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波乱の大祭、千差万別の恋模様編
7.人の性根は変わらない1
しおりを挟む※久しぶりにイチャイチャ(?)させたのが楽しくて本題まで行きませんでした
すみません…また読まなくて大丈夫回だこれ…O(:3 )~ ('、3_ヽ)_
「ここまで来れば、さすがに誰もいないよね……?」
やけに警戒したような口ぶりで言いながら、ブラックは周囲を見回す。
クジラ島は、川の上流まで遡ると少し傾斜のかかった山のような森になっていて、木々もまばらになって行った。遠くから見た所によると、クジラ島のてっぺんは禿山になっていたから、恐らくそのエリアの近くに来ているのだろう。
食料は森でしか取れないので俺もここまで来た事はなかったが、山の上に登るとなれば眺めも良いだろうな。星だってこの場所以上に良く見えるかも。
まあ、そんな体力は使ってられないので、この辺りで精一杯だが。
俺とブラックは森から出て、ごろごろと大岩が転がる川原でようやく腰を下ろした。下流は小石ばかりの川原で座るのに躊躇したが、ここでは大岩に座れるので尻が痛くならずに済む。有り難いと思いながら、俺とブラックは大岩によじ上って座った。どうでもいいけどこれ降りるとき大変だな。
「ふー……あっ、見て見てツカサ君。星が見えるよ」
「おー、確かに。陸で見た時とあんまし違いは無いけど、やっぱ綺麗だなあ」
都会は地上からの光が強くて星があまり見えないけど、この世界も大地から漏れ出る命とも言える「気」が星を覆い隠してしまう。文明社会がどうって話しじゃないが、まあ、見えなくなる時は見えなくなるモンなんだよな。
だから、北の「気」が少ない土地に近いベランデルンでも、結構星が見えたんだけど……何ヶ月も旅してると、星もあんまり見なくなっちゃってたなあ。
「久しぶりに夜空をゆっくり見た気がする」
「ははは、野宿は森の中が多いし……見張りしなきゃいけないから、空にまで気を配っていられないからね。ゆっくり出来て良かったよ」
「他の奴らにはとてもじゃないが聞かせられないな、その台詞……」
この非常事態で「ゆっくり」だなんて、気が立ってる奴が聞いたらヤバいよな。
そう言う意味では二人っきりで良かったと思いつつ、俺は再び空を見上げた。
大地が元気じゃない所の方が星が見える……なんてちょっとおかしな話だけど、それでも綺麗な風景だと思ってしまうのは田舎が好きだからだろうか。
そういや夏休みの時には天体観測とかしてたなあ。
夏の星座なのになんでさそり座は十一月の星座なんだよ、とか色々思ったもんだったけど、今となってはわりともうどうでも良いな。
「そう言えば……この世界って星座とか有るの?」
「セイザ? ヒノワでやる拷問みたいな座り方のこと?」
「そっちじゃねーよ、星の並びを繋いで作る形の方」
日本の文化をエグい習慣みたいに言うのやめてよね! 確かに俺達椅子世代には辛い座り方だけどさ!
「ああ、星ね。えっと……一番簡単に見えるのは、あれかな。北極星」
「えっ!?」
こ、この世界にも北極星とかあるの……!?
