んで……まさかの、俺の目の前で、M字開脚を、ひろう、してくれ、た。
あっ。
えっ、え――――――
「ツカサ君?」
「おおおお俺ちょっとトイレ行ってくる!!」
「あっ、ちょ、ちょっと!」
もう、正直、限界です。
疾風のように人をかき分けて劇場を最小限の動きで出ると、俺はロビーのトイレへと向かった。もう正直どう思われても良い、ロビーにいた男達にニヤニヤされてたような気がするけど、こんなん生理現象だろう、仕方ないだろう。ここに来てる奴なら解るはずだ!
とにかく、その、初めて女性のアソコをナマで間近でみてしまったのは、俺には刺激が強すぎた。っていうか夢に出る。夢に出てしまう。
やべえ、やばいってアレは!
ごめんなさいもう俺童貞で良いです。顔真っ赤なのも鼻血出てるのも笑って貰っていいです、でもさ、見せつけられたら誰だって股間が爆発するよねえ!
そう信じながら俺はトイレの個室に籠ると、慌てて自分の息子を宥めた。
「うわ、はっ、はぁ……はぁ……やばかった……もう少しで社会的に死ぬところだった……」
早漏と言うなかれ、初めては誰だって暴発したって仕方ないだろう。
からかわれたって構う物か。下着が汚れなかったんだから俺的にはノーカンだ。
俺は深く溜息を吐くと、ついでに鼻血も拭いてから個室を出た。
「はー……ここも下水道しっかりしてる国で良かった……」
蛇口を捻ってばしゃばしゃ顔を洗い、鏡で鼻血がどこにも付いていない事を確認してから、俺は堂々とトイレを出た。
あまりに急な脱出だったから、ブラック達はまだ劇場から出られてないみたいだな。まあ、あの人でぎゅうぎゅうの場所で動けってのが無理な話か。
本当火事場の馬鹿力って凄いなあ……。
「うーん……今から席に戻るのも、他の人に迷惑が掛かりそうだし……仕方ない、踊りが終わるまでロビーで待つか」
最後まで見れないのはちょっと心残りだったが、まあ良い物を見れたので俺的には満足だ。いやほんと、記憶に残る名器でしたね。綺麗でした。
本当はお金払ってみるより、好きな女の子とする時にみたかったんだけど……俺もうお婿さんには行けそうにないからな……。
「まあ、グダグダ考えてても仕方ないか。なんか飲み物でも買おう……鼻血を出し過ぎたのかクラクラするし」
売店に何かないだろうか、と踵を返してロビーを歩いていると。
「あれ……も、もしかして……ツカサさん?」
「え?」
誰に呼びとめられて、振り返る。
するとそこには――想像もしていなかった相手が、俺と同じような表情をしてこっちを見つめていた。
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