いや待て、この世界には過去に何人もの異世界人が送り込まれているんだ。
北極星と同じ位置にとどまる星にそう名付けたとしてもおかしくはない。
だけど……まさか天体まで俺の世界とそっくりだなんて言わないよな……。
「この辺りは秋の気候だから……ああ、あそこにサソリ座があるね。あと、あの星とアレを長く繋いだのが天秤座。古い言葉では十二宮と言われた、はっきり見える十二の星座の内の二つだよ」
「…………そう、なんだ……」
この世界は国ごとに気候が固定されている。だから、気温が大幅に変化する事は滅多にないという事だが……まさか十二宮の星座まで存在するなんて。
でも俺の世界とは違って“夏の星座”であるさそり座が秋の国にあるし、聞いた所さそり座は秋の国の空でしか見られないのだと言う。
他にも色々と国ごとの星座を教えて貰ってけど、やっぱり俺の世界の星座と一緒で何だかもう訳が分からなくなってしまった。
神話絡みで作られたのが星座のはずなんだけど、この世界にはヘラクレスという神様も好色なゼウス様も存在しない。となると星座の由来は、この世界では説明できないはずなんだけど……どういうことだろう。
ブラックが言うには星座は船の位置を測るための物で、便宜上適当な名前が当て嵌められたってだけらしい。神話は関係ないんだと。
だとしたら、やっぱこれも異世界由来……なのかな。
一応俺の世界の星座の事を話したけど、俺も正直なところ全部の星座の由来を知ってるワケじゃないから、あいまいな説明にしかならない。だけど、ブラックは興味深そうに聴いてくれていた。
「そっか~……いや、それなら何となく納得が行くよ」
「納得できるのか?」
「うん。昔からね、本を読んでいると時々“由来のない存在”が出て来る事が有ったんだ。例えばあの星座とか……もっと言えば、僕達が使う曜術の名前とか……ね。だけど、異世界にちゃんと由来が有って、それが僕達の世界に持ち込まれた物だとしたら……何もかもがスッキリするんだ。これは凄い事だよ」
確かに、由来が不明な物ほど不気味な物は無い。
その存在の発生した経緯を解き明かせたとしたら、それは凄い発見だろう。
この世界には今現在「異世界」という概念が存在しない。というか、それを意識している人間はほんの一握りだと言われている。だから、きっとこの世界の人達は異世界から来たものの由来が解らなかったのだ。
そんな現状で納得のいく説明が出て来たら、凄くスッキリするだろうな。
成程なと考えている俺に、ブラックはにっこりと笑った。
「ツカサ君に出会えなかったら、永遠に解らなかったかも知れないね」
「……そ、そうかよ……」
な、なんかむず痒いからそう言うのやめい。
上手い言葉が返せなくて俺は口をつぐんだ。
……しかし、由来の無い存在……か。
俺もある意味では、この世界での由来が存在しない。「異世界から来た」と説明すれば由来があると言えるのかもしれないけど、俺自身はこの世界の存在ではないんだ。そうなると、やはり俺は「突然現れた」としか言いようがないだろう。
俺の世界には、由来のない物なんて存在しない。
だけどこの世界には確かにそんな不可解な物が存在していて、ブラックのように見えない壁にぶち当たったまま謎を解明できないでいる人がいるんだ。
異世界人が齎す弊害って、なにも「力」だけじゃないんだな。
文化ですらも、俺達のような存在が介入すると来歴が不明な物が増えて行って、後世まで「謎」という爪痕を残していくんだ。
そうして、人々を悩ませ続ける事になる。
悪化すれば、元々存在した文明の崩壊すら起こしかねない。
その爪痕の責任が取れないガキの俺からしてみれば、やっぱり……ネット小説の主人公みたいな活躍は望めないわけで……。
はあ、現実って何でこんなに面倒くさいんだろう。
「あれ、ツカサ君機嫌悪い?」
「ああいや、違う。考え事してただけだから、気にすんな」
コイツ、本当に俺の事よく見てるよなあ。
俺にも十分の一でもその観察力があれば、もうちょっと素の能力で役に立てたんだろうけど……まず夜目が効かないのがキツいよな。
せめて気の付加術でばばーんと何かやれたらいいんだけど。
そう思って、俺はブラックに向き直った。
「そういや俺、付加術とか殆ど覚えてないんだけど……索敵とか鑑定とかの修行はどうなってんだ。ブラックは教えられない分野なのか?」
鑑定は確か前に薬屋で「知識が必要」って言われたから、勉強しなきゃ出来ないのは解ってるんだけど、索敵はどうなんだろう?
俺がもし索敵を使えれば、もうちょっと貢献できると思うんだけど。
そう思ってブラックに問いかけると、相手は小難しげな顔をして首を捻った。
「うーん……索敵とか鑑定は、学術施設で勉強しなきゃきちんと使えないんだよ。視覚拡張とかもそれ専用の教師が存在するぐらしだし……」
「教師が教えないと出来ないの?」
「と思うよ。僕も索敵が使えるようになったのは、仲間の一人が付加術の教師をやってたからだし……残念だけど、僕にはツカサ君に教えてあげられない」
「そっかぁ……」
ブラックにも出来る事と出来ない事があるんだなあ。
まあ、教員免許を取って無けりゃ教師はできねーみたいな事だろうし、天才でも万能って訳じゃないモンな。
やっぱどっかで俺も学園編とかをやらなきゃ駄目だろうかと考えていると、隣でじっと俺を俺を見つめていたブラックが急に不満げな声を出した。
「ツカサ君、さっきから色気のない話ばっかりしかしないねえ」
「は? なんだよいきなり」
「折角のいい雰囲気だし二人っきりなのに、ちっとも僕の事見てくれないし」
不満げな事を言いつつ頬を膨らませるオッサン。
歳を考えろと言いたくなる姿だが、もう突っ込む気も起きなくて俺は答えた。
「だってそりゃ、こんな時なんだから自分の周囲の事を考えるのが普通だろ」
「でも、こんな素敵な場所なんだよ? ちょっとくらい、僕に寄りかかってくれたって良いじゃないか。僕達恋人同士なんだしさあ」
「そ、そりゃそうだけど……」
でもそんな風に色々気にせずイチャイチャ出来るのはアンタくらいだって。
それに、その……今の俺じゃ寄りかかるのも何か烏滸がましいって言うか……。
しかしブラックはそう言う俺の気持ちは解ってくれず、ぶすっと顔を歪めると、俺の肩を掴んで岩の上に押し倒そうとして来た。
「わっ、ちょ、お、お前こんな所で何をする気だ!」
「何をするって、恋人同士が二人っきりでやる事といったらセックスじゃないか」
「アホかー! 非常事態になにやっとんじゃい!」
「非常事態だからこそ生存本能が疼くんだよ! これは男のサガだよツカサ君!」
「やだもうこのオッサンー!」
あんた絶対戦闘前に昂ぶる系の人でしょ、そういう野蛮な人種でしょ!
ちくしょう、さっきまで変な事を考えてた自分がバカみたいだ。
この野郎、結局二人っきりになってえっちしたかっただけじゃねーかもう。
明日も炊き出しで大変だってのに、こんな背中がズル剥けになりそうな所で掘られて堪るかってんだこんにゃろめ!
「はーなーせー!」
「いーやーだー!」
一発やるまで帰らないとばかりに俺の首筋にむしゃぶりつこうとする相手を必死に躱しながら、俺は一瞬の隙を突いてなんとかブラックの体の下から抜け出した。
このまま岩の上に居ては危険だと思い必死に降りるが、相手はなんの苦労もなくひらりと飛び降りて俺の退路を塞ごうとする。
きぃいっ、オッサンのくせに不必要にイケメンな行動しやがってっ。
だが俺も鬼ごっこでは姑息な手で何度も逃げ切った事のある男、そういう意味でのいやらしさでは負けはしないぞ。情けないとか言うなよ。
どうにかして岩を利用して逃げ出せないものか。
そう思ってじりじりと距離を測っていると――遠くの方から、足音が聞こえた。
「!?」
「ツカサ君、隠れよう」
「ほげっ」
「何をする」と言うよりも先に首を腕でホールドされて、一際大きい岩の後ろに連れて行かれる。まあ、ここならば多少音を立てようが大丈夫だと思うけども……しかし、どうして隠れるんだ。
文句を言ってやろうと思って、背後から俺を羽交い絞めにする相手の手を噛もうとしたが、向こう側から聞こえてきた声に、俺は硬直した。
「この辺までくれば、大丈夫でしょう」
どこか他人を見下したような、軽い調子の声。
その声の主は……紛れもない、あのうざったらしいガーランドだった。
→
※次はちょっと…っていうかだいぶん変態臭いです。ご注意ください(´・ω・`)
